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指定難病とは?専門的な支援を行う訪問看護ステーションの役割

訪問看護ステーションでは、指定難病を抱える利用者の在宅療養への専門的な支援も行っています。

指定難病とは、医療費助成の対象となる疾患のことを指します。

今回は、この指定難病をテーマに、その定義から国からの助成制度、訪問看護ステーションの役割、および注意すべき点についてお伝えします。

目次

難病とは何か、その定義とは

難病とは何か、その定義とは

まず難病について、その定義について説明します。

難病(なんびょう)とは、医学的に診断が難しく、治療やケアにおいても困難を伴う疾患の総称です。一般的には、希少疾患(きしょうしっかん)とも呼ばれることがあります。

難病の定義は国や地域によって異なる場合がありますが、一般的には以下のような特徴を持つ疾患を指します:

(1)希少性

難病は一定の地域や人口において発生する頻度が非常に低い疾患です。一般的には人口10万人あたり数人以下の発生率を持つとされます。

(2)診断の困難さ

難病は、症状や疾患の特徴が他の一般的な疾患と類似している場合があり、診断が難しいことがあります。診断には専門的な知識や検査が必要な場合があります。

(3)長期間または終生のケア要求

難病は多くの場合、慢性的な進行を伴い、終生にわたってケアや治療が必要とされる場合があります。また、症状や合併症の進行によって、病状が変動することもあります。

(4)社会的・経済的な困難さ

難病を持つ人やその家族は、病状による身体的・精神的な負担に加えて、医療費や社会的サポートの必要性など、様々な困難に直面することがあります。

難病は多様な疾患を含んでおり、代表的なものには筋ジストロフィー、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、アミロイドーシス、先天性代謝異常症、特定の遺伝子変異に関連する疾患などがあります。

指定難病とは何か、難病との違いとは

指定難病とは何か、難病との違いとは

次に難病と今回のテーマである指定難病との違いについて説明します。

指定難病(していなんびょう)とは、ある国や地域で法律や規則に基づき、特定の疾患を指定して、それに対する医療や社会的な支援措置を提供する制度のことです。指定難病制度は、難病の患者やその家族が適切な医療やケアを受けるための支援を行うために設けられています。

指定難病制度の基準や具体的な疾患の指定は、国や地域によって異なりますが、一般的には以下の要素が考慮されます:

(1)希少性

指定難病制度は、発生率の非常に低い希少な疾患を対象とします。一般的には、人口あたりの発生率が一定の基準を下回る疾患が指定されます。

(2)医学的な重症度

指定難病になるためには、その疾患が重篤であり、長期にわたって医学的なケアが必要とされることが要求される場合があります。

(3)診断の確定性

指定難病制度では、その疾患の診断が確定していることが求められることがあります。特定の疾患の診断基準や検査方法が定められ、それに基づいて診断が行われます。

指定難病と一般的な難病の違いは、主に法的・社会的な側面にあります。指定難病制度によって、特定の疾患が公的に認定され、それに対する特別な支援措置や制度が提供されます。これにより、医療費の補助、特定の医療機関での専門的な治療・ケアの提供、社会的な援助や福利厚生の支援などが行われる場合があります。

日本における代表的な指定難病とは

日本における代表的な指定難病とは

日本において指定難病として指定されている代表的な疾患は以下のようなものがあります。

前頭側頭葉変性症

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

グッドパスチャー症候群

グリーンバーグ脳症候群(クロイツフェルト・ヤコブ病)

進行性核上性麻痺(PSP)

パーキンソン病

多発性硬化症(MS)

原発性肺高血圧症

先天性副腎過形成症(CAH)

先天性異所性甲状腺(ECT)

これらは一部の指定難病の例ですが、日本ではさらに多くの疾患が指定難病になっています。(令和3年11月現在の指定難病は、338疾病)指

定難病のリストは、日本の厚生労働省が定めており、定期的に見直されています。

最新の指定難病のリストや詳細については、厚生労働省のウェブサイトや関連の機関で確認することができます。

厚生労働省の補助事業として公益財団法人難病医学研究財団が運営する「難病情報センター」のWebサイトには、指定難病に関する豊富な情報が掲載されています。

https://www.nanbyou.or.jp/

指定難病が増加している背景

指定難病が増加している背景

近年、指定難病の数が増加している背景には、以下の要因が関与しています:

(1)科学的な進歩

医学や遺伝子学の進歩により、新たな疾患の特定や診断が可能になりました。これにより、過去には分類されなかった疾患が新たに認識され、指定難病として扱われるようになったケースがあります。

(2)疾患の正確な定義と診断の向上

以前は疾患が不明確だったり、診断が難しかったりする疾患が、より正確な定義や診断基準が確立されたことで指定難病として認識されるようになりました。

(3)患者や関係者の声の反映

難病患者や関係者の団体や支援団体の活動により、特定の疾患の重要性や困難さが広く認識され、政府や関連機関による指定難病制度への取り組みが促進されることがあります。

(4)社会的な関心の高まり

難病に関する情報がより広まり、一般の人々の関心が高まったことで、指定難病制度の必要性が認識され、新たな疾患が指定されるケースが増えています。

(5)希少疾患の国際的な取り組み

国際的な組織や団体、研究者、医療専門家などが連携し、希少疾患や指定難病に関する研究や情報交換が進んでいます。これにより、国際的な基準や定義の統一が進み、指定難病としての認識が広がっています。

指定難病が増加していることは、医療や社会的な支援の向上につながる一方で、課題も存在します。指定難病に対する適切な医療やケアの提供、社会的なサポートや福利厚生の充実、患者や家族の情報提供など、さまざまな面での取り組みが求められています。

難病医療費助成制度とは

難病医療費助成制度とは

指定難病患者やその家族が適切な医療を受けるための経済的な負担を軽減するために設けられた制度が「難病医療費助成制度」です。

難病医療費助成制度の主な特徴を説明します。

(1)対象者

指定難病患者やその家族が対象です。対象となる疾患は、厚生労働省が指定した指定難病リストに含まれる疾患です。

(2)医療費の助成

難病医療費助成制度では、患者の医療費の一部を助成します。具体的には、患者が負担する医療費の上限額を設定し、その上限額を超えた部分を助成する仕組みです。

(3)医療費の範囲

助成対象となる医療費には、診察料や入院費、手術費、検査費、薬剤費などが含まれます。ただし、具体的な助成対象の範囲や割合は、疾患や地域によって異なる場合があります。

(4)手続きと申請

難病医療費助成制度の利用には、事前の申請が必要です。申請は、指定された市区町村の保健所や厚生労働省の指定機関などに提出されます。申請時には、医師の診断書や収入証明書などが必要な場合があります。

(5)自己負担額

助成制度では、患者が一部の医療費を自己負担することがあります。自己負担額は、所得や世帯の構成に応じて異なり、助成対象外の負担額や限度額の範囲内で発生します。

訪問看護において頻繁に遭遇する指定難病とは

訪問看護において頻繁に遭遇する指定難病とは

では、在宅療養や訪問看護において頻繁に遭遇する指定難病には、どのようなものがあるのでしょうか。一部例をあげてみます。

(1)筋ジストロフィー

デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィーなど、筋肉の退化や筋力低下を引き起こす遺伝性疾患。

(2)アミロイドーシス

アルファ・トランスサイレチン(TTR)などの異常なタンパク質の蓄積により、臓器の機能障害を引き起こす疾患。

(3)ハンチントン病

遺伝性の神経変性疾患であり、運動の制御障害や認知機能の低下を引き起こす。

(4)先天性代謝異常症

フェニルケトン尿症、クランベ病、ホモシスチン尿症など、代謝の異常によって生じる疾患。

(5)遺伝性アンギオオーデマ

遺伝性の浮腫みを特徴とする疾患で、皮膚、呼吸器、消化器などに浮腫みが現れる。

(6)高次脳機能障害

重度の認知機能障害を伴う疾患で、アルツハイマー病や前頭側頭葉変性症などが含まれる。

(7)先天性筋無力症

筋肉と神経の接触部であるニューロミュスキュラー・ジャンクションに異常があり、筋力低下や筋疲労を引き起こす。

これらの指定難病の患者は、在宅療養や訪問看護を必要とする場合があります。しかし、具体的な疾患の頻度や特徴は地域や施設によって異なるため、実際の現場での経験や地域の指定難病リストを参考にすることが重要です。

厚生労働省の補助事業として公益財団法人難病医学研究財団が運営する「難病情報センター」のWebサイトには、指定難病に関する豊富な情報が掲載されています。

https://www.nanbyou.or.jp/

指定難病の利用者への訪問看護のために必要な指定医療機関の届出とは

指定難病の利用者への訪問看護のために必要な指定医療機関の届出とは

指定難病の利用者に対して訪問看護を提供する場合、事前の「指定医療機関の届出」が必要となります。

訪問看護における指定医療機関の届出に関する詳細を説明します。

(1)届出の目的

指定医療機関の届出は、指定難病の患者に対して訪問看護を提供する医療機関が、適切な医療を提供する能力を有していることを確認するためのものです。届出を行うことで、訪問看護が必要な患者に対して適切な支援が行われることを保証することが目的とされています。

(2)届出先

指定医療機関の届出は、指定された都道府県の保健所に提出する必要があります。各都道府県の保健所が、指定医療機関の届出を受け付け、審査を行います。

(3)届出書類

届出には、以下のような書類が必要になります。

・医療機関の概要や設備、スタッフの資格や経験などに関する情報

・医療機関の診療方針や訪問看護の実施体制に関する情報

・担当医師や看護師の情報(資格や経験、研修など)

・訪問看護の実績や実施計画、連携体制などに関する情報

(4)審査と認定

保健所は届出書類を審査し、訪問看護を適切に提供できる能力があるかどうかを評価します。審査の結果、指定医療機関として認定されると、訪問看護を提供するための許可が与えられます。

(5)更新と管理

指定医療機関の認定は期限付きであり、一定期間ごとに更新手続きが必要です。また、指定医療機関は適切な訪問看護の提供を継続する責任があり、保健所に対して適宜報告や連絡を行う必要があります。

指定医療機関としての訪問看護ステーションの役割

指定医療機関としての訪問看護ステーションの役割

指定医療機関としての訪問看護ステーションは、指定難病患者に対して以下のような訪問看護サービスを提供する役割を担っています。

(1)訪問看護の提供

訪問看護ステーションは、指定難病患者の自宅や施設を訪問し、医療や看護のサービスを提供します。訪問看護は、医療処置の実施、薬物管理、傷の処置、健康指導、病状のモニタリングなど、患者の健康管理や療養支援を行います。

(2)医療連携の調整

訪問看護ステーションは、患者の状態やニーズを把握し、医療連携を調整します。指定医療機関、主治医、薬剤師、リハビリテーション専門家などと連携し、総合的な医療ケアを提供します。また、必要に応じて他の医療機関や施設との連携も行います。

(3)経過報告と文書管理

訪問看護ステーションは、患者の状態や訪問看護の内容を適切に文書化し、経過報告を行います。これにより、患者の状態やケアの履歴を管理し、医療チームや関係機関との情報共有や連携をスムーズに行うことができます。

(4)患者や家族への支援と教育

訪問看護ステーションは、患者やその家族に対して、病状や治療の理解、自己管理の方法、日常生活のサポートなど、適切な支援と教育を提供します。これにより、患者と家族がより良い療養環境を築き、生活の質を向上させることが目指されます。

(5)ホームベースケアの推進

訪問看護ステーションは、指定難病患者が自宅で適切な医療を受けられるように療養環境の整備を支援します。これには、医療機器や補助具の提供、バリアフリーの改善、住宅環境の適応などが含まれます。

指定難病の利用者に対する訪問看護の注意点

指定難病の利用者に対する訪問看護の注意点

指定難病の利用者に対して訪問看護を行う場合、以下の注意点に留意する必要があります:

(1)疾患の理解

訪問看護師は、指定難病に関する知識を習得し、疾患の特徴や治療方法、合併症などを理解しておく必要があります。これにより、適切なケアとサポートを提供できます。

(2)治療計画の把握

患者の主治医や医療機関と連携し、患者の治療計画や処方された薬剤について正確な情報を把握します。治療計画に基づいて、適切な医療処置や薬物管理を行います。

(3)患者の状態のモニタリング

訪問看護師は、訪問時に患者の状態を適切にモニタリングします。病状の変化や健康上の問題があれば、適切な対応を行うために迅速に報告や連絡を取ります。

(4)医療機器や薬剤の管理

指定難病においては、患者が特定の医療機器や薬剤を使用する場合があります。訪問看護師は、これらの医療機器の適切な使用方法や薬剤の管理について患者や家族に指導し、安全性を確保します。

(5)家族や介護者へのサポート

指定難病の利用者の家族や介護者も重要なサポート役です。訪問看護師は、家族や介護者に対して、患者のケア方法や病状の把握、ストレス管理などの情報と支援を提供します。

指定難病の利用者に質の高いサービスを提供するための管理者がやるべきこと

指定難病の利用者に質の高いサービスを提供するための管理者がやるべきこと

訪問看護ステーションが指定難病の利用者に対して質の高いサービスを提供するために、管理者は従業員に対して以下のような教育を行うことが重要です。

(1)指定難病の知識と理解の向上

従業員に対して、指定難病に関する基本的な知識や理解を深める教育を実施します。疾患の特徴、病状の進行、治療法、合併症などについての情報を提供し、従業員が利用者のニーズや状況を適切に把握できるようにします。

(2)ケアプランと処置のトレーニング

従業員に対して、指定難病利用者のケアプランや処置に関するトレーニングを提供します。利用者の状態に応じた適切な医療処置やケアの実施方法を学び、実践的なスキルを磨きます。

(3)コミュニケーションスキルの強化

指定難病の利用者とのコミュニケーションは重要です。従業員に対して、共感的なコミュニケーションスキルの強化や情報共有の重要性についてのトレーニングを行います。利用者やその家族とのコミュニケーションを円滑に行い、信頼関係を築けるようにサポートします。

(4)チームワークと連携の促進

訪問看護ステーションでは、看護師や療法士などの複数の従業員が連携してサービスを提供します。管理者は、チームワークと連携の重要性を従業員に伝え、相互の役割や責任を理解させます。チーム内の協力や情報共有を促進し、利用者にとって一貫したケアを提供することを目指します。

(5)最新の情報の提供と継続的な学習の支援

指定難病に関する治療法やケアの進歩は常に進んでいます。管理者は、従業員に対して最新の情報や研修の機会を提供します。定期的な教育プログラムやセミナー、研修会を通じて、従業員の専門知識の更新やスキルの向上を支援します。また、医学雑誌や学術論文などの情報を共有し、従業員が最新の研究やトレンドにアクセスできるようにします。

継続的な学習のサポートにより、従業員は専門性を高め、指定難病の利用者に対してより質の高いサービスを提供することができます。

また、管理者自身も情報収集や学習に積極的に取り組み、従業員への最新情報の提供やサポートを行うことが重要です。

まとめ

今回は、この指定難病をテーマに、その定義から国からの助成制度、訪問看護ステーションの役割、および注意すべき点についてお伝えしました。

長期にわたる治療が必要となるケースが多い指定難病の在宅療養において、訪問看護ステーションは重要な役割を果たしています。

指定難病は、病状が進行しやすく、継続的な医療や看護の支援が不可欠です。訪問看護ステーションの存在は、利用者とその家族にとって心強いサポートとなります。

今回の記事が訪問看護に従事されている看護師や今後在宅医療を志される看護師の参考になれば幸いです。

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石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

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