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訪問看護師が押さえておきたい!慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理と訪問時のケアのポイント

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性の呼吸不全症状から、生活の質を低下させ予後に影響を及ぼす疾患です。

近年では薬物療法や呼吸リハビリテーションをはじめとする積極的な治療介入の効果が期待できるとされています。

また要介護認定を受けていなくても、医師が呼吸リハビリテーションの必要を認めれば、訪問看護を利用して在宅で行うことが可能です。そのため、慢性閉塞性肺疾患(COPD)について理解を深めていくことは非常に重要です。

そこで今回は、訪問看護師が押さえておきたい慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理と訪問時のケアのポイント等についてお伝えします。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコ煙などの有害物質を長期間にわたり吸い込むことによって引き起こされる肺の炎症性疾患で、肺気腫や慢性気管支炎など気流閉塞を伴う機能的な呼気障害を総称しています。

この病気は喫煙習慣が主な要因であり、中高年層で発症しやすい生活習慣病として位置づけられています。40歳以上の人口のうち、約8.6%に相当する約530万人が患者と推定され、死亡原因の9位(男性では7位)にランクインしています。

訪問看護においてもニーズの多い疾患のひとつであり、早期からの介入や継続的な関わりが求められています。

※慢性閉塞性肺疾患(COPD)の訪問看護の役割についてはこちらの記事も参考にしてみてください。

COPD患者の在宅療養に欠かせない訪問看護の役割

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主に喫煙や環境の影響などによって引き起こされる進行性の肺疾患であり、様々な症状がみられます。

1.労作時の呼吸困難

活動や労作時に呼吸が困難になる症状。呼吸が浅くなり、息切れが起きます。

2.慢性の咳嗽・喀痰

持続的な咳嗽と喀痰の症状。常に咳が続き、痰を排出することが一般的です。

3.ビア樽状胸郭

胸郭が正常な形状から円筒状に拡大している状態。胸が膨らんでおり、正常な形状から円筒状に変化します。肺の過膨張を示します。

4.胸鎖乳突筋 (補助呼吸筋)の肥大

補助呼吸筋である胸鎖乳突筋の発達。鎖骨下から頚骨にかけての筋肉が発達し、呼吸の補助として使用されます。

5.呼気の延長

呼気が通常よりも長くかかる症状。呼気が制限され、時間をかけて行われることがあります。

6.口すぼめ呼吸

唇を狭く絞り、呼気を長くかける呼吸法。呼気中の気道抵抗を増加させ、気腫の進行を緩和するため行われます。

7.チアノーゼ

皮膚や粘膜が青紫色に変色する症状。酸素供給の不足により、特に唇や爪の先が青紫色に変色します。

8.呼吸副雑音聴取

肺部での異常な音。喘鳴やラップ音が聴取され、気道の狭窄や気腫による肺組織の変化を示唆します。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行でおこる症状

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の進行でおこる症状

COPDの進行に伴って発生する合併症として肺高血圧症、 右心不全があげられます。これらの状態が進むと利用者の生活の質や予後が悪化する可能性があります。適切な治療と管理が重要です。

(1)肺高血圧症

COPDの進行に伴う肺高血圧症は、肺動脈や小動脈の圧力上昇により発生し、右心不全などの合併症を引き起こします。この状態では、肺循環の抵抗が増加し、患者は呼吸困難、動悸、疲労感などの症状を経験します。

体の末梢にむくみが生じ、特に足首や下肢に腫れが見られることが一般的であり、慢性的な右心不全は静脈圧の上昇と組織への血液供給不足をもたらします。

早期の診断と適切な治療が重要であり、これらの合併症はCOPD患者の予後や生活の質に影響を与える可能性があります。

(2)右心不全

COPDの進行に伴う右心不全は、肺高血圧症や肺性心病により右心室の負荷が増加し、右心室が衰弱する状態を指します。この状態では、体の末梢にむくみが生じ、特に足首や下肢に腫れが見られます。

患者は呼吸困難、急激な疲労感、拡大した肝臓などを経験し、慢性的な右心不全は静脈圧の上昇と全身への血液供給不足を引き起こします。早期の診断と効果的な治療が重要であり、これらの症状が進行すると患者の生活の質や予後に影響を及ぼす可能性があります。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療方法

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療の基本は禁煙であり、病状の進行を遅らせたり合併症を予防するために最も重要です。その他にも、薬物治療や呼吸リハビリテーション、在宅酸素療法などが治療方法として挙げられます。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物治療

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の薬物治療

COPD自体を薬物療法で治癒することはできませんが、薬を使用することで症状を軽減することができます。

気管支拡張薬

気管支拡張薬は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において主要な薬物療法の一環として使用されます。これらの薬物は気道の拡張を促し、気管支の狭窄を緩和することで呼吸機能を向上させます。β2刺激薬や抗コリン薬などが含まれ、それぞれ異なる作用機序を有しています。これにより、気道の平滑筋を弛緩させ、気流の抵抗を減少させます。

気管支拡張薬の主な効果は呼吸困難の緩和と運動時の気道拡張促進であり、患者の生活の質を向上させることが期待されます。医師の指導のもとで正確な投与が行われ、患者の症状や状態に応じて適切な種類や用量が選択されます。

ステロイド薬

ステロイド薬は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において炎症の制御に効果的な薬物療法の一環として利用されます。これらの薬物は体内の炎症反応を抑制し、気道の腫れや狭窄を減少させることで呼吸困難や咳、喀痰などの症状を軽減します。

主に吸入ステロイドが使用され、局所的に作用するため全身の副作用が少なく、気道の炎症に的確に働きかけることが可能です。ステロイド薬はCOPD患者の安定した状態の維持や急性悪化の予防に役立ち、医師の適切な処方と定期的なモニタリングが必要です。

去痰薬

去痰薬は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において気道内の粘液や痰を除去するために使用される薬物です。これらの薬物は粘液の排出を促進し、気道を清潔な状態に保つことで呼吸機能の改善を目指します。去痰薬には粘液を薄くする作用があり、これにより気道の閉塞を軽減し、患者が呼吸しやすくなります。

特に慢性気管支炎や気管支拡張薬だけでは効果が不十分な場合、去痰薬が組み合わせて処方されることがあります。医師による適切な処方と患者の正しい使用が重要であり、これによって症状の緩和や生活の質の向上が期待されます。

抗菌薬

抗菌薬は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において細菌感染症が原因で症状が悪化する場合に使用される薬物です。これらの薬物は細菌の増殖を抑制し、呼吸器の感染を制御することで炎症を減少させ、症状の改善を促します。

特に急性増悪時や痰の中に細菌が検出される場合、抗菌薬が処方されることがあります。ただし、抗菌薬の乱用は耐性菌の発生を促進する可能性があるため、適切な診断と医師の指導に基づいて使用されるべきです。抗菌薬は感染症の制御に寄与し、患者の症状緩和や生活の質の向上に寄与することが期待されます。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の呼吸リハビリテーション

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の呼吸リハビリテーション

呼吸リハビリテーションは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する包括的なアプローチの一環であり、呼吸筋のストレッチから四肢・体幹の筋力増強まで様々なトレーニングが行われます。

歩行訓練や呼吸法(口すぼめ呼吸、腹式呼吸)の指導、排痰訓練、呼吸筋訓練、トレッドミルや自転車エルゴメーターを活用した運動療法、呼吸に負担をかけない日常生活動作の指導・練習などが含まれます。

このリハビリテーションは、医師、看護師、理学療法士、作業療法士などの医療関係職が協力して行います。

各専門分野からのアプローチにより、患者の呼吸機能に影響を与えている様々な要因に対処し、制限された機能を改善・維持することで、日常生活動作や生活の質の向上を促進します。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の在宅酸素療法

低酸素血症(動脈血酸素分圧55Torr以下の者、あるいは60Torr以下で睡眠中や運動負荷時に著しい低酸素症をきたす者)の場合、在宅酸素療法(HOT)が適応されます。

在宅酸素療法は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対して低酸素血症を改善し、酸素供給を増加させることで生活の質を向上させる効果があります。特に安静時や睡眠中、運動時における低酸素症を緩和し、呼吸機能の向上を図ります。

在宅酸素療法は医師の判断に基づいて実施され、適切な酸素流量と使用時間が設定されます。これにより、患者は日常生活においてより活動的になり、持続的な酸素療法を通じて患者の健康状態の安定と向上を促進します。

訪問時の観察ポイント

訪問時の観察ポイント

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の訪問時のケアは重要であり、訪問看護師は感染予防、呼吸サポート、禁煙指導などを通じて患者の健康管理を支え、早期の症状変化や悪化を把握し、適切なケアを提供することで患者の生活の質を向上させ、持続可能な健康状態を促進します。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の利用者への訪問時の観察ポイントは、以下になります。

・呼吸数、呼吸状態 (努力性呼吸の有無)

患者の呼吸数を数え、努力性呼吸の有無を観察します。急激な呼吸数の増加や努力性呼吸は悪化のサインとなります。

・呼吸困難、喘鳴・呼吸副雑音、チアノーゼの有無

患者が呼吸に苦しんでいるかを確認し、喘鳴や呼吸副雑音の有無、およびチアノーゼ(青紫色の皮膚や粘膜)の有無を観察します。

・SpO2

酸素飽和度(SpO2)を測定し、患者の酸素レベルを確認します。低い酸素飽和度は低酸素血症を示唆する可能性があります。

・意識状態(CO2ナルコーシスの傾眠傾向)

患者の意識状態を評価し、CO2ナルコーシスによる傾眠傾向があるかどうかを注意深く観察します。

・感染徴候(発熱、頻脈)、咳嗽・喀痰の増加の有無

発熱や頻脈などの感染徴候を確認し、咳嗽や喀痰の増加があるかどうかを観察します。これは感染の可能性を示す兆候です。


これらの観察ポイントは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の状態変化や悪化の早期発見に役立ち、訪問看護師が患者の健康状態を的確に評価できるようにします。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の訪問時のケアのポイント

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の訪問時のケアのポイント

・手洗い・含嗽の徹底

呼吸器感染症は病状を悪化させるため、利用者に手洗いと含嗽を指導し、感染リスクを低減させます。

・禁煙指導が重要

利用者に対して禁煙の重要性を強調し、喫煙を控えるように支援します。

・冬季の 室内の湿度は50%以上に

冬季は湿度が下がり、気道の線毛運動が低下するため、室内の湿度を50%以上に保つようアドバイスし、呼吸器症状の緩和を図ります。

・水分の補給

喀痰喀出をしやすくするために水分の補給 (めやす1日1,500mL)の重要性を伝え、脱水を予防するための指導を行います。

・栄養指導

低栄養状態は生命予後にも影響するため、 栄養バランスのとれた食事や食事の回数について指導し、体力維持と免疫力向上をサポートします。

・外出を勧める

在宅酸素療法はQOL向上をめざすものであるため、利用者に感染予防を図りながら適切な範囲での外出を奨励し、運動や社会的な活動を継続することを支援します。

・ADL(日常生活動作)を低下させない

利用者ができるだけ日常生活動作を維持できるようにサポートし、リハビリテーションにつなげます。

・呼吸リハビリテーションに取り組む

呼吸リハビリテーション (腹式呼吸法、口すぼめ呼吸法、 ストレッチ、活動、排痰法) への積極的な参加を奨励し、呼吸機能の維持や向上を促進します。

・健康管理表をつける

咳・痰・体温などの健康管理表をつけ、日常の症状や体調の変化をモニタリングできるようにサポートします。

まとめ

訪問看護師が押さえておきたい慢性閉塞性肺疾患(COPD)の管理と訪問時のケアのポイント等についてお伝えしました。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の利用者に訪問看護が早期に入ることで、安心して療養生活を送る支援や呼吸機能低下に伴う自己管理を促進することが可能になります。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

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