重症筋無力症(MG)は、運動神経と骨格筋の結合部の信号伝達が障害されることにより、球や手足の筋肉を繰り返し動かすと筋肉がすぐに疲れ、力が入らなくなる病気です。
重症筋無力症(MG)は、厚生労働省が指定する特定疾患(指定難病)であり、訪問看護においても関わることのある病気の一つです。
今回は、重症筋無力症(MG)をテーマにその特徴から療養生活における支援内容やアセスメント項目など重症筋無力症(MG)の看護をおこなう上で知っておきたい内容をお伝えします。
重症筋無力症(MG)とは
重症筋無力症 (myasthenia gravis:MG) は、自己免疫疾患の一種で、主な症状は骨格筋の易疲労性です。
神経と筋肉がつながる部分である筋肉側後シナプス膜上のアセチルコリン受容体が、自己免疫反応によって障害されます。そのため、神経刺激が筋肉に十分に伝わらず、筋肉が疲れやすくなります。
この病気の自己免疫反応のメカニズムはまだよくわかっていませんが、胸腺の過形成や胸腺腫が合併症として起こることが多いため、胸腺の異常が関与している可能性が考えられています。ただし、詳細なメカニズムはまだ完全に解明されていません。
重症筋無力症(MG)の疫学
重症筋無力症(MG)の有病率は人口10万人あたり23.1人で、過去10年間で患者数は約2倍に増加しています。男女比は1:1.7で、女性の方が多くなっています。
発症年齢は、女性では30歳代から50歳代にかけてなだらかなピークがありますが、男性では50歳代から60歳代にピークが見られます。
また、15歳以下で発症する場合を小児期発症重症筋無力症と呼びます。
重症筋無力症(MG)の症状
重症筋無力症(MG)のよく見られる初期症状は、外眼筋の麻痺による複視や眼瞼下垂などの眼の問題ですが、四肢の筋肉の易疲労性(特に近位筋)や嚥下障害、話し方の障害など全身に起こる症状で始まる場合もあります。
これらの症状は、一日の中で昼から夕方にかけて悪化することが特徴的です。
また、状態が急激に悪化し、嚥下困難や気道閉塞、呼吸困難に陥ることがあります。これをクリーゼと呼びます。感染症や手術などが誘発要因として多いため、生命に関わる緊急の対応が必要です。
免疫療法を中心とした治療法の進歩により、多くの患者が日常生活を支障なく送れるようになってきました。しかし、治療には多くの方法が組み合わせて使われることがあり、病気の状態や治療法、副作用などについて正しい理解が必要です。
重症筋無力症(MG)の治療法
重症筋無力症(MG)の治療では、胸腺摘出手術や副腎皮質ステロイド薬、カルシニューリン阻害薬(免疫抑制薬)を中心に免疫療法が行われます。
具体的な治療法としては、以下の7つが挙げられます。
(1)コリンエステラーゼ阻害薬
神経筋接合部でのアセチルコリンの分解を阻害することで、アセチルコリンの濃度が上昇し、筋無力症状が改善されます。
この治療は根本的な治療ではなく、症状を和らげる対症療法です。最初に試されることが一般的ですが、単独では効果が限られるため、副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬と組み合わせて免疫療法が行われることがあります。
昔から使われている内服薬には、メスチノン、マイテラーゼ、ウブレチドなどがありますが、副作用が比較的少ないメスチノンが一般的に使用されます。副作用としては、腹痛、下痢、流涎、発汗、徐脈、血圧低下、筋肉のぴくつきなどが報告されています。
(2)拡大胸腺摘除術
胸腺は免疫系の発達に重要な臓器であり、小児期にはその役割が特に重要ですが、成人になると退縮していきます。重症筋無力症では、胸腺が自己抗体の産生を開始し、病気の発症に関与します。
また、胸腺腫(胸腺の腫れ)が合併している場合、胸腺腫は重症筋無力症の原因の1つと考えられています。そのため、胸腺腫を持つ患者には胸腺摘出手術(拡大胸腺摘除術)が行われ、胸腺腫と残存する胸腺組織を可能な限り取り除きます。
これにより自己抗体の産生を抑制します。胸腺腫に対しては、場合によっては放射線療法や化学療法も併用されます。胸腺腫がない場合でも、拡大胸腺摘除術を行うかどうかは状況に応じて検討されます。
(3)副腎皮質ステロイド
基本的な免疫療法です。自己免疫反応による自己抗体の産生を抑制することで、神経と筋肉の間の伝達が改善されます。通常は、経口でプレドニゾロンを5~10㎎/日服用し、できるだけ早く5㎎/日以下に減らすことを目指します。
この治療には他の免疫療法との組み合わせが必要な場合もあります。ステロイドを多く投与すると、一時的に筋無力症状が悪化することがあることに留意してください(初期増悪)。
また、メチルプレドニゾロンの静脈内投与(通常、500~1000㎎/日、3日間のパルス療法)は効果的ですが、初期増悪や球麻痺症状の悪化には注意が必要です。
副作用としては、感染症のリスク増加、糖尿病、骨粗鬆症(骨折や骨壊死のリスク)、脂質異常、胃潰瘍、白内障、緑内障などがあります。
(4)免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬)
自己免疫反応による自己抗体の生成を抑制するために、ステロイドと併用します。病気の初期段階から積極的に使用することで、筋力の改善とステロイドの減量効果が期待されます。
シクロスポリンやタクロリムスが一般的に使用されます。通常の投与量は、シクロスポリンが体重1㎏あたり1日に5㎎、1日2回服用し、タクロリムスが1回3㎎を1日1回、夕食後に服用します。
以下の副作用には注意が必要です。
シクロスポリンの副作用
感染症、血圧上昇、血糖上昇、歯肉の肥厚、多毛など
タクロリムスの副作用
感染症、血糖上昇、白血球の増加、筋の痙攣など
(5)免疫グロブリン療法
自己抗体の活動を抑制し、抗体の生成を抑えると考えられています。急性増悪やクリーゼの際に使用され、軽度の症例や眼筋型の患者には適用されません。
通常、5日間にわたる点滴療法が行われます。一時的な副作用としては、頭痛や発熱、軽度の高血圧などが報告されています。点滴速度はゆっくりと調整されます。血液が濃くなりやすいため、特に脳梗塞や心筋梗塞の既往を持つ患者には注意が必要です。
(6)血液浄化療法
人工透析のような装置を使用して、血中から抗アセチルコリン受容体抗体などの自己抗体を除去します。この方法は免疫グロブリン療法と同様に、急性増悪やクリーゼの際に使用されます。
血液を体外に取り出し、浄化した後に体内に戻す方法で、1回の療法を5~7回行います。この治療では血管にカテーテルを挿入するため、出血や血栓、感染といった合併症が生じる可能性があります。また、血液を体外に取り出す際には低血圧や気分不良、呼吸困難が起こることがあります。
(7)補体阻害薬
体内には免疫システムの一部として補体系があります。補体系が活性化すると、神経と筋肉の接合部が破壊されることがあります。補体阻害薬は、活性化した補体の一部と結合してその活動を抑制し、症状を改善します。
2017年から、抗アセチルコリン受容体抗体陽性の全身型の重症筋無力症患者に対して、従来の治療(1)~(6)が効果がみられない場合に、補体阻害薬であるエクリズマブの使用が可能になりました。
ただし、この薬を使用すると特定の細菌(髄膜炎菌など)に感染しやすくなるリスクがあります。そのため、治療を開始する前に髄膜炎菌ワクチンなどを接種する必要があります。
重症筋無力症(MG)の症状によるADLの障害
重症筋無力症(MG)の症状により、患者は日常生活(ADL)にさまざまな問題が生じます。
(1)眼症状や四肢筋力低下・脱力により、歩行が困難になることがあります。
(2)腕が上がらず歯磨きができないことがあります。
(3)顔面筋の障害や嚥下困難・構音障害により、普通の食事が噛みにくく、のみ込みにくいことがあります。
(4)声が鼻に抜けて話しづらいことがあります。
重症筋無力症(MG)は、症状が日中で変化し、繰り返しの動作によって悪化する一方、休息を取ると症状が軽くなる特徴があります。そのため、最初は周囲からは疲れやすいと見られ、患者自身もつらい状況に置かれることがあります。
特に症状が重い場合、日常生活動作(ADL)が著しく低下することがよくあります。この状態で動けなくなるのではないかと心配することもあり、精神的な苦痛を感じるケースもあります。
重症筋無力症(MG)の症状を評価する「MG-ADLスケール」
重症筋無力症(MG)の症状を評価するために使うツールの1つに、「MG-ADLスケール」があります。このスケールは、患者の身体機能や日常生活動作(ADL)に対する影響を測定し、MGの症状の重症度を客観的に評価するのに役立ちます。
MG-ADL スコア
0点 | 1点 | 2点 | 3点 | |
---|---|---|---|---|
会話 | 正常 | 間欠的に不明瞭、もしくは鼻声 | 常に不明瞭もしくは鼻声、しかし聞いて理解可能 | 聞いて理解するのが困難 |
咀嚼 | 正常 | 固形物で疲労 | 軟らかいもので疲労 | 経管栄養 |
嚥下 | 正常 | まれにむせる | 頻回にむせるため、食事の変更が必要 | 正常 |
呼吸 | 正常 | 体動時の息切れ | 安静時の息切れ | 経管栄養 |
歯磨き・櫛の使用の障害 | なし | 努力を要するが休息を要しない | 休息を要する | 正常 |
いすからの立ち上がり障害 | なし | 軽度 ときどき腕を使う | 中等度、常に腕を使う | 人工呼吸器を使用できない |
複視 | なし | あるが毎日ではない | 毎日起こるが持続しない | 常にある |
眼瞼下垂 | なし | あるが毎日ではない | 毎日起こるが持続しない | 常にある |
重症筋無力症(MG)に対する医療費助成制度
重症筋無力症は国の指定難病および小児慢性特定疾病(18歳未満)に指定されているため、保健所に申請をして、その診断基準と重症度分類を満たすと、特定医療費(指定難病)受給者証が交付され、世帯の収入に応じて医療費の自己負担分の一部が公費から助成されます。
重症度分類をみたさなくても月ごとの指定難病に関する医療費の合計が一定額以上の月が1年に3ヶ月以上ある場合は、軽症者特例として医療費が助成されます。
受給者証は1年おきに更新が必要となります。
重症筋無力症患者に特有の症状とその対処法
重症筋無力症患者の看護や症状の管理を行う際には、この疾患の特徴や治療法をよく理解することが重要です。
重症筋無力症患者に特有の症状とその対処法
主な症状 | 対処法 |
---|---|
嚥下困難 咀嚼困難 |
調理や食品選択の工夫をして、バランスの取れた満足できる食事が摂れるようにする
・ご飯は軟らかめに炊く、あるいはお粥やおじやにする ・野菜や肉・魚類は軟らかく煮てとろみをつける ・お茶や汁物などの水分にもとろみをつける ・硬いものや刺激物を避ける ・症状の強いときはミキサー食にするなど形態をさらに工夫する、また経管栄養の適用についても相談する ・食べすぎると脱力などの症状が出やすいので腹八分目を心がけるよう促す |
眼症状 (複視、眼瞼下垂) |
安全に生活できるように配慮し、眼を使わないことによる筋萎縮を防ぐ
・ベッドサイドなど生活範囲の環境を整える ・段差や階段などに気をつけて歩行する、手すりを使用するよう促す ・初期は複視による頭痛やめまいを避けるため眼帯の使用などにより片目を使うようにするが、筋萎縮を避けるため、慣れてきたらなるべく両目で見るように進めていく ・眼瞼下垂の悪化を防ぐためにサングラスを使用する ・薬が効いているときに眼症状のリハビリテーションを行う (振り子やメトロノームの動きを眼球だけで追従するなど外眼筋のリハビリテーション) |
呼吸困難 | 苦痛を軽減しながら症状の悪化を防ぐ
・腹式呼吸を勧める. 症状の軽いときに口すぼめ呼吸、風船を膨らませるなど呼吸リハビリテーションを行う ・喀痰の喀出困難に対してはネブライザーや、体位ドレナージ、スクイージングなど排痰を促す技術を用いる ・症状の重篤なときは人工呼吸器装着や気管切開の適応となる |
四肢筋力低下・脱力 | 安全 安楽に生活できるよう配慮し、症状の悪化を防ぐ
・ベッドサイドなど生活範囲の環境を整える ・障害された部位に応じたリハビリテーションを調子のよいときに行う ・障害されている動作に応じて、援助を行ったり自助具を用いて患者が自分で行えるよう工夫する |
重症筋無力症患者患者へのアセスメント項目とは
重症筋無力症(MG)の症状は日常生活に直接的な影響を与えます。どのような症状が現れているか、それが患者の日常生活や心理・社会的側面にどのように影響しているかを詳しく評価することが重要です。また、治療の副作用とそれがどのように影響するかも注意深く観察する必要があります。
さらに、MGの特徴である日内変動を捉えるためにも、継続的な観察が必要です。
それでは、重症筋無力症患者へのアセスメント項目について(1)身体的側面、(2)日常生活の側面、(3)認知・心理的側面、(4)社会・経済的側面からみていきます。
(1)身体的側面
重症筋無力症(MG)の重症度や現れている症状、症状による苦痛の程度をアセスメントします。また、ステロイド薬や免疫抑制薬による副作用の有無やその程度もアセスメントします。
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
病歴 | ・他疾患の治療のために使用している薬剤 |
検査データ | ・各検査項目のデータや所見の異常の有無・程度を把握する |
1.MGに特有の検査 ① 血液検査 |
・・抗アセチルコリン受容体 (AchR) 抗体、抗筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK) 抗体、他の自己免疫性疾患の自己抗体 |
②薬理学的検査 | ・エドロホニウム塩化物静注負荷試験 |
③電気生理学的検査 | ・反復誘発筋電図 |
④画像検査 | ・胸部X線、胸部CT/MRI |
2.症状や副作用のアセスメントに必要な検査 ①血液検査 |
・白血球数、赤血球沈降速度、リンパ球数、CRP、総タンパク、アルブミン、血糖値、HbA1c |
②骨・関節・筋系 | ・X線、CT、関節可動域 (ROM)、徒手筋力テスト (MMT) |
③呼吸・循環器系 | ・胸部X線、胸部CT/MRI、呼吸機能、血液ガス分析、心電図 |
④消化器系 | ・X線造影、内視鏡、腹部CT/MRI |
⑤尿検査 | ・尿量、尿糖、尿中白血球 |
バイタルサイン | ・体温、脈拍、血圧、呼吸数、Spo2 |
徴候・症状 | ・各症状の有無と程度を把握する. とくにMGに特有の症状については日内変動についても十分アセスメントする |
① MG に特有の症状 | ・眼瞼下垂、眼球運動障害、四肢筋力低下、咀嚼障害、嚥下障害、構音障害、呼吸困難、易疲労感 |
② 副作用の症状 | ・満月様顔貌、中心性肥満、月経異常、不眠、にきび、多毛、情緒不安定、抑うつなど |
備考 | ・MG患者の約85% に抗 AchR抗体がみられる。また、他の自己免疫性疾患を合併していることがある。
・コリンエステラーゼ阻害薬であるエドロホニウム塩化物の負荷により症状が改善することが診断基準の1つ。 ・筋の疲労現象を証明する。 ・胸腺過形成や胸腺腫を合併していることが多い。 ・副作用として、ステロイド薬には感染症、糖尿病、消化性潰瘍、精神障害、骨粗鬆症、緑内障など、免疫抑制薬には感染症、腎障害、高血圧などがあり、 関連する検査項目の観察が必要。 |
(2)日常生活の側面
重症筋無力症(MG)の症状や治療の副作用が日常生活にどのような影響を与えているかをアセスメントします。
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
環境 | ・家屋の状況 (段差の有無、手すりの設置状況など) |
食事 | ・食事形態 内容、摂取量、咀嚼や嚥下の様子 |
排泄 | ・排尿回数、排便回数、便の性状、色、下剤や緩下剤の使用の有無 |
睡眠 | ・睡眠時間、寝つきの状態、中途覚醒の有無、睡眠薬の使用の有無 |
清潔 | ・入浴や洗髪頻度、歯磨きの頻度 手洗い・うがいの習慣 |
動作 活動 | ・食事 更衣、整容、入浴、排泄の各動作、移動についてどれくらい障害されているか、自分でどの程度できるか |
趣味 余暇活動 | ・どのように余暇を過ごしているか できなくなった趣味はないか |
セルフケア能力 | ・日常生活を調整しながら治療を継続する能力の有無、程度
・症状に対処できているか、増悪因子に注意して生活できているか |
備考 | ・複視などの症状がある場合階段や段差で転倒しやすい
・日常生活動作についてはMG-ADLスコアも活用する。 |
(3)認知心理的側面
患者の本来の心理的特性と疾患や治療が心理面に与える影響をアセスメントします。
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
疾患や治療の理解およ受け止め | ・もっている理解力の程度
・疾患と治療法、副作用、増悪因子についてどのように理解し、どう受け止めているか |
心理状態 | ・ショック、不安、怒り、抑うつなどの有無と程度 |
価値・信念 | ・何に価値を置き、何を大切にしているか、信仰する宗教は何か |
対処能力 | ・これまで問題にどのような対処 (コーピング)方法をとってきたか |
(4)社会経済的側面
重症筋無力症(MG)とその治療が社会や経済状態に与える影響をアセスメントします。
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
役割 | ・職場での役割・地位、家庭内での役割 |
職業 | ・就業の有無、 仕事内容 仕事量 勤務時間、通勤方法 時間、職場環境、人間関係、疾患による職業への影響の有無・程度 |
家族構成 | ・構成員 |
家族の状態 | ・家族の疾患や治療の理解 受け止め、協力体制 |
キーパーソン | ・家族または周囲の人のなかでのキーパーソンは誰か |
経済状態 | ・家計の主な担い手はだれか、疾患による経済状態への影響、医療保険の種類、民間保険の加入の有無、医療費の支払い能力の状態 |
ソーシャルサポート | ・友人・知人・同僚・患者会などのサポートの有無、利用できる社会資源 |
重症筋無力症(MG)の療養生活における教育的支援および援助
重症筋無力症(MG)は、治療によって症状が軽くなる患者が増えていますが、一部の患者は長期間にわたって何らかの症状を抱えたまま治療を続けることがあります。
MGの特徴や治療の副作用などについて、患者と家族に説明し、正しい理解を得ることが重要です。
(1)内服薬の管理
ステロイド薬や免疫抑制薬を服用する際は、医師の指示に従って定期的に内服することが重要です。
副作用を心配して自己判断で中断したり、量を減らしたりしないように指導します。自分で判断すると症状が悪化し、結果的に内服量が増えることもありますので、何か疑問や心配があれば医師や看護師、薬剤師に相談するように説明します。
(2)憎悪因子
また、生活の中で増悪要因となるものも存在します。患者に対して、疾患の特徴や治療の副作用、増悪要因などについてよく説明し、患者自身が症状を理解できるようにすることが重要です。
重症筋無力症の増悪因子とその対策
憎悪因子 | 対策 |
---|---|
感染症 | 感染症を予防する
・帰宅時の手洗いやうがいの励行 |
疲労・ストレス | 疲労やストレスをためないようゆったりとした生活を心がける
・仕事の忙しいときは休日に十分な休養をとる |
手術・外傷 | 外傷を避ける
•手術が必要な場合は、 疾患のことを伝え、 MGの主治医にも相談する. 連絡を取り合って行ってもらうことが望ましい |
妊娠・出産 | 安心・安全に妊娠・出産できる
・妊娠を考えている場合、その時期について普段から主治医に相談しておく |
薬剤 | 薬剤による増悪が起こらないよう注意する
・筋弛緩薬、睡眠薬 精神安定薬、抗菌薬、抗不整脈薬、降圧薬、抗コリン薬などのなかに、MGの症状増悪をきたすものがある.主治医から処方された以外の薬を内服するときは、必ず事前に相談する. 市販薬も同様である |
特にステロイド薬や免疫抑制薬を使用している場合、感染症を起こしやすく、それが急激に悪化し呼吸困難や嚥下障害を引き起こすクリーゼのきっかけになる可能性があるため、注意が必要です。
ただし、過度に神経質になるとストレスが増えることにもつながるので、患者や家族が過度に負担を感じないように配慮することも重要です。
まとめ
今回は、重症筋無力症(MG)をテーマにその特徴から療養生活における支援内容やアセスメント項目など重症筋無力症(MG)の看護をおこなう上で知っておきたい内容をお伝えしました。
重症筋無力症(MG)の症状は患者の生活に大きな影響を与え、自身の状況に対して不便やもどかしさ、不安を感じることがあります。また、治療が長期にわたる場合もあります。
看護師は患者の心理状態を把握し、適切な精神的支援を提供する役割が重要です。患者の心情に共感し、個々に適したコーピング方法を指導することで、患者の治療へのモチベーションを維持し、安定した療養生活を送ることができるよう支援します。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。