令和6年度診療報酬改定において訪問看護ステーションの機能強化を図る観点から「訪問看護管理療養費」の月の2日目以降の訪問の場合の要件及び評価が見直されました。
今回は、令和6年度診療報酬改定で新設された「訪問看護管理療養費1」及び「訪問看護管理療養費2」についての算定要件と留意点についてお伝えします。
訪問看護管理療養費とは
「訪問看護管理療養費」とは、安全に訪問看護サービスを提供できる体制を整えている訪問看護ステーションが算定できる療養費です。
訪問看護計画書や訪問看護報告書の提出等、主治医と連携を取りながら利用者に関わる訪問看護の実施に関する計画的な管理を継続して行った場合、通常算定する「訪問看護基本療養費」に加えて算定することができます。
訪問看護管理療養費の算定要件
・安全な提供体制が整備されていること※
・主治医に訪問看護計画書・訪問看護報告書を書面または電子的な方法で提出していること
・主治医との連携を確保していること
・指定訪問看護の実施に関する休日、祝日等も含めた計画的な管理を継続して実施していること
※安全な提供体制の整備とは以下の要件が含まれています。
・安全管理に関する基本的な考え方、自己発生時の対応方法が文書化されていること
・訪問先等で発生した事故、インシデント等が報告され、その分析を通した改善策が実施される体制が整備されていること。
訪問看護管理療養費の見直し内容
訪問看護管理療養費は、機能強化型1~3と機能強化型以外で区分されています。
今回の改訂では、訪問看護ステーションの機能強化を図る観点から、訪問看護管理療養費の要件及び評価の見直しが行われました。
月の初日の訪問の場合の訪問看護管理療養費の見直し
訪問看護管理療養費の区分 | 改定前 | 改定後 |
---|---|---|
機能強化型訪問看護管理療養費1 | 12,830円 | 13,230円 |
機能強化型訪問看護管理療養費2 | 9,800円 | 10,030円 |
機能強化型訪問看護管理療養費3 | 8,470円 | 8,700円 |
1~3以外の場合 | 7,440円 | 7,670円 |
※機能強化型訪問看護ステーションについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
今回の改訂で新設された訪問看護管理療養費(1・2)とは
今回の改訂では、多様化する利用者や地域のニーズに対応するとともに質の高い効果的なケアが実施されるよう、月の2日目以降の訪問の場合の要件及び評価の見直しも行われました。
具体的には、「訪問看護管理療養費1」と「訪問看護管理療養費2」が新設され、月の2日目以降の訪問において「同一建物居住者の割合が高い、または重度者対応割合が低い」訪問看護ステーションの算定費が従来の1日3,000円から1日2,500円に引き下げられました。
月の2日目以降の訪問の場合の訪問看護管理療養費
改訂前 | 改定後 | ||
---|---|---|---|
訪問看護管理療養費 (月の2日目以降の訪問の場合) |
3,000円/日 | 訪問看護管理療養費1 | 3,000円/日 |
訪問看護管理療養費2 | 2,500円/日 |
訪問看護管理療養費(1・2)の施設基準とは
今回、新設された「訪問看護管理療養費1」と「訪問看護管理療養費2」の施設基準は以下になります。
訪問看護管理療養費1の施設基準
訪問看護ステーションの利用者のうち、同一建物に住む利用者(同じ建物内に住んでいて、同じ日にその訪問看護ステーションから訪問看護を受ける利用者)である割合が7割未満であり、次のいずれかに該当することが必要です。
1. 特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等の利用者および特掲診療料の施設基準等別表第八に掲げる利用者に対する訪問看護について、相当な実績を有していること。
2. 精神科訪問看護基本療養費を算定する利用者のうち、GAF尺度による判定が40以下の利用者が月に5人以上いること。
訪問看護管理療養費2の施設基準
訪問看護ステーションの利用者のうち、同じ建物に住んでいる利用者が占める割合が7割以上であるか、またはその割合が7割未満でも、上記の条件(1または2)をどちらも満たしていないこと。
参照元:厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要【在宅(在宅医療、訪問看護)】」 P31
【5月28日発表】訪問看護管理療養費の届出に関する経過措置とは
訪問看護管理療養費を算定するには、すべての訪問看護ステーションで届出が必要です。
2024年3月末時点で訪問看護事業を行っている事業所に関しては、2024年9月末までの間は「療養費1」の施設基準を満たしているとみなす経過措置が設けられていました。
しかし、6月1日以降の算定にあたっては、経過措置の対象事業所も含むすべての事業所が改めて届出を行う必要があり、関係者から多くの疑問が寄せられていました。
書類作成や事務手続きに一定の期間が必要なことから、厚生労働省は、経過措置対象事業所の取り扱いを見直し、7月1日までに届出を行えば、6月1日からの「療養費1、2」の算定が可能であることを、5月28日の事務連絡で明記しました。
書類作成や事務手続きに一定の期間が必要なことから期限を延長した
経過措置と届出の関係についても、以下のとおり整理を行いました。
①経過措置の適用で6月1日から9月末まで「療養費1」を算定する場合であっても7月1日までに「療養費1」の届出を行う必要がある
②経過措置対象であっても「療養費2」の届出をした場合は、経過措置期間中の「療養費1」の算定は不可となり、届出以降は「療養費2」を算定する
③経過措置終了時点で届出内容に変更がない場合は10月1日までに改めて届出を行う必要はない
参照元:厚生労働省保険局医療課 事務連絡「令和6年度診療報酬改定で新設された「訪問看護管理療養費1」及び「訪問看護管理療養費2」に係る届出について」 令和6年5月 28 日
※別紙様式9 訪問看護管理療養費に係る届出書はこちらよりダウンロードできます。
まとめ
今回は、令和6年度診療報酬改定で新設された「訪問看護管理療養費1」及び「訪問看護管理療養費2」についての算定要件と留意点についてお伝えしました。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。