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訪問看護事業のUSP(独自の強み)を実現する「機能強化型訪問看護ステーション」とは

近年、訪問看護ステーション業界では、大規模な資本の進出や既存事業所の出店増加により、競争が激化し、これまでのような成長が困難な状況が生じています。

実際に多くの訪問看護ステーションが存続に苦しみ、倒産や吸収合併も増加しています。

これらの状況を打破し更なる成長を目指すためには、他の事業所には無い独自の強み(USP)を持ち、地域から確実に指名されるステーションになる必要があります。

その方法の一つとして挙げられるのが、国の保険算定で高い評価を受ける「機能強化型訪問看護ステーション」です。

今回は、「機能強化型訪問看護ステーション」をテーマにその概要から他ステーションとの差別化のポイント、機能強化型の要件を満たすための課題と対策などについてお伝えします。

目次

訪問看護事業におけるUSP(独自の強み)とは?

訪問看護事業におけるUSP(独自の強み)とは、

USP(Unique Selling Proposition)とは、顧客から見た自社独自の「売り・強み」という意味であり、マーケティングにおいての差別化戦略の土台を支える考え方の一つです。

訪問看護事業においてこのUSPを考えるにあたりポイントとなるのが「国の保険算定における評価」です。

訪問看護ステーションは、医療保険や介護保険制度により報酬が支払われる、いわゆる「制度ビジネス」になるため、国の保険算定における評価が高い分野で事業を展開することは、ステーションの特徴・強みとなるとともに収益面においても大きなプラスとなります。

この事業形態として明確な指標となるのが「機能強化型訪問看護ステーション」です。

では、この機能強化型訪問看護ステーションについて詳しく見ていきましょう。

(1)機能強化型訪問看護ステーションとは

(1)機能強化型訪問看護ステーションとは

今回説明する、「機能強化型訪問看護ステーション」は、医療保険による訪問看護の形態で、機能強化型訪問看護管理療養費の届出を行っている訪問看護ステーションのことを指します。

「機能強化型訪問看護ステーション」は次の3種類に設定されていて、各種類において要件の数値が設定され、それに応じてプラスの報酬が付与されることになります。

1.機能強化型1(機能強化型訪問看護管理療養費1)

2.機能強化型2(機能強化型訪問看護管理療養費2)

3.機能強化型3(機能強化型訪問看護管理療養費3)

機能強化型1と2は、「ターミナルケアの実施や、重症児の受入れ等を積極的に行う手厚い体制を評価」され、機能強化型3は「地域の訪問看護の人材育成等の役割を評価」されています。

以下の表にあるように機能強化型訪問看護ステーショになるためには、次のようなさまざまな条件を満たす必要があります。

機能強化型訪問看護ステーションの要件等

機能強化型訪問看護ステーションの要件等

参照元:厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要(在宅医療、訪問看護)」P22

(2)機能強化型訪問看護ステーションの事業所数はまだ少ない

(2)機能強化型訪問看護ステーションの事業所数はまだ少ない

厚生労働省保険局の発表によると、令和5年度の機能強化型訪問看護ステーションは3種類を合わせても『992事業所』で、『全事業所の6.4%』しかありません。

こうしたことから、機能強化型訪問看護ステーションになることが他のステーションとの大きな差別化につながることが分かります。

機能強化型訪問看護ステーションのメリットとは

機能強化型訪問看護ステーションのメリットとは

次に、機能強化型訪問看護ステーションが持つ6つのメリットをお伝えします。

(1)高い報酬の獲得

訪問看護ステーションの診療報酬で、毎月、月の初回の訪問日に算定される訪問看護管理療養費は、通常7,440円と設定されています。

一方、「機能強化型訪問看護ステーション」では、以下のように設定され、高額報酬が得られます。

【機能強化型、種類別の訪問看護管理療養費】

機能強化型、種類別の訪問看護管理療養費
機能強化型3 8,470円
機能強化型2 9,800円
機能強化型1 12,830円

この高い報酬は、看護師への給与へ還元できます。

(2)依頼の増加が見込める

高い専門性と対応できる範囲が広いことが評価され、ステーションへの依頼が増え、事業が拡大します。

(3)質の高い看護師の採用が実現する

機能強化型訪問看護ステーションには、看護に対する高い志向を持ち、実力のある看護師が集まりやすくなり、ステーションの発展に寄与します。

(4)連携先が増える

高い専門性と対応できる範囲が広いことで、医療機関や関連業者との連携が増加し、広範なネットワークを構築できることが事業成長につながります。

(5)圧倒的な差別化

他のステーションでは提供することが難しい専門分野での対応や研修ができることることは、大きな差別化となり、潰れない要因となります。

(6)施設経営への道が開ける

訪問看護ステーションの次なる事業展開としてナーシングホームなどの施設を検討する経営者が多い中、最も困難とされる事項に資金調達があります。

この資金調達において、機能強化型訪問看護ステーションであることは、銀行など資金提供者からの評価が高まります。

調達の可能性が高まることで、施設経営の道が開きます。

さらに、地域からの信頼が高いことで、施設経営で肝心なスタッフや、入居者希望者が集まりやすくなります。

機能強化型訪問看護ステーションを目指す際の課題と対応策

機能強化型訪問看護ステーションを目指す際の課題と対応策

では、評価が高く安定成長が期待できる機能強化型訪問看護ステーションであるにもかかわらず、なぜその数が少ないのでしょうか。

そこには、「機能強化型訪問看護ステーション」を目指す過程に課題があるからです。

ここでは、その課題と対応策について見ていきます。

「機能強化型訪問看護ステーション」になるための課題とは

「機能強化型訪問看護ステーション」を目指す過程における課題は、その要件の中に、満たすのが難しい事項があることです。具体的にどのような要件が難しいとされる課題であるかを見ていきましょう。

以下は、公益社団法人日本看護協会の2024年度、訪問看護実態調査における機能強化型訪問看護管理療養費の届出について満たせない要件を件数と割合で表した表です。

機能強化型訪問看護管理療養費の届出について満たせない要件(複数回答)

満たせない要件 件数 割合(%)
常勤の看護職員数 783 47.7
看護職員割合 391 23.8
24 時間対応 168 10.2
ターミナルケアの実施 562 34.2
重症児の受入れ 918 55.9
重症度の高い利用者(特掲診療料の施設基準等別表第 7、または別表第 8)の受入れ 403 24.5
精神科重症患者支援管理連携加算を算定する利用者の受入れ 672 40.9
居宅介護支援事業所の設置 570 34.7
居宅介護支援事業所における介護サービス計画等の作成 385 23.4
特定相談支援事業所または障害児相談支援事業所の設置 767 46.7
特定相談支援事業所または障害児相談支援事業所におけるサービス等利用計画等の作成 696 42.4
休日、祝日も含めた計画的な訪問看護の実施 500 30.5
退院時共同指導加算の算定実績 265 16.1
同一敷地内・同一開設者の保険医療機関における主治医の割合 467 28.4
地域の保険医療機関の看護職員の一定期間の勤務実績 563 34.3
地域の保険医療機関や訪問看護ステーションへの研修の実施 672 40.9
地域の訪問看護ステーションや住民等への情報提供や相談の実績 624 38.0
要件は満たしているが届出はしない 35 2.1
無回答 46 46
1,642 100.0

参照元:公益社団法人日本看護協会「2024年度 診療報酬・介護報酬改定等に向けた訪問看護実態調査」p46

この表において、満たしにくいと回答した割合が40%を超える主な課題は以下の3点です。

(1)常勤の看護職員配置の難しさ


(2)重症児、精神科重度患者など専門性が求められる利用者へのケア提供の困難さ


(3)特定相談支援事業所や障害児相談支援事業所の設置、地域の保険医療機関や訪問看護ステーションへの研修の実施

これらの3つの要素は、(1)専門性の高い人材確保と(2)資金調達の難しさといった共通の課題に関連しており、対策を考える上で重要なポイントとなります。

機能強化型訪問看護ステーションの要件を満たすための課題への対策

機能強化型訪問看護ステーションの要件を満たすための課題への対策

機能強化型訪問看護ステーションを目指した際の主な課題は、(1)専門性の高い人材の確保と(2)資金調達の難しさであることがわかりました。

次に、それぞれの課題への対策を見ていきましょう。

(1)専門性のある人材確保

機能強化型訪問看護ステーションを目指すにあたっての一つ目の課題の対策である専門性の高い人材確保の方法についてのポイントは以下になります。

①明確な要件の設定

採用したい看護領域に必要なスキル、経験、資格などを具体的に明確にしましょう。求める専門性を明確にし、採用プロセスを効果的に進めることができます。

②ステーションの魅力作り

専門性のある看護師は、自身が勤めようとする事業所の理念、経営方針、ステーションが目指している方向性や経営者の人物像にもこだわりを持っています。候補者に好印象を与えるために魅力あるステーションを作ることが大切です。

③各種媒体の効果的な活用

WebサイトやSNS、インターネットの求人サイト、業界専門の媒体を活用して、求人情報をこまめに発信します。また、専門職が集まるイベントやセミナーに参加することで出会いのきっかけとなることがあります。

④社内教育・研修プログラムの提供

採用した人材が業務に適応できるよう、社内外の専門的な教育制度を計画的に提供することで、専門性の高い人材を育成できるようにします。

⑤競争力のある給与と、魅力的な福利厚生

専門性の高い人材は市場価値が高いため、競争力のある給与設定やインセンティブ、魅力的な福利厚生を提供するなど工夫することも大切です。

⑥人材採用の専門家を活用

人材採用の専門家は、業界や地域のトレンドを把握し、適切な採用戦略を策定することができます。求職者に響く求人広告を作成したり、採用プロセスを最適化する手助けができます。

これらの対策により、質の高い人材がステーションに興味を持ち、積極的に応募する可能性が高まります。

人材採用の専門家を活用することも、専門性のある看護師の採用に効果を発揮します。

(2)資金調達

「機能強化型訪問看護ステーション」を目指すにあたっての二つ目の課題の対応である資金調達を成功させるためのポイントは以下の通りです。

①ビジョンと計画の明確化

資金提供者に対して、信頼性や説得力のあるステーションのビジョンや将来の計画を明確かつ具体的に伝えることが重要です。ビジョンと計画を具体化するために、事業の背景、地域ニーズ、事業方針、目標、財務計画、リスク管理などを明確に示し、信頼性を高める必要があります。

②効果的なプレゼンテーション

資金提供者に対するプレゼンテーションや交渉においては、明確かつ簡潔に情報を伝え、ステーションの強みや将来の成長ポイントを強調しなければなりません。

③資金調達の専門家の活用

資金調達の専門家は、訪問看護ステーションの特定のニーズに合わせた資金調達戦略を立案できます。成長規模に合わせた調達先の選定や、融資、助成金、投資、など、複数の手段を組み合わせて持続可能な資金を確保する計画を策定します。

また、地域の資金提供機関とのパートナーシップを構築し、成功率を向上させるための助言も行います。

「機能強化型訪問看護ステーション」の先にあるビジョンとは

「機能強化型訪問看護ステーション」の先にあるビジョンとは

専門性のある人材確保と資金調達の困難な課題を乗り越えて、運営する「機能強化型訪問看護ステーション」は、利用者の増強、専門人材の採用の優位性、金融機関からの高評価などの理由から、潰れずに、伸び続けることができる確固たる基盤が形成することが可能となります。

しかし、社会環境の変化や、非常事態の発生が懸念される時代においては、この形態を維持しつつ、将来的なニーズに応え、競合が少なく、参入障壁が高いとされる領域への進出を視野に入れることも大切です。

その領域のひとつとして、注目されるのが訪問看護で構築したリソースを有効に活用して、ナーシングホームなどの施設を設立・運営する方向性が考えられます。

ナーシングホームなどの施設を設立・運営する方向性

訪問看護ステーションを備えたナーシングホームでは、看護ケアのサービスに加え慢性疾患患者や重度者に対する住まいも提供できるようになります。

これによって、市場でのさらなる差別化と業界におけるリーダーシップの確立を目指します。

ナーシングホームは、「機能強化型訪問看護ステーション」の先にあるビジョンとして、基盤をさらに強固なものにして、継続的な成長と適応力を発揮することになります。

まとめ

今回は、「機能強化型訪問看護ステーション」をテーマにその概要から他ステーションとの差別化のポイント、機能強化型の要件を満たすための課題と対策などについてお伝えしました。

機能強化型訪問看護ステーションであることは、他の事業所には無い独自の強み(USP)を持ち、地域から確実に指名を受ける事業所になるだけでなく、ナーシングホームなど訪問看護の次の事業展開への可能性も高まります。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

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いろいろナースから生まれた看護師の独立事例を冊子にまとめました。岩田看護師(34才女性)は、総合病院に勤めながら「看護師が働き続けられる職場を作りたい」と訪問看護での独立を志望。

訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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