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【令和6年度報酬改定-新設】口腔連携強化加算の算定要件と留意点

2024年(令和6年)の診療報酬改定において利用者の口腔機能の向上や誤嚥性肺炎の予防等を目的に歯科と在宅医療の連携体制を評価する「口腔連携強化加算」が新設されました。

今回は「口腔連携強化加算」について、新設された背景や算定要件、算定するために準備すべきポイントなどについて詳しくお伝えします。

「口腔連携強化加算」とは

口腔連携強化加算は、訪問看護や訪問介護等の介護事業所が利用者の口腔の健康状態を評価する方法や在宅歯科医療について、歯科医療機関に相談できる体制を整えることを評価するものです。

この加算では、口腔の健康状態の評価を実施し、歯科医療機関や介護支援専門員へ情報提供することも含まれています。

「口腔連携強化加算」が新設された背景

「口腔連携強化加算」が新設された背景

では「口腔連携強化加算」が新設された背景についてみていきます。

高齢者の口腔衛生管理および栄養管理は、誤嚥性肺炎の予防やQOLの向上に極めて重要となります。

しかし、歯科治療を必要とする高齢者の多くが、実際には治療を受けていないのが現状です。特に在宅療養中の要介護高齢者では、治療が行われていない割合が高くなっています。

令和元年に実施された日本歯科医学会の調査では、歯科医療や口腔健康管理が必要な要介護高齢者は全体の64.3%に上りますが、そのうち過去1年以内に歯科を受診した者はわずか2.4%に過ぎませんでした。

この問題の一因として、在宅療養に密接に関わる訪問サービスや短期入所サービスにおいて、口腔問題のある利用者の把握や歯科医療機関との連携が十分に評価されていないことが指摘されていました。

このような状況を踏まえ以下のような話し合いが行われてきました。

1. 定期的なアセスメントと情報提供の重要性

口腔管理が必要な高齢者に対して、歯科治療に結びつけるためには、定期的なアセスメントや情報提供、そして連携の充実を図っていくべきではないか。

2. 在宅療養者の口腔状態の効率的な把握

在宅療養者においては、個々の口腔の状態を効率的に把握し、適切な口腔管理や口腔の状態の改善に取り組むための仕組みを考えることが重要だ。

3. 医療・介護従事者の意識向上

医療・介護従事者が栄養や口腔への意識を高め、潜在的なニーズに気づくことも大切。

4. ケアプラン策定におけるリハビリテーション・栄養・口腔の意識向上

支援専門員のケアプラン策定においても、リハビリテーション、栄養、口腔への意識を高めるプロセスを導入することが求められる。

5. 多職種が理解できるスクリーニングと専門職への早期連携

多職種が理解できるスクリーニング方法を検討し、早期に専門職へつなげる仕組みを構築することが重要となる。

こうした話し合いや背景を経て、2024年(令和6年)度の診療報酬改定で「口腔連携強化加算」が設定されました。

参考文献:厚生労働省「口腔・栄養(改定の方向性)」

「口腔連携強化加算」の内容とは

それでは「口腔連携強化加算」の内容について詳しくみていきましょう。

口腔連携強化加算を算定できる事業者

口腔連携強化加算算定できる事業者は、以下となります。

・訪問介護
・訪問看護
・訪問リハビリテーション
・短期入所生活介護
・短期入所療養介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

口腔連携強化加算の単位数

口腔連携強化加算の算定単位数は「50単位/回」です。
算定回数は月に1回となります。

加算の種類 単位数
口腔連携強化加算 50単位 /回

口腔連携強化加算の算定要件

口腔連携強化加算の算定要件は、以下の3点になります。

1. 利用者の口腔の健康状態の評価を看護師等が実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関及びケアマネジャーに対し、口腔の健康状態の評価の結果の情報を提供していること

2. 利用者の口腔の健康状態を評価する際に、診療報酬の歯科点数表区分番号C000にある歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関の歯科医師、またはその指示を受けた歯科衛生士が相談に対応できる体制を整え、その内容を文書などで取り決めていること

3. 次のいずれにも該当しないこと

1. 他の介護サービスの事業所において、当該利用者について栄養状態のスクリーニングを行い、口腔・栄養スクリーニング加算(Ⅱ)を算定している場合を除き、口腔・栄養スクリーニング加算を算定していること。

2. 当該利用者について、口腔の健康状態の評価の結果、居宅療養管理指導が必要であると歯科医師が判断し、初回の居宅療養管理指導を行った月を除き、指定居宅療養管理指導事業所が歯科医師または歯科衛生士による居宅療養管理指導費を算定していること。

3. 当該事業所以外の介護サービス事業所において、当該利用者について口腔連携強化加算を算定していること。

参照資料:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」P26

参照資料:厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」P739

口腔連携強化加算の算定に必要な口腔の健康状態の評価とは

算定に必要な口腔の健康状態の評価とは

口腔連携強化加算を算定するためには、事業所で利用者の口腔の健康状態について評価する必要があります。

評価の内容は、厚生労働省の資料『介護保険最新情報vol.1217リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について』おいて下記の10項目が挙げられています。

口腔の健康状態の評価項目

項目 評価 評価基準 評価の必要性
1.開口 1. できる
2. できない
上下の前歯の間に指 2 本分(縦)入る程度まで口があかない場合(開口量3cm以下)には「2」につける。 開口が不十分及び開口拒否等は口の中の観察も困難にするとともに、口腔清掃不良となる要因である。また、開口が不十分においては要因の精査等が必要となる場合がある。
2.歯の汚れ 1. なし
2. あり
歯の表面や歯と歯の間に白や黄色の汚れ等がある場合には「2」につける。 歯が汚れている状態は、汚れに含まれる細菌等も含めて付着している状態である。虫歯や歯周病の原因となるだけでなく、汚れを飲み込み肺に到達すると誤嚥性肺炎の原因にもなる。
3.舌の汚れ 1. なし
2. あり
舌の表面に白や黄色、茶、黒色の汚れなどがある 場合には「2」につける。 舌が汚れている状態は、汚れに含まれる細菌等も含めて付着している状態である。歯の汚れと同じく、汚れを飲み込み肺に到達すると誤嚥性肺炎の原因にもなる。
4. 歯肉の腫れ、出血 1. なし
2. あり
歯肉が腫れている場合(反対側の同じ部分の歯肉との比較や周囲との比較)や歯磨きや口腔ケアの際に出血する場合は「2」につける。 歯肉の腫れ、出血は歯周病の可能性があり、歯周病は放置すると歯を失う可能性がある。また、糖尿病等の全身疾患との関連性も報告されている。
5.左右両方の奥歯でしっかりかみしめられる 1. できる
2. できない
本人にしっかりかみしめられないとの認識がある場合または義歯をいれても奥歯がない部分がある場合は「2」につける。 奥歯が無い場合に、食物をかみ砕く能力が低下し、食事形態等に関連があるだけでなく、窒息事故との関連も報告されている。転倒リスクとの関連性も報告されており、義歯の利用等も含めて検討が必要である。
6.むせ 1. なし
2. あり
・平時や食事時にむせがある場合や明らかな「むせ」はなくても、食後の痰がらみ、声の変化、息が荒くなるなどがある場合は「2」につける。 摂食嚥下障害の可能性があり、食事形態等に関連があるだけでなく、入院等との関連も報告されている。唾液や食物などを誤嚥している可能性があり、摂食嚥下機能の精査や訓練等が必要な場合もある。
7.ぶくぶくうがい
※1
1. できる
2. できない
・歯磨き後のうがいの際に口に水をためておけない場合や頬を膨らませない場合
や膨らました頬を左右に動かせない場合は「2」につける。
口の周りの筋肉等の動きと関連しており、食事形態等に関連があるだけでなく、入院等との関連も報告されている。口腔機能の低下の可能性があるとともに、口腔衛生管理とも関連している。
8.食物のため込み、残留※2 1. なし
2. あり
食事の際に口の中に食物を飲み込まずためてしまう場合や飲み込んだ後に口を開けると食物が一部残ってい る場合は「2」につける。 摂食嚥下障害等に関連しており、摂食嚥下機能の精査や訓練等が必要な場合もある。
9.その他 自由記載 歯や粘膜に痛みがある、口の中の乾燥、口臭、義歯の汚れ、義歯がすぐに外れる、口の中に薬が残っている等の気になる点があれば記載する。 その他、歯科疾患との関連がある事項や利用者の訴え等も含めて検討する。
歯科医師等による口腔内の確認の必要性 1. 低い
2. 高い
・項目 1-8 について「あり」または「できない」が1つでもある場合は、歯科医師等による口腔内等の確認の必要性「高い」とする。

・その他の項目等も参考に歯科医師等による口腔内等の確認の必要性が高いと考えられる場合は、「高い」とする。

※1 現在、歯磨き後のうがいをしている場合に限り実施する。
※2 食事の観察が可能な場合は確認する。


この10項目のうち、「その他」を除く項目は、2つの選択肢から選ぶ形式になっているため、比較的簡単に評価を行うことができます。

参考資料:厚生労働省「介護保険最新情報vol.1217リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」P43~P45

評価内容を記載する様式は、以下になります。

別紙様式6 口腔連携強化加算に係る口腔の健康状態の評価及び情報提供書

口腔連携強化加算に係る口腔の健康状態の評価及び情報提供書は、厚生労働省のWebサイトからダウンロード可能です。

訪問看護ステーションが口腔連携強化加算を算定するためには

訪問看護ステーションが口腔連携強化加算を算定するためには

訪問看護ステーションが口腔連携強化加算を算定するためには、以下の2点を準備し、実施する必要があります。

(1)利用者に対する口腔機能評価の実施

口腔連携強化加算を算定するには、看護師などの職員が利用者に対して口腔機能評価を実施する必要があります。この評価は、厚生労働省が公開している評価シートを使用します。

評価を円滑に開始するためには、ステーション内で口腔の健康管理に関する勉強会を開催するなど、職員の知識と技術の向上を図る準備が推奨されます。

(2)歯科医療機関との連携

口腔連携強化加算を算定するためには、歯科医療機関と連携し、施設従業員からの相談に対応できる体制を構築する必要があります。

具体的には、事業所の周辺にある歯科医療機関の中から、「歯科点数表区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定実績がある」歯科医療機関を探し、連携の打診を行います。その際、提携内容を文書で記載し、施設の従業員からの相談に対応してもらえる旨を明記することが重要です。

まとめ

今回は、2024年(令和6年)の診療報酬改定で新たに設けられた「口腔連携強化加算」について、新設された背景や算定要件、算定するために準備すべきポイントなどについて詳しくお伝えしました。

令和6年の診療報酬改定において訪問看護は、基本報酬はプラスでしたが、リハビリ職と看護師の訪問件数の割合に応じた減算が制度化されたこととなりました。

そのため新たな加算の算定について理解を深めておくことは非常に大切です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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