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訪問看護師が知っておきたい!支援を拒むセルフネグレクトの高齢者への対応方法とは

近年、何らかの理由によって介護・医療サービスの利用を拒否するなど、社会から孤立し、生活行為や心身の健康維持ができなくなっている、いわゆる「セルフ・ネグレクト」状態にある高齢者が増加しています。

セルフネグレクトは、“ゴミ屋敷”や“孤立死”の原因とも言われ、今後、高齢化の進展に伴いさらに深刻化すると懸念されています。

訪問看護師も地域ケアを支える専門職チームの一員として、セルフネグレクトのリスクのある高齢者への看護のかかわりを考えていくことが大切です。

今回は、高齢者のセルフネグレクトをテーマにその概要や原因、そして訪問看護での高齢者のセルフネグレクトの支援のポイントなどについてお伝えします。

高齢者のセルフネグレクトとは

セルフネグレクト(自己放任)とは、文字通り、生活環境や栄養状態が悪化しているのに、それを改善しようという気力を失い、周囲に助けを求めない状態を指します。

高齢者のセルフネグレクトとは

具体的にセルフネグレクトに陥っている高齢者の状態としては、誰ともかかわらず、ごみをため込んだ不衛生な生活環境で暮らしていたり、医療や介護が必要な状態であってもかかわりを頑なに拒否したりするなど、健康や安全が損なわれる状態で暮らしていることが挙げられます。

高齢者のセルフネグレクトの例

・ごみを捨てず、生活に支障をきたすほど溜め込んでいる

・家の前や室内にごみが散乱した中で住んでいる

・極端に汚れている衣類を着用したり、失禁があっても放置している

・窓や壁に穴が開いていたり、生活が不便だと感じる家にそのまま住み続けている

・生活に必要な最低限の制度、介護、福祉サービスの利用を拒否する

・重度のけがを負っている、あるいは治療が必要な疾病があるにもかかわらず、受診・治療・介護を拒否する

高齢者のセルフネグレクトの原因は、認知症や精神疾患などの障害・疾病のほか、経済的困窮や家族・近隣住民とのトラブル、人間関係が上位を占めています。

高齢者のセルフネグレクトの原因

高齢者のセルフネグレクトの原因

参照元:平成22年度内閣府経済社会総合研究所委託事業「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査―幸福度の視点から

セルフ・ネグレクト状態にある高齢者は、それまでの生活歴や疾病・障害の理由から、「支援してほしくない」「困っていない」など、市町村や地域包括支援センターなどの関与を拒否することもあるため、支援は困難を伴います。

しかし、高齢者のセルフネグレクトは、生命や身体に重大な危険が生じる恐れや、ひいては孤立死に至るリスクも抱えています。

増加が予想される高齢者のセルフネグレクト

2022(令和4)年の「国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の者のいる世帯数は2747万4千世帯(全世帯の50.6%)であり、その半数以上が夫婦二人暮らしや一人暮らしです。

65歳以上の人口の約21.7%(873万人)が一人暮らしであり、今後ますます独居の高齢者が増加することが予測されています。

参照元:厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況

一人暮らしの高齢者は、自立度が高くても、認知症や精神疾患などを抱えている場合、服薬が不十分になる可能性や地域との関わりを持たずに支援が必要になっても助けを求めない傾向があります。そのため、今後さらにセルフネグレクト状態に陥る高齢者が増えていくことが予想されます。

注意すべきセルフネグレクト状態とは

注意すべきセルフネグレクト状態とは

セルフネグレクト状態に陥った人は、自らSOSを出すこともせず、周囲の人も気付きにくくなるため、状況はどんどん悪化していきます。

利用者がセルフネグレクト状態に陥るのを防ぐために普段から以下のポイントに注意を払う必要があります。

自分への関心がなくなっている

セルフネグレクト状態の高齢者は、自身への関心が薄れ、身だしなみや環境の整理整頓などに無関心になります。例えば、服装や身なりが乱れていたり、自宅の掃除や整理整頓がされていない状況が見られます。

対人関係が希薄になっている

高齢者のセルフネグレクトでは、対人関係が希薄になることがあります。これは、社会的な孤立感や孤独感が増し、家族や友人との交流が減少することを意味します。

何事も投げやりになってしまう

セルフネグレクト状態の高齢者は、日常生活において興味や意欲を失い、何事も投げやりになってしまうことがあります。これは、家事や自己管理に対する意欲の低下や、活動への参加や趣味の喪失などが挙げられます。

生活にかかわる判断力、意欲が低下している

セルフネグレクトの高齢者は、生活に関する判断力や意欲が低下していることがあります。これは、食事の摂取や適切な医療の受診など、健康や生活に関わる重要な決定を避ける傾向が見られます。

本人の健康状態に悪影響が出ている

セルフネグレクト状態の高齢者は、自己の健康状態に悪影響が出ることがあります。これは、適切な食事や医療の不足による栄養失調や病気の悪化、適切な衛生管理の不備による感染症の発生などが挙げられます。

近隣とのトラブルが発生し孤立している

セルフネグレクトの高齢者は、近隣とのトラブルが発生し、孤立することがあります。これは、家庭内のゴミや騒音、不衛生な状態が近隣住民に迷惑をかけ、関係が悪化することが原因です。

セルフネグレクトの状態にある利用者への訪問看護の支援の方法とは

セルフネグレクトの状態にある利用者への訪問看護の支援の方法とは

日本では、高齢者虐待防止法※の定義に「セルフ・ネグレクト」は含まれていないので、法的な責任を問われることはありません。しかし、療養者の人間らしい暮らしや生命、健康が損なわれているという点においては、他者に虐待されている場合と変わりはありません。

厚生労働省老健局の通知(平成27年老推発0710第2号)では、セルフネグレクトは権利が侵害されている状態として高齢者虐待の類型であり、高齢者虐待に準じて必要な援助を行っていく必要があるとされています。

そのため、訪問看護には、セルフネグレクトの場合であっても、高齢者虐待防止法の取り扱いに準じて必要な支援を行っていくことが求められます。

※高齢者虐待防止法についてはこちらの記事も参考にしてみてください。

【令和6年度義務化】高齢者虐待防止において訪問看護に求められる役割とは

高齢者のセルフネグレクトの基本的な対応とは

高齢者のセルフネグレクトの基本的な対応とは

高齢者のセルフネグレクトに対する基本的な対応は、ますは保健センターの保健師や市町村の福祉担当者、地域包括支援センターなどと連絡を取り、高齢者の情報交換を行い、同伴訪問をして健康状態や生活状況を確認します。

万が一、生命や身体に深刻な危険があると判断されれば、迅速に老人福祉法に基づく老人短期入所施設などに入所させるなどの措置が必要ですが、法的な根拠はないため、高齢者の意思を尊重しながら医療的な対応を行います。

その後、市区町村の担当者も参加し、地域ケア会議などを開催して援助方針を決定し、役割を確認した上でチームでサービスを提供します。

高齢者の場合、健康、生活、経済、人間関係など多岐にわたる課題がありますので、他の職種や機関との連携だけでなく、地域の協力も不可欠です。

高齢者のセルフネグレクトの支援のポイント

高齢者のセルフネグレクトの支援のポイント

セルフネグレクトは死亡リスクが高いため、早期発見と早期支援が重要ですが、大切なのは「その人らしい生活」を実現することです。

自己決定を尊重し、その人に合ったサポートを提供することが必要です。見守りながら、介入のタイミングをじっくり待つことも看護師として重要な役割の一つです。

(1)価値観を尊重し、自己決定を支援する

訪問看護師が高齢者のセルフネグレクト支援において重要な役割を果たす一つは、価値観を尊重し、自己決定を支援することです。高齢者が無力感や罪責感に苛まれないように、ますは彼らができることを認め、何かの支援があれば適切に行えることを探します。その際、本人の意思を尊重し、自己決定を促します。

(2)生命のリスクを見極め、明確に伝える

訪問看護師は生命のリスクを適切に判断し、本人に明確に伝える役割を担います。高齢者が自らの状態に危険を感じていない場合でも、医療・福祉従事者としての視点からリスクを説明し、脈拍や体温などのデータを提供して、正しい情報を与えます。そして、本人の意思を尊重しながらも、リスクを適切に把握させることに努めます。

(3)価値観・ライフスタイルを尊重して具体的に選択肢を提示する

訪問看護師は、高齢者の価値観やライフスタイルを尊重し、具体的な選択肢を提示することが重要です。強制や押し付けが感じられないよう、複数の選択肢を提示し、本人自身が自己決定できるようにサポートします。その際、将来の問題やリスクも共有し、イメージを持って決定する手助けを行います。

(4)エンパワメントし、その人らしい生活を支える

訪問看護師は、高齢者のエンパワメントを促し、その人らしい生活を支える役割を果たします。高齢者が「仕方がない」と感じたり「放っておいてほしい」と発言した場合でも、否定するのではなく、寄り添いながら支援し、少しずつ心を開いてもらうよう努めます。例えば、デイサービスやサロンを利用することで、社会とのつながりを保ちながら自立した生活を送る支援を行います。

(5)つながりを絶たないよう、チームで対応する

訪問看護師は、高齢者のセルフネグレクト支援において、他の専門家や地域の支援機関と連携し、チームで対応することが重要です。一人の担当者だけが抱え込まず、地域ケア会議や地域包括支援センター、民生委員、民間業者、地域住民などと協力して支援ネットワークを構築し、高齢者が適切な支援を受けられるよう努めます。

高齢者虐待・セルフネグレクトに関連する社会資源・制度

高齢者虐待・セルフネグレクトに関連する社会資源・制度

高齢者虐待・セルフネグレクトは、状況に応じて以下のような社会資源・制度を活用できます。

(1)早期発見・見守りネットワーク

・地域住民、自治会、民生委員などによる見守り

・社会福祉協議会のボランティアによるごみ出しサポートなどによる支援

・配食サービスや新聞配達などによる見守り

(2)保健医療福祉サービス介入ネットワーク

・地域包括支援センターによる地域ケア会議の開催

・ケアマネジャーによるケアプランの見直し

・訪問看護師やホームヘルパーによる状態把握、身体的精神的支援

・デイサービスやショートステイ利用による介護者の休息時間の確保

(3)関係専門機関支援ネットワーク

・主治医または入院医療機関との連携による適切な医療・看護の提供

・市区町村による虐待対応会議の開催、立入調査、やむを得ない事由による措置(分離保護等)、生活保護などの検討

・成年後見制度または日常生活自立支援制度の利用による適切な年金、収入、資産の管理

まとめ

今回は、高齢者のセルフネグレクトをテーマにその概要や原因、そして訪問看護での高齢者のセルフネグレクトの支援のポイントなどについてお伝えしました。

高齢者のセルフネグレクトは、社会問題として深刻化しています。訪問看護師として、セルフネグレクト状態の高齢者への対応は重要な役割です。

そのためには、高齢者の自己決定を尊重し、サポートを提供するとともに、チームとして連携し、早期発見・支援を行うことが必要です。地域社会全体での取り組みが求められる中、訪問看護師がその一翼を担うことが重要です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

>保険外美容医療での看護師独立ストーリー

保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

石原看護師がどのようにして時間や場所にとらわれない働き方を実現できたのか、その経緯、現在の状況、そして今後のビジョンについてお話をうかがいました。

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