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なぜ訪問看護の管理者はSNSをやるべきなのか!? VUCA時代に求められる新たなリーダー像とは

みなさんは「VUCA時代」という言葉をご存じでしょうか。

近年、世界情勢の変化や異常気象による災害、新型コロナウィルス感染症の蔓延、IT技術やAIなどテクノロジーの急速な進展など、さまざまな物事が目まぐるしく変化しています。

「VUCA(ブーカ)」とはこのような先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態を意味し、VUCA時代をどのように対応していくかが大きな問題となっています。

日本においても来年2025年には、約800万人の団塊の世代の方々が75歳以上の後期高齢者になり、国民の4人に1人が後期高齢者という未曾有の超高齢社会が到来します。

何が起こるか予測不可能な「VUCA時代」に対応し、成長できる訪問看護ステーションを作るには、中心的な存在である管理者にもこれまでにない新たな視点と行動力、そしてリーダーシップが求められます。

今回は、訪問看護ステーションの管理者に向けてVUCA時代に対応し成長できる事業所を作るために知っておきたいこと、そしてリーダーとして取り組むべきことについてお伝えします。

目次

VUCA時代とは

VUCA(ブーカ)とは、元々1990年代後半に軍事用語として生まれた言葉であり、「Volatility(変動性)」、「Uncertainty(不確実性)」、「Complexity(複雑性)」、「Ambiguity(曖昧性)」の4つの単語の頭文字をとった造語です。

VUCA時代とは

「VUCA時代」は、2010年代に入ると、急速に変化する状況や不透明な将来展望を指し示す言葉として、ビジネス界でも広く使われるようになりました。

冒頭でお伝えしたように昨今は、異常気象による自然災害の多発や感染症の拡大、少子高齢化、テクノロジーの急速な進展など変動が激しく、これまでの成功体験や当たり前だったやり方が通用しなくなる事態が多く発生しています。

これまでように先行きを見通すのが難しく、不確実性が高い「VUCA時代」においては、正解や前例がない中でも、その時々の状況を迅速に判断し、実行に移すことが求められています。

VUCA時代の訪問看護ステーションの運営とは

VUCA時代の訪問看護ステーションの運営とは

企業経営においてもVUCA時代には、全てを計画通りに行うことは難しく、外部状況を的確に判断し、時代の変化に対応できるよう必要に応じて組織の変革を実施していくことが重要となります。

それでは、「VUCA時代」の訪問看護ステーションの運営は、どのようなことに留意していく必要があるのでしょうか。

訪問看護ステーション運営における不確実要素とは

まず最初に訪問看護ステーション運営を取り巻く不確実な要素についてみていきたいと思います。

訪問看護ステーションは、医療保険や介護保険制度により報酬が支払われる、いわゆる「制度ビジネス」です。

民間のビジネスとは違い、国が金額を設定しているため、価格競争がなく利益が安定しやすいこと、また高齢化の進展により訪問看護を必要とする高齢者が急増していることなどにより、この10年で訪問看護ステーションの数は、大幅に増加しました。

しかし、一方で開設後1年も経たないうちに、休止・閉鎖に追い込まれる訪問看護ステーションも少なくありません。

開設後1年も経たないうちに、休止・閉鎖に追い込まれる訪問看護ステーションも少なくありません。

たとえば、令和4年度に全国で新規開業した訪問看護ステーションは1,968ヵ所でしたが、同時に約800ヵ所のステーションが廃止・休止しています。

参照元:一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和5年度 訪問看護ステーション数 調査結果

廃止・休止の理由は、利用者の確保やスタッフ体制、資金繰りなど様々ですが、一様にいえるのは、訪問看護ステーションは開設すれば上手くいく事業ではなく、地域から信頼される事業所に発展させていくためには、開設前から広い視野を持って様々なことに注意を払って取り組んでいく必要があるということです。

看護師の採用・定着の不安定さ

訪問看護を運営する中で、特に大きな不確実性が高い要素して挙げられるのが、「看護師の採用・定着の不安定さ」です。

ご存じのように訪問看護を開業するためには、常勤換算で2.5名の看護師が必要であり、また人件費率が70%を超える労働集約型の事業という特徴を持つため、看護師の採用は、どの事業所においても大きな課題となっています。

先日のコラムでもご紹介しましたが、訪問看護業界において看護師は常に不足している状態であり、1人の看護師に対して約3ステーションが内定を出すほど人材確保が困難が状況にあります。

領域別の看護職員の求人倍率

参照元:厚生労働省 第2回看護師等確保基本指針検討部会 令和5年7月7日 参考資料2「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況

訪問看護ステーションの採用コストを大きく引き上げる人材紹介会社の存在

さらに訪問看護ステーションの採用コストを大きく引き上げているのが人材紹介会社の存在です。

現在、看護師1人あたりの紹介料は、年収の25~30%が相場であり、紹介会社から看護師を1人採用するだけで100万円以上の紹介料が発生してしまいます。

しかも、この高額な紹介料を獲得するために人材紹介会社は、アフィリエイト等のWeb広告に多額の費用を投じて、看護師に出来るだけ紹介会社を使うよう促す一大キャンペーンを展開しています。

・直接応募は危険です!

・非公開求人あります。

・自力での転職はトラブルの元

・エージェントが快適な転職をサポート

・スカウトメールが沢山届く!

・ブラック求人を回避する方法とは!?

看護師であれば、上記のような人材紹介会社への登録を促すWeb記事広告を見たことがあるのではないでしょうか。

もちろん、人材紹介会社を頼らなければ看護師の採用が出来ない状況にある事業所も沢山あると思いますが、本来であれば、賞与や法定外福利厚生などスタッフに還元することができるコストを人材紹介会社に払い続けていることにも留意していく必要があります。

人材の流動化、ゆとり世代の台頭

人材の流動化、ゆとり世代の台頭

またVUCA時代では、人材育成の視点も今までとは異なります。

例えば、前述した人材紹介会社を使った転職活動は、訪問看護業界に限らず、一般的になりつつあります。(テレビでも転職支援会社のCMを見ない日はありませんね。)

以前に比べると格段に人材の流動化が進み、働く人がより良い条件を求めて転職することが当たり前な世の中となってきています。

特に今の20代~30代は、「ゆとり世代」と呼ばれ、人と争うよりも自分らしい生き方を大切にする傾向があるされています。

そのため、スタッフを集団でくくって考えるのではなく、個々に向き合う「パーソナライズ」の観点が必要不可欠となります。

自ステーションでスタッフにできるだけ長く働いてもらうためにもスタッフひとりひとりの特性、ワークスタイル、価値観に寄り添いスタッフのエンゲージメントを高めていくことが求められます。

訪問看護を取り巻くその他の不確実要素とは

もちろん看護師の採用や定着だけでなく、この先の訪問看護を取り巻く不確実要素として様々なものが考えられます。

・約800万人の団塊の世代が後期高齢者になる2025年の到来

・報酬改定( 医療・介護・障害福祉)による影響

・頻発する自然災害、コロナ等の感染症

・競合ステーションの増加による利用者減

・大手企業による資本算入など

今後の訪問看護ステーションは、こうした不確実な要素に立ち向かいながら多角的な視点で運営をおこなっていく必要があります。

VUCA時代の訪問看護において管理者に求められるものとは

ここまでVUCA時代の特徴、そして訪問看護ステーションの運営を取り巻く、不確実な要素についてみてきました。

ここからは、本コラムの主題である、VUCA時代の訪問看護において中心的な存在である管理者に求められること、取り組む方法についてお伝えしていきます。

環境の変化が激しく、次々に色々なことが起こる予測困難なVUCA時代において管理者には従来のマネジメントスキルだけでなく、新たな視点とアプローチ方法が必要になります。

具体的には、以下のような能力が管理者に求められます。

(1)複雑に絡み合う世界を関係性の中で捉える力

複雑な状況を関係性の観点から理解し、相互に影響しあう要素を考慮して行動する能力が求められます。

(2)想定外の事態を受け入れて適応していく力

予測不能な状況にも柔軟に対応し、計画を修正しながら、状況に適応する能力が求められます。

(3)不確かなものを客観的視点で捉えて判断を下す力

情報や状況を客観的に評価し、感情に左右されずに合理的な判断を下すことが求められます。

(4)多様性を尊重しつつ中立的な視点で相手を見る力

異なる意見や文化を尊重し、公正な視点から相手を見ることで、コミュニケーションを円滑にし、チームの調和を促進する能力が求められます。

戦略的意思決定に有効なOODA(ウーダ)ループとは

これからの訪問看護の管理者に求められる、変化を前提とした戦略策定や多角的視野からの意思決定には「OODA(ウーダ)ループ」の活用が役立ちます。

「OODAループ」とは、迅速な意思決定を行うためのフレームワークで、アメリカの軍事戦略家であるジョン・ボイドによって提唱されました。

戦略的意思決定フレームワークOODAループとは

OODAループは、Observe(観察)・Orient(状況判断)・Decide(意思決定)・Act(実行)の頭文字4つで構成されています。

戦略的意思決定フレームワークOODAループとは

(1)Observe(観察する)

最初の段階では、状況を注意深く観察し、情報を収集します。これは客観的なデータや事実だけでなく、環境や相手の行動、自身の感情や直感なども含みます。

重要なのは、全体像を把握することです。

(2)Orient(状況を判断する)

次に、観察した情報を分析し、自分の理解や価値観と照らし合わせます。これによって、現在の状況を理解し、将来の展望や可能性を予測することができます。

この段階では、過去の経験や知識も活用されます。

(3)Decide(決定する)

Orient段階で得られた情報と理解をもとに、行動する方針や計画を決定します。可能な選択肢を検討し、その中から最適なものを選択します。

この段階では、迅速で効果的な意思決定が求められます。

(4)Act(動く)

最後に、決定した方針や計画に基づいて行動します。この段階では、決断したことを実行し、状況に対処するための具体的な行動が取られます。

また、行動を起こした結果を観察し、次のループに生かすことも重要です。

このプロセスを繰り返すことで、管理者は、迅速に変化に適応し、効果的に行動する能力を養うことができます。

似た言葉で「PDCAサイクル」がありますが、PDCAは、決まった工程のなかで生産性を高めることに着目したフレームワークであり、不確実性の高い環境においては、観察から始まり情報に応じた意思決定と行動がスピーディーに行えるOODAループが有効であると言われています。

訪問看護の管理者に求められる新しいリーダー像とは

訪問看護の管理者に求められる新しいリーダー像とは

VUCA時代の訪問看護の管理者には、これまでの経験をもとに着実に仕事を行う能力に加え、柔軟な発想で新しい考えを生み出し、自ら考え行動することのできる能力がより重要となります。

自ら考え行動するためには、まずは、自分自身を知ることが必要です。自分自身を客観的に捉えることを認知心理学では「メタ認知」と呼びます。

メタ認知能力が高い人は、思い込みや感情に左右されずに行動したり、状況を適切に判断することができる等の能力に優れていると言われます。

メタ認知の高い人の特徴とは

周囲へ適切な配慮ができる

メタ認知の高い人は、自己理解があり、他人との関係を理解し、適切なコミュニケーションを取る能力を持っています。

自分の行動や言動が他人に与える影響を考慮し、状況に応じて適切に対処することができます。

感情に振り回されず安定的

メタ認知の高い人は、自分の感情や思考を客観的に見つめることができます。

自己認識があり、感情に流されることなく冷静な判断を下すことができます。そのため、ストレスやプレッシャーにも柔軟に対処し、安定した状態を維持することができます。

柔軟性があり成長速度が速い

メタ認知の高い人は、自分自身や状況を客観的に見つめ、必要に応じて行動やアプローチを柔軟に変えることができます。

自己成長に積極的であり、新しい情報や経験から学び、成長する速度が速い傾向があります。そのため、変化に対応し、新たな挑戦に果敢に取り組むことができます。

この「メタ認知能力」を高めることが、VUCA時代のリーダーとしてチームをマネジメントするうえで重要なカギを握っています。

メタ認知能力を高める方法とは

メタ認知能力を向上させるためのトレーニングとして、セルフモニタリングやライティングセラピー、コーチングなどが挙げられます。

特にセルフモニタリングは自己分析とも言い換えられ、「いま自分はなにを感じているのか」「いま自分はどんな状態なのか」といった意識的な活動となります。

日記やSNSによるフリーライティングによって、自分の感情や考えを可視化し、自己を客観視する能力を鍛えることができます。

なぜ訪問看護の管理者はSNSをやるべきなのか!?

なぜ訪問看護の管理者はSNSをやるべきなのか!?

特に訪問看護の管理者にお勧めしたいのがエックス(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSによる継続的な情報発信です。

SNSは、手軽に始められ、横のつながりをつくりやすいため、幅広い層にステーションの存在を知ってもらうことができます。

メタ認知能力を高めるトレーニングだけでなく、管理者として俯瞰的、客観的な視点を持って訪問看護における考えや日々の活動を発信していくことで採用にも大きな効果が期待できます。

また、発信する情報に共感したマッチ度の高い求職者と出会う可能性も高まります。

VUCA時代に対応した管理者さんの実践事例

さいごに、今回ご説明したVUCA時代に対応した管理者の実践事例をお伝えします。

以前、いろいろナースのインタビューでご紹介した東京都八王子の訪問看護ステーション「クオーレ八王子」の管理者である青柳さんは、約1年程前から本格的にホームページのブログやエックスなどのSNSによる情報発信に取り組まれました。

訪問看護ステーション「クオーレ八王子」の管理者である青柳さん

※青柳さんのエックスはこちらをご覧ください。

エックスのフォロワーは、1年間で1,500人以上となり、青柳さんの情報発信に共感し、クオーレ八王子で働くことを希望する看護師、療法士から定期的に連絡が入るようになりました。

現在、青柳さんは、訪問看護ステーションのさらなる拡大、そして次の事業展開としてナーシングホームの開設に向けて準備を進めています。

クオーレ八王子のメンバーと

人材紹介会社を使わないマッチ度の高い採用を実現するためにも管理者の方は、是非、SNSやブログによる情報発信に取り組まれてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、訪問看護ステーションの管理者に向けてVUCA時代に対応し成長できる事業所を作るために知っておきたいこと、そしてリーダーとして取り組むべきことをお伝えしました。

VUCA時代における訪問看護の管理者には、単なる問題解決能力だけでなく、複雑な状況を的確に理解し、迅速かつ適切に対応するリーダーシップが求められます。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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