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喪失の悲嘆をやわらげる:訪問看護のグリーフケアの役割

訪問看護師は、健康管理や治療に携わるだけでなく、家族と共に大切な人の最期に立ち会うこともあります。

家族が大切な人を失ったとき、その悲しみや喪失感に向き合うことは非常に困難なことです。そして、家族の悲しみがもたらす影響を最小限にすることも、訪問看護師の重要な役割といえるでしょう。

本コラムでは、訪問看護が提供するグリーフケアをテーマに喪失の悲しみを軽減する方法やその具体的なアプローチにお伝えします。

グリーフケアとは?

グリーフケアとは?

「グリーフ(grief)」とは、は英語で「悲嘆」や「喪失感」を意味し、愛する人との死別や、病気やケガで生活が一変したときなどに体験する感情です。

グリーフケアとは、これらの「悲嘆」や「喪失感」の感情に対する心のケアのことを指します。喪失の悲嘆をやわらげ、回復を手助けし、日常生活を続ける過程を支援するのが、グリーフケアです。

グリーフケアにおける訪問看護師の役割

グリーフケアにおける訪問看護師の役割

大切な人との死別は、つらい感情がつきもので、それを克服するのは簡単ではありません。そんな家族の喪失による影響を最小限に抑えることも、訪問看護師の重要な役割の一つです。

喪失による悲嘆を軽減するためには、生前の関わり方が鍵となります。死別は避けられない現実ですが、家族が

喪失による悲嘆を軽減するには、生前かのかかわりかたが重要。死別は避けられるものではありませんが、家族が

「本人の望み通りの最期を迎えることができた」

「家族で穏やかな時間を共有することができた」

と感じることができれば、喪失の悲嘆を和らげることが可能です。

訪問看護師によるグリーフケアには、患者の生前から死別後まで、家族に関わることができるという特徴があります。

生前から関わっていた訪問看護師との会話や思い出話は、時に遺族の悲嘆を和らげる一助となることもあります。

訪問看護によるグリーフケアを通じて、絆を感じ、語り合い、支え合うことで、喪失の悲しみを軽減することができるのです。

グリーフケアの手段

グリーフケアの手段

自宅訪問

自宅訪問は、死別後に行われるケアの一つです。通常、事務手続きなどが終わった後、おおよそ1か月前後のタイミングで実施されることが多いです。この訪問では、家族の状態やニーズをよく考慮し、その人々にとって最適なケアを提供するための助けや支援が行われます。

来所相談

家族が看護師のもとを訪れ、直接相談することもあります。ここでは、悲しみや不安などの感情について話す機会が提供され、必要な情報や助言が提供されます。

電話

電話を通じて、家族が看護師に気軽に連絡を取ることができます。緊急の質問や感情の共有など、さまざまな状況で利用されます。

葬儀参列

葬儀や告別式に看護師が参列することで、家族に直接支援を提供し、感情的な負担を軽減します。

弔電

弔電は、お悔やみの気持ちを伝える手段です。看護師が弔電を送ることで、家族に寄り添い、心の支えとなります。

手紙・カードの送付

手紙やカードを通じて、言葉での支えや励ましを送ることがあります。手書きのメッセージは、家族に対する温かな思いやりを表現する方法です。

遺族会の開催

遺族会は、同じ経験をした人々が集まり、気持ちや経験を共有する場です。看護師が遺族会を開催することで、家族が支え合い、共感し合う機会を提供します。

これらの手段を通じて、訪問看護師は家族に寄り添い、悲しみや喪失感を軽減し、回復のプロセスを支援します。

グリーフケアの内容

グリーフケアの内容

グリーフケアでは、手紙や電話、自宅訪問などを通じて、遺族の気持ちに耳を傾けたり、遺族同士の集まりを設けたりします。

もし利用者との死別が予期せぬものであり、辛い状況だったり、遺族が周囲との繋がりを失っていたりする場合は、複雑な悲しみやうつ病のリスクが高まる可能性があります。そのため、こうしたケースでは特に注意が必要です。

それでは、訪問看護師による具体的なグリーフケアの内容について解説します。

ねぎらいの言葉をかける

遺族の感情を理解し、その気持ちに寄り添うために、優しい言葉や慰めのメッセージを伝えます。

家族の思いを傾聴する

家族が話すことを聴き、感情や思いを受け止めます。話すことで心の負担を軽減する支援を行います。

故人との思い出を共有する

家族と共に故人の思い出や良い思い出を振り返り、感情を分かち合います。

健康維持への言葉をかける

心身の健康を維持することの重要性を強調し、健康に気を配るように助言します。

健康状態を把握する

遺族の健康状態やストレスレベルを把握し、適切なケアを提供します。

支えになる人がいるか尋ねる

家族が必要な支えを受けられているか確認し、必要であれば支援の手段を提案します。

新たな問題点や心配事を確認する

日常生活での新たな問題や心配事を共有し、解決策を一緒に考えます。

死別により生じた生活上の問題に助言する

死別に伴って生活に影響を及ぼす問題に対して、具体的な助言やアドバイスを提供します。

必要に応じ利用できる支援先の紹介をする

必要ならば、専門的な支援やサービスを提供する機関や団体を紹介します。

正常な悲嘆過程を説明する

死別に伴う感情や悲嘆の過程を理解しやすく説明し、家族の感情を受け入れる手助けを行います。

複雑性悲嘆のアセスメントを行う

複雑な悲嘆の状況を評価し、専門的な支援が必要かどうか判断します。

社会活動の再開状況を確認する

社会的な活動の再開状況を把握し、適切なサポートが必要かどうか確認します。

遺族会を紹介する

同じ経験を共有できる遺族会などの集まりを紹介し、感情の共有と支え合いの場を提供します。

これらのアプローチを通じて、訪問看護師は遺族の心のケアを行い、喪失に伴う感情や困難に向き合うサポートを提供します。

弔問に行く時の注意すべきこと

弔問に行く時の注意すべきこと

電話連絡・日時の相談をする

利用者の弔問に訪れる際、電話連絡と訪問日時の調整が重要です。

電話をかける際には、遺族の気持ちや状況を考慮し、適切なタイミングを選びましょう。感情が落ち着いている時間帯や、遺族がゆっくり話せる状況を見計らって連絡を取りましょう。

遺族に訪問の日時を提案し、適切なタイミングを共に決めます。弔問の最適な時期は、通夜の前や訃報を聞いた日のうちが一般的です。ただし、夜間や休日になる場合は、翌日の早い時間を検討しましょう。

可能な限りまとまって訪問する

遺族は、故人をしっかりと見送るための通夜・葬儀の準備や、故人の親戚や知人への連絡などで忙しい時間を過ごしています。

このため、関わっていたスタッフや共に関わっていた関係機関のスタッフと連携し、できる限りまとまって訪問することが良いでしょう。

喪服は避け、地味で落ち着いた色の清潔な服装で

弔問の場所は、通常は自宅で行われますが、最近では斎場で行われることも増えています。この際、服装は故人を偲ぶ場であるため、適切なものを選ぶことが大切です。

派手な色やカジュアルすぎる服は避け、地味で落ち着いた色の清潔な服装を選びましょう。派手なアクセサリーや動物の皮は、控えましょう。

また、喪服を着用することは、予め不幸を予期していたかのように受け取られる可能性があるため、避けるべきです。故人を偲びつつも、その方針を尊重しましょう。

看護師としての職務上、通夜や葬儀に出席しないことが多いのですが、出席する際には社会的な通念に従い、黒の礼服姿で参列することが適切です。

あらかじめその家の宗教を確認する

故人への挨拶や思いを伝える際、あらかじめその家族の宗教について確認し、その信仰や儀式に合った対応を取るよう努めましょう。

たとえば、仏教の場合は線香を捧げる習慣がありますが、神道やキリスト教の場合は線香を捧げないことが多いなど、祈りや敬意を示す方法に宗教ごとに違いがあるからです。

遺族の宗教的な背景を尊重し、その方々が大切にする習慣や意義に敏感に対応することで、より深い共感とサポートを提供することができるでしょう。

弔問時の遺族への言葉かけ

弔問の際、遺族への言葉かけは非常に大切です。その際に意識すべき点は、訃報を受けて深い悲しみを感じている遺族の心情に寄り添い、共感することです。

遺族の気持ちを理解し、感情に共感する姿勢を示すことが重要です。言葉で表現しづらい感情や悲しみを分かち合うことで、遺族は支えを感じるでしょう。また、「つらいときはいつでも連絡くださいね」という言葉は、遺族に対して気持ちを吐露する場があることを伝える重要な表現です。

遺族の感情や状況に敏感になり、適切なタイミングで言葉をかけることが、彼らの心に寄り添い、支えることにつながります。弔問時の言葉かけは、遺族の悲しみや喪失に対する尊重と共感を示す重要な手段です。

グリーフケアから得られる訪問看護師の学び

グリーフケアから得られる訪問看護師の学び

グリーフケアでは、訪問看護師も利用者との死別を経験したことになります。これからのケアにどう活かしていくかをともに考えることが重要です。

遺族との関わりを通じて、看護師自身も自己のケアについて振り返り、さらなる質の高いケアを提供する方法を模索する契機となります。

グリーフケアから得られる訪問看護師の学びについて以下の文章をふまえて解説してください。

(1)学びの機会の獲得

グリーフケアを提供する過程で、自身の看護実践を振り返る機会が得られます。これにより、自身の専門性や人間性の成長につながります。患者と向き合いながら感じる思いや反省を通じて、看護師としてのスキル向上や成熟が促進されます。

(2)訪問看護への自信

遺族と直接関わる中で、家族の様子や反応を通じて、自身の看護が遺族にとってどれほど重要かを実感することがあります。この経験から、自分の看護が家族に安心感を与え、支えとなっていることに自信を持つようになるでしょう。

(3)職場の信頼関係の深まり

グリーフケアについて同僚と情報共有や話し合いを行うことで、看護師同士の信頼関係が深まります。異なる経験や視点を共有することで、より幅広い視野を得られ、職場内での協力と支援が強化されます。

グリーフケアを通じて得られるこれらの学びは、訪問看護師の専門性の向上やチーム内での協力を促進し、より質の高い看護ケアを提供するための一翼を担います。

訪問看護師自身のケアも大切

訪問看護師は、利用者の死別に立ち会う家族と接する中で、悩みや疲労感、緊張感などのネガティブな心理的影響を受けることがあります。これらの感情は看護師自身にも影響を与える可能性があります。

そのため、日常的に自分の感情と向き合い、リフレッシュすることが大切です。セルフケアを継続的に行い、自身のメンタルやエモーショナルな健康を保つことが求められます。感情の管理やストレスの軽減は、看護師が良いケアを提供するためにも必要です。

グリーフケアを提供する際には、職場内でのコミュニケーションや情報共有が重要です。チームメンバーと協力し、ケアの目的や方法について相談し合いながら取り組むことで、支え合いのチームワークを築くことができます。

また、自身のケアを振り返ることも大切ですが、失敗や課題を責めるだけでなく、前向きな反省を心がけましょう。うまくいかなかった点を改善する過程も成長の一環です。

死別後のケースカンファレンスは、ケアの振り返りだけでなく、スタッフと情報を共有し、感情や負担をシェアすることになるため、看護職自身の精神的なサポートの場にもなります。

まとめ

訪問看護のグリーフケアは、家族が大切な人を失ったときに向き合う難しい瞬間で、悲しみや喪失感の軽減を支える重要な役割を果たします。訪問看護師は健康管理や治療だけでなく、家族と共に大切な人の最期にも関わり、家族の心のケアを通じて支えます。

喪失に直面した家族の心情を理解し、適切なアプローチを通じてねぎらいの言葉や共感を伝えることで、彼らの悲しみを軽減する一助となります。

また、訪問看護師自身もグリーフケアを通じて成長し、学びを得ることができます。自己ケアとチームワークを大切にし、訪問看護のプロフェッショナルとしての役割を果たしていきましょう。

参考文献:ナースのためのやさしくわかる訪問看護

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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