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訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい5つの理由

訪問看護ステーションはナーシングホームに参入することで、ご利用者に対して、訪問看護だけでなく、生活支援や24時間の医療・介護サポートなど、多様なケアサービスを提供できるようになります。

さらに、長期にわたりご利用者との継続的なケアでのつながりを維持することが可能になります。

ナーシングホームは高度な医療・介護スキルが必要な施設のため、より専門的な医療ケアやリハビリテーションサービスを提供することができる訪問看護ステーションからの参入が適しているといわれています。

こうしたことから近年では、訪問看護ステーションがナーシングホームへの参入を検討するケースが増えてきています。

しかしながら、ナーシングホームの開業にあたっては、訪問看護ステーション経営者が経験したことのない分野として、土地の選定や建築の設計施工をはじめ、運営基準に従った必要設備、備品、人員基準、各スペースの確保を遵守しなければならないといった難しさに直面します。

さらに、ナーシングホームの設立、運営には多額の資金が必要となり、その資金調達には信頼性のある事業計画や将来の収益性の見通しを示さなければならないという難しい側面があります。

また、訪問看護ステーションとは異なる職種の採用や、ご入居者獲得の難しさがあります。

そこで本日は、訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しいとされる5つの理由について解説します。

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由①:建築ノウハウ・知識が乏しい

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由①:建築ノウハウ・知識が乏しい

訪問看護ステーションがナーシングホームに参入する際の主な難しさのトップに挙げられるのは、建築に関する知識やノウハウ不足です。

経営者が建築の専門知識を持っていないため、建築業者への正確な要望や指示が難しく、結果として建築業者からの提案で建築施工を任せる形で進行してしまうことが多いです。

建築業者の提案に依存して建築施工を進めることは、ナーシングホーム経営にさまざまな問題やリスクをもたらす可能性があります。例えば、以下のような問題やリスクが考えられます。

(1) ニーズと施設のミスマッチ

建築業者は建築技術に詳しい専門家ですが、高齢者ケアや介護の専門的な知識がないため、建築業者が提案する設計やレイアウトが、実際の高齢者のニーズや介護スタッフの業務に合わない場合があります。

その結果、施設の使い勝手や機能性が低下したり、ご利用者の満足度が低下する可能性があります。

(2) 法的・規制の遵守不足

建築業者がナーシングホームの法的な規制や建築基準を十分に理解していない場合、施設が適切な安全基準や衛生条件を満せず、トラブルが発生する可能性があります。

(3) コスト超過のリスク

建築施工において、建築業者に言われるがままに進めることで、予算を超える費用が発生する可能性があります。

コスト管理を怠ると、予想外の支出が発生してしまう場合があります。

(4) 機能性や快適性が犠牲となる

建築業者が主導する場合、施設の機能性や快適性が犠牲になってしまい、ナーシングホームに合わない設計になる場合があります。

このように、訪問看護ステーションがナーシングホームに参入する際、建築に関する知識やノウハウが不足しているため、建築業者への正確な要望や指示を行うことが難しくなり、さまざまな問題やリスクが生まれます。

問題やリスクを避けるためには、建築業者の提案を的確に判断し、高齢者ケアや介護に関する専門家と協力しながら進めることが重要です。

建築業者の専門的な知識を活用しつつ、ご利用者のニーズや法的要件を適切に満たすバランスを取ることが、訪問看護ステーションがナーシングホーム参入で成功につながるポイントです。

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由②:資金調達が厳しい

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由②:資金調達が厳しい

ナーシングホームの建設や運営には高額の投資が必要です。土地の購入、建物の建設、設備の導入、専門スタッフの雇用、運営費など、多岐にわたるコストがかかり、相応の資金調達を行う必要があります。

資金調達を行う際には、ビジネスプランや収支予測などの詳細な情報が求められます。しかし、新しい事業分野へ進出する場合、それに関連するデータや実績が限られていることがあり、金融機関などの信頼を得ることが難しいこともあります。

ナーシングホームは長期にわたる運営が求められるため、持続可能な事業計画やキャッシュフローの確保が必要です。

ご利用者数や料金設定に関する不確定要素や介護業界の特性や規制、リスクに対する金融機関の慎重な姿勢も資金調達を難しくする要因となります。

参考まで以下に、一般的なナーシングホーム設立から運営に係わる費用内訳を示します。

1. 建築費用

・建物の設計・施工費用

• 土地購入費用

• 建築許可や諸手続きに関連する費用

• 建築に伴う付随的な費用(解体、造成、基礎工事など)

これらを合わせて1億円から数億円の資金が必要となります。

2. 設備投資

・ ナーシングホーム内の設備購入費用(ベッド、家具、照明など)

• 医療機器や介護支援機器の調達費用

• インフラストラクチャー(通信、電気、水道など)の設備投資

3. 運営費用

・人件費(看護師、介護士、管理職、支援スタッフなど)

• 研修・教育プログラムの費用

• 食事提供の費用

• 清掃・保守管理費用

• 施設保険費用

• 環境整備や居住者サービス向上のための投資

4. 営業・マーケティング費用

・ 宣伝広告費用

• HP制作やマーケティング活動に関する費用

• 販促物の制作費用

5. 運用コスト

・ ご利用者向けサービスや医療ケアの提供にかかる

• 月々の固定費(電気代、水道代、通信費など)

6. 法的・規制関連費用

・許認可や規制遵守に関連する費用

• 法律顧問やコンプライアンス体制の費用

7. リスクマネジメント費用

・事業継続保険料などのリスク対策費用

8. 緊急時対応の予備費用

・ 災害や緊急事態に備えた予備費用

9. 管理費用

・ 管理業務に関わるオフィス費用や運用コスト

これらの費用は、計画の規模や地域、提供するサービス内容によって異なります。

ナーシングホームを立ち上げる際には、詳細な予算計画を策定し、各項目ごとのコストを検討することが重要です。また、資金調達に成功しても、その資金を返済する負担や運用コストが発生します。

利益を上げるまでには時間がかかることもあり、返済や運用に充てる資金が確保されないと、経営が継続困難になる可能性があります。

ですので、資金調達の難しさを乗り切るためには、将来的な収益見込みや運営効率の向上も検討に入れて、持続可能なビジネスモデルを確立することが重要となります。

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由③:スタッフ採用が厳しい

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由③:スタッフ採用が厳しい

訪問看護ステーションの経営においても看護師の採用は困難な局面がありますが、ナーシングホームの場合は看護師の採用の難しさに加えて、さらに次のような別の3つの難しさが存在します。

(1)法規制への適合の難しさ

ひとつ目は法規制への適合の難しさがあげられます。

ナーシングホームの運営には法的な規制や業界基準が厳しく関与しています。ご入居者の安全や福祉を保障するために、様々な人員基準や規則を遵守しなければなりません。

これらの規制を遵守するために、適切な人材を確保しなければなりません。

(2)24時間常勤の確保の難しさ

ふたつ目に24時間常勤の確保の難しさがあります。

ナーシングホームはご入居者の健康管理や医療的ケア、緊急時の対応を提供する必要があるため、24時間体制で介護士や看護師を常勤させることとなります。

これにはいくつかの複雑な人材管理の側面が関わってきます。

まず、24時間の勤務体制を構築するためには、介護士や看護師のシフトを組む必要があります。

24時間の勤務体制を構築するためには、介護士や看護師のシフトを組む必要があります。

これは、昼夜を問わず適切な人員を配置し、ご入居者の健康状態やケアニーズに応じたサポートを確保するための鍵となります。

しかし、スタッフのシフト調整はご入居者の状態や予測不能な緊急事態によって常に変動するため、柔軟性と即時性が求められます。

また、24時間の勤務体制を実現するためには、スタッフの適切な休暇や労働条件の配慮が必要です。連続勤務や夜勤のシフトは、スタッフの健康や働きやすさに影響を及ぼす可能性があります。

したがって、適切な休息時間を確保し、労働基準法に則った運用が求められます。また、スタッフの休暇やシフトの変更に対応するためのバックアッププランも必要です。

さらに、異なる専門分野や経験を持つスタッフをバランスよく配置することも重要です。

高度な医療的ケアや複雑な状況に対応するためには、看護師や医療従事者のプロフェッショナリズムが必要ですが、同時に入居者の日常的な生活支援を提供する介護士も不可欠です。異なるスキルセットを持つスタッフを協調させ、チームとしての効果的な働きを実現することが求められます。

以上のように、ナーシングホームにおける24時間体制の人材管理は、ご入居者の健康と安全を確保するために重要な役割を果たしますが、スケジュールの組み立てや適切な休暇の確保、異なるスキルセットのスタッフの協調など、多くの複雑な要因を考慮する必要がありナーシングホーム参入の難しい部分といえます。

(3)介護職の採用の難しさ

三つ目に介護職の採用の難しさがあります。

ナーシングホームでは看護職だけでなく、介護職も重要な役割を果たします。

ご入居者の日常生活サポートや心理的なケアを提供するために、介護職の質の確保も必要です。

介護職の採用には次のようないくつかの困難さが存在します。

1. 人材不足と競争激化

介護業界は高齢化社会の進展に伴い需要が増えていますが、同時に資格や経験を持った介護職の供給が追いついていません。その結果、介護施設やナーシングホーム間で優秀な介護職員の確保に競争が生じ、適切なスタッフを採用することが難しくなっています。

2. 肉体的・精神的負担の重さ

介護職はご入居者の身体的なケアだけでなく、心理的なサポートも提供する役割を担います。ご入居者の健康状態や行動に応じて、肉体的にも精神的にも負担が増大することがあります。こうした負担の増加により、介護職への興味が減少し、業界全体で人材不足の問題が浮き彫りになっています。

3. 賃金や労働条件の問題

介護職の賃金水準が他の職業に比べて低いことや、労働時間の長さ、休日の少なさなどが、人材採用のハードルとなっています。こうした経済的・労働条件の不利な側面が、業界への就業意欲を低下させています。

これらの要因により、ナーシングホームでの介護職の採用は非常に難しい状況にあります。

訪問看護ステーションがナーシングホームに参入し介護職の確保と保持のためには、給与待遇の改善や働きやすい環境の整備、資格取得支援などの取り組みが必要となります。

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由:④ご入居者確保が難しい

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由:④ご入居者確保が難しい

ナーシングホームのご入居者確保は、訪問看護ステーションのご利用者獲得とは異なるいくつかの難しい側面を持っています。

第一にあげられることは、ナーシングホームへの入居は、高齢者やそのご家族にとって大きな決断となるため、長期的なコミットメントやニーズに合ったサポートが求められるということです。

これら長期的なコミットメントやサポートに対して高齢者やそのご家族は、入居の検討段階で不安や疑問を抱くこともあり、信頼を得るのは難しい側面となります。

ナーシングホームの運営においては、情報提供や透明性を通じて信頼を築き、ご入居者の安心感を促進する努力が必要です。
また、ご入居者と家族がゆっくりと選択を進められるような環境づくりが重要となります。

第二にナーシングホームのご入居者確保の難しい側面として、高額な入居費用と月額の負担が挙げられます。一般的に、数百万円の入居一時金や月に2~30万円の費用がかかるケースが多いです。

こうした高額な費用がご入居者に求められる場合、多くの高齢者やそのご家族は経済的な重荷を感じることがあります。ナーシングホームの参入には、適切な入居費用や月額の設定が求められます。

また、ご入居者やそのご家族は、ナーシングホームのケアの質や評判を非常に重視します。ご入居者が安心して過ごせる環境と、適切な医療ケアや介護が提供されない場合、ご入居者確保が難しくなります。口コミや評価の影響が大きいため、ケアの質向上と評判の管理が重要です。

これらの要因を考慮しながら、ナーシングホームはご入居者のニーズや期待に応えるサービスを提供し、費用や手続きの面でのハードルを低減する努力を行うことが重要となります。

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由⑤差別化がわからない

訪問看護ステーションのナーシングホーム参入が難しい理由⑤差別化がわからない

訪問看護ステーションからのナーシングホーム参入にあたり、差別化を考えることは難しい課題です。

その背景として以下のようないくつかの要因が考えられます。

1. ナーシングホームは基本的な医療ケアや生活支援を提供する役割を果たしており、多くの施設が概ね同様のサービスを提供しています。そのため、ケアの差別化は難しいことがあります。

2.高齢者のニーズや嗜好は多様であり、全てのご入居者に適したサービスで差別化することは難しい側面があります。

3.差別化を実現するには、新しい設備の導入や人材の起用が必要な場合があり、資金的制約が差別化のハードルになることがあります。

こうした状況の中で差別化を達成するためには、創意工夫を行い、他と異なる施策を見出す必要があります。

資金的な制約がある中でも、専門的なケア、居住者の快適さ、スタッフとサービスの質、地域との連携など、他とは異なる付加価値を提供することが求められます。

また、訪問看護ステーションがナーシングホーム市場に参入し、競争力を持つための差別化策として、ご家族とのつながりを重視することも有効です。

例えば、定期的なイベントやワークショップを通じて、ご家族との交流の場を設けたり、ご入居者の健康管理や生活支援に関する情報をご家族に提供することで、ご家族の安心と信頼につながります。

まとめ

訪問看護ステーションがナーシングホームへの進出により、生活支援や24時間の医療・介護サポートなど、多岐にわたるケアサービスを提供できるなどのメリットがあります。

これによりご利用者との長期にわたる持続的なケアの連続性を確保することができます。

しかし、同時に訪問看護ステーションがナーシングホームに参入する際には、先述したような難しい要素が存在します。

このため、多くの訪問看護ステーションがナーシングホームへの参入を検討しても、やめてしまうケースも多くあります。

現在、特別養護老人ホームの待機者は約30万人とされ、介護度の高い高齢者や、医療ケアが必要な方の老人ホームの供給不足の問題が深刻化しています。

そのため、訪問看護ステーションのナーシングホーム参入に対する期待が高まっています。

訪問看護ステーションがこれら難易度の高い要素を一つずつ克服することで、ナーシングホーム市場での急速な拡大が実現する可能性があります。

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いろいろナースから生まれた看護師の独立事例を冊子にまとめました。岩田看護師(34才女性)は、総合病院に勤めながら「看護師が働き続けられる職場を作りたい」と訪問看護での独立を志望。

訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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