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【令和4年度改定対応】専門の研修を受けた看護師の同行訪問を評価する「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」とは?

訪問看護師がステーション内だけでの対処が難しいと感じる事例においては、特定の専門分野において最新の知識や技術を習得した専門性の高い看護師(専門看護師や認定看護師など)と連携することによって改善に繋がることがあります。

平成24年度の診療報酬改定では、この「専門の研修を受けた看護師の同行訪問」を評価する訪問看護基本療養費が新設され、令和4年度の診療報酬改定では、さらにその範囲が拡大されました。

今回は、専門の研修を受けた看護師の同行訪問を評価する「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」について、算定要件や要件を満たす研修内容、専門性の高い看護師との同行訪問の流れなどについてお伝えします。

目次

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」とは

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」とは、緩和ケア, 褥瘡ケアまたは人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が、特定の算定対象者に対して他の訪問看護ステーションや保険医療機関の看護師等と共同して、同一日に訪問看護サービスを提供した場合に算定できる療養費です。

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」とは

平成24年の診療報酬改定で「在宅患者訪問看護・指導料 3」と合わせて新設されました。

当該専門の研修を受けた看護師が所属する訪問看護ステーションまたは医療機関において月に1回を限度として算定可能です。

専門の研修を受けた看護師とは

専門の研修を受けた看護師とは

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」における緩和ケア, 褥瘡ケアまたは人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師とは、以下の研修を受けた看護師になります。

以前は、緩和ケア, 褥瘡ケアに係る専門の研修が対象でしたが、令和4年度の改定により、褥瘡ケアに係る専門の研修を受けた看護師として、特定行為研修修了者(褥瘡管理関連)が追加されました。

(1)緩和ケアに係る専門の研修
(ア)国または医療関係団体等が主催する研修であること (600時間以上の研修期間で, 修了証が交付されるもの)

(イ)緩和ケアのための専門的な知識・技術を有する看護師の養成を目的とした研修であること

(ウ)講義および演習により、次の内容を含むものであること

イ:ホスピスケア 疼痛緩和ケア総論および制度等の概要
ロ:悪性腫瘍または後天性免疫不全症候群のプロセスとその治療
ハ:悪性腫瘍または後天性免疫不全症候群患者の心理過程
ニ:緩和ケアのためのアセスメント並びに症状緩和のための支援方法
ホ:セルフケアへの支援および家族支援の方法
へ:ホスピスおよび疼痛緩和のための組織的取組とチームアプローチ
ト:ホスピスケア 緩和ケアにおけるリーダーシップとストレスマネジメント
チ:コンサルテーション方法
リ:ケアの質を保つためのデータ収集・分析等について
ヌ:実習により、事例に基づくアセスメントとホスピスケア 緩和ケアの実践

要件を満たす看護師
緩和ケア (がん性疼痛看護), 乳がん看護 がん放射線療法看護 がん薬物療法看護 がん化学療法看護) の認定看護師またはがん看護の専門看護師
(2)褥瘡ケアに係る専門の研修
(ア)または (イ)

(ア) 国または医療関係団体等が主催する研修であって、必要な褥瘡等の創傷ケア知識・技術が習得できる600時間以上の研修期間で、修了証が交付されるもの

(イ)保健師助産師看護師法第37条の2第2項第5号に規定する指定研修機関において行われる褥瘡等の創傷ケアに係る研修

(ウ) 講義および演習等により、褥瘡予防管理のためのリスクマネジメント並びにケアに関する知識・技術の習得、コンサルテーション方法、質保証の方法等を具体例に基づいて実施する研修

要件を満たす看護師
皮膚・排泄ケア認定看護師特定行為研修修了者 (創傷管理関連)
(3)人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修
(ア)または (イ)

(ア)国または医療関係団体等が主催する研修であって、必要な人工肛門および人工膀胱のケアに関する知識・技術が習得できる600時間以上の研修期間で修了証が交付されるもの

(イ)講義および演習等により, 人工肛門および人工膀胱管理のための皮膚障害に関するアセスメント並びにケアに関する知識・技術の習得 コンサルテーション方法,質保証の方法等を具体例に基づいて実施する研修

要件を満たす看護師
皮膚・排泄ケアの認定看護師

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」の算定対象者

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」の算定対象者は、以下になります。

・悪性腫瘍の鎮痛療法もしくは化学療法を行っている利用者


・真皮を越える褥瘡の状態にある利用者
(在宅患者訪問褥瘡管理指導料を算定する場合にあっては真皮までの状態の利用者)


・人工肛門もしくは人工膀胱周囲の皮膚にびらんなどの皮膚障害が継続または反復して生じている状態※にある利用者、または人工肛門もしくは人工膀胱のその他の合併症(ストーマ陥凹、ストーマ脱出、傍ストーマヘルニア、ストーマ粘膜皮膚離開など)を有する利用者

※この状態の評価には、ABCD-Stoma®と呼ばれるストーマ周囲皮膚障害の重症度スケールが使用されます。A(近接部)、B(皮膚保護剤部)、C(皮膚保護剤外部)の3つの部位のうち、いずれか1部位でも、びらん、水疱・膿疱、または潰瘍・組織増大の状態が1週間以上継続しているか、もしくは2か月以内に反復して生じている場合、これが該当するかどうかを判断します。

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」の算定要件

上記の悪性腫瘍の利用者に対する緩和ケア、褥瘡ケア、または人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに関する専門の研修を受けた看護師による訪問看護(同一建物居住者の場合も同額)。

算定に際しては、緩和ケア、褥瘡ケア、または人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに関する専門の研修を受けた看護師が配置されていることを、地方厚生(支)局に対して届出する必要があります。

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」の算定料

訪問看護基本療養費(Ⅰ)のハまたは(Ⅱ)のハ 訪問看護ステーション 12,850円(月1回)
在宅患者訪問看護・指導料 3 医療機関 1,285点(月1回)

※訪問看護管理療養費の算定はできません。

専門性の高い看護師との同行訪問の効果とは

専門性の高い看護師との同行訪問の効果とは

医療機器や薬剤は年々改良され、在宅医療にも新しい技術が取り入れられ、それらの最新の知識・技術やアセスメント能力を身につけた専門性の高い看護師も年々増えてきています。

「痛みの軽減がしきれず、薬剤の使用方法について悩んでいる…」

「褥そうの評価やスキンケアの方法について、いまのままで良いのだろうか…」

「ストーマ合併症が疑われる場合の対処方法が正しいのか不安…」

このような訪問看護ステーション内だけでは解決が困難な課題でも

・緩和ケア・疼痛コントロール
・褥瘡・皮膚・排泄のケア
・人工肛門ケア・ストーマ管理
・人工膀胱ケア

などについて専門的に学習して最新知識を持つ看護師と連携してアセスメントをすることで、解決の糸口が見つかったり、利用者個々の生活や環境に合ったより良いケアを見つけ出したりすることが可能となります。

また「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」は、月1回算定が可能ため、計画的に専門性の高い看護師に同行訪問等をしてもらい経過を追って評価してもらうことができます。

専門性の高い看護師との同行訪問の流れ

専門性の高い看護師との同行訪問の流れ

(1)利用者に専門性の高い看護師との同行訪問について提案する

利用者に、専門性の高い看護師と同行訪問することによる効果について、費用のことや手間についても含めて説明します。

① 専門性の高い看護師に訪問してもらう利点

褥瘡や痛みなどについて専門的に学習して新しい知識を持つ看護師がアセスメントをすることで、より効果的なケア方法を提案してもらうことができます。

また、月1回算定が可能ため、計画的に同行訪問し経過を追って評価してもらうことができます。

② 医療機関等に支払う医療費

専門性の高い看護師の同行訪問の診療報酬は月 1 回算定が可能で、利用者の自己負担は 1 回につき 1 割負担の場合は 1,285 円(3 割負担の場合は 3,855 円)です。

(2)地域内の専門性の高い看護師を探す

地域内の訪問看護ステーションにいる専門性の高い看護師は、以下の方法で探すことができます。

① 日本看護協会のホームページから探す

日本看護協会の以下のページより専門分野ごとの専門看護師、認定看護師を都道府県別、資格区分別、分野別等に検索ができます。

https://nintei.nurse.or.jp/certification/General/GCPP01LS/GCPP01LS.aspx

(日本看護協会HP:専門看護師・認定看護師・認定看護管理者 分野別都道府県別登録者検索)

② 自らのネットワークを活用して探す

地域内で専門性の高い看護師の情報を共有するネットワークを構築しておくことも重要です。

普段から地域の病院が主催する勉強会などに参加してネットワークを広げていくことで、専門性の高い看護師と出会ったり、情報を得ることができます。

(3)専門性の高い看護師の所属する医療機関等に同行訪問の可否を確認する

専門性の高い看護師が勤務している医療機関などに同行訪問の可能性を確認しましょう。もし連絡先がホームページなどで公開されている場合は、そちらに連絡してみてください。

留意すべき点として、病院によっては専門性の高い看護師が存在しても同行訪問が行われていない場合や、「同行訪問する距離」や「受診患者・訪問診療利用者に限る」などの条件が設定されていることがあります。したがって、事前に確認しておくことが必要です。

(4)利用者に同行訪問の同意を得て、主治医に相談する

利用者の主治医に専門性の高い看護師による訪問について相談します。

専門性の高い看護師と同じ日に訪問する場合も、主治医が発行した訪問看護指示書に基づく訪問となります。

そのため、利用者が専門性の高い看護師を受け入れることによって利用料が発生する可能性や支払い方法、支払い手続きの手間などについて丁寧に説明し、同意を得ます。

医療機関などによって支払い方法が異なるため、事前に確認しておくことが重要です。

(5)専門性の高い看護師に同行訪問を依頼する

実際に来てもらう専門性の高い看護師に同行訪問の承諾をもらいます。その際には、以下の事務手続きについて確認をおこないます。

・連絡の経路
・利用者からの医療費の支払い方法
・交通費の発生の有無
・請求書の発行時期(初回訪問時に発行が可能か)
・その他 情報提供する内容
・公文書の要不要

(6)情報共有や日程調整を行う

利用者の情報や訪問前に伝えておくべき留意点などを、電話やメールなどで共有し、同行訪問の日程について協議します。情報交換の際には、個人情報の取り扱いには十分な注意が必要です。

(7)同行訪問の実施

専門性の高い看護師と同行訪問を行います。

(8)専門性の高い看護師の所属する医療機関等への医療費支払いについて説明する

通常、支払いを受ける医療機関の所属職員(専門性の高い看護師など)が説明を行いますが、時には利用者にとって身近な存在である訪問看護ステーションが支払い方法を説明することもあります。費用と支払い方法については、利用者が理解しやすくなるように丁寧に説明をおこないます。

(9)同行訪問後の情報共有

同行訪問後に、必要な情報を共有し、今後の方針を検討します。今回が単発の同行訪問なのか、それとも継続的な同行訪問を検討するのかなどを合意し、初回の訪問だけでは決められない場合は、連絡方法などに関しても協議します。

同行訪問の結果や専門性の高い看護師の提案については、通常の訪問看護計画書や訪問看護報告書に適切に記載します。

(10)利用料金の支払いを受ける

訪問看護ステーションは、訪問看護療養費の支払いを受けます。

「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」算定の注意ポイント

訪問看護ステーション内に専門性の高い看護師いる場合

同じ訪問看護ステーション内の利用者への訪問においても、専門性の高い看護師が担当している場合は、「訪問看護基本療養費(Ⅰ)のハおよび(Ⅱ)のハ」の算定はできません。

この場合は通常の訪問看護と同様に、訪問看護基本療養費と訪問看護管理療養費を算定します。条件が満たされる場合は、複数名の訪問看護加算を算定できます。

看護師間の電話や面談等での相談のみの場合には算定不可

看護師間の電話や面談による相談のみの場合には算定できません。訪問看護ステーションの看護師等と専門性の高い看護師が同一日に訪問した場合に、算定が可能になります。

特別の関係にある医療機関等の看護師でも算定可能

専門性の高い看護師が所属する医療機関等が、依頼元の訪問看護ステーションと特別な関係にある場合であっても、算定は可能です。

まとめ

今回は、専門の研修を受けた看護師の同行訪問を評価する「訪問看護基本療養費(Ⅰ)ハ」について、算定要件や要件を満たす研修内容、専門性の高い看護師との同行訪問の流れなどについてお伝えしました。

訪問看護ステーション内で解決が難しい課題に対しても、専門性の高い看護師と協力することで、問題の解決策を見つけたり、利用者の生活や環境に適したより良いケアを提供する可能性が広がります。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

専門性の高い看護師との同行訪問等について詳しくは、一般社団法人 全国訪問看護事業協会の「専門性の高い看護師と連携するためのガイド(訪問看護ステーション用)」をご覧ください。

参考文献:一般社団法人 全国訪問看護事業協会「専門性の高い看護師と連携するためのガイド(訪問看護ステーション用)~「訪問看護基本療養費(Ⅰ)のハ及び(Ⅱ)のハ」「在宅患者訪問看護・指導料 3」の算定にあたって ~

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。

>保険外美容医療での看護師独立ストーリー

保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

石原看護師がどのようにして時間や場所にとらわれない働き方を実現できたのか、その経緯、現在の状況、そして今後のビジョンについてお話をうかがいました。

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