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精神科訪問看護基本療養費(医療保険)とは?

日本の高齢化の進展に伴い、高齢者の在宅での生活支援やケアニーズが増える中、統合失調症やうつ病などの精神疾患を抱える方も増加しています。

精神科や心療内科に通院され精神疾患と診断されている方や診断はなくとも睡眠障害などで主治医が訪問看護が必要と判断した場合には、精神科訪問看護のサービスが提供されます。

主治医の精神科訪問看護指示書と精神科訪問看護計画書に基づき訪問看護を行った場合には、「精神科訪問看護基本療養費」(医療保険)が算定されます。

今回は、この「精神科訪問看護基本療養費」をテーマに届出基準や算定要件、報酬体系から算定上の留意点、加算の種類等についてお伝えします。

精神科訪問看護基本療養費とは

精神科訪問看護とは、統合失調症やうつ病、双極性障害、アルコール依存症、摂食障害、強迫性障害などの精神疾患を持っている方や、心のケアを必要としている方の自宅に訪問して看護を提供する制度です。

精神科訪問看護基本療養費とは

精神障害を有する利用者またはその家族等に対して主治医の精神科訪問看護指示書と精神科訪問看護計画書に基づき訪問看護を行った場合には、「精神科訪問看護基本療養費」(医療保険)が算定されます。

精神科訪問看護を提供して精神科訪問看護基本療養費を算定するためには、地方厚生(支)局へ届出を提出し、要件を満たす看護師等がサービスを提供する必要があります。

平成24年度の診療報酬改定において、精神科訪問看護の質の向上を図るための研修や経験について、解釈が統一されていなかったため、平成26年度の報酬改定で明確化されました。

届出の基準は以下の通りです。

精神科訪問看護基本療養費の届出基準届出基準

精神科訪問看護基本療養費を算定する訪問看護ステーションの保健師,看護師,准看護師または作業療法士は,次のいずれかに該当する者であり,当該者でなければ精神科訪問看護基本療養費は算定できない (精神科訪問看護は研修修了者もしくは経験者でなければ行えない)。

1.精神科を標榜する保険医療機関において, 精神病棟または精神科外来に勤務した経験を1年以上有する者。


2.精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験を1年以上有する者。


3.精神保健福祉センターまたは保健所等における精神保健に関する業務の経験を1年以上有する者。


4.国、都道府県または医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する知識・技術の習得を目的とした20時間以上を要し, 修了証が交付される研修(以下の内容を含むもの)を修了している者。

ア 精神疾患を有する者に関するアセスメントイ 病状悪化の早期発見 危機介入

ウ 精神科薬物療法に関する援助

エ 医療継続の支援

オ 利用者との信頼関係構築, 対人関係の援助

カ 日常生活の援助

キ 多職種との連携

ク GAF尺度※による利用者の状態の評価方法

※研修修了者は、最寄りの地方厚生(支)局に届け出を行わなければなりません。各月の月末までに受理されたものは、その翌月から、月の最初の開庁月に受理された場合は当該月の1日から、精神科訪問看護の診療報酬の算定が可能になります。

※GAF尺度とは

GAF(Global Assessment of Functioning)は、精神保健従事者や医師が成人の社会的、職業的、心理的機能を評価するために使用される、1から100までの数値スケールです。

この尺度は、患者の全体的な機能レベルを評価し、その精神的健康状態や生活能力を把握するのに役立ちます。数値が高いほど患者の機能が良好であり、低いほど機能が低下していることを示します。

GAF (機能の全体的評定)尺度

100-91 広範囲の行動にわたって最高に機能しており、生活上の問題で手に負えないものは何もなく、その人の多数の長所があるために他の人々から求められている。症状は何もない。
90-81 症状がまったくないか、ほんの少しだけ (例: 試験前の軽い不安)。すべての面でよい機能で、広範囲の活動に興味をもち参加し, 社交的にはそつがなく, 生活に大体満足し 日々のありふれた問題や心配以上のものはない (例: たまに家族と口論する)。
80-71 症状があったとしても 心理社会的ストレスに対する一過性で予期される反応である(例: 家族と口論した後の集中困難)。 社会的, 職業的, または学校の機能にごくわずかな障害以上のものはない (例: 一時的に学業に遅れをとる)。
70-61 いくつかの軽い症状がある (例:抑うつ気分と軽い不眠)。 または社会的, 職業的,または学校の機能にいくらかの困難はある (例: 時にずる休みをしたり. 家の金を盗んだりする) が,全般的には機能はかなり良好であって, 有意義な対人関係もある。
60-51 中程度の症状 (例: 感情が平板で 会話がまわりくどい時にパニック発作がある)、または, 社会的、職業的, または学校の機能における中程度の困難 (例: 友達が少ししかいない 仲間や仕事の同僚との葛藤)。
50-41 重大な症状 (例: 自殺念慮, 強迫的儀式が重症, しょっちゅう万引する)、 または社会的,職業的、または学校の機能におけるなんらかの深刻な障害 (例: 友達がいない, 仕事が続かない)。
40-31 現実検討かコミュニケーションにいくらかの欠陥 (例: 会話は時々非論理的、 あいまい、 または関係性がなくなる)。 または, 仕事や学校 家族関係, 判断, 思考または気分など多くの面での重大な欠陥 (例: 抑うつ的な男が友人を避け, 家族を無視し, 仕事ができない。 子供がしばしば年下の子供をなぐり 家庭では反抗的であり、学校では勉強ができない)。
30-21 行動は妄想や幻覚に相当影響されている。 またはコミュニケーションか判断に重要な欠陥がある (例: 時々, 滅裂, ひどく不適切にふるまう, 自殺の考えにとらわれている), またはほとんどすべての面で機能することができない (例: 1日中床についている、仕事も家庭も友達もない)。
20-11 自己または他者を傷つける危険がかなりあるが (例: 死をはっきりと予期することなしに自殺企図, しばしば暴力的になる, 躁病性興奮)、 または時には最低限の身辺の清潔維持ができない (例: 大便をぬりたくる) またはコミュニケーションに重大な欠陥 (例: 大部分滅裂や無言症)。
10-1 自己または他者を傷つける危険が続いている (例: 暴力の繰り返し)、または最低限の身辺の清潔維持が持続的に不可能, または死をはっきり予測した重大な自殺行為。
0 情報不十分

精神科訪問看護基本療養費の報酬体系

精神科訪問看護基本療養費は、利用者の病状や訪問頻度、条件によって算定料が変動します。

精神科訪問看護基本療養費の報酬体系

時間区分はありませんが、精神科訪問看護基本療養費は訪問時間が30分以上と30分未満で基本療養費の額が異なるため、注意が必要です。

なお、30分未満の訪問に関しては、主治医が短時間訪問の必要性を認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合にのみ算定できます。

精神科訪問看護基本療養費の報酬体系は表のようになります。

精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)
イ 保健師、看護師、作業療法士 週3日目まで
30分以上:5,550円/日
30分未満 4,250円/日
週4日目以降
30分以上 : 6,550円/日
30分未満 5,100円/日
□ 准看護師 週3日目まで
30分以上:5,050円/日
30分未満: 3,870円/日
週4日目以降
30分以上: 6,050円/日
30分未満 : 4,720円/日
精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ) (同一建物居住者への訪問看護)
イ 保健師、看護師、作業療法士 同一日2人 週3日目まで
30分以上:5,550円/日
30分未満 :4,250円/日
週4日目以降
30分以上: 6,550円/日
30分未満 5,100円/日
同一日3人以上 週3日目まで
30分以上:2,780円/日
30分未満:2,130円/日
週4日目以降
30分以上:3,280円/日
30分未満 2,550円/日
□ 准看護師 同一日2人 週3日目まで
30分以上:5,050円/日
30分未満:3,870円/日
週4日目以降
30分以上:6,050円/日
30分未満 4,720円/日
同一日3人以上 週3日目まで
30分以上:2,530円/日
30分未満:1,940円/日
週4日目以降
30分以上:3,030円/日
30分未満 2,360円/日
精神科訪問看護基本療養費(IV) (外泊者への訪問看護)
8,500円
入院中に1回 (基準告示第2の1に規定する疾病等の利用者※の場合は入院中に2回) 限りの算定。

※平成30年度の改定により、精神科訪問看護基本療養費(Ⅱ) 1,600円は廃止されました。

精神科訪問看護基本療養費の算定上の留意点

精神科訪問看護基本療養費の算定上の留意点

精神科訪問看護基本療養費(I)または(ⅢI)を算定する際には、訪問看護記録書、訪問看護報告書、訪問看護療養費明細書に、月の初日の訪問看護時におけるGAF尺度により判定した値を記載します。

平成24年度の改定により、退院後3か月以内の利用者には、週5回まで精神科訪問看護が可能となりました。ただし、退院後3か月を超えている利用者で週4日以上訪問看護を要する場合は、特別指示書が必要です。

精神科特別訪問看護指示書は、精神症状が急性増悪し頻回の訪問看護が必要であると精神科医が判断した場合に交付されます。精神科特別訪問看護指示書が交付された場合、14日を限度として日数制限なく訪問ができます。特別指示書の交付の日から起算して14日以内に行った場合は、月1回に限り、14日を限度として所定額を算定できます。

また、精神科特別訪問看護指示書が交付された利用者に対する訪問看護については、利用者の病状等を十分に把握し、一時的に頻回に訪問看護が必要な理由を看護記録に記載し、訪問看護計画書の作成および訪問看護の実施等において、主治医と連携を密にする必要があります。

精神科訪問看護基本療養費の加算

訪問看護管理療養費およびその加算等については、訪問看護基本療養費と同様に設定されています。

精神科訪問看護基本療養費の加算

精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)、(Ⅲ)の加算には以下のものがあります。

① 特別地域訪問看護加算

訪問看護ステーション等が、介護サービスの確保が著しく困難であると認められる地域などにおいて、事業所を設置し、介護サービスの確保に貢献していることを評価する加算です。

特別地域訪問看護加算に該当する地域

1.離島振興法の規定により離島振興対策実施地域として指定さた離島の地域

2.奄美群島振興開発特別措置法に規定する奄美群島の地域

3.山村振興法により振興山村として指定された山村の地域

4.小笠原諸島振興開発特別措置法に規定する小笠原諸島の地域

5.沖縄振興特別措置法に規定する離島

6.過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法に規定する

特別地域訪問看護加算の算定額
加算の種類 算定料
特別地域訪問看護加算 所定額の50/100×訪問日数

② 精神科緊急訪問看護加算

訪問看護ステーションが主治医からの指示等を受けて計画外の訪問を行った時に算定できます。

精神科緊急訪問看護加算の算定額
加算の種類 算定料
精神科緊急訪問看護加算 2,650円×緊急訪問日数

③ 長時間精神科訪問看護加算

長時間の訪問を必要とする利用者に対して、1時間30分を超えて訪問看護を提供することで算定できます。

長時間精神科訪問看護加算の算定額
加算の種類 算定料
長時間精神科訪問看護加算 5,200円・週1日を限度

④ 夜間・早朝訪問看護加算 深夜訪問看護加算

利用者または家族の求めに応じて、夜間、深夜、早朝の時間帯に指定訪問看護を提供した場合に算定されます。

夜間、深夜、早朝の時間帯とは、以下になります。

夜間:午後6時~午後10時まで

深夜:午後10時~午前6時まで

早朝:午前6時~午前8時まで

夜間・早朝訪問看護加算 深夜訪問看護加算の算定額
加算の種類 算定料
夜間・早朝訪問看護加算 2,100円/1回
深夜訪問看護加算 4,200円/1回

⑤ 複数名精神科訪問看護加算

精神科訪問看護における複数名訪問加算は、スタッフの職種に応じて異なる回数や金額で算定されます。

訪問看護基本療養費の複数名訪問看護加算とは、算定方法が異なります。算定にあたっては、医師が複数名訪問の必要性を認め、精神科(特別)訪問看護指示書にその旨および理由を記載することが要件となります。

複数名精神科訪問看護加算の算定額
同行する職員(職種) 回数制限 同一建物 設定額
保健師、看護師、作業療法士 1日に1回まで 同一建物内1人 4,500円
同一建物内2人 4,500円
同一建物内3人以上 4,000円
1日に2回まで 同一建物内1人 9,000円
同一建物内2人 9,000円
同一建物内3人以上 8,100円
1日に3回以上 同一建物内1人 14,500円
同一建物内2人 14,500円
同一建物内3人以上 13,000円
准看護師 1日に1回まで 同一建物内1人 3,800円
同一建物内2人 3,800円
同一建物内3人以上 3,800円
1日に2回まで 同一建物内1人 7,600円
同一建物内2人 7,600円
同一建物内3人以上 6,800円
1日に3回以上 同一建物内1人 12,400円
同一建物内2人 12,400円
同一建物内3人以上 11,200円
看護補助者または
精神福祉士の場合
週1回 同一建物内1人 3,000円
同一建物内2人 3,000円
同一建物内3人以上 2,700円

⑥ 精神科複数回訪問加算

同一建物内において精神科複数回訪問加算または難病等複数回訪問加算(1日当たりの回数の区分が同じ場合に限る)を同一日に算定する利用者の人数に応じて算定されます。

精神科複数回訪問加算の算定額
難病等複数回訪問加算 同一建物の人数 算定料
1日に2回訪問した場合 2人以下 4,500円/1日
3人以上 4,000円/1日
1日に3回訪問した場合 2人以下 8,000円/1日
3人以上 7,200円/1日

※令和4年度の改定により、同じ金額の評価区分が統合されました。


この他、精神科訪問看護に関する加算には、「精神科重症患者支援管理連携加算」が設定されています。精神科重症患者支援管理連携加算についてはこちらの記事をご覧ください。

【令和4年度改定対応】訪問看護の精神科重症患者支援管理連携加算(医療保険)

まとめ

今回は、「精神科訪問看護基本療養費」をテーマに届出基準や算定要件、報酬体系から算定上の留意点、加算の種類等についてお伝えしました。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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