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地域医療構想から策定する訪問看護ステーションの経営戦略とは

人口減少と高齢化が進む中、医療ニーズの変化や労働力の減少を考慮し、より効率的で質の高い医療を提供するために、わが国では地域医療構想が進められています。

地域医療構想では、病院の病床機能を区別し、地域の医療需要と供給を検討しながら病床数を調整することとなります。

特に急性期や慢性期の医療においては、病床数を削減し、訪問看護を中心に在宅医療に移行する方針となります。

そのため、今後訪問看護ステーションを経営していく上で、この地域医療構想の政策内容を理解し、事業戦略を策定することが重要となります。

本日は、地域医療構想の政策について解説し、そこから導き出される訪問看護ステーション経営のポイントをまとめました。

地域医療構想とは

超高齢社会にも耐えうる医療提供体制を構築するため、2014年6月に成立した「医療介護総合確保推進法」によって、地域医療構想が制度化されました。

地域医療構想とは

地域医療構想は、将来人口推計をもとに2025年に必要となる病床数(病床の必要量)を以下の4つの医療機能ごとに推計した上で、病床の機能分化と連携を進め、効率的な医療提供体制を実現する取組みです。 

各病棟の病床が担う医療機能

医療機能の名称 医療機能の内容
高度急性期機能 ○ 急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が特に高い医療を提供する機能
※ 高度急性期機能に該当すると考えられる病棟の例
救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット、新生児集中治療室、新生児治療回復室、小児集中治療室、総合周産期集中治療室であるなど、急性期の患者に対して診療密度が特に高い医療を提供する病棟
急性期機能 ○ 急性期の患者に対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能
回復期機能 ○ 急性期を経過した患者への在宅復帰に向けた医療やリハビリテーションを提供する機能
○ 特に、急性期を経過した脳血管疾患や大腿骨頚部骨折等の患者に対し、ADLの向上や在宅復帰を目的としたリハビリテーションを集中的に提供する機能(回復期リハビリテーション機能)
慢性期機能 ○ 長期にわたり療養が必要な患者を入院させる機能
○ 長期にわたり療養が必要な重度の障害者(重度の意識障害者を含む)、筋ジストロフィー患者又は難病患者等を入院させる機能

参照元:厚生労働省「病床機能報告 報告マニュアル① 医療機能の選択にあたっての 考え方について

地域医療構想の実現のために、構想区域ごとに「地域医療構想調整会議」が設置されました、

「地域医療構想調整会議」では、各医療機関が自主的に選択する病床機能報告制度に基づく現状の病床数と地域医療構想における2025年の病床の必要量(必要病床数)、さらには医療計画での基準病床数を参考にして、病床の地域偏在、余剰または不足が見込まれる機能を明らかにして地域の実情を共有し、関係者の協議によって構想区域における課題を解決し、2025年の医療提供体制構築を目指すこととしています。

これにより、地域ごとに最適な医療提供体制が整備され、将来の医療ニーズに合わせ、より効率的で質の高い医療を提供できるようになることが期待されています。

地域医療構想が必要となった背景

地域医療構想が必要となった背景

地域医療構想の必要性は、2025年問題において、団塊世代が75歳に達する時期において、医療分野に予測される以下のような影響から生じています。

1.後期高齢者の増加に伴う医療・介護ニーズの高まり

75歳以上の高齢者の増加により、医療および介護ニーズが急増し、それに対応する適切な受け皿が必要となります。

2.医療費の増加と社会保障費の負担増大

高齢者の医療需要が増えることで医療費が増加し、それに伴い社会保障費の負担が増大します。

3.医療関連の人材不足

高齢者の医療需要の増加により、医師など医療関連の人材が不足してくることが顕著です。

2025年問題による、こうした影響を考慮し、限られた資源をより効果的かつ効率的に配置する必要があります。
これが地域医療構想が必要となった背景となっています。

地域医療構想の病床再編とは

地域医療構想は質の高い医療を効率的に提供するための政策で、その具体的な政策の一環として、医療再編があげられます。

医療再編では、現在ある病院機能を、高度急性期機能、急性期機能、回復期機能、慢性期機能に区別し、各機能の病床の必要数と需要数を推計し、2025年に向けて再編計画を推進します。

2015年から2025年までの病床再編の病床機能報告についてまとめた2020年度の計画は次のとおりです。

2015年から2025年までの病床再編の病床機能

2015年から2025年までの病床再編の病床機能

参照元:厚生労働省「地域医療構想、医療計画について 令和3年度 第2回医療政策研修会及び地域医療構想アドバイザー会議

医療構想政策の病床再編が示すもの~訪問看護に求められる体制とは

医療構想政策の病床再編が示すもの~訪問看護に求められる体制とは

前述の2015年から2025年までの病床再編が示すものによって、訪問看護を中心とする在宅医療に求められる体制がわかります。

各機能の病床再編の数字と、それに基づく訪問看護を中心とした在宅医療に求められる体制についてみていきましょう。

1.高度急性期

• 2015年:16.9万床
• 2025年:13.1万床
• 減少数:3.8万床

高度急性期病床の減少は、高度急性期が必要数より過剰であることと同時に、重い症状や緊急性のある患者が早期退院し、在宅療養に移行する可能性を示唆します。

訪問看護などの在宅医療において緊急性の高い患者の24時間・365日対応の体制のさらなる強化が求められます。

2. 急性期

• 2015年:59.6万床
• 2025年:40.1万床
• 減少数:19.5万床

急性期病床の減少は、高度急性期が必要数より過剰であることと同時に、全身状態が安定せず、24時間集中的な治療や観察が必要な状態ある患者が在宅療養に移行することを示唆します。

訪問看護など在宅医療において、さまざまな処置や検査の介助・医療機器の管理、点滴サポートができる体制が求められます。

3. 回復期

• 2015年:13.0万床
• 2025年:37.5万床
• 増加数:24.5万床

回復期病床が24.5万床も増加することは、高度急性期・急性期の病床から、回復期の病床へと機能転換と、在宅移行を促すことを示唆しています。

訪問看護などの在宅医療において多種多様な疾患に対応できる体制が求められます。

4.慢性期

• 2015年:35.5万床
• 2025年:28.4万床
• 減少数:7.1万床

慢性期病床が7.1万床減少されることは、長期にわたり療養が必要な重度の障害(重度の意識障害を含む)や難病など、治癒が困難で病気が進行する、回復期を終えた患者の受け皿を在宅や施設、老人ホームへ移行する方針が示唆されています。

訪問看護などの在宅療養で、再発予防や身体機能の維持・改善を目指しながら、長期的な看護、治療を行っていく体制が求められます。

地域医療構想からわかる、訪問看護ステーション経営の重要なポイント

地域医療構想からわかる、訪問看護ステーション経営の重要なポイン

前述のように、地域医療構想において、2025年までには人口構造と疾病構造の変化に対応し、高度急性期・急性期病床を減少させる一方で回復期病床を増加させます。

また、慢性期病床は減らすという方針が進められています。

2025年に向けて入院の需要が増加しても、病床を減らしながら対応することが地域医療構想の病床再編の目指す方向です。

このことは在宅医療で入院機能を果たす可能性を示唆しており、訪問看護や在宅医療においてどのような体制を強化するべきかの判断材料となります。

ここでは、地域医療構想からわかる訪問看護ステーション経営の重要なポイントを、地域医療構想の実現の要となる3つの観点から説明します。

地域医療構想の実現の要となる3つの観点

(1) 急性期から回復期や在宅への転換

(2) 慢性期の医療ニーズへ対応する在宅医療・介護サービスの確保

(3) 不足が予測される医療従事者の養成

(1) 急性期から回復期や在宅医療への転換

(1) 急性期から回復期や在宅医療への転換

地域医療構想では、高度急性期・急性期病床を減少させ、回復期病床を増加し、急性期から回復期や在宅医療への転換を図るとしています。

そのため、全身状態が安定せず、24時間集中的な治療や観察が必要な状態にある患者が回復期や在宅療養に移ることが予測されます。

こうしたことから、訪問看護では、医療依存度が高い患者が地域において増加することを考慮し、24時間365日対応体制、重度者への対応や看取りの機能を強化していくことが必要となります。

加えて地域住民等に対する在宅医療に関する情報提供や相談、人材育成のための研修を実施することも大切であり、こうした体制づくりは、平成24年の診療報酬改定において新たに創設された機能強化型訪問看護ステーションを目指すことでもあります。

急性期から回復期や在宅医療への転換の観点から、訪問看護ステーションは24時間 365日対応体制、重度者への対応や看取りの体制を強化し機能強化型訪問看護ステーションのような総合的な機能を持つことが経営のポイントとなります。

また、急性期からの在宅医療への移行とは自宅だけでなく、自宅での看護や介護が困難なケースを想定したナーシングホームなどの住まいの提供も視野に入れた経営戦略も必要となるでしょう。

(2) 慢性期の医療ニーズへ対応する在宅医療・介護サービスの確保

慢性期医療機能の病床が減少することで、長期にわたって療養が必要な患者、重度の障害や難病患者などが従来の入院型医療から在宅医療に移行することになります。

重度の障害や難病患者などが従来の入院型医療から在宅医療に移行することになります。

しかしながら、すべての在宅移行患者が自宅での療養ができる環境ではないことも事実です。

こうした状況下では、訪問看護ステーションが住まいを併設し、在宅医療環境を整備することで、慢性期の患者が医療的なケアを受けながら、自宅に近い環境で生活することが可能となります。

訪問看護ステーションが整備する住まいのナーシングホームでは以下のような機能を持つことで、慢性期医療機能の病床の減少に対処し、長期療養者、重度や難病患者が安心して在宅への移行ができるとされています。

訪問看護ステーションが整備する住まいのナーシングホーム

1. 安全な住環境の整備

スタッフの動きやすさに配慮し、重度者や難病患者の居住に適した設計、緊急時の避難路、機械浴、見守りセンサーシステムの導入など、入居者の安全な住環境を整備します。

2.医療的ケア

医師や看護師による定期的な診療や健康管理が提供されます。

3.専門職の常駐

ナーシングホームには、看護師や介護職といった専門職が常駐します。これにより、入居者の日常的な健康管理や急な状態変化に迅速に対応できます。

4.緊急時の対応

病状の急変や緊急の医療ニーズに対応する仕組みが整備され、迅速かつ適切な対応が行われます。

5.在宅移行支援

入院治療を終えた後にナーシングホームでの在宅療養へスムーズに移行するために、退院支援を実施します。

6. 福祉サービスと日常生活サポート

入浴や食事のサポート、排泄ケアなどの福祉サービスの提供や、掃除、洗濯などの日常生活のサポートを行い、入居者が安心して暮らせるよう配慮します。

7. 定期的な健康モニタリング

入居者の健康状態を定期的にモニタリングし、早期の問題発見や予防措置を講じます。

8. レクリエーションやイベントの提供

ナーシングホームでは、レクリエーションや季節のイベント活動が行い、入居者が充実した生活と心身の健康促進につなげます。

9. 家族との繋がり

入居者の家族との繋がりを重視して、面会の機会を多くし、家族との情報共有や話し合いなどコミュニケーションを行います。

10. 連携体制の構築

医療機関、薬局、配食サービス、各種地域資源など、さまざまな関係者との連携を通じて一体的なケアを提供します。


地域医療構想実現の要である慢性期の医療ニーズへ対応する在宅医療・介護サービスの確保の観点から、訪問看護ステーションは、慢性期医療機能の病床の減少に対処し、長期療養者、重度や難病患者が安心して暮らせる住まいであるナーシングホームを充実させることが経営のポイントとなるでしょう。

(3)不足が予測される医療従事者の養成

(3)不足が予測される医療従事者の養成

地域医療構想の実現には、予測される医療従事者の不足に対処するために、訪問看護ステーションが医療従事者の養成を充実させることが期待されています。

以下に訪問看護ステーションが医療従事者の養成を充実させる要点をまとめました。

1. 実地実習の提供

訪問看護ステーションが提供する看護学生などへの訪問看護現場での実地実習を充実させることは、看護における臨床スキルや地域医療への理解を深める重要な要素となります。

2. 職種別研修の提供

訪問看護ステーションで、医療従事者が必要なスキルや知識を磨くための研修プログラムを作成し、看護師、理学療法士、作業療法士など、様々な職種に対する専門的な研修が行われ、地域医療に必要な知識やスキルを身につけることが期待されます。

3. 地域連携と協働

訪問看護ステーションは地域の医療機関や教育機関と連携し、医療従事者の養成において協働関係を築き、地域全体で医療リソースを共有し、効果的な養成環境を整備することが求められます。

4. 地域への医療従事者の定着支援

訪問看護ステーションは地域における医療従事者の定着を促進する役割も果たしています。地域に密着した医療提供者の確保は、患者との信頼関係の構築や地域医療の安定性に寄与します。

5. 新たな職種の育成

地域医療構想が進む中で、ターミナルなどの新たな分野での専門職の必要性が生まれることがあります。
訪問看護ステーションはこれに対応し、新たな分野での育成や専門的なトレーニングを提供することが期待されます。

これらの取り組みにより、訪問看護ステーションは地域医療構想の一翼を担い、将来的な医療従事者の不足に対処するための役割を果すことが大切です。

地域医療構想実現の要である、不足が予測される医療従事者の養成の観点から、訪問看護ステーションは、医療従事者の養成機能を充実させることが経営のポイントとなるでしょう。

まとめ

わが国では、人口減少と高齢化が進む中、医療ニーズの変化や労働力の減少を考慮し、より効率的で質の高い医療を提供するために、地域医療構想が進められています。

この構想では、病床機能の区分化と病床数の削減が含まれています。病床数が削減される中で、入院需要が増加する状況において、その受け皿となるのが在宅医療です。

今後ますます、在宅医療の役割が重要性を増すことが予測されます。

訪問看護ステーションは在宅医療の中心的な役割を果たしており、地域医療構想の政策内容を理解した上で、経営戦略を策定することで、事業成長を果たすことができます。

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