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在宅での服薬サポートで訪問看護師が理解すべきポイント

在宅で療養される方の多くは、慢性疾患を抱えており、薬物療法を受けています。長期にわたる療養生活において、薬物療法を適切に進めるためには、服薬のサポートが不可欠です。

在宅で療養する利用者やその家族の生活において、医療行為の一環である「服薬」をどのようにうまく組み込んでいくかを考えることは、訪問看護師の大切な役割の一つです。

このコラムでは、在宅での服薬サポートに関連する必要な知識やサポート内容について、訪問看護師が理解すべきポイントについてお伝えします。

訪問看護師の服薬サポートが重要な理由

訪問看護師の服薬サポートが重要な理由

慢性疾患の治療でもっとも大切なのが日々の服用です。確実な服用を維持するために訪問看護師は、日々の訪問の中で利用者者の病状、残存機能、性格などをみながら提案をおこないます。

主治医が利用者を診察するのは月に2回の診察時に限られますが、訪問看護師は毎週、利用者の生活を見守ります。この情報を主治医にフィードバックすることも重要な役割です。

たとえば、利用者がいくつもの医療機関を受診している場合、1日に3回服用する薬と1日に2回服用する薬など、複雑な処方になっていることもあります。

日々の生活習慣に合わせた服薬支援が行えるよう,療養者や家族からの話に加え、訪問介護員も活用する連絡ノートも使って服薬状況を確認し、主治医やケアマネジャーに情報を伝えるなど、利用者が服薬しやすく、効果が正しく得られる環境を整えていきます。

在宅服薬管理で取り扱うことの多い薬剤の注意点

(1)インスリン

近年、糖尿病のある利用者の中で、在宅でインスリンの自己注射による血糖コントロールが増加しています。インスリン製剤は、ペン型の注入器(注射器)が主流となり、高齢者にも使いやすいものとなっています。しかし、視力低下や記憶力低下がある場合、適切に注射を実施できないことがあることに留意が必要です。

さらに、病院では3食の食事をしていた利用者が、自宅では朝と夕方の2食で過ごすようになった場合、インスリンの投与回数に関する指示が変更されていないことがあります。

訪問看護師は、利用者が服薬できる薬剤と、生活に合わせた服薬方法を検討するために、主治医に利用者の生活状況に関する情報を提供します。このように、利用者の個別のニーズと生活スタイルに合わせた適切なインスリン管理が重要です。

(2)麻薬管理(ペインコントロール)

痛みの緩和を目的として、痛みの種類や程度に合わせた鎮痛薬(定期薬と即効性薬)が使用されます。これに際して、疾患や痛みの強さ、タイプ、日常生活への影響などを評価し、利用者の生活状況や家族の介護状況に合わせて、主治医と看護師が協議して適切な薬剤の使用を検討します。

医療用麻薬に対する誤解は多く、内服に躊躇することがあります。そのため、麻薬に関する説明を十分に行うことが非常に重要です。利用者や家族に対して、麻薬の性質や使用の理由、リスクなどをわかりやすく伝えることが必要です。

さらに、麻薬を内服する際に便秘や吐き気などの強い副作用が起きることがあり、これによって内服を中止することがあります。このような場合、副作用の対処法を含めて説明し、利用者が安心して鎮痛薬を内服できるようにサポートします。

(3)睡眠薬(向精神薬)

睡眠障害を改善するために、睡眠薬や睡眠導入剤が使用されることがありますが、これらの薬を適切に利用するには医療専門家によるアセスメントが必要です。

睡眠薬の服用1日目に効果があまりみられないからといって増量すると、3~4日後にそれまで蓄積された薬物の効果が急に現れ、意識がもうろうとして足元がふらついて転倒することがある可能性があります。

また、長期間にわたって睡眠薬を服用していると、日中に傾眠(眠気が強い状態)が起こり、飲食量が減少して脱水症状を引き起こす独居高齢者が在宅療養の中で多く見られます。

また、加齢に伴い、記憶力や活動性が低下し、うつ傾向や不安症状が現れる高齢者に対して、家族が過剰に心配し、精神科医に相談して薬の処方を希望することがあります。しかし薬だけで症状を抑えようとすることは、多剤使用につながり、副作用のリスクも増加します。

このように療養者や家族の意向に沿いながら,本当に必要となる薬の処方・服薬を管理していくこと非常に重要です。

剤形別の飲みかた・使いかたの指導方法

剤形別の飲みかた・使いかたの指導方法

薬には患部に応じてさまざまな剤形があります。剤形ごとの服用方法や使用方法の指導も、訪問看護師の重要な役割の一つです。

1.内服薬(錠剤・カプセル)

嚥下機能が低下している場合、薬が食道に張りつく可能性があるため、薬を服用する際にはコップ1杯の水か白湯を使用し、錠剤を砕く場合は薬剤師に確認を取ります。カプセルの中身を取り出さずに飲むことを心がけ、薬を摂取する際にはジュースではなく水を使いましょう。

2.内服薬(散剤)

内服薬の散剤を摂取する際、むせやすく飲みにくい場合は服薬ゼリーを利用できます。コップ1杯の水か白湯と一緒に服用し、服薬ゼリーや他の飲みやすい形態を使うことがオススメです。オブラートは口の中で大きな塊になり詰まることがあるため、小さな塊に分割することを心がけましょう。

3.舌下薬・トローチ

舌下薬やトローチを使用する際、薬をかみ砕いたり、のまま飲み込まないように気をつけましょう。狭心症などに用いる舌下薬は、服用前後に必ずバイタルサインなどを確認します。舌下スプレ剤を使用する場合は、何度も押していないかチェックすることが重要です。

4.座薬

座薬を使用する際、口からゆっくり息を吹き出すなど、スムーズに挿入する方法を利用者・家族に指導します。座薬は静脈から直接吸収されるため、速効性があります。挿入しやすくするために、座薬の先端にワセリンを塗り、患者に口から息を吹き出してもらうと良いです。座薬の挿入向きにも注意しましょう。

5.点眼薬・眼軟膏

点眼薬や眼軟膏を使用する際、手指の微細な運動が難しい場合もあるため、正確に薬を使用できているか確認が必要です。点眼薬の場合は、軽く目を開いて1~2滴点眼。涙嚢部を押さえて1~2分間目を閉じます。眼軟膏を使う場合、綿棒に小さな量をとり、まぶたの内側に水平に塗布します。点眼薬や眼軟膏を使用する際は、認知症の患者が誤って薬を使わないように気をつける必要があります。

6.点鼻薬

点鼻薬を使用する際、片方の鼻の穴をふさいでから薬を投与します。使用前には鼻をかんで鼻腔内をきれいにし、点鼻後は鼻腔内に薬を行きわたらせるために、鼻をつまむか、頭を後ろに反らせて数秒間鼻で呼吸します。

7.貼付薬

貼付薬は皮膚から吸収され、全身に効果がある薬です。これには狭心症治療薬、気管支拡張薬、がん性疼痛用麻薬、認知症治療薬などが含まれます。貼付薬を使う際には、貼る部位を毎回変えて皮膚刺激を減少させるようにしましょう。また、効果が強力な薬が多いため、使用方法にも十分に注意が必要です。患者には湿布のような感覚で他の人に薬を与えないように指導しましょう。

8.塗り薬

塗り薬には抗真菌薬、副腎皮質ステロイド、抗生物質などがあります。清潔な手で適量を取り、薄く伸ばしながら塗ります。適量は実際に見せながら説明し、厚く塗っても効果が変わらないことを理解してもらいます。

訪問看護の服薬サポートの4つのポイント

【ポイント1】服薬状況の確認~一人で服用できるかどうか

利用者の服薬自己管理能力を評価する際に、視力、聴力、認知状態、手指の巧緻性、嚥下状態などの身体機能を観察し、評価します。さらに、これらの機能がどの程度まで利用者が実行できるか、また、以下の補助用具や道具の使用によってどれだけ改善できるかも評価の一環として考慮します。

1.包装を破り,薬物を取り出す

2.薬物を口元まで運び,薬物を口の中に入れる

3.薬物をむせずに飲み込む

4.処方内容どおりに内服する

5.薬の保管方法に合わせて保管できる。

6.医療廃棄物の処理を行う

【ポイント2】薬剤についての利用者・家族の理解

利用者と家族が薬物の目的、服薬量、および1日の服薬回数を理解しているかどうかを確認します。理解が不十分な場合、具体的に何が理解できていないのかを詳しく聞き取り、利用者と家族が内服の必要性を十分に理解できるようにサポートします。

【ポイント3】服薬の効果,副作用の評価

薬の効果や副作用に気をつけるために、具体的な症状を伝えてそれについて聴取します。さらに、食事との組み合わせや他の薬剤との同時摂取に注意が必要なことについて指導を行います。

【ポイント4】拒薬・怠薬の理由

利用者が薬を嫌がったり、拒んだりする理由を探ります。服薬に対する嫌悪感、薬の効果が強すぎたり、副作用が現れたり、嚥下機能の低下など、これらの原因は薬物の影響に起因する可能性も考えられます。薬の過剰反応や副作用が疑われる場合、迅速に主治医に連絡し、適切な対応を取ります。

服薬管理は、多職種連携による適切なサポートが重要

服薬管理は、多職種連携による適切なサポートが重要

在宅で療養中の利用者が日常生活に合った服薬支援を提供できるよう、主治医や薬剤師と情報を共有し、薬の調整や服薬方法について協議し、ホームヘルパーやデイサービスのスタッフとも連携を図ることが重要です。

特に、認知症などで薬を飲むことが難しい人や、病識や健康への関心がない人々に対しては、地域の医療機関と訪問看護、介護職が連携して、服薬だけでなく療養者の心身を支えていく必要があります。

また、薬物の効果の出現には個人差があり、どんな薬にも副作用が存在します。特に高齢者では、肝・腎機能の低下が薬物の代謝機能や排泄機能に影響を与えることがあることに留意する必要があります。

まとめ

在宅での服薬サポートは、訪問看護師による重要な役割です。長期間の療養生活では、服薬の適切な管理が健康維持に欠かせません。今回は、訪問看護師が理解すべきポイントについて解説しました。

適切な支援を提供するために利用者の体調や服薬能力を確認し、服薬状況の確認、薬剤についての理解、服薬の効果と副作用の評価、拒薬・怠薬の理由の解明など、様々なポイントを把握する必要があります。

また在宅での服薬サポートには、多職種連携が不可欠です。医療機関や薬剤師、ヘルパーやデイサービススタッフと連携し、療養者に最適な服薬環境を整えることが大切です。訪問看護師の役割を通じて、療養者の健康と生活の質を向上させ、在宅での充実した生活をサポートします。

参考文献:ナースのためのやさしくわかる訪問看護

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いろいろナースから生まれた看護師の独立事例を冊子にまとめました。岩田看護師(34才女性)は、総合病院に勤めながら「看護師が働き続けられる職場を作りたい」と訪問看護での独立を志望。

訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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