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訪問看護ステーションの緊急時対応における加算とは(介護保険・医療保険)

「訪問看護推進連携会議」を構成する3団体(日本看護協会・全国訪問看護事業協会・日本訪問看護財団)が2014年に策定した「訪問看護アクションプラン2025」には、「日本全国どこでも24時間365日、高品質な訪問看護サービスを提供できる体制を整えること」が、訪問看護の主要な課題とされています。

訪問看護ステーションが、利用者の急変等にすぐに駆け付け、対応するためには、24時間対応できる体制の整備が必要です。

そのため、訪問看護ステーションの「緊急時に対応する体制」および「緊急時の対応」を評価する加算が設定されています。

介護保険では、24時間対応可能な体制を整えている場合に「緊急時訪問看護加算」を算定することができ、医療保険においては、24時間対応可能な体制確保に対し「24時間対応体制加算」、そして緊急時に訪問した際に「緊急訪問看護加算」が算定できます。

今回は、訪問看護ステーションの緊急時対応における加算について、介護保険、医療保険のそれぞれの算定要件や留意すべきポイントなどについてお伝えしていきます。

緊急時訪問看護加算とは?(介護保険)

緊急時訪問看護加算とは?(介護保険)

介護保険の加算である「緊急時訪問看護加算」とは、利用者や家族などからの緊急の連絡、緊急の相談、緊急時の訪問依頼に24時間365日対応する体制を整えていることを評価するための加算です。

そのため、利用者や家族からの緊急連絡や緊急訪問がなくても、一月につき1回、緊急時訪問看護加算は算定可能です。

緊急時訪問看護加算の単位数

加算の種類 単位数
指定訪問看護ステーションの場合 574単位/月
みなし指定訪問看護ステーション
(病院または診療所の場合)
315単位/月

緊急時訪問看護加算の算定要件

緊急時訪問看護加算の算定要件は、以下のとおりです。

・各都道府県に届出をして受理されていること


・利用者やその家族等に緊急時訪問看護加算の算定について書面で説明し、同意を得ていること


・利用者やその家族等から、電話などにより相談や看護ケアに関する意見を求められた場合、24時間対応できる体制であること


・計画に基づいた訪問以外の緊急時訪問に対応できる体制であること

緊急時訪問看護加算の留意点

(1)緊急時訪問看護加算は、その月の1回目に訪問した訪問看護の所定単位数に加算されます。


(2)実際に緊急時の訪問看護を行った場合は、その所要時間に応じた単位数を算定することになります。


(3)1人の利用者につき1か所の訪問看護事業所のみが算定されるため、他の事業所からの緊急時訪問看護加算を受けていないかどうかを確認する必要があります。


(4)緊急時訪問看護を行った場合、居宅サービス計画の変更手続きが必要となります。


(5)その月の1回目の緊急時訪問で、早朝、夜間、深夜の時間帯に訪問した場合でも算定できません。ただし、同じ月の2回目以降の緊急時訪問に関しては、算定が可能となります。

医療保険の緊急時対応における加算は2種類

医療保険の緊急時対応における加算は、2種類

医療保険においては、24時間対応可能な体制確保に対し「24時間対応体制加算」、そして緊急時に訪問した際に「緊急訪問看護加算」が算定できます。

それぞれについて詳しくみていきます。

24時間対応体制加算(医療保険)とは?

24時間対応体制加算(医療保険)とは?

「24時間対応体制加算」とは、必要な場合の緊急時訪問看護に加え、営業時間外における利用者や家族との電話連絡、利用者またはその家族への指導など、日々の状況を適切に管理する対応やその体制整備を評価するものです。

利用者の同意を得て、月に1回算定されます。

電話などの連絡のみを行う「24時間連絡体制加算」(2,500円)は、平成30年度の改定により廃止され、24時間対応体制加算に統合されています。

24時間対応体制加算の加算額

加算の種類 算定料
24時間対応体制加算の加算 6,400円/月

24時間対応体制加算の留意点

24時間対応体制加算の算定に当たっては,以下の点に注意が必要です。

(1)24時間対応体制に係る届出を地方厚生(支)局へ行います


(2)算定の際には、利用者の同意が必要です。また、訪問看護ステーションの名称、所在地、電話番号、および時間外および緊急時の連絡方法を記載した文書を交付します


(3)24時間対応体制加算は、1人の利用者に対して1つの訪問看護ステーションにおいてのみ算定できます


(4)24時間対応体制に係る連絡相談を担当する者は、原則として,当該訪問看護ステーションの保健師、看護師とし、勤務体制等を明確にします

ただし、機能強化型訪問看護管理療養費3の届出を行っている訪問看護ステーションにおいては、併設する医療機関の看護師が営業時間外における利用者またはその家族からの電話などに対応できます


(5)24時間対応体制加算の趣旨に鑑み、直接連絡のとれる連絡先は複数用意する必要があります

緊急訪問看護加算(医療保険)とは

緊急訪問看護加算(医療保険)とは

緊急時訪問看護加算は、訪問看護ステーションが利用者やその家族の要請に応じて、診療所または在宅療養支援の医師の指示に基づいて、定期的な計画に含まれない訪問看護を提供した場合に適用される加算です。

この加算は、訪問看護基本療養費(I)または(ⅡI)の加算として、1日につき1回算定できます。

緊急訪問看護加算の加算額

加算の種類 算定料
緊急訪問看護加算の加算 2,650円/1日

緊急訪問看護加算の算定要件

緊急訪問看護加算の算定要件は、以下のとおりです。

・利用者やその家族等に緊急訪問看護加算の算定について書面で説明し、同意を得ていること


・24時間連絡ができる担当者名や連絡先等、緊急時の注意事項、往診担当医、訪問看護の担当者名等を、利用者に文書で確実に提供されていること


・主治医から指示を受けて行う計画的ではない訪問であること


・病院や診療所が、往診や指定訪問看護により24時間対応できる体制が整っていること


・継続診療加算を算定している利用者の主治医が対応できない夜間等、連携先の意思から指示を受けて行う緊急訪問であること

・主治医が病院や診療所の保険医であること

緊急訪問看護加算の留意点

(1)同日に他の訪問看護事業所が訪問に入っていた場合、訪問看護基本療養費の算定はできず、緊急訪問看護加算のみの算定になる

医療保険では,同一日においては, 訪問看護療養費を算定できる
のは1か所の訪問看護ステーションのみが原則です。

同一日に計画に基づく訪問看護を行った訪問看護ステーションとは異なる訪問看護ステーションが利用者等からの要請に応じて、その主治医の指示に基づき緊急訪問を行った場合には、緊急訪問を行った訪問看護ステーションが緊急訪問看護加算のみを算定できます。

(2)緊急の訪問看護を行った場合は、主治医への速やかな報告が必要

緊急の訪問を行った場合には、速やかに主治医に報告し、必要に応じて特別訪問看護指示書の交付を受け、訪問看護計画の見直しを行います。

訪問看護の緊急時対応が必要となるケース

訪問看護の緊急時対応が必要となるケース

さいごに訪問看護ステーションの緊急時対応が必要となる5つケースについて解説します。

体調がいつもと違うと感じる時

利用者が体調が通常と異なると感じた場合、緊急時対応が必要です。これは、健康状態に変化が生じた可能性があるため、訪問看護ステーションに連絡し、看護師や医療専門家によるアセスメントが行われ、必要な措置が取られます。

介護や処置に不安を感じた時

利用者またはその家族が介護や処置に関して不安を感じた場合、緊急時の支援が必要です。訪問看護ステーションに連絡し、不安や疑問について相談できます。看護師や専門家は必要なアドバイスやサポートを提供し、適切な処置やケアを調整します。

転倒や転落をしてしまった時

利用者が転倒または転落事故を経験した場合、怪我や損傷の程度を評価し、適切な応急処置を施すために緊急対応が必要です。訪問看護ステーションに通報し、看護師や医療専門家による診察やケアが行われます。事故の原因を特定し、再発防止策を検討することも重要です。

医療機器のトラブルがあった時

医療機器の故障やトラブルが発生した場合、訪問看護ステーションに連絡して、修理や交換が必要な場合は適切な措置が取られます。医療機器は利用者の健康に重要な役割を果たすため、トラブルが発生した際は速やかに対処することが必要です。

薬の使用方法に迷った時

薬の使用方法に疑問や混乱が生じた場合、誤った服用や重大な問題を避けるために緊急時の支援が必要です。訪問看護ステーションに連絡し、薬剤師や看護師に薬の正しい使用方法や服用スケジュールについて指導やアドバイスを受けることができます。誤用や適切でない服用を避けるために、迅速かつ正確な情報提供が不可欠です。

まとめ

訪問看護ステーションの緊急時対応における加算について、介護保険、医療保険のそれぞれの算定要件や留意すべきポイントなどについてお伝えしました。

高齢化の更なる進展により「訪問看護による24時間の看護体制」への利用者のニーズは、今後さらに高まり、訪問看護ステーションには、緊急時にも対応できる体制を整備していくことが求められます。

加算の算定要件や留意点などの内容を正確に把握して、適切な介護保険請求、医療保険請求を行うことは非常に重要です。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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