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訪問看護管理者のタイムマネジメント術:重要な役割と時間の使い方

近年、看護師自ら経営者となり訪問看護ステーションを立ち上げるケースが増えています。

訪問看護ステーションは、看護職員(保健師、看護師、または準看護師)を常勤換算で2.5人が揃えばスタートできる事業であるため、最初のうちは、ステーションを立ち上げた看護師が経営者、管理者、訪問看護師の3つの立場を兼務していることも珍しくありません。

開業から1~2年は、少ない人数でやりくりしなければならないため、管理者もプレイヤーの一人として多くの時間を訪問看護に費やし、やらなければいけない管理業務やスタッフの育成等が手薄になりがちです。

ステーションの組織体制の構築や将来に向けた備えなど管理者としてやらなければいけないとわかってはいるものの、その時間がなかなか確保できないと悩まれている管理者の方も多いのではないでしょうか。

本コラムでは、日々訪問業務に追われている管理者・看護師に向けて、管理者としての業務を確保するためのタイムマネジメントの考え方についてお伝えします。

管理者が直接訪問に行くことのメリット

管理者が直接訪問に行くことのメリット

開業当初、管理者・看護師が直接訪問に行くことは、売上に貢献することはもちろん、利用者や地域の医師、ケアマネジャーからの信頼を得るなど多くのメリットがあります。

新規開設の訪問看護ステーションの約4割が廃止や休止に追い込まれるという現実もありますので、経営や売上など管理者としての責任感から自らもプレーヤーとして動いている管理者も多いと思います。

訪問看護がやりたくてステーション立ち上げた看護師さんであれば、「やりたかった看護」を実践できる訪問という行為に喜びを感じ、日々質の高い看護を提供されているでしょう。

管理者は、訪問看護ステーションの顔であり、管理者による訪問は、提供する看護サービスの評価や信頼の獲得に繋がります。

またスタッフの急な欠勤や離職による訪問の穴をカバーできるなど管理者が全体のバランスをみながらプレイヤーとしての役割を担うことは、ステーション運営に欠かせません。

管理者が訪問に行き過ぎてしまうことで発生するデメリット

管理者が訪問に行き過ぎてしまうことで発生するデメリット

管理者も、スタッフと同様に時間は有限であり、体も一つしかありません。

過度な訪問活動により、管理者として果たすべき役割に適切な時間を割けないことは、さまざまなデメリットを引き起こします。

(1)利用者獲得のための営業活動が手薄になる

管理者が過度に訪問に時間を費やすと、新しい利用者を獲得するための営業活動がおろそかになります

(2)今後の事業計画に向けた準備や計画ができない

管理者はステーションの長期的なビジョンや成長計画を立てる役割を果たすべきです。しかし、過度の訪問活動に追われていると、将来の戦略的な計画がおろそかになり、競争力を維持するための施策が不足する可能性があります。

(3)雇用者の環境の整備(労務管理)ができない

管理者が常に訪問に行っていると、雇用者とのコミュニケーションや労務管理に必要な時間が削られ、労務関連の課題が積み重なる可能性があります。

(4)スタッフが育たない

管理者がスタッフと話す時間や同行訪問できる時間不足すると、スタッフの成長や自主性の育成が妨げられます。成長実感を持てないことが離職に繋がる場合もあります。

管理者による過度な訪問活動は、労働環境の悪化やスタッフの離職につながり、残ったスタッフの負担を減らすために管理者がさらに訪問に力を入れるなど悪循環を生み出す結果となります。

訪問看護の管理者として果たすべき役割とは

訪問看護の管理者として果たすべき役割とは

では、訪問看護の管理者として果たすべき役割とは何でしょうか。

訪問看護ステーションの管理者の役割は大きく分けると2つあります。1つは、「サービス提供機関としての成熟を促す」こと。もう1つは、「安全で継続がケアができる組織にする」ことです。

つまり、信頼できる運営基盤として経営を安定させ、サービス提供機関としての成熟を促すこと、そしてステーションに所属する看護師・療法士が安全で継続的なケアを提供できる組織作りが管理者が果たすべき役割なのです。

厚生省が定める訪問看護ステーションの人員基準では管理者は「適切な指定訪問看護を行うために必要な知識及び技術を有するものであること」が求められています。

参照元:厚生労働省:指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準

そのため、管理者はまず、運営基盤の構築と運営面での専門知識を持つ必要があります。また、管理者はスタッフの育成や教育にも注力し、安全で質の高いケア提供が可能な組織文化を醸成しなければなりません。

そのためには、管理者自身が適切なリーダーシップを発揮し、組織内でのコミュニケーションを促進する役割も担います。

行うべき仕事の優先順位を整理する「時間管理のマトリクス」とは

行うべき仕事の優先順位を整理する「時間管理のマトリクス」とは

しかし、日々忙しく、時間に追われてしまい、スタッフの育成や組織体制の整備に時間を使うことが難しいと感じている管理者も多いでしょう。限られた1日の中でその時間をどのように生み出すか、そんな場合に参考になるのが「時間管理のマトリクス」という考え方です。

「時間管理のマトリックス」は、スティーブン・R・コヴィー氏の『7つの習慣』で紹介されている時間管理の方法であり、タスクの優先度を判断するフレームワークです。

この方法を使用することで、より俯瞰した目線で管理者である自分が行うべき仕事の優先順位を整理し、重要なことに時間を投資できるようになります。

訪問看護における時間管理のマトリックス

訪問看護における時間管理のマトリックス

時間管理マトリックスでは、「重要性(物事の効果性や本質に関わる度合い)」と「緊急性(早急な対応が必要かどうか)」の2つの軸を使用して、タスクを以下の4つの領域に分類します。

訪問看護における時間管理のマトリックスの4分類は、以下のようになります。

第1領域(必須:問題・課題の領域) – 緊急で重要なもの

この領域には、緊急かつ重要なタスクや課題が含まれます。訪問看護における具体的な例としては、次のようなものが考えられます。

・日々の訪問業務

・利用者からのクレームへの対応

・利用者からの急な呼び出しへの対応

・突発的な人員の不足への対処

・事故、災害、病気などへの迅速な対処

第2領域(価値:質の高い領域)- 緊急ではないが重要なもの

この領域には、緊急性は低いが重要なタスクや活動が含まれます。訪問看護における具体的な例としては、次のようなものが考えられます。

・提供サービスの品質改善

・新しい営業先の開拓

・次期管理者などの人材育成

・今後の計画に向けた準備

・スタッフの育成(同行訪問や個別面談)

第3領域(錯覚:見せかけの領域) – 緊急だが重要ではないもの

この領域には、緊急性があるように見えるが、実際には重要でないタスクや活動が含まれます。訪問看護における具体的な例としては、次のようなものが考えられます。

・目的が曖昧な打ち合わせ

・重要ではない電話やメール

・中身が薄い報告書

第4領域(無意味:ムダな領域) – 緊急でも重要でもないもの

この領域には、緊急性も重要性もない、無駄なタスクや活動が含まれます。訪問看護における具体的な例としては、次のようなものが考えられます。

・雑談や噂話

・意味のない電話やメール

・習慣化しているだけの会議

・その他無駄な活動

時間管理のマトリックスを活用することで、重要かつ緊急なタスクに焦点を当て、時間を効果的に使う方法を見つけることができます。特に訪問看護のような緊急性の高い業界では、緊急度と重要度を掛け合わせてタスクの優先順位を正しく整理していくことが重要です。

管理者として果たすべき仕事を洗い出し、緊急でも重要でもない仕事はスタッフに業務を移管していくことが、ステーションの効率的な運営に不可欠です。

訪問看護の時間管理のポイントは「第二領域への注力」

訪問看護の時間管理のポイントは「第二領域への注力」

訪問看護の場合、日々の訪問業務や急な呼び出しへの対応、突発的な人員の不足への対処など「第一領域」は、緊急に対応する必要があり、なおかつ売上や経営に直接繋がる業務です。当然ですが、「第一領域」の方が優先順位が高い業務となります。

しかし、管理者として緊急度の高いタスクから対応していくようなワークスタイルでは常に時間に追われてしまい、運営基盤の構築や人材育成に時間を使うことが難しくなります。

訪問看護の時間管理のポイントは「第二領域への注力」です。「第二領域」とは、緊急ではないが重要な事の領域です。仕事を進めていく上での急ぎではないですが、将来に向けた備えなど、重要度が高い内容を指します。これは「質の高い領域」とも言われています。

今すぐの緊急性はないものの、事前に取り組んでおくことで将来的に良い結果をもたらす重要な活動だということがわかります。管理者として、業務のバランスをとりながら第二領域に「投資する時間」を確保することが、ステーションの持続的な成長につながるのです。

まとめ

訪問看護ステーションの開業から1,2年は、日々の訪問業務に追われることが少なくありません。しかし、管理者としての重要な役割を果たすためには、タイムマネジメントが欠かせません。

管理者が直接訪問に行くことには多くのメリットがありますが、過度に訪問に時間を費やすことによってデメリットも生じます。重要なのは、適切なバランスを見つけ、管理者としての役割を果たすこと。管理者としての業務を確保し、組織の発展に焦点を当てるために、時間管理のマトリクスを活用し、第一領域と第二領域の両方に注力することが大切です。

訪問看護の時間管理のポイントは、「第二領域への注力」。緊急性の高い業務に追われる一方で、将来に備えて重要な活動にも時間を割くことが、ステーションの持続的な成長につながります。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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