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【令和6年度介護報酬改定】理学療法士等による訪問看護の新たな減算ルールとは

2024年6月より今年度の介護報酬改定の一部が施行されます。

今回の改定では、リハビリ専門職による訪問看護の実施に関する減算の考え方が明確化され、訪問看護ステーションにおけるリハビリテーション専門職によるサービスに対する評価の減算が適用されます。

今回は、令和6年度介護報酬改定において適用される理学療法士等による訪問看護の新たな減算ルールについて詳しくお伝えします。

リハ職による訪問の減算が適用された背景とは

令和6年度介護報酬改定では、理学療法士などによる訪問看護が適切に提供されるよう、サービス提供状況や体制に基づく加算の状況に応じて、基本報酬および12か月を超えた場合の減算の見直しが行われました。

厚生労働省の資料「訪問看護(改定の方向性)」では今回の改訂の背景・論点として以下の内容が挙げられています。

(1)前回の介護報酬改定の確認

令和3年度の介護報酬改定では、基本サービス費の見直しを行うとともに、理学療法士などが行う訪問看護が12か月を超える場合と、1日に2回を超えて実施する場合の評価について見直しを実施

訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問看護の回数別単位数

訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問看護の回数別単位数

訪問看護ステーションの理学療法士などによる訪問看護の単位数は増加傾向にあります。また令和3年度の改訂を受け、介護予防訪問看護における1日2回以下の場合の単位数が大幅に増加しています。

訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問看護の単位数

訪問看護ステーションの理学療法士等による訪問看護の単位数

訪問看護ステーションにおける理学療法士などによる訪問看護の単位数と割合は近年増加傾向にありますが、令和3年度の介護予防訪問看護では、単位数と割合が僅かに減少しています。

(2)訪問看護事業所の加算評価

訪問看護事業所については、必要とされるサービスを提供する観点から、サービス提供体制や実績に応じて様々な加算などによる評価が行われている

(3)リハビリテーション提供の実態

看護業務の一環としてのリハビリテーション提供の実態を踏まえ、訪問看護に求められる役割に基づいたサービスが提供されるようにするために、どのような対応が考えられるか

訪問看護におけるリハビリテーションの実施状況

訪問看護でリハビリテーションを受けている利用者の介護度では、「要介護2」が22.2%で最も多く、次いで「要介護5」が16.2%でした。

訪問看護でリハビリテーションを受けている利用者の障害高齢者の日常生活自立度では、「A2(外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている)」が最も多く19.7%、次いで「A1(介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する)」が18.9%でした。

リハビリテーションを受けている利用者の主な傷病は、「高血圧」が39.9%、「脳卒中(脳出血、脳梗塞等)」が28.2%でした。


このような背景から、今回の改定では、訪問看護の役割を踏まえたサービスを適切に評価するために、サービスの提供体制や実績を考慮して、理学療法士などによる訪問看護の評価を差別化することが求められました。

参照元:厚生労働省「訪問看護(改定の方向性)

リハ職による訪問の減算の内容とは

それでは、今回の改訂によるリハ職による訪問の減算の内容についてみていきましょう。

条件としては、以下のいずれかに該当する場合に減算が適用されれます。

(1)前年度のPT、OT、STによる訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えている場合。


(2)緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算をいずれも算定していない場合。

訪問看護費
理学療法士、作業療法士又は
言語聴覚士による訪問
② 緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算
算定している 算定していない




看護職員≧リハ職 8単位減算(新設)
看護職員<リハ職 8単位減算(新設) 8単位減算(新設)
介護予防訪問看護費
理学療法士、作業療法士又は
言語聴覚士による訪問
② 緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算
算定している 算定していない




看護職員≧リハ職 12月を超えて行う場合は
5単位減算(現行のまま)
8単位減算(新設)※
看護職員<リハ職 8単位減算(新設)※ 8単位減算(新設)※

※介護予防訪問看護の場合、12ヵ月を超えてサービスを提供すると、さらに15単位が減算されます。

※厚生労働省の資料では、介護予防訪問リハビリテーションにおいて利用開始から6ヶ月後および6ヶ月後から12ヶ月後には、ADLが改善されるものの12ヶ月後から18ヶ月後にかけては、ADLが維持されていることを挙げています。

介護予防訪問リハビリテーション利用者におけるADLの経時変化

介護予防訪問リハビリテーション利用者におけるADLの経時変化

参照元:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について

参照元:厚生労働省「訪問看護(改定の方向性)

リハ職による訪問の減算のよくある質問

ここからは、今回のリハビリ職の評価の見直しにおいてよくある質問について行政機関への問い合わせの回答も含めご紹介します。

(1)前年度とはいつからいつまでを指すのか

前年度とは、2023年4月~2024年3月の期間を指します。
※2024年5月以降の開業で、上記1年経過していない場合は、開業月~2024年3月となります。

例:2023年8月開業の場合、開業の2023年8月~2024年3月の期間

(2)リハ職の訪問回数の数え方を知りたい

理学療法士などによる訪問看護の減算は、連続して2回の訪問があった場合、1回として計算されます。

例えば、理学療法士が3月1日と3月3日にそれぞれ2回ずつ訪問を実施した場合、算定回数は4回となりますが、訪問回数は2回になります。

また、理学療法士などが3月5日の午前に1回、午後に連続して2回訪問を実施した場合、算定回数は3回となりますが、訪問回数は2回となります。

※訪問回数とは、算定回数ではなく、あくまで訪問回数になります。

(3)訪問回数は、訪問看護費と介護予防訪問看護費で別々に数えるのでしょうか。それとも合算して数えるのでしょうか。

指定訪問看護事業者が指定介護予防訪問看護事業者の指定を合わせて受け、一体的に運営されている場合については、合算して数えます。

同様に、緊急時(介護予防)訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算(Ⅰ)または(Ⅱ)あるいは(予防))に係る要件についても、訪問看護費と介護予防訪問看護費における双方の算定日が属する月の前6月間において、加算の算定実績がない場合には、所定の単位を減算します。

参照元:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15 日)」の送付について」P23

まとめ

今回は、令和6年度の介護報酬改定により適用される、理学療法士などによる訪問看護の新しい減算ルールについてお伝えしました。

令和6年度の報酬改定では、訪問看護が本来求められるサービスに立ち戻ることを目指し、一定の条件の下で実施されるリハビリ専門職による訪問看護に対して新たな減算措置が導入されます。

リハビリ専門職が中心となる訪問看護事業所にとっては、厳しい報酬改定内容となっており、人員体制の見直しが求められることになります。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。

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