医療において「多職種連携」の重要性が言われるようになって久しいですね。医療現場では、医師や看護師のほか、薬剤師、理学療法士、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、公認心理士など、多くの職種が活躍しています。
精神科では作業療法士も患者さんのサポートを行っています。この記事では、精神科訪問看護における作業療法士の役割について解説します。
増加する精神患者数と、短縮される在院日数
精神科患者は、近年増加の一途をたどっています。精神疾患患者は、全国で約420万人というデータがあります。
もはや精神科病院だけでは増え続ける精神科患者を支えきれなくなっています。また、精神科患者の長期入院が問題になっていることから、国を挙げて地域で精神科患者を支える取り組みが行われてきました。
その結果、精神科病床の平均在院日数は267.7日になり、過去10年間で45.2日も短縮されました。さらに、新規入院患者の約9割は、1年以内に退院するようになっています。
このように、よいデータがある一方で、まだまだ課題も山積みです。
精神科病院からの退院した患者の約4割が1年以内に再入院してしまっているのです。
また、以前より在院日数が短くなったとは言っても、全診療科の平均在院日数が28.2日なのに比べて、精神科は267.7日です。他科に比べ、非常に長いのは変わりがありません。
そのため、今後も精神科の在院日数の短縮に向け、取り組みが強化されていくことでしょう。
そうなると、地域で精神科患者を支える仕組みがますます必要になってきます。
そうです、地域医療の一翼を担う訪問看護ステーションには、精神科患者への対応も期待されているのです。
精神科患者の社会復帰を支える訪問看護ステーション
訪問看護ステーションでは精神科患者への対応も行いますが、事業所の中には精神科に特化した訪問看護ステーションもあります。
精神科患者に訪問看護を利用してもらうには、管轄する厚生局に精神科訪問看護基本療養費の算定の届出をしなくてはなりません。
精神科訪問看護では、医師の指示のもと、うつ病や統合失調症、アルコール依存症など、精神科患者の自宅に定期的に訪問します。利用者に対し、バイタルチェックや精神状態の観察、内服管理、家族への支援、セルフケア援助、対話などを行います。
訪問看護ステーションの中には作業療法士が在籍している事業所もあり、他職種と連携して精神科患者をサポートしています。
作業療法士は精神科訪問看護でどんな仕事をしているの?
作業療法士は、患者が自宅で生活を送るため、「食事」「更衣」「料理」など、さまざまな日常生活動作について指導、リハビリを行う職種です。作業療法では、身体面のリハビリテーションのみならず、精神面へのリハビリも行います。
では実際に、作業療法士はどのような仕事を担っているのでしょうか?
訪問看護における作業療法士の役割
精神面へのサポートも行う作業療法士は、訪問看護においてもその活躍が期待され、近年は作業療法士による訪問看護の利用件数が増えています。
それでは、精神科訪問看護において、作業療法士はどのようなケアを行っているのでしょうか?
(1)精神症状の安定を図る
精神科患者は、睡眠障害や活動性の低下など、さまざまな症状を抱えています。作業療法士は、生活リズムが整うよう援助します。
(2)日常生活動作の援助
精神科患者の中には、精神症状から強い不安を抱えていたり、意欲が低下していたりするケースがあります。そうなると、食事を取らなくなったりお風呂に入れなくなったりするなど、日常生活に支障が出てしまいます。
作業療法士は、そのような場合に介入し、本人の症状に合わせながら日常生活を送るサポートをします。
(3)対人関係をスムーズにする
精神科患者は対人関係を築きにくい傾向があります。たとえば、家族とは会話できても家族以外の人とは会話できないことも少なくありません。そのため、地域での対人関係を築くのが難しい患者がいます。
作業療法士は、そのような患者に対し、外出の機会をつくるなどして、地域での対人関係を広げられるよう支援を行います。
(4)家事の習得に向けた援助
自宅で生活するためには、料理や洗濯、整理整頓、掃除など、たくさんの家事を行わなければなりません。
しかし、精神科疾患をわずらうと、記憶や思考、理解力、判断力が障害され、このような家事を行えなくなる可能性があります。
精神科患者が長く自宅で過ごせるよう、作業療法士は家事の習得も支援します。
(5)社会復帰への支援
精神疾患患者は、発病に伴い、仕事を退職していたり、休職していたりするケースが少なくありません。しかし、地域で暮らしていくためには、仕事に従事し、社会復帰しなくてはなりません。
作業療法士は、精神科患者の心身の症状をアセスメントしながら、復職支援や社会復帰のサポートを行います。
まとめ
精神科患者は、退院したとしても長期にわたる療養が必要だったり、何らかのきっかけで再発したりするなど、自宅で生活するには専門家のサポートが必要です。
精神科患者の症状はひとそれぞれで、細やかなケアが求められますが、そういったケースこそ、一人一人の患者と向き合える訪問看護の力が発揮できると言えるでしょう。
訪問看護でも、作業療法士をはじめとする多職種連携を図っていきたいものですね。
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