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訪問看護師が押さえておきたい!統合失調症の症状と訪問時のケアのポイント

統合失調症は、幻覚・妄想などさまざまな症状が現れる精神疾患のひとつです。精神疾患において最も多い疾病であり、およそ100人に1人が発症する、身近な病気と言われています。

近年、精神科病院の平均在院日数の短縮等により訪問看護を利用する統合失調症の方は増加傾向にあります。

統合失調症は、様々な症状があり、うつ病や認知症など他の精神疾患との違いなどを訪問看護師がしっかりと理解しておくことは非常に重要です。

今回は、統合失調症をテーマに各症状や訪問時のケアのポイント等についてお伝えします。

目次

統合失調症とは

統合失調症とは

統合失調症とは、脳の機能(知覚・思考・感情・意欲・認知機能など多くの精神機能)を統合できなくなる疾患であり、環境や対人関係の緊張状態が複雑に絡み合い、心の葛藤を経て発症するといわれています。

10~20歳代の青年期~成人期にかけて発病することが多いといわれていますが、中年期を過ぎてから病気が発覚することもあります。

精神科疾患のなかで約50%を占め、2017年の厚生労働省調査では、全国におよそ79万2000人(※)となっています。

※参照元:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況-主な傷病の患者数

近年では、精神科病院の平均在院日数の短縮や住み慣れた家で療養したいと思う方が増えたことなどから、統合失調症の外来患者数が増加傾向にあり、それに伴い訪問看護のニーズが高まっています。

精神疾患を有する外来患者数の推移(疾患別内訳)

精神疾患を有する外来患者数の推移(疾患別内訳)

参照元:厚生労働省「令和4年6月9日 参考資料 第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会

統合失調症の3つの症状

統合失調症の3つの症状

統合失調症では、働くこと、 人付き合い、日常生活動作など、その人のもっている機能が低下します。

統合失調症の症状は、大きく分けると「陽性症状」、「陰性症状」、日常生活に支障をきたす「認知機能障害」の3つに分けることができます。

(1)陽性症状

統合失調症の陽性症状には、妄想、幻覚、および緊張病症状が含まれます。患者は現実と異なる信念や観念(妄想)にとらわれたり、虚構の感覚や視覚的な経験(幻覚)を経験することがあります。緊張病症状は、考えがまとまりにくい、思考障害が現れることを指します。

(2)陰性症状

統合失調症の陰性症状には、感情鈍麻や意欲低下が含まれます。感情鈍麻は感情の表現が乏しくなり、意欲低下は日常生活においての動機や目標への取り組みが不足する状態を指します。入浴や身なりへの無頓着、作業ミスといった行動の障害も陰性症状として見られます。

(3)認知機能障害

統合失調症の認知機能障害には、注意障害、記憶障害、および遂行機能障害が含まれます。患者は注意を維持しにくく、理解力が低下し、記憶力や問題解決能力にも影響が現れます。これにより、学習や日常的な課題の遂行が難しくなることがあります。

統合失調症の症状と経過

統合失調症の症状の現れ方や治まり方には個人差がありますが、一般的な傾向としては、以下のような経過をたどります。

(1)前兆期

統合失調症の前兆期では、強い不安や不眠、神経過敏などが現れます。これらの症状は、病気の初期段階であり、症状が顕著になる前に患者が経験することがあります。

(2)急性期

急性期は、統合失調症に特徴的な症状が顕著になる時期です。陽性症状では幻覚、妄想、興奮、昏迷などが現れ、陰性症状では抑うつ、ひきこもり、無気力、感情の平板化などが見られます。

行動にまとまりを欠いたり、コミュニケーションが困難になるなど、日常生活に支障をきたすことがあります。

(3)回復期

回復期は、治療により症状が徐々におさまり、安定を取り戻していく時期です。一般的に、幻覚や妄想などの陽性症状が次第に減少し、陰性症状が残ります。患者は治療を受けながら復帰していきます。

(4)安定期・慢性期

安定期・慢性期では、回復期を経て安定を取り戻す時期です。陰性症状が残ることもあり、訪問看護を利用する療養者は慢性期にある方が多いです。患者は安定した状態を維持するために、適切な治療やサポートが重要です。

参照元:国立国際医療研究センターHP「統合失調症とは?」

統合失調症の薬物療法

統合失調症の薬物療法

統合失調症の薬物療法は一般的に、基本的に抗精神病薬を使用します。複数の抗精神病薬を併用するのではなく、できるだけシンプルに1種類を選び、その効果が得られつつ副作用が最小限に抑えられるような用量に調整することが望ましいとされています。

抗精神病薬には、定型抗精神病薬(従来型)と非定型抗精神病薬(新規)の二つの種類があります。

定型抗精神病薬

定型抗精神病薬は、従来から使われてきた抗精神病薬であり、統合失調症の陽性症状(妄想や幻覚など)に対する効果があります。

代表的なものにはハロペリドールやクロルプロマジンがあり、これらはドパミン受容体への作用を調整して精神症状を軽減する働きがあります。

非定型抗精神病藥

非定型抗精神病薬は比較的新しい薬で、陽性症状に効果があり、副作用の錐体外路症状(手がふるえる、体が硬くなる、など)が少なく、陰性症状(感情の平板化、思考の貧困、意欲の欠如など)に対する効果は定型抗精神病薬よりも高いといわれています。

代表的なものにはリスペリドンやクエティアピンがあり、これらはセロトニンとドパミンの受容体に作用して、幅広い精神症状に働きかける特徴があります。非定型抗精神病薬は、一般的に副作用が少ないとされています。

統合失調症の利用者に対する訪問看護の内容

統合失調症の利用者に対する訪問看護の内容<

統合失調症の利用者に対する訪問看護の主な観察項目は、以下があげられます。

1.バイタルサイン、 一般状態、薬物による副作用の有無

利用者の身体的な健康状態を評価するために、血圧、脈拍、呼吸数などのバイタルサインをモニタリングします。また、一般的な利用者の状態や服薬による副作用の有無も確認します。

2.表情、言動、精神症状 (幻覚、妄想) の有無

利用者の表情や言動を観察し、精神的な状態を把握します。特に統合失調症の特有の症状である幻覚や妄想などが見られるかどうかを確認します。

3.睡眠や休息状況(入眠困難、眠りの深さ、覚醒状況、 不眠時薬の使用状況)

入眠困難、眠りの深さ、覚醒状況、不眠時の薬の使用状況を評価し、利用者の睡眠パターンや休息の質を把握します。

4.入浴、洗面、歯磨き、 整容、 更衣状況

利用者の身の回りのケアや衛生状態を確認し、日常の生活スキルや自己ケアの実施状況を把握します。

5.身の回りの整理整頓

環境整理や整頓の能力を見て、利用者が自分の周りを整える能力を評価します。

6.体重

体重の変動をモニタリングし、栄養状態や身体的な健康状態に関する情報を得ます。

7.食事、排泄状況

食事の量や質、排泄の状況を確認し、利用者の栄養状態や生活習慣を把握します。

8.日中の活動量、就労など

利用者の日中の活動や就労状況を評価し、社会的な機能や生活スタイルに関する情報を得ます。

9.服薬状況、金銭管理など

利用者の薬物の遵守状況や金銭管理能力を確認し、治療計画や生活の安定に影響を与える要因を把握します。


統合失調症の利用者に対する訪問看護の主なケア内容は、以下があげられます。

1.確実な服薬実施とアドヒアランスの確認

訪問看護師は患者の正確な薬物服用をサポートし、アドヒアランス(治療計画への適切な adhesion)を確認します。服薬指導や副作用に関する教育も提供し、利用者が治療を効果的に続けるための支援を行います。

2.生活状況の把握

利用者の生活状況を詳細に把握し、家庭環境や社会的サポートの有無、日常の課題やストレス要因を理解します。これにより、適切なケアプランを立てる基盤を築きます。

3.生活上の困りごとの傾聴と対策の提案

利用者が抱える生活上の問題や不安を傾聴し、必要な支援や対策を提案します。これにより、利用者の日常生活の質を向上させ、心理的な負担を軽減することが期待されます。

4.セルフケアを高める声かけ・支援

訪問看護師はセルフケアの重要性を認識し、利用者に対して積極的に声かけを行い、必要な場合はセルフケアのスキル向上のためのサポートを提供します。

5.GAF (機能の全体的評定)尺度評価を市町村、相談支援・主治医と関係連携する

利用者の機能レベルをGAF尺度で評価し、その結果を市町村、相談支援機関、および主治医と共有し、総合的なケア計画の調整や調整ができるように協力します。

6.必要時、病院への同行支援

症状が悪化した場合や緊急の医療が必要な場合には、訪問看護師が利用者を病院へ同行し、適切な医療を確保する支援を提供します。

7.家族のサポート

家族が統合失調症の利用者をサポートすることが重要です。訪問看護師は家族に対して、患者のケアにおいて理解を深め、適切なサポートを提供する方法について教育やアドバイスを行います。これにより、利用者の家庭環境が安定しやすくなります。

統合失調症の利用者に対して訪問看護師が心得るポイントとは

統合失調症の利用者に対して訪問看護師が心得るポイントとは

統合失調症の利用者における幻覚・妄想への対応は、頭ごなしに否定せず、かといって同調もしないことが基本になります。

利用者の訴えの真偽に焦点をあてるのではなく、あくまでも本人が感じている不安やよりどころのなさに共感をもって耳を傾けることが重要です。

また、統合失調症の本人は自覚が薄く、病院や薬物療法に消極的なことがあります。医療に結びつけるためには、利用者とその周囲の家族、友人、医療スタッフとの信頼関係を積極的に築くことが大切です。

また、社会的な孤立や経済的な悪化も発症の要因となります。そのため、家族との同居、老人ホームへの入所、ヘルパーの導入など、環境の調整が効果的な場合もあります。

1.信頼関係の構築

利用者との関係を人間対人間の看護に焦点を当て、理解者として接し、心を開かせるよう心がけます。信頼関係が築けると、効果的なサポートを提供できます。

2.日常生活支援

利用者が統合失調症とともに普通の日常生活を送れるように支援します。再発や寛解、増悪といった状態変化に柔軟に対応し、安定した日常を築くお手伝いをします。

3.主治医との連携

薬物療法が確実でない場合や、本人や他者に危害が及ぶ可能性がある場合には、主治医と連携し、必要に応じて入院加療が検討されることがあります。安全性を最優先に考えながら行動します。

4.複数名での訪問の必要性

ある場合には、複数の訪問者が同行する必要があります。これにより、利用者の安全性やケアの質を向上させると同時に、利用者との関係性を築く上でも有益です。

5.統一した対応

訪問においえて一貫性のある対応を心がけます。これにより、利用者が安心感を得られ、信頼関係の構築に寄与します。

高齢者の統合失調症の特徴

高齢者の統合失調症の特徴

高齢者の統合失調症の症状として、被害妄想や幻覚などの陽性症状が比較的優位に現れることが挙げられます。ただし、感情や社会機能は一般的に保たれ、自発性の低下などの陰性症状は目立たないことが特徴です。

高齢者に対する薬物治療をおこなう場合は、身体疾患の合併やその治療薬の影響を考慮する必要があります。

特に、抗精神病薬の内服に伴う過鎮静や呼吸、循環器系の抑制、脱力、転倒、また錐体外路症状の出現には留意が必要です。

また、高齢者への薬物治療の場合、薬物代謝能力が低下し副作用が生じやすいため、できるだけ少量から始めることが基本です。

まとめ

今回は、統合失調症をテーマに各症状や訪問時のケアのポイント等についてお伝えしました。

厚生労働省のデータによれば、精神科訪問看護を利用する方の主な疾病は、統合失調症が最も多く、今後も増加することが予想されます。

訪問看護師が統合失調症の様々な症状や治療方法、うつ病や認知症など他の精神疾患との違いなどに対しての理解を深めていくことは非常に重要です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

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