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【令和4年追加】訪問看護師が知っておきたい!介護職員の「医行為ではない行為」とは

近年、高齢化や医療・介護需要の増加に伴い、介護職員の「医行為ではない行為」の範囲が拡大しています。

これは、医療・介護の連携の強化や在宅ケアの普及、医療人材不足の克服、医療機器の進歩などが影響しています。

患者や利用者に対する継続的で質の高いケアを提供するため、介護職員が一部の医療行為を行うことが求められ、これが法的に認められるようになりました。

在宅療養の支援は、他職種がチームでおこなうため、訪問看護師は、介護職が行う「医療行為に該当せず行える行為」の範囲や内容を正確に把握しておく必要があります。

そこで、今回は、国が在宅医療の現場において介護職の「医療行為に該当せず行える行為」を拡大している背景から、具体的な種類・内容等についてお伝えします。

「医行為ではない行為」の範囲が拡大している背景

介護職員による「医行為ではない行為」の範囲が拡大している背景

医療行為(法律用語では医行為)とは、医師法によって規定されている行為のことです。医療行為ができるのは医師・歯科医師・看護師など、国家資格を有する医療従事者のみと定められています。

また、医療行為には、医師の資格を有する者しか行えない「絶対的医行為」と、医師以外の者でも行える「相対的医行為」が存在します。

医師は、自身の管理・指導の下で「相対的医行為」に該当する医療行為を、看護師や介護職員に委任することができます。

しかし、以前は、「相対的医行為」に明確な基準がなく、特に医療職の配置が不足している介護の現場では異なる解釈がなされ、介護職員が医療行為を実施していたという実態がありました。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は2005年に「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」という通知を出し、「原則として医療行為ではないと考えられる」項目の整理をおこない、利用者が日常生活を送るうえで必要な以下の行為は原則として医行為に当たらず、介護職が行うことが認められることになりました。

2005年の通知によって整理された「医行為ではない行為」は、以下になります。

医行為除外例(原則医行為ではない行為)

・体温・血圧測定

・パルスオキシメータ装着

・軽微な切り傷・擦り傷・やけど等の処置

・軟膏塗布

・湿布貼付

・点眼薬

・舌下錠含む内服

・肛門からの座薬挿入

・鼻腔粘膜への薬剤噴霧

・爪切り

・口腔清潔

・耳垢除去

・ストマの排泄物除去

・ストマ装具交換

・自己導尿補助

・市販の浣腸器による浣腸

この通知は、もともと医療行為ではないと考えられる行為を整理したものであり、介護職員が医行為を行えるようになったというわけではありません。

「医行為ではない行為」とは、介護職員が医療行為を行うのではなく、日常生活や健康維持に関連する一般的な行為や、医療資格を持たない者でも安全に実施できるケアのことを指します。

訪問看護師は、これらの項目を理解した上で、介護職員に助言や指導を行い、介護職員が担当すべき行為と看護職が担当すべき行為を判断し、看護と介護の連携を促進することが重要です。

令和4年に追加された「医行為ではない行為」内容とは

令和4年に追加された「医行為ではない行為」内容とは

さらに、令和4年12月1日に、「医師法第17条、歯科医師法第17条、および保健師助産師看護師法第31条の解釈に関する通知(その2)」が発出され、介護現場で実施されることが多いと考えられる行為が新たに追加されました。

新たに追加された「医行為ではない行為」は、以下になります。

令和4年に追加された「原則医行為ではない行為」

[ インスリンの投与の準備・片付け関係 ]

(1)在宅介護などの現場でのインスリン注射の実施に際しては、事前に医師から指示されたタイミングでの実施に声かけを行い、患者を見守ります。また、未使用の注射器などは患者に手渡しし、使用が終わった注射器の片付け(ただし、注射器の針を抜いて処分する行為は除く)とその記録を行います。

(2)在宅介護などの介護現場でのインスリン注射の実施に際して、患者が血糖測定及び血糖値の確認を行った後、介護職員は医師から指示されたインスリン注射を行うべきかどうかを、当該血糖値が範囲内にあるかどうか確認が必要です。

(3)在宅介護などの介護現場でのインスリン注射の実施に際して、患者が用意したインスリン注射器の目盛りが、医師から指示されたインスリンの単位数と一致しているかを確認します。

[ 血糖測定関係 ]

(4)患者に対する持続血糖測定器のセンサーの貼付やその測定器から得られる血糖値の読み取りなど、血糖値の確認を行います。

[ 経管栄養関係 ]

(5)皮膚に発赤等がなく、身体へのテープの貼付に特別な管理が不要な患者について、既に患者の身体に留置されている経鼻胃管栄養チューブを固定しているテープが外れた場合や汚染された場合には、あらかじめ指定された貼付位置に再度テープを貼り直すこと。

(6)経管栄養の準備(栄養等を注入する行為を除く。)および片付け(栄養等の注入を停止する行為を除く。)を行います。ただし、以下の3点については医師又は看護職員が行います。


①鼻からの経管栄養の際には、既に留置されている栄養チューブが胃に挿入されているかを確認します。

②胃ろう・腸ろうによる経管栄養の際には、びらんや肉芽など、胃ろう・腸ろうの状態に問題がないことを確認します。

③胃・腸の内容物をチューブから注射器で吸引し、性状と量から胃や腸の状態を確認し、注入内容と量が予定通りかどうかを判断すること。


[ 喀痰吸引関係 ]

(7)吸引器に溜まった汚水の廃棄や吸引器に入れる水の補充、吸引チューブ内を洗浄する目的で使用する水の補充を行います。

[ 在宅酸素療法関係 ]

(8)在宅酸素療法を実施しており、患者が援助を必要としている場合であって、患者が酸素マスクや経鼻カニューレを装着していない状況下における、あらかじめ医師から指示された酸素流量の設定、酸素を流入していない状況下における、酸素マスクや経鼻カニューレの装着等の準備や、酸素離脱後の片付けを行います。ただし、酸素吸入の開始(流入が開始している酸素マスクや経鼻カニューレの装着を含む。)や停止(吸入中の酸素マスクや経鼻カニューレの除去を含む。)は医師、看護職員又は患者本人が行います。

(9)在宅酸素療法を実施する際には、酸素供給装置の加湿瓶の蒸留水を交換したり、機器を拭き取ったりするなど、機械の使用に関わる環境の整備を行います。

(10)在宅で人工呼吸器を使用している患者の体位変換を行う場合には、医師又は看護職員の立ち会いの下で、人工呼吸器の位置の変更を行います。

[ 膀胱留置カテーテル関係 ]

(11)膀胱留置カテーテルの蓄尿バッグからの尿廃棄(DIBキャップの開閉を含む)を行います。

(12)膀胱留置カテーテルの蓄尿バッグからの尿量及び尿の色の確認を行います。

(13)膀胱留置カテーテル等に接続されているチューブを留めているテープが外れた場合には、あらかじめ明示された貼付位置に再度貼り付けを行います。

(14)医師又は看護職員が専門的な管理が不要であると確認した場合に限り、膀胱留置カテーテルを挿入している患者の陰部洗浄を行います。

[ 服薬等介助関係 ]

(15)医師、歯科医師、又は看護職員が患者の状態が以下の3つの条件を満たしていることを確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助が可能である旨を本人又は家族等に伝えている場合、事前に本人又は家族等の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方と薬剤師の服薬指導に基づき、看護職員の保健指導・助言を遵守して医薬品の使用を介助します。

具体的には、水虫や爪白癬に罹患した爪への軟膏又は外用液の塗布(褥瘡の処置を除く。)、吸入薬の吸入及び分包された液剤の内服を介助します。


①患者が入院・入所して治療が不要であり、容態が安定していること

②副作用の危険性や投薬量の調整などの理由から、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が不要である場合

③内用薬については、誤嚥の可能性など、当該医薬品の使用方法について専門的な配慮が必要な場合ではないこと


[ 血圧等測定関係 ]

(16)新生児以外で、入院治療が必要ない者に対して、動脈血酸素飽和度を測定するためには、パルスオキシメーターを装着し、動脈血酸素飽和度を確認することがあります。

(17)半自動血圧測定器(ポンプ式を含む)を使用して、血圧を測定すること。

[ 食事介助関係 ]

(18)食事(とろみ食を含む。)の介助を行うこと。

[ その他関係 ]

(19)有床義歯(入れ歯)の着脱および洗浄を行うこと。

この通知には、インスリン投与に関する事項や在宅酸素療法にかかわる装備の準備や片付け、経鼻胃管栄養チューブを留めているテープが外れた場合の再貼付の取り扱い、食事の介助などが具体的に明記されています。

また、通知に際して、厚生労働省は、「医行為に該当しない行為についても、高齢者介護の現場等で安全に行われるべきであり、また、行為の実施に際しては、患者の状態を考慮し、医師、歯科医師、または看護職員と連携することや、必要に応じてマニュアルの作成や医療従事者による研修を行うことが適切である」と述べています。

参照元:高齢労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条、および保健師助産師看護師法第31条の解釈に関する通知(その2)

まとめ

今回は、国が在宅医療の現場において介護職の「医療行為に該当せず行える行為」を拡大している背景から、具体的な種類・内容等についてお伝えしました。

訪問看護師と介護職員は、利用者へ直接的なケアをおこなう職種という点では共通していますが、訪問看護師は主に「医療的なケアや管理」を行うのに対し、介護職員は利用者の生活を支えるための「日常生活援助」を行うというように、それぞれの役割が異なります。

しかし、在宅医療において、人工呼吸器など医療機器を使用中であったり、四肢を動かせないなど、入浴などの生活援助に複数の介護者が必要な利用者のケアを行う場合、介護職員と訪問看護師が協力して行うことはよくあります。

そのため、訪問看護師が、「医療行為に該当せず行える行為」を正しく理解し、介護職員に助言・指導の元、どの行為を介護職員が担当し、どの行為を訪問看護師が担当するかを判断し、看護と介護の協力体制を築くことが極めて重要です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

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