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訪問看護ステーションの成長を促すマルチタスク! 管理者がおこなう業務と責務

訪問看護の世界は、患者さんの自宅や施設で医療とケアを提供する特別な場所です。そこで活躍する管理者として、訪問看護ステーションの業務と責務を担うことは、一般の看護師とは異なる挑戦と成長の機会をもたらします。

訪問看護の管理者は、運営管理、人事管理、質の管理、記録管理、経営管理、情報管理、安全管理、顧客管理、衛生管理など、多岐にわたる重要な業務を担います。これらの責務を適切に果たすことで、訪問看護ステーションは信頼と安心を地域に提供し、患者さんの生活の質を向上させることができるのです。

今回は、管理者が行うそれぞれの業務領域において具体的な責務と取り組むべきポイントを解説し、管理者としてのスキルや知識を向上させるためのヒントをお伝えします。

目次

制度のおける管理者の位置づけ

制度のおける管理者の位置づけ

まず、法令における訪問看護ステーションの管理者の位置づけについてお伝えします。

訪問看護ステーションの管理者の責務として「健康保険法 人員及び運営に関する基準 第二十条」には、以下のように記載されています。

1 指定訪問看護ステーションの管理者は、指定訪問看護ステーションの従業者の管理及び指定訪問看護の利用の申込みに係る調整、業務の実施状況の把握その他の管理を一元的に行うものとする。

2 指定訪問看護ステーションの管理者は、当該指定訪問看護ステーションの従業者にこの章の規定を遵守させるため必要な指揮命令を行うものとする。

参照元:厚生労働省:指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準

法令では、「管理を一元的におこなう」「必要な指揮命令を行う」と決められています。つまり管理者は、事業所・利用者・職員の管理や指揮をおこなう必要があるのです。

訪問看護ステーションにおける管理業務とは

訪問看護ステーションにおける管理業務とは

訪問看護ステーションの管理者は、運営管理、人事管理、質の管理、記録管理、経営管理、情報管理、安全管理、顧客管理、衛生管理など多岐にわたる業務を担当します。

ただし、すべての業務を管理者一人が担当するわけではありません。組織全体として、各業務を適切な担当者に任せるために業務移譲が必要です。そのためには、まず訪問看護ステーションにおける管理業務の全体像を把握することが重要です。

それぞれの業務について詳しくみていきます。

訪問看護の運営管理とは

訪問看護の運営管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである運営管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)制度の熟知

訪問看護ステーションの管理者は、訪問看護に関する法律や規制、保険制度などの制度を熟知しておく必要があります。例えば、健康保険法や訪問看護に関連する省令、ガイドラインなどが該当します。これにより、適切な運営やサービス提供が行われるようになります。

(2)運営方針の決定

管理者は、訪問看護ステーションの運営方針を策定し、実施する責任を持ちます。これには、訪問看護の目標や方針の設定、適切な業務プロセスの確立、スタッフの配置や調整、業務の評価などが含まれます。運営方針は、訪問看護ステーションの使命や価値観を反映し、高品質で安全な訪問看護サービスの提供を目指すものとなります。

(3)地域との連携

訪問看護ステーションは、地域の医療・介護機関や地域住民との連携が重要です。管理者は、地域のニーズや要望を把握し、それに基づいて訪問看護サービスを計画・提供するための連携を図ります。地域の医療・介護ネットワークや関連機関とのコラボレーションや情報交換が行われることで、地域の医療・介護の連携強化や連携による継続的なケアの提供が可能となります。

訪問看護の人事管理とは

訪問看護の人事管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである人事管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)職員の雇用

管理者は、訪問看護ステーションに必要な職員を採用・雇用する責任を持ちます。これには、求人募集の企画・実施、応募者の選考・面接、採用条件や雇用契約の交渉・締結などが含まれます。適切な人材を選択し、訪問看護ステーションの目標や運営方針に適合する人員を確保するために、経験や資格、適性などを考慮して選考を行います。

(2)職員の教育

管理者は、職員の教育・研修を計画・実施する責任を持ちます。これには、訪問看護に必要な知識や技術の継続的な研修、訪問看護ガイドラインやプロトコールの教育、コミュニケーションスキルの向上などが含まれます。職員の能力や専門性を高めるための教育プログラムを提供し、訪問看護の質の向上を図ります。

(3)労務管理

管理者は、労働法規や労働契約に基づき、職員の労務管理を行います。これには、労働時間の管理、休暇・休業の調整、給与・賞与の管理、労働条件の遵守、労働問題の解決などが含まれます。適切な労働環境の整備や労働法令の遵守は、職員のモチベーションや安定した職場環境の維持につながります。

訪問看護の質の管理とは

訪問看護の質の管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである質の管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)職員の教育評価

管理者は、職員の教育評価を行い、職員の能力や成長を促進する責任を持ちます。これには、職務遂行能力や専門知識の評価、研修の受講状況や成果の確認、フィードバックや指導の提供などが含まれます。職員の教育評価を通じて、必要な支援や教育プログラムの提供を行い、職員のスキル向上と組織の質の向上を図ります。

(2)組織の活性化

管理者は、組織の活性化を図るための取り組みを行います。これには、組織文化の醸成、チームビルディングの促進、コミュニケーションの改善、モチベーション向上のための活動などが含まれます。組織の活性化を通じて、職員のやる気やパフォーマンスの向上、協力体制の強化、組織全体の働きやすさを実現します。

(3)管理者のスキルアップ

管理者自身も、組織の質の管理を適切に行うために自己成長とスキルアップに努める必要があります。これには、管理・リーダーシップスキルの向上、医療・看護業界の最新動向の把握、専門知識の継続的な学習などが含まれます。管理者は、変化する環境に対応し、組織の質を高めるために自身の能力を向上させることが重要です。

訪問看護の記録管理とは

訪問看護の記録管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである記録管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)適切な記録管理

管理者は、訪問看護ステーションで作成される記録の適切な管理を確保する責任を持ちます。これには、クライアントの医療情報や訪問看護の記録の適正な保存、整理、保管が含まれます。記録は患者の診療やケアにおいて重要な情報源であり、個人情報の保護や情報の正確性、機密性の確保が求められます。

(2)記録の開示

管理者は、法律や倫理規定に基づき、必要な場合に記録の開示を行う責任を持ちます。例えば、患者本人や患者の代理人からの情報開示要求、他の医療・介護機関との情報共有などが該当します。開示は適切な手続きや規定に従って行われる必要があり、患者の権利やプライバシー保護を尊重しながら行われます。

(3)守秘義務

管理者は、職務上知り得た患者の情報に関する守秘義務を遵守する責任があります。患者の個人情報や医療情報は機密情報として扱われ、法律や倫理規定に基づき保護されるべきです。管理者は、職員に対して守秘義務の重要性を徹底的に教育し、情報漏洩や不正利用を防止するための適切な対策を講じる責任を持ちます。

訪問看護の経営管理とは

訪問看護の経営管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである経営管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)実績の蓄積

管理者は、訪問看護ステーションの実績を適切に蓄積・分析し、経営の判断材料とします。これには、訪問看護の実施件数や利用者数、効果的なケアの提供、クライアントの満足度などのデータの収集・分析が含まれます。実績の蓄積を通じて、経営の現状把握や課題の発見、戦略的な意思決定が行われます。

(2)事業計画立案と実践

管理者は、訪問看護ステーションの事業計画を立案し、実践する責任を持ちます。事業計画には、目標設定、戦略策定、リソースの配分、サービス提供の計画などが含まれます。計画の策定は、組織のビジョンやミッションに基づき、現状分析や将来の需要予測を考慮して行われます。また、計画の実践には、計画の具体化、タスクの割り当て、進捗管理などが含まれます。

(3)予算立案と執行

管理者は、訪問看護ステーションの予算を立案し、執行する責任を持ちます。予算立案には、収入の予測や支出の見積もり、資金の配分などが含まれます。予算は、経営目標の達成や事業計画の実行に必要な資源を適切に確保するために重要です。予算の執行には、収支のモニタリング、コスト管理、予算との適合性の確認などが含まれます。

訪問看護の情報管理とは

訪問看護の情報管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである情報管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)制度情報の管理

管理者は、訪問看護ステーションに関連する制度情報を適切に管理する責任があります。これには、法的な規制やガイドライン、政府の政策、保険制度などの情報の収集・把握、更新の追跡、関係者への周知などが含まれます。制度情報の正確な理解と遵守は、訪問看護サービスの提供の質や合法性を確保するために重要です。

(2)地域情報の管理

訪問看護ステーションは地域に根ざしたサービスを提供するため、地域情報の管理も重要な責務です。管理者は、地域の医療・介護資源や関連施設、地域のニーズや課題などの情報を収集・分析し、組織内で共有する役割を担います。地域情報の適切な管理は、訪問看護の計画立案やサービス提供の最適化に役立ちます。

(3)個人情報保護

管理者は、訪問看護ステーションにおける個人情報保護の責任を持ちます。患者や利用者の個人情報は、医療情報やプライバシーに関わる重要な情報です。管理者は、個人情報の収集、保存、利用、開示に関する法的な要件や規制に準拠しながら、情報のセキュリティと機密性を確保する必要があります。適切な情報管理システムやアクセス制限、従業員の教育と意識向上などが実施されます。

訪問看護の安全管理とは

訪問看護の安全管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである安全管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)法的責任の理解

管理者は、訪問看護ステーションの運営における法的責任を理解し、遵守する責任があります。医療や介護の分野では、法的な規制や基準が存在し、それに適合することが求められます。例えば、医療法や労働安全衛生法、個人情報保護法などが該当します。法的な責任を遵守することは、患者の安全性やスタッフの安全性を確保し、組織の信頼性を高めるために重要です。

(2)リスクマネジメント

管理者は、訪問看護ステーションのリスクを適切に評価し、管理する責任があります。リスクマネジメントには、リスクの特定、分析、評価、予防策の策定、緊急時対応の計画などが含まれます。リスクの特定と予防策の実施は、事故やエラーの発生を最小限に抑え、患者やスタッフの安全を確保するために重要です。

(3)災害時対策

訪問看護ステーションの管理者は、災害時の対応策を策定し、適切な対応を行う責任があります。災害時対策には、災害リスクの評価、緊急時対応プロトコルの作成、スタッフの教育と訓練、避難場所や緊急連絡先の確保などが含まれます。災害時のスムーズな対応は、患者の安全と連続的なケアの提供を確保するために重要です。

(4)賠償責任保険

訪問看護ステーションの管理者は、賠償責任保険の適切な保有を確認する責任があります。賠償責任保険は、万一の事故やクレームに対して組織とスタッフを保護し、損害賠償のリスクに備えるための重要な保険です。適切な保適切な保険カバレッジを持つことは、訪問看護ステーションの管理者にとって非常に重要です。

訪問看護の顧客管理とは

訪問看護の顧客管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである顧客管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)顧客確保

管理者は、新規の顧客を獲得するための戦略や施策を策定し、実行する責任があります。これには、地域の医療ニーズや人口動態を分析し、ターゲットとなる顧客層を特定することが含まれます。また、訪問看護ステーションの利点やサービスの特徴を広く周知するために、マーケティング活動や広報活動を展開することも重要です。

(2)満足度調査

顧客の満足度を把握するために、管理者は定期的な満足度調査を実施する必要があります。これにより、顧客のニーズや要望を理解し、サービスの改善点や課題を把握することができます。満足度調査の結果を分析し、改善策を策定することで、顧客満足度を向上させることができます。

(3)苦情処理

顧客からの苦情や不満を適切に処理することも管理者の責務です。苦情が発生した場合、迅速かつ適切に対応し、問題解決に取り組むことが重要です。顧客とのコミュニケーションを通じて、問題の原因を特定し、再発防止策を講じることが求められます。顧客の不満や苦情に対して真摯に向き合い、信頼関係を築くことが重要です。

(4)営業活動

管理者は、訪問看護ステーションのサービスや特徴を広く周知するために営業活動を行います。これには、医療機関や地域の関係機関との連携、プレゼンテーションやセミナーの開催、パートナーシップの構築などが含まれます。営業活動によって、新規の顧客を獲得するだけでなく、既存の顧客との関係を深めることも重要です。

訪問看護の衛生管理とは

訪問看護ステーションの管理者の責務の一つである衛生管理には、以下のような要素が含まれます。

(1)体制整備

衛生管理のためには、適切な体制を整える必要があります。これには、衛生管理担当者の指名や役割の明確化、衛生管理に関する方針や手順の策定、定期的な教育や研修の実施などが含まれます。また、衛生管理に関する情報や指導をスタッフに提供する役割も担います。

(2)機器や物品調達

訪問看護ステーションでは、衛生管理に必要な機器や物品の調達が重要です。例えば、医療機器の滅菌や清潔な状態を維持するための消毒材、使い捨ての医療器具、感染予防に役立つマスクや手袋などが該当します。管理者は、適切な数量と品質の機器や物品を確保するために、調達プロセスを管理し、供給業者との関係を構築する必要があります。

(3)感染予防

衛生管理の重要な要素の一つは、感染予防です。訪問看護ステーションでは、患者やスタッフの感染リスクを最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。これには、手洗いや消毒の徹底、感染制御のガイドラインやプロトコルの策定と遵守、感染リスクの評価と管理などが含まれます。管理者は、スタッフへの教育や監視を通じて感染予防対策を推進し、安全な環境を提供します。

(4)廃棄物管理

訪問看護ステーションでは、医療廃棄物の適切な処理が求められます。管理者は、廃棄物管理のガイドラインや法規制を遵守し、廃棄物の適切な分別・処理方法をスタッフに指導します。廃棄物の適切な管理は、感染リスクの軽減や環境への配慮につながります。

管理者は、自身の時間を適切に確保する必要があります。

管理者は、自身の時間を適切に確保する必要があります。

上記で解説したように訪問看護ステーションの管理者には多岐にわたる業務と責任があります。そのため、管理者は自身の時間を適切に確保する必要があります。

(1)業務の効率化

管理者は運営管理、人事管理、質の管理、記録管理、経営管理、情報管理、安全管理、顧客管理、衛生管理など、様々な業務を管理しなければなりません。時間を確保することで、業務の優先順位をつけ、効率的に業務を進めることができます。

(2)チームの指導とサポート

管理者はスタッフを指導し、サポートする役割も担います。時間を確保することで、スタッフとのコミュニケーションや問題解決に十分な時間を割くことができます。

(3)戦略的な計画

訪問看護ステーションの成長と発展を目指すためには、戦略的な計画が必要です。時間を確保することで、将来の目標や戦略を考え、実行するための時間を確保できます。

(4)自己成長と学習

管理者は常に自己成長を追求し、最新の知識やスキルを習得する必要があります。時間を確保することで、学習や専門知識の習得に充てることができます。

(5)組織全体の視点

管理者は組織全体の視点を持ち、総合的な管理を行う必要があります。時間を確保することで、組織の課題や改善点を把握し、戦略的な意思決定を行うことができます。

時間を確保することは、訪問看護ステーションの効率的な運営と成長のために欠かせません。管理者は自身の時間を適切に管理し、重要な業務に集中することで、組織の成果を最大化することができるのです。

まとめ

今回は、訪問看護ステーションの管理者がおこなう運営管理、人事管理、質の管理、記録管理、経営管理、情報管理、安全管理、顧客管理、衛生管理など、多岐にわたる重要な業務についてお伝えしました。

管理者が普段行っているタスクの多さに驚かれた訪問看護師もいらっしゃるのではないでしょうか。

訪問看護の管理者は患者さんとその家族に寄り添い、信頼と安心を提供する重要な存在です。

本記事を通じて、訪問看護の管理者としての役割と責務についての理解とスキルを磨くためのヒントを得ていただければ幸いです。

>保険外美容医療での看護師独立ストーリー

保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

石原看護師がどのようにして時間や場所にとらわれない働き方を実現できたのか、その経緯、現在の状況、そして今後のビジョンについてお話をうかがいました。

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