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訪問看護での苦情対応とは?心構えから具体的な対策までを徹底解説

訪問看護ステーションでは、利用者の満足度向上と信頼関係の構築が重要なテーマとなります。しかし、時には利用者からの苦情が発生することもあります。この苦情にはさまざまな要素やレベルが存在し、適切な対応が求められます。本コラムでは、利用者の要望と期待に対してどのように向き合い、効果的な苦情処理を行うべきかについて探っていきます。

訪問看護における利用者からの苦情はどのように発生するのか

訪問看護における利用者からの苦情はどのように発生するのか

訪問看護における利用者からの苦情は、看護師にとって非常に重要な問題です。特に訪問看護では、病院と比較して直接的に利用者と接する機会が多くあります。

そのため、利用者からの苦情はよりダイレクトに看護師に届くことが多いのです。このような状況で心が折れそうな経験をしている看護師も存在するかもしれませんが、利用者からの苦情の取り扱いは非常に重要です。

最初に利用者の不安や不満が心に澱のように溜まっていく過程について考えていきましょう。

苦情は、小さな出来事や細かい不満から始まる

苦情は、小さな出来事や細かい不満から始まる

利用者の不安や不満は、しばしば小さな出来事や細かい不満から始まります。例えば、「期待している処置に今一歩、不満足」や、「話をあまり聞いてくれない」といった状況です。これらの小さな不満が時間とともに積み重なっていくことで、利用者の心に澱(おり)のように溜まっていきます。

利用者はその不満や不安を長期間にわたって我慢していたり、解決を求めながらもなかなか気づいてもらえなかったりすることで、ストレスや不信感を抱えることになります。

こうした状況を避けるためには、看護師がこまめなコミュニケーションを取ることが重要です。看護師は利用者の状況や感情に対して敏感であることが求められます。相手の気持ちや置かれている状況を理解するために、積極的に話を聴く姿勢を持ちましょう。利用者が自身の不満や不安を話しやすい環境を提供し、そこでのコミュニケーションを通じて利用者のニーズや要求を把握しましょう。

さらに、利用者の不満や不安に対して誠実に向き合うことも重要です。看護師は利用者の声に耳を傾け、感情的な反応を抑えながら冷静に対応する必要があります。利用者が抱える不満や不安を軽視せず、真剣に受け止め、解決に向けた対策を取ることが求められます。また、問題の解決に向けて利用者との間で共通の目標を設定し、利用者が関与できるように促すことも有益です。

苦情には、要望、請求、責任追及の3つのレベルがある

苦情には、要望、請求、責任追及の3つのレベルがある

利用者からの苦情には、要望、請求、責任追及の3つのレベルがあります。以下の例を使って、訪問看護の利用者からの苦情に対する対応の重要性を解説します。

例えば、利用者Aさんは訪問看護の訪問時間をあまり変えないでほしいという要望を伝えます。この場合、看護師は利用者の要望に敏感に耳を傾け、可能な範囲で要望を叶えるよう努めることが重要です。要望に対して配慮を欠いた対応を繰り返すと、利用者は不満を募らせ、要求を強める可能性があります。

もし看護師が利用者の要望に対して無視や軽視の態度を示し続けると、利用者Aさんは「時間を変えてよ」という請求に変わるかもしれません。利用者は自身のニーズや利益を守るために、より具体的な要求を出すことがあります。

看護師は利用者の請求に対しても真摯に向き合い、対応策を模索する必要があります。請求を無視したり適切に対応しなかったりすると、利用者の不満はさらに深まり、信頼関係が損なわれる可能性があります。

さらに、もし看護師が利用者の請求に誠実に対応せず、その結果として事故やトラブルが発生した場合、利用者Aさんは「責任者を出せ」と責任追及の段階に移行するかもしれません。

利用者は自身や家族の安全や権利を守るために、責任を追及することがあります。看護師は責任追及の段階に至る前に、早めに利用者の要求や不満に真摯に向き合い、問題の解決に努めることが重要です。

このように、利用者からの要望が適切に取り扱われない場合、それが請求に変わり、さらに責任追及の段階に発展してしまう可能性があります。訪問看護の場合、利用者の要求や不満に早めに対応し、丁寧なコミュニケーションを図ることが重要です。

苦情は期待の裏返し、利用者からの期待でもある

苦情は期待の裏返し、利用者からの期待でもある

利用者の立場でみた場合、自分をサポートしてくれる訪問看護師に対して不満や苦情を伝えることは、非常に勇気がいることです。利用者は、訪問看護師に頼っている存在であり、ケアや支援を受けるために訪問看護を利用しています。そのため、自身のケアに関わる訪問看護の提供者に対して、不満や苦情を伝えることは躊躇されることがあります。

また、利用者によっては、我慢に我慢を重ねて苦情を伝える前に、相手の機嫌を損なわないかという心遣いを持ちながら伝えることもあります。利用者は、訪問看護師との関係を良好に保ちたいと思っていることがあります。そのため、苦情を伝える際には、相手の感情や関係性を考慮しながら、適切な言葉遣いや表現方法を選ぼうとします。

一方で、利用者は我慢しきれなくなったり、怒りが頂点に達したりすると、感情的な苦情の言葉が出てしまうこともあります。これは、利用者が長期間にわたって我慢を重ね、不満や不安が積み重なってきた結果として現れることがあります。このような場合、訪問看護師は利用者の感情を受け止め、冷静に対応する必要があります。

訪問看護師は、利用者からの苦情を受け止める際に、利用者の立場や感情を理解する必要があります。苦情が伝えられることは、利用者が訪問看護師に対して期待を持っていることの現れでもあります。訪問看護師は、利用者の苦情を受け止め、改善策を考えると同時に、利用者の勇気や心遣いを認識し、適切な対応を行うことで、利用者との信頼関係を構築し、より良いケアの提供に努めることが重要です。

利用者からの要望に対して、すべてを100%応えることは現実的には不可能

利用者からの要望に対して、すべてを100%応えることは現実的には不可能

もちろん、訪問看護の利用者からの要望に対して、すべてを100%応えることは現実的には不可能です。そのため、スタッフ間で話し合い、どこまで要望に応えることができるのかを明確にする必要があります。

以下にその理由と取り組みについて解説します。

「なぜ応えることができないのか」の説明

訪問看護師は、要望を応えることができない場合、その理由を利用者に説明する必要があります。理由には、資源や制約、訪問看護の専門性や範囲を超える要望などが含まれます。

訪問看護師は、利用者に対して具体的かつ明確になぜ要望を応えられないのかを説明し、その理由を理解してもらうことが重要です。この説明によって、利用者は訪問看護の制約や制約に納得し、より現実的な期待を持つことができます。

「応えるためにどのような取り組みをしたのか」の説明

訪問看護師は、利用者の要望を応えるために最大限の努力をします。訪問看護師は、要望を実現するためにどのような取り組みを行ったかを利用者に説明することで、利用者とのコミュニケーションを深めることができます。

例えば、他のリソースや専門家との連携を試みたり、代替案や改善策を提案したりすることがあります。訪問看護師が取り組んだ努力や考え方を説明することで、利用者は訪問看護師の努力を理解し、協力的な姿勢を持つことができます。

「どこまでなら応えることができるのか」の説明

訪問看護師は、どこまで利用者の要望に応えることができるのかを明確にする必要があります。

訪問看護には限られたリソースや制約があり、全ての要望に応えることは現実的ではありません。スタッフ間で話し合い、どの範囲まで要望に応えることができるのかを明確にし、その範囲を利用者に説明します。これにより、利用者は訪問看護の制約や限界を理解し、現実的な要望を持つことができます。

これらの説明を通じて、訪問看護師は利用者との信頼関係を築き、相互理解を深めることができます。利用者は訪問看護師の制約や努力を理解し、現実的な要望を持つことができるようになります。

また、訪問看護師は利用者のニーズをより正確に把握し、限られたリソースを最適に活用することができます。訪問看護師と利用者のコミュニケーションを通じて、互いの期待や制約を共有し合い、最善のケアを提供するための協力的な関係を構築することが重要です。

苦情に対応する際の適切な心構えや態度、言葉遣いとは

苦情に対応する際の適切な心構えや態度、言葉遣いとは

利用者の苦情に対応する際には、適切な心構えや態度、そして言葉遣いが重要です。以下の点には、とくに注意が必要です。

(1)自己防衛の言葉を避ける

自己防衛の言葉や身内を擁護する言葉は、利用者の不満や苦情を軽視している印象を与える場合があります。管理者や訪問看護師が「うちの職員も悪気はないんです」「うちの職員も精一杯やったんですけど」といった言葉で反応してしまうと、利用者は理解してもらえないと感じる可能性があります。それによって、トラブルがさらに悪化する可能性もあります。

(2)共感と理解を示す

利用者からの苦情に対しては、共感と理解を示すことが重要です。利用者の感情や不満を受け止め、「おっしゃる通りです」「ご不便をおかけして申し訳ありません」といった言葉を使って利用者の立場や気持ちを理解しましょう。共感と理解を示すことで、利用者は自身の声が届いていると感じ、信頼関係の構築が促進されます。

(3)解決に向けた具体的な対策を提案する

苦情に対しては、解決に向けた具体的な対策や改善策を提案することが重要です。訪問看護の管理者やスタッフは、問題解決に積極的に取り組む姿勢を示しましょう。「改善策としてはこういった方法を考えています」「次回はこういった対策を取る予定です」といった具体的な提案を行うことで、利用者に対して問題解決への取り組みを伝えることができます。

(4)誠実で丁寧なコミュニケーションを心掛ける

苦情に対応する際には、誠実で丁寧なコミュニケーションを心掛けることが大切です。利用者とのコミュニケーションにおいては、相手の意見や感情に真摯に向き合い、適切な言葉遣いと態度を持つことが求められます。言葉遣いは敬意を持ち、相手の気持ちを傷つけるような表現を避けるようにしましょう。

利用者の苦情に対応する際には、自己防衛の言葉を避け、共感と理解を示し、解決に向けた具体的な対策を提案することが重要です。また、誠実で丁寧なコミュニケーションを心掛けることで、利用者との信頼関係を築き、問題解決に向けて協力的な関係を構築することができます。

訪問看護ステーション全体で苦情への対応を学ぶ重要性

訪問看護ステーション全体で苦情への対応を学ぶ重要性

訪問看護ステーション全体で苦情への対応を学ぶことは非常に重要です。苦情に対しては、利用者が抱える不満や不安に真摯に向き合い、解決に取り組む姿勢が求められます。

(1)利用者との信頼構築

訪問看護では、利用者との信頼関係が重要です。日頃の接遇やケアを行うスタッフが丁寧に関わり、利用者との信頼関係を築くことで、苦情が発生した際にも利用者は話しやすくなります。スタッフ全員が利用者に対して誠意をもって接し、心の通ったコミュニケーションを築くことは、苦情の発生を予防し、より良いケア環境を提供するために必要です。

(2)トラブルの早期解決

スタッフ全員が苦情に対して関与し、誠意をもって対応することで、トラブルの早期解決が可能となります。苦情がある場合、利用者はその問題に対して不満や不安を抱えています。スタッフが誠意をもって話を伺い、謝罪の言葉を述べることで、利用者の気持ちを受け止め、問題解決への道筋を示すことができます。早期解決は利用者の満足度を高め、信頼関係を回復するのに役立ちます。

(3)スタッフの意識の向上

スタッフ全員が苦情への対応に関与し、誠意をもって対応することは、スタッフの意識を高める効果もあります。苦情に対応する経験を通じて、スタッフは自身の接遇やケアの方法について再評価し、改善の余地を見つけることができます。苦情への対応はチーム全体の成長と改善につながることがあります。

(4)信頼と評判の維持

訪問看護ステーションは利用者や地域社会からの信頼を維持することが重要です。利用者からの苦情に対して責任者だけでなく、スタッフ全員が適切に関与し、誠意を持って対応することで、信頼と評判を損なうことを防ぐことができます。スタッフ全員がプロフェッショナルな態度で接し、問題が生じた際にも適切に対処することは、ステーションの良好な評判を築くために不可欠です。

日頃の接遇やケアを行うスタッフが利用者との関わりにおいて誠意をもち、問題が発生した場合には適切に話を伺い、謝罪の言葉を述べることは重要です。これによって、利用者の満足度を向上させ、信頼関係を深めることができます。

訪問看護ステーションにおける苦情対応の手順

訪問看護ステーションにおける苦情処理の手順

最後に訪問看護ステーションで整備すべき訪問看護における苦情対応の手順をお伝えします。

(1)苦情の把握(当日又は時間帯によっては翌日)

・利用者宅等を訪問し、受けた苦情内容を確認する。

・利用者に対して今後の対応や予定を説明し、了解を得る。

・解決を図る旨を伝え、速やかな対応を約束する。

(2)検討会等の開催

・関係者の出席のもと、苦情内容の原因を分析するために検討会を開催する。

・対応策について協議し、適切な改善策を検討する。

(3)改善の実施

・利用者に対して改善策を説明し、同意を得る。

・改善策を速やかに実施し、改善状況を確認する。

・もし損害を賠償する必要がある事故が発生した場合は、迅速に検討する。

(4)解決困難な場合・指導

・保険者等に連絡し、助言を得て改善策を実行する。

・解決できない場合は、保険者等と協議し、国保連への連絡を検討する。

(5)再発防止

・苦情処理の内容を記録し、同様の苦情や事故の再発防止に取り組む。

・従業者に対して苦情処理の内容を周知し、必要な研修や教育を実施する。

・「苦情処理マニュアル」等を作成・改善し、サービスの向上を目指す。

(6)事故発生時の対応等

・事故が発生した場合は、事前に関係機関との対応方法を定めておき、必要な措置を速やかに講じる。

・関係機関との連携を図り、関係者に対して対応方法を周知し、協力を依頼する。

以上が訪問看護における苦情処理の手順です。これらの手順を実践することで、苦情に適切に対応し、改善と再発防止に取り組むことが可能となります。

まとめ

今回は、訪問看護ステーションにおける利用者からの苦情対応についてお伝えしました。

訪問看護では、利用者との信頼関係が重要です。小さな不満や不安が積み重なって最終的に苦情に発展することを避けるためには、看護師が利用者の心情を理解し、適切なコミュニケーションを築く必要があります。

こまめなコミュニケーションを通じて利用者の声を受け止め、誠実に向き合い、問題解決に努めることで、利用者の不満や不安を最小限に抑え、質の高い訪問看護サービスを提供することができるでしょう。

参考文献:これだけはおさえておきたい 明日からできる訪問看護管理

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いろいろナースから生まれた看護師の独立事例を冊子にまとめました。岩田看護師(34才女性)は、総合病院に勤めながら「看護師が働き続けられる職場を作りたい」と訪問看護での独立を志望。

訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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