訪問看護ステーションの収入源である加算制度。ステーションを開業したい看護師にとって、加算請求についてしっかりと理解を深めることが大切です。
「でも報酬制度って、難しくてよくわからない…」そんな心配を抱く看護師も多いはず。この記事では、訪問看護の加算のうち、介護保険の報酬について解説します。
訪問看護における介護保険の9つの加算
訪問看護で提供する介護サービスの加算には、次の9つがあります。
1.初回加算
2.緊急時訪問看護加算
3.長時間訪問看護加算
4.複数名訪問加算
5.退院時共同指導加算
6.ターミナルケア加算
7.特別管理加算
8.看護体制加算
9.サービス提供体制強化加算
9つの加算について、単位や頻度、内容と要件を説明します。
なお、介護保険では、1単位は10円から11.4円で料金を算出します。1単位の料金は地域差があります。
(1)初回加算
初回加算は、次に該当し、新たに訪問看護計画書を作成する時に加算できます。
・事業所にとって新規のご利用で訪問看護サービス提供を行う場合
・要支援から要介護、要介護から要支援に変更となった場合
・2ヶ月間訪問の間が空いた時
300単位、頻度は月1回 となっています。
(2)緊急時訪問看護加算
緊急時訪問看護加算は、利用者の同意のもと、利用者又はその家族等に対して、「24時間連絡できる体制」を取っているステーションが対象です。
そのうえで、「計画的に訪問することとなっていない緊急時訪問を必要に応じて行う体制にある場合」に算定できます。
24時間の看護体制を敷き、緊急時にも対応できる体制を取っている訪問看護ステーションを評価する目的で創設された加算です。
574単位、頻度は月1回となっています。
緊急時訪問看護加算を算定するには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
1.利用者やその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあることを届け出していること
2.計画的に訪問することとなっていない緊急時訪問を必要に応じて行う体制にあること
3.利用者に対して利用者やその家族に緊急時訪問看護加算の算定について書面で説明し、同意を得ていること
※要件を満たしている場合、月の第1回目に介護保険で訪問に行った日に、訪問看護の単位数に加えて緊急時訪問看護加算を算定できます。
(3)長時間訪問看護加算
長時間訪問看護加算は、特別管理加算の対象になる利用者に対して、1時間以上1時間30分未満の訪問看護を行った後に、引き続き訪問看護を行った場合に算定できます。
長時間訪問看護加算は、支給限度額に含まれる加算になります。
300単位、頻度は 1日1回となっています。
(4)複数名訪問加算
複数名訪問加算とは、スタッフ1人で看護を行うことが困難な利用者に対して、看護師等が2名または看護師等1名と看護補助者1名で訪問看護を行うことを評価する加算です。
該当する利用者の要件は以下の通りです。
• 身体的理由により1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる
• 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる
• その他利用者の状況等から判断して、上記に準ずると認められる
• 利用者やその家族から複数名で訪問を行うことの同意を得ていること
※複数名訪問加算は、(Ⅰ)と(Ⅱ)が設定されていて、訪問時間や訪問する人の資格によって単位が異なります。
また、複数名訪問加算は、次の2通りあります。
■複数名訪問加算(Ⅰ)
同時に2人の看護師等が訪問した場合に加算されます。
「単位/頻度」 30分未満の場合 254単位/1回 30分以上の場合 402単位/1回
■複数名訪問加算(Ⅱ)
同時に1人の看護師等と1人の看護補助者が訪問した場合に加算されます。
「単位/頻度」 30分未満の場合 201単位/1回 30分以上の場合 317単位/1回
(5)退院時共同指導加算
退院時共同指導加算は、病院、診療所、介護老人保健施設などから退院・退所するご利用者が、入院中に訪問看護ステーション等の看護師等が医療機関と共同して、在宅での療養上必要な指導を行うことを評価する加算です。
令和3年度介護報酬改定では、退院時共同指導加算の算定要件について、新型コロナウイルス感染症対策やICT活用の観点から、テレビ電話等の活用が認められるようになりました。
退院時共同指導の内容を文書によって提供することや退院・退所後に訪問看護サービスを行うことも要件となります。
単位と頻度は600単位/回となっています。
(6)ターミナルケア加算
ターミナルケア加算は、利用者が自宅で自分らしく最期を迎えるためケアを行う体制を構築していることと実際の取り組み(実績)の両面で評価します。
在宅で死亡した利用者に、その死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合(ターミナルケアを行った後、24時間以内に在宅以外で死亡した場合を含む)、算定することができます。
2,000単位、頻度は1回です。
(7)特別管理加算
特別な管理を必要とする利用者に対して、計画的な管理を行うことで算定できる加算です。
特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)が設定されていて、対象者や単位が異なります。
■特別管理加算(Ⅰ)の対象者
以下のいずれかに該当する利用者に加算されます。
• 在宅悪性腫瘍等患者指導管理
• 在宅気管切開患者指導管理
• 気管カニューレの使用
• 留置カテーテルの使用
「単位/頻度」 500単位/月
■特別管理加算(Ⅱ)の対象者
以下のいずれかに該当する利用者に加算されます。
• 在宅自己腹膜灌流指導管理
• 在宅血液透析指導管理
• 在宅酸素療法指導管理
• 在宅中心静脈栄養法指導管理
• 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
• 在宅自己導尿指導管理
• 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理
• 在宅自己疼痛管理指導管理
• 在宅肺高血圧症患者指導管理
• 人工肛門、人工膀胱の設置
• 真皮を越える褥瘡
• 週3日以上の点滴注射
「単位/頻度」 250単位/月
(8)看護体制加算
医療ニーズの高い利用者へ対応する体制を整備していることが評価されて加算されます。
ステーションのスタッフ総数のうち、看護職員の占める割合が60%以上であることが必要です。
看護体制加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)が設定されていて、算定要件によって単位が異なります。
■訪問看護の看護体制強化加算(Ⅰ)に算定要件
• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること
• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること
• 算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が「5人以上」であること
「単位/頻度」 550単位/月
■訪問看護の看護体制強化加算(Ⅱ)の算定要件
• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること
• 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること
• 算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が「1人以上」であること
「単位/頻度」 200単位/月
(9)サービス提供体制強化加算
サービス提供体制強化加算は、サービスの質を上げるための取り組みを評価するものです。
具体的には、下記内容や要件となります。
• すべての看護師等に対して、個別の研修計画を作成し、計画に沿った研修を実施していること
• 利用者に関する情報の伝達、サービス提供の留意事項の伝達、看護師等の技術指導を目的とした会議をおおむね1ヵ月に1回以上開催し、開催状況の概要を記録していること
• すべての看護師等に対して、事業主が費用を負担して、少なくても1年に1回以上健康診断等を実施していること
サービス提供体制強化加算は(Ⅰ)(Ⅱ)が設定されていて、総数のうち3割を占める看護師の勤続年数によって単位が異なります。
■サービス提供体制強化加算(Ⅰ)の算定要件
• 看護師等の総数のうち、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であること。
「単位/頻度」6単位/回
■サービス提供体制強化加算(Ⅱ)の算定要件
• 看護師等の総数のうち、勤続年数3年以上の者の占める割合が30%以上であること。
「単位/頻度」3単位/回
まとめ
加算制度をよく理解することで、訪問看護ステーションの経営状況を知ることができます。また、加算のチェックで、どのようなケアを提供しているのかを把握でき、評価につなげることができます。
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