訪問看護ステーションの経営者であれば、数年ごとに行われる、診療報酬や介護報酬の改定が気になることでしょう。
2024年4月に行われる報酬改定は、「トリプル改定」と呼ばれます。介護報酬、診療報酬、障害福祉サービス等報酬が、同時に改定されるから、こう呼ばれています。
2023年5月現在、トリプル改定についてどのような議論がされているのでしょうか?改定のゆくえを予想したいと思います。
「団塊の世代の高齢化」が報酬改定に影響
2025年は、800万人いる「団塊の世代」の人たちが75歳以上になり、後期高齢者になる年です。
さらなる高齢化に伴い、介護や医療を受ける人が増えると考えられます。ますます保険の財源が圧迫される可能性があります。
これからも国民皆保険制度を存続させていくために、医療や介護の費用を削減しなくてはなりません。2024年の改定では、そのための「効率化」が最大のテーマになると予想されています。
出典元:財務省「これからの日本のために財政を考える」
「効率化」が訪問看護ステーションへ影響
2022年4月に行われた「財務省財政制度分科会」の中で、訪問看護に影響すると考えられる論点が、5つありました。
(1)利用者の自己負担の見直し
(2)ケアマネジメントの利用者負担の導入
(3)区分支給限度額のあり方の見直し
(4)軽度者に対する給付の適正化
(5)経営の大規模化・協働化の必要性
この5つの議論点について、1つずつ説明します。
(1)利用者の自己負担の見直し
現在、介護サービスの利用者負担は、多くが1割です。しかし、2024年の改定では、要介護認定者のうち、5%の利用者について、負担率が2割へと引き上げられる可能性があります。
もし2割負担が原則化すると、利用者の経済的負担が増すのは避けられません。
(2)ケアマネジメントの利用者負担の導入
要支援・要介護認定を受け、介護保険サービスを受ける際には、ケアプランの作成が必須です。現在、このケアプランを作成するケアマネジメント費用は、利用者負担ではありません。
しかし、2024年の改定では、ケアマネジメントの費用を利用者に負担してもらう案が挙がっています。
(3)区分支給限度額のあり方の見直し
現在、在宅医療介護サービスの加算は、支給限度額の対象外となっています。
しかし、2024年の改定では、「加算対象のサービスを、設定された限度額の範囲内の給付に納めるべきだ」という議論がなされました。
支給限度額の範囲内にサービスを納めるとなると、加算対象のサービスが多い訪問看護では、利用者が受けられるサービスが少なくなるおそれがあります。
(4)軽度者に対する給付の適正化
訪問看護では、リハビリについてもサービスを提供しています。
しかし、次の改定では、「独歩で介助者の助けを借りずに通院できるご利用者には算定できないといった要件をより明確化」するとの議論がなされました。
リハビリを受けられる利用者の対象範囲が狭まる可能性があります。
(5)経営の大規模化・協働化の必要性
近年、在宅医療のニーズが高まるにつれ、増加した訪問看護ステーション。しかし、スタッフ数や利用者が少ない、小規模なステーションも少なくありません。
2024年の改定では、「医療と介護サービスの提供体制を俯瞰して、経営の大規模化・協働化を図る必要がある」との案が挙がりました。
この案が制度化されると、小規模な訪問看護ステーションは経営が困難になったり、吸収合併されたりすることが予想されます。
まとめ
訪問看護において、社会の高齢化に伴い、医療や介護の質を保つことがますます重要な課題になっています。医療や介護の財源を守り、必要とするすべての人にサービスを提供していくため、より効率的でムダのない経営を行わなくてはならないと言えるでしょう。
報酬制度について知り、看護ステーションの経営について学びたい看護師のみなさん、まずはいろいろナースに相談してみませんか?
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