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訪問看護によるナーシングホームの融資を成功させる4つのポイント

訪問看護ステーションの経営者が親和性の高い新規事業としてナーシングホームの開設を希望するケースが増えてきました。

訪問看護事業所がナーシングホームを新たに開設する際には、訪問看護を始める時とは異なる、土地取得費用、建築費用や設備費用など多額な資金が必要となります。

仮に、1ヶ月あたり20人以上の利用者により10%保険収入が減る同一建物等減算を回避できる、比較的コンパクトな19床のナーシングホームを開設する場合でも、土地取得費用と建築費用、設備費用で1億5千万円程度がかかります。

それに加えて、運転資金として3千万円程度が必要となるため、総額で1億8千万円程度の準備が必要となり、資金調達の手段としては、金融機関からの融資を受けることが一般的になります。

訪問看護の経営者の中には、ナーシングホーム開業ための多額な資金融資を「どのように進めていけばいいのか、よくわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、本日は訪問看護ステーションがナーシングホームの融資を成功させるためのいくつかのポイントを紹介させていただきます。

金融機関は、ナーシングホーム事業をどうみているのか?

金融機関は、ナーシングホーム事業をどうみているのか?

訪問看護ステーションがナーシングホームを開設する時に融資を成功させるポイントを知るにあたり、まず、金融機関が介護事業の一環であるナーシングホーム事業をどのようにみているかについて考えてみましょう。

近年では、重度の要介護認定者や難病患者の施設入居のニーズの高まりや、最期まで過ごせて看取りができる施設の整備の必要性から、こうした機能を持ち合わせるナーシングホームが成長事業として注目されています。

そのためナーシングホームの事業性を認識し、高く評価して、前向きに融資を進める金融機関もあります。

一方で、介護事業全般でみた場合、下記グラフにあるように2022年は介護事業者は過去最多の倒産件数となるなど、金融機関からは、ナーシングホームも倒産や返済不能となるリスクを抱えているとみられているのも事実です。

倒産は過去最多を大幅に更新

 2022年の「老人福祉・介護事業」倒産は143件(前年比76.5%増)で、介護保険制度が始まった2000年以降で2020年の118件を上回り最多を更新した。負債総額は221億3,800万円(同71.8%増)で、2008年の192億5,500万円を上回り、14年ぶりに負債額を更新した。

倒産急増の背景は、収束の見通しが立たないコロナ禍の影響が大きい。コロナが直接、間接に影響したコロナ倒産は2020年が7件、2021年が11件だったが、2022年は63件に急増。感染防止の対策コストや利用頻度の減少、在宅勤務の定着による需要減など、新しい生活様式に対応できなかった事業者の倒産が相次いだ。

2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況

コロナ禍に加え、コスト高の影響も重くのしかかる。介護報酬は、公定価格のため介護サービス料金の引き上げが難しく、コスト増による息切れ倒産も出始めた。

参照元:株式会社東京商工リサーチ「2022年「老人福祉・介護事業」の倒産状況

ナーシングホームの主たる収入である公的保険は基本的に公定価格のため、利用料金の引き上げは困難です。一方、人件費や光熱費などの運営コスト削減もサービス低下に直結するため容易ではありません。

そうした中、今後も物価高が続けば、赤字に陥り、返済の遅延や倒産が増加することも懸念されます。

さらに、介護スタッフや看護職の人手不足により稼働率が低下する恐れや、市場競争が激化し入居者が減るリスクもあります。

また、今後においても介護報酬は大幅なプラス改定の可能性が低く、報酬単位の加算が取れない老人ホームの事業所は淘汰されるとの見方もあります。

これらのことから、訪問看護ステーションが開設するナーシングホームに対して、金融機関から融資を得るためには、

1.人材獲得の優位性

2.効率化や自動化によるコスト削減

3.加算による報酬単価の引き上げ

4.地域の高い市場性

この4点が事業計画に明確に組み込まれていることが必要不可欠となります。

訪問看護ステーションによるナーシングホームの融資を成功させるポイントとは

訪問看護ステーションによるナーシングホームの融資を成功させるポイントとは

次に上記を踏まえて、訪問看護ステーションがナーシングホームを開設のための融資を成功させる具体的なポイントをみていきます。

訪問看護ステーションがナーシングホームの開設で融資を成功させるためには、まず以下の5つの書類を融資に値する内容にしていく必要があります。

(1)本業の訪問看護ステーション事業での3期分の決算書

(2)自己資金額

(3)既存借り入れの返済状況

(4)ナーシングホームの事業の収支計画

(5)ナーシングホームの融資の返済計画と返済財源

特に(4)の「事業の収支計画」には、以下の項目において、将来の収益性や事業の持続可能性を具体的に示していることが求められます。

1.収入の詳細

入居者ごとの料金設定やサービス提供により見込まれる収入を詳細に記載します。各保険収入や自己負担分、入居者の利用料金その他の収益源を具体的に示します。

2.経費の詳細

運営にかかる固定経費(人件費、光熱費、管理費など)と変動経費(食事代、医療材料費など)を具体的にリストアップし、月次・年次での見込まれる金額を示します。

3.初期投資

土地取得費用、建築費用、設備投資などの初期投資にかかる費用を明確にし、それらの支出がどのように賄われるかを示します。

4.キャッシュフロー予測

毎月・毎年のキャッシュフロー予測を作成し、問題点や改善の余地も検証します。

また(5)の「ナーシングホームの融資の返済計画と返済財源」もナーシングホームの財務の安定性を確保し、以下の項目を記載し、返済義務を果せることが示されている必要があります。

1.融資の詳細

希望する融資の金額、利率、返済期間、返済スケジュールなど、融資に関する具体的な条件を示します。

2.返済能力の説明

収支計画と連動して、融資を返済するための具体的な計画を提示します。将来の収入見込みと、それを元にした返済計画を詳細に記述します。

3.リスク管理策

返済計画におけるリスクを明確にし、リスクに対する具体的な対策や回避策を示します。

4.追加的な収入源

返済において予期せぬトラブルが発生した場合に備え、追加的な収入源や手段についても検討し、提案します。


これらの計画は、将来の事業運営や返済能力に関する見通しを提供し、金融機関にとって融資先としての信頼性を構築するのに役立ちます。

計画の具体性と説得力が高ければ高いほど、融資の成功確率が上がります。

ナーシングホームの事業計画に組み込む内容とは

ナーシングホームの事業計画に組み込む内容とは

さらに、上記5つの書類に加え、金融機関が懸念する「倒産リスク」や「返済不能リスク」を払拭し、納得できる材料を揃えて交渉にあたることで、融資の成功率を高めることができます。

金融機関が懸念する「倒産リスク」や「返済不能リスク」を払拭するためには、以下の4つの項目を明確化し、事業計画に組み込んでいることが必要となります。

1.人材獲得の優位性

2.効率化や自動化によるコスト削減

3.加算による報酬単価の引き上げ

4.地域の市場性と需要の高さ

では、これらの4つの項目について詳しくみていきたいと思います。

(1)人材確保の優位性

(1)人材確保の優位性

銀行からは、ナーシングホームでは看護師や介護士が充足しない影響で、稼働率が下がったり、閉鎖する場合があるとみられています。

訪問看護ステーションがナーシングホーム開設時の融資を有利にするためには、看護師や介護士が確保できる採用戦略、離職防止の取り組み、補充の仕組みが必要です。

1. 魅力的な労働条件と福利厚生

地域内の給与相場を調査し、可能な範囲で、魅力的な給与水準や手当てを設定します。社会保険、退職金制度、健康保険などの公的な福利厚生意外にも研修補助や食事補助など、独自の福利厚生制度を確立します。

2. ワークライフバランスの充実

ワークライフバランスに配慮し、柔軟な労働時間を提供することが、スタッフが働きやすい環境と長期的な雇用関係を築く重要なポイントとなります。

3. キャリア開発の機会

スタッフがスキルを向上させ、キャリアを発展させる機会を提供することが重要です。継続的な教育・トレーニングプログラムや資格取得支援などがスタッフ採用や定着に寄与します。

4. 採用の仕組み

Webサイトからの応募の流れ、オンライン求人広告、SNSの活用など、常に応募者からの問合せが入る状態を仕組み化します。

5. チームワークとコミュニケーション

チームワークを重視し、スタッフ同士のコミュニケーションを促進することが、労働環境の向上に寄与します。協力体制を築くことで、仕事への取り組みがより円滑になります。


これら採用の優位性を事業計画に組み込むことで、介護士と看護師の確保と定着に関する金融機関の懸念を減らすことができます。

(2)効率化や自動化によるコスト削減

(2)効率化や自動化によるコスト削減

ナーシングホームの効率化や自動化は、人件費の支出を抑制しながら、サービス品質を向上できるため、経営の安定化につながるとされ、訪問看護ステーションのナーシングホーム開設において、金融機関の融資の際のアピールポイントになります。

以下は、ナーシングホームでの効率化や自動化の具体的な取り組み事例です。

1. 非接触バイタルセンサーの導入

寝たきりの入居者の脈・呼吸を見守り、感知します。スタッフがPCやスマホでリアルタイムで確認できるため、夜勤負担が軽減され、安全性が確保されます。

2. スタッフスケジュールの自動化

シフト管理や勤怠管理を自動化するシステムを導入し、スタッフのシフト組と勤務スケジュール管理をミスなく効率化します。

3. 介護記録業務のICT活用

介護記録業務においてICTを活用することで、業務の負担を軽減し同時に情報を一元化することで、人件費の削減と入居者の状態管理が向上します。

4. 遠隔の医療相談の活用

入居者に異変があった際に、遠隔医療相談のシステムを利用しアドバイスを受けることで通院の必要性が判断し、スタッフの負担を軽減します。


これらの取り組みを事業計画に組み込むことは、金融機関の評価向上の一助となります。

(3)加算による報酬単価の引き上げ

(3)加算による報酬単価の引き上げ

一般的な有料老人ホームでは、入居者からの利用費用以外では基本の介護報酬のみが収入源となります。これにより入居者の一人単価が限定的で、人件費や物価上昇、入居者減が収益の低下に直接的に影響します。

これが金融機関の融資において懸念材料となります。

一方、訪問看護ステーションのナーシングホームでは、以下のような特徴があることで、基本の介護報酬に加え、医療保険やさまざまな加算による収入があります。

これにより、金融機関の懸念を払しょくし、評価を高くすることができます。

1.退院支援

病院から退院し、直接ナーシングホームに入居するケースがあるので、退院時の加算が算定できます。

2.難病や重度者の受け入れ

訪問看護ステーションのナーシングでは、吸引(24時間対応)、ストマ、がん末期、中心静脈栄養、ALSなどの難病の方など24時間の医療処置に対応します。これにより難病や高度な医療ニーズへの対応における加算が算定できます。

3.急変時の対応

訪問看護ステーションのナーシングホームでは、急変の可能性のある場合でも受け入れます。これにより緊急時の対応における加算が算定できます。

4.看取りの対応

訪問看護ステーションのナーシングホームでは、末期の入居者が最期を迎えられるようケアをし、看取りも行います。これによりターミナルにおける加算が算定できます。

5.経験豊富な専門人員の配置

訪問看護ステーションのナーシングホームでは、経験豊富な看護師や専門的なスキルを持つ熟練スタッフも多く配置します。こうした人員配置における加算が算定できます。


これらの加算による報酬単価の引き上げ項目を、具体的に事業計画に組み込むことで、金融機関の評価を上げることができます。

(4)地域の市場性と需要の高さ

(4)地域の市場性と需要の高さ

金融機関が訪問看護ステーションがナーシングホームを始める際の融資を進めるにあたり、市場性と需要の高さが明確であること求められます

市場性と需要の高さを示すためには以下の項目の把握が必要です。

1.地域の高齢者と障害者の人口統計データ

対象地域の重要な要介護認定者数や障害者の方の統計データや将来推移を把握します。

2.既存の介護施設やナーシングホームの状況

対象地域の介護施設やナーシングホームを調査します。
それら施設の特徴、種類や提供サービス、料金体系、特徴、スタッフ体制、入居者数などを把握することで、市場の競合状況を理解し、需要を把握できます。

3.地域特性の考察

生活・福祉、文化や経済的状況などの地域特性を考察することで、需要を把握できます。

これらの項目を把握し、市場性と需要の高さを事業計画に組み込むことで、金融機関への説得材料となります。

まとめ

今回は、訪問看護ステーションがナーシングホームを開設する上で融資を成功させるためのいくつかのポイントを紹介しました。

訪問看護ステーションがナーシングホームの融資を成功させるためには、以下のの書類が融資に値する内容である必要があります。

(1)本業の訪問看護ステーション事業での3期分の決算書

(2)自己資金額

(3)既存借り入れの返済状況

(4)今回のナーシングホームの事業の収支計画

(5)今回のナーシングホームの融資の返済計画と返済財源

金融機関は、深刻な人手不足や物価上昇の影響により、ナーシングホームが倒産や返済不能に陥る懸念があるとみている可能性があります。

そうした懸念を払拭し、融資を成功させるには、上記5つの書類に加え「人材獲得の優位性」「効率化や自動化によるコスト削減」「加算による報酬単価の引き上げ」「地域の市場性と需要の高さ」の4つの要素が明確に組み込まれている事業計画を用意することをお勧めします。

訪問看護によるナーシングホームの相談をお受けしています

いろいろナースでは、様々な協力会社と協業しながら訪問看護ステーションによるナーシングホームの開業のお手伝いをおこなっております。

訪問看護によるナーシングホームの進め方を知りたい、具体的なアドバイスが欲しい、実際の施設を見学したいなど、訪問看護ステーションが運営するナーシングホームに興味のある方は、いろいろナースまでお気軽にご相談ください。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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