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介護離職を防ぐ!訪問看護ステーションのナーシングホーム

近年、家族の介護や看護を理由に仕事を辞めてしまう、いわゆる介護離職の人数が増加していることが社会問題となっています。

介護の必要度が高くなると、食事や排泄などの日常動作に対して常に援助が必要です。さらに状態が進行すると、昼夜問わず医療ケアが必要となります。

こうした状況で自宅で介護する家族には心身ともに大きな負担がかかります。そこで老人ホームなどの施設への入所を検討しますが、介護を必要とする本人が自宅で家族による介護を希望する場合や、経済的な理由で施設への入所を断念せざるを得ない事情を抱えるケースがあります。

その結果、介護に専念するために仕事を辞める選択をしなければならなくなります。

高齢化が進む我が国では、さらに要介護者の数が増え、それに伴い介護離職者数も増えることが懸念されています。

国は「介護離職ゼロ」の実現をスローガンに掲げ、要介護者に必要な介護サービスの確保と、介護職の働く環境改善・家族支援を両輪として体制整備を進めています。

しかしながら、待ったなしの状況下で、こうした体制が完備することは難しく、多方面からの介護離職を防ぐ対策に取り組むべき時期に直面しています。

そこで本日は、介護離職の現状や国の対策を紹介した上で、介護離職を防ぐ一助として、訪問看護ステーションのナーシングホームが貢献する背景について説明します。

介護離職の現状

介護離職の現状

介護離職の現状を介護離職数の推移、介護離職者の年齢層、介護離職による問題点からみてみましょう。

(1)介護離職者数の推移

下記、総務省の調査グラフのように、介護・看護を理由として1年以内に離職した数は、一時期は政策により減少傾向になりましたが、その後は増加を続けており、平成29年には10万人になりました。

年間で多くの人が介護離職を余儀なくされ、今後もますます増えていくことが予想されます。

介護・看護を理由とした離職者数の推移

参照元:内閣府「男女共同参画局」発表 介護・看護を理由とした離職者数の推移

(2)介護離職者の年齢層

下記グラフのように、介護離職者を年齢階級別でみると、「55~59 歳」が男女ともに最も多くなっています。

この年齢層では、要職に就いている場合も多く、家族の介護の責任を負うことは仕事に重大な影響を及ぼす可能性があります。

介護休業制度を利用しにくい現状で、多くの人が仕事を離れざるを得なくなっています。

介護離職者の年齢層

参照元:総務省 就業構造基本調査「Ⅲ 働く女性に関する対策の概況」

(3)介護離職による問題点

仕事を辞めて介護に専念することで、介護者は心身の負担を軽減でき、介護を必要とする人は安心して暮らせるなどのメリットがあります。

一方で、介護で仕事を辞める介護離職には以下のようないくつかの問題点があります。

① 経済的な影響

介護離職が多い年齢層である50代では、これまでの安定した収入を得ている場合が多いです。介護離職により、この安定収入が途絶え、それに伴い今までの生活を維持することは難しくなります。

再就職できたとしても年収は大幅にダウンするケースが多く、経済的な影響は大きくなります。

② キャリアの中断

家族の介護や看護のために仕事を辞めることは、その期間中に仕事が中断されます。

職種によっては、中断期間中に進化した新しい技術やトレンドについていくことが必要とされる場合もあります。そのため、キャリアの中断が続くことは、将来的な職業的な成長やポジションの獲得に支障をきたす可能性が生じます。

③ 社会的な孤立感

家族介護により仕事を離れることで、職場などの社会的交流が減少し、介護者が孤立感を感じやすくなります。
孤立感を感じることで、心理的なストレスの増加などの影響が生じる可能性があります。

④ 職場復帰の難しさ

一度離職すると、職場復帰が難しくなることがあります。
離職期間中に職務経験やスキルが通用しなくなる可能性があるため、介護の責任が終了した後に再び適切な仕事を見つけることが困難な場合があります。

⑤ 精神的なダメージ

家族による在宅介護では、介護や医療ケアなどの日常生活のサポートに加えて、感情面でのケ支えも求められます。また病状の変化にも対処しなければなりません。

こうした慣れない仕事にストレスがかかることに加え、介護離職による経済的な不安や社会的な孤立感も合わさる、精神的ダメージを受けることが多くあります。

⑥ 社会全体への影響

介護離職が増加すれば、企業にとって人材流出となり、労働力不足の問題を一層深刻化させ、我が国の生産性の低下や経済の減速につながることが懸念されています。

経済産業省の試算によると、介護離職に伴う経済 全体の付加価値損失は1年当たり約6, 500億円と見込まれています。

介護離職防止のための国の支援策とは

介護離職は上述のようなさまざまな問題があり、介護離職を減らすべく国は「介護離職ゼロ」を目指し支援策を講じています。
以下にその支援策を紹介します。

(1)介護休業制度等

仕事を辞めることなく、働きながら要介護状態の家族の介護等をするために、育児・介護休業法に基づき以下の制度が設定されています。

これは、勤務先に制度がない場合でも、法に基づいて制度を利用できます(所定労働時間短縮等の措置を除く)。

① 介護休業

要介護状態にある対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限として分割して休業を取得することができます。
有期契約労働者も要件を満たせば取得できます。

② 介護休暇

通院の付き添い、介護サービスに必要な手続きなどを行うために、年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)まで1日又は時間単位で介護休暇を取得することができます。

③ 所定外労働の制限 (残業免除)

介護が終了するまで、残業を免除することができます。

④ 時間外労働の制限

介護が終了するまで、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を制限することができます。

⑤ 深夜業の制限

介護が終了するまで、午後10時から午前5時までの労働を制限することができます。

⑥ 所定労働時間短縮等の措置

事業主は、利用開始の日から3年以上の期間で、2回以上利用可能な次のいずれかの措置を講じなければなりません。

⑦短時間勤務制度 ・フレックスタイム制度 ・時差出勤の制度 ・介護費用の助成措置

※労働者は、措置された制度を利用することができます。

⑧不利益取扱いの禁止

介護休業などの制度の申出や取得を理由とした解雇など不利益 な取扱いを禁止しています。

⑨ハラスメント防止措置

上司・同僚からの介護休業等を理由とする嫌がらせ等を防止する措置を講じることを事業主に義務付けています

参照元:厚生労働省 介護休業制度サイト

(2)介護休業給付

介護休業給付とは、介護離職を防ぐために経済的に支援する雇用保険給付です。この給付金は、家族の介護のために仕事を休んで介護に従事する場合に認められ、休業中は給与の67%を受給することができます。

正社員だけでなく、契約社員などでも以下の条件を満たせば利用できます。

• 雇用保険の被保険者である

• 家族の常時介護が2週間以上必要な状態である

• 職場復帰を前提とした介護休業を取得する

こうした条件を満たす場合に、最長93日を限度として三回まで支給されます。

参照元:厚生労働省 介護休業給付金 パンフレット

訪問看護ステーションのナーシングホームが介護離職防止に貢献する背景

訪問看護ステーションのナーシングホームが介護離職防止に貢献する背景

上記のように、介護離職を防ぐためのさまざまな取り組みが行われています。

しかし、2017年10月時点での介護休業取得率は全体で1.2%と低い水準で、介護をしながら働いている人の大半が制度を利用せずに介護をしている状況にあり、支援制度の周知が進んでいない現状、介護離職者の増加を避けられないことが予測されます。

そのような中、訪問看護ステーションのナーシングホームが、介護離職防止に貢献するとされ期待と注目を浴びるようになりました。

ここでは、訪問看護ステーションのナーシングホームが介護離職防止に貢献する背景について解説します。

(1) 訪問看護ステーション利用からの安心感

介護が必要となった場合、自立状態から車椅子になり、次第に寝たきりになるというように、状態が変われば介護すべきことが変わり、それに伴って介護に費やす時間や労力は増えていきます。

家族介護をしている場合、そのときの状況に合わせて介護サービスを選択し、適切なタイミングで在宅介護から老人ホームなどの施設介護への移行を検討することになります。

しかし「介護は家族が行うべき」とする従来型の価値観や、下記グラフのように介護を受けたい場所が「自宅」男性4割/女性3割、そして最期を迎えたい場所は「自宅」が半数を超える現状で、在宅介護を続けた結果、両立が限界となり、介護離職になるケースがあります。

参照元:内閣府「平成27年版高齢社会白書(概要版)」

老人ホームなどの施設介護を拒むケースでは、老人ホームは集団生活を強いられ、自由がない、行動範囲が狭くなるといったマイナスイメージを持ち、自宅での介護から切り離されて、未知の場所で見知らぬ人に介護されることに抵抗感や不安感を抱いています。

訪問看護利用時に既に利用者や家族との信頼関係がある訪問看護ステーションのナーシングホームであれば、老人ホームを検討する際にもその関係性は継続されます。

訪問看護ステーションは、利用者の個別なニーズやケアプラン、症状や状態変化のタイミングを把握しており、利用者や家族は、馴染みのある看護ステーションの施設でのケアを受けることができる安心感があります。

馴染みのある看護ステーションの施設でのケアを受けることができる安心感があります

訪問看護ステーションのナーシングホームでは、訪問看護の利用時から、利用者や家族に施設に関する情報や、施設内ケアの状態やスタッフについて十分に説明できるため利用者は自宅から切り離された感覚がなく、自宅の延長線として施設介護に安心して移行できることとなります。

このように、訪問看護ステーションのナーシングホームは、従来型の価値観である「介護は家族が行うべき」という考えを段階的に解消し、施設介護への移行がスムーズであることから、介護離職を防ぐ一翼を担うことが期待されます。

(2) 経済的負担の軽減の実現

仕事と介護を同時にこなすためには、介護保険に含まれないサービスも利用する必要があります。たとえば、宅配弁当サービスや有料の見守りサービスの利用で、これには一定の費用がかかります。

施設入所を検討する場合、公的な施設は待機者が多く、入居までに数年かかることがあり、民間の有料老人ホームは早期に入居できるものの、高額な利用料が負担となります。

家族が介護離職を選択することで、介護保険サービスを利用しつつ、他の多くの出費が抑えられると考えた結果、家族が仕事を辞めて、介護に専念することがあります。

訪問看護ステーションのナーシングホームは、効率的な運営と高い保険収入により、入居者の利用料を低額に設定することが可能です。

運営上の工夫により、公的な施設である特別養護老人ホームと同程度の利用料金としながら、高品質なケアを提供できます。

このようなことから、訪問看護ステーションのナーシングホームは介護離職を引き起こす経済的な問題を和らげ、介護離職者を減らすことに貢献します。

(3)重度・医療的ケアの対応

在宅介護では、下記グラフにあるように、介護度が重度化すると介護をする人の離職率が高くなります。

重度・医療的ケアの対応

参照元:内閣府「介護離職の現状と課題」

要介護度別にみた同居の主な介護者の介護時間の構成割合

参照元:厚生労働省 要介護度別にみた同居の主な介護者の介護時間の構成割合

介護をしている正規労働者は、介護頻度が週3日以上になると継続就業希望割合が低下し、就業休止希望が増えるとされています。

要介護度別では、要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が最も多いですが、要介護3以上になると「ほとんど終日」が最も多くなっており、介護度が重度化すると、介護頻度が週3日以上となり、離職率が高くなります。

要介護5となると離職率は最も高くなり、在宅介護の場合は37%にも及ぶとされています。

重度者の家族による在宅介護による介護離職の増加は深刻な問題です。

訪問看護ステーションのナーシングホームは、以下のような特徴を持ち、重度の疾患や難病患者に対して24時間ケアを提供します。

1. 専門的な医療スタッフの配置

訪問看護ステーションのナーシングホームでは、重度の疾患や難病に対応するための、看護師、療法士、介護職が連携し24時間体制で入居者のケアと機能改善に当たります。

2. 緊急時の対応体制

重度の疾患や難病患者は、急激な病状変化や緊急の医療ニーズが発生する可能性が高いです。訪問看護ステーションのナーシングホームでは、緊急時に迅速かつ適切な対応ができる体制があります。

3. 家族のサポート

訪問看護ステーションのナーシングホームでは、訪問看護サービスと同様、重度の疾患や難病を抱える本人だけでなく、その家族にもサポートします。

訪問看護ステーションのナーシングホームは、介護を受けている人の介護度が進行し重度化することによって家族が離職する状況を、重度者の積極的な受け入れにより防止します。

(4)ケアマネジャー、病院とのつながり

在宅介護ではほとんどのケースで、介護保険を利用しており、ケアマネジャーに介護の相談をしています。

ケアマネジャーは、要介護者の介護保険サービスの相談や調整だけでなく、介護に携わる家族に日常生活や仕事においてできる限り支障が出ないようにサポートする役割も果たします。

そのため、以下のような研修を受け、知識を習得し、在宅介護を円滑に進めつつ、介護離職を防ぐための調整役も果たしています。

参照元:厚生労働省「令和2年度仕事と介護の両立支援カリキュラム策定展開事業」

訪問看護ステーションでは、ケアマネジャーとの信頼関係を日頃から築き、連携できる体制を整えています。

これにより、介護者が介護離職の兆しを示す前に、ケアマネジャーとの連携を通じてスムーズにナーシングホームへの入居を促進できます。

このように訪問看護ステーションのナーシングホームは、ケアマネジャーとのつながりにより、介護離職を未然に防ぐことで、離職防止に寄与しています。

また、訪問看護ステーションは、病院との連携を通じて退院患者のサポートにも力を入れています。

入院することで身体機能や認知機能が低下し、自立生活が難しくなるケースが少なくありません。

退院後には、日常生活の基本的なサポート以外に、胃ろう管理、たんの吸引、褥瘡ケア、カテーテル管理、インスリン注射などの医療的ケアが必要な場合も考えられます。

退院患者の状態が自宅での医療ケアが難しいと判断された場合、訪問看護ステーションはスムーズな手続きで患者を自前のナーシングホームへの入居を促すことができます。

病院と既につながりのある訪問看護ステーションのナーシングホームは、退院時に介入できることから、退院直後からの施設介護が可能となり、介護離職を防ぐことに寄与します。

まとめ

近年、家族の介護や看護を理由に仕事を辞めてしまう、いわゆる介護離職の人数が増加していることが社会問題となっています。

高齢化が進む我が国では、さらに要介護者の数が増え、それに伴い介護離職者数も増えることが懸念されます。

介護離職には、 経済的な影響、キャリアの中断、社会的な孤立感、職場復帰の難しさ、精神的なダメージ、社会全体への労働力不足の影響といった多くの問題があります。

介護離職を減らすべく国は「介護離職ゼロ」を目指し、介護休業制度や介護休業給付などの支援策を講じています。

しかしながら、制度の利用は低い水準にとどまり、周知には時間がかかるとみられ、介護離職者の増加を避けられないことが予測されます。

そのような中、訪問看護ステーションのナーシングホームが、介護離職防止に貢献するとされ期待と注目を浴びるようになりました。

訪問看護ステーションのナーシングホームが介護離職防止に貢献する背景には、訪問看護ステーション利用からの安心感、経済的負担の軽減の実現、重度・医療的ケアの対応、ケアマネジャーや病院とのつながりがあります。

今後は、ますます訪問看護ステーションのナーシングホームが増加し、多くの介護離職の防止に貢献することでしょう。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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