【令和3年度改定対応】訪問看護の看護体制強化加算とは(介護保険)

看護体制強化加算は、2015年(平成27年)に新設された加算であり、高度な医療を望む利用者に対して訪問看護体制を整え、かつ提供した場合に、事業者に対して所定の単位数が加算されるものです。

令和3年度の介護報酬改定では、「在宅における中重度の要介護者の療養生活に伴う医療ニーズへの対応の強化」として見直しが行われました。

今回は、訪問看護における看護体制強化加算の算定要件や留意すべきポイントなどについて解説します。

看護体制強化加算とは(介護保険)

看護体制強化加算とは(介護保険)

看護体制強化加算は、中重度の要介護者等の在宅生活を支える訪問看護体制を評価したものです。介護保険の介護報酬に要件を満たすことで算定することができます。

在宅における中重度の要介護者様の療養生活に伴う医療ニーズへの対応を強化する観点から、

・緊急時訪問看護加算

・特別管理加算

・ターミナルケア加算

について、一定割合以上の実績等がある事業所を評価する加算として、平成27年度の介護報酬改定にて新設されました。

「緊急時訪問看護加算」については、こちらの記事も参考にしてみてください。

訪問看護ステーションの緊急時対応における加算とは(介護保険・医療保険)

「特別管理加算」については、こちらの記事も参考にしてみてください。

訪問看護の特別管理加算とは: 基本知識と算定要件(介護・医療)

「ターミナルケア加算」については、こちらの記事も参考にしてみてください。

訪問看護のターミナルケアにおける加算と療養費(介護保険・医療保険)

看護体制強化加算の種類と単位数

看護体制強化加算は、令和3年度の介護報酬改定において、医療ニーズのある要介護者等の在宅療養を支える環境整備の観点や訪問看護の機能強化を促進する観点から、単位数と算定要件に見直しが行われました。

現在の看護体制強化加算の単位数は、下記になります。

名称 単位数
看護体制強化加算(Ⅰ) 550単位/月
看護体制強化加算(Ⅱ) 200単位/月
看護体制強化加算※介護予防訪問看護 100単位/月

※令和3年度の改定において、訪問看護の看護体制強化加算の単位数が引き下げられました。改定前は、看護体制強化加算(Ⅰ)が600単位、(Ⅱ)および介護予防訪問看護が300単位でした。

訪問看護の看護体制強化加算の算定要件

訪問看護の看護体制強化加算の算定要件は、以下になります。

算定要件等 訪問看護 介護予防
訪問看護
看護体制強化
加算Ⅰ
550単位/月
看護体制強化
加算Ⅱ
200単位/月
看護体制強化
加算
100単位/月
前6か月において実利用者数のうち、緊急時訪問看護加算を算定した実利用者数の割合が50%以上であること
前6か月において実ご利用者数の総数のうち、特別管理加算を算定した実ご利用者数の割合が20%以上であること
算定日が属する月の前12か月において5名以上のターミナルケア加算を算定すること 5名以上 1名以上 ×
地域の医療機関(訪問看護事業所)と訪問看護ステーション間で連携し、相互研修や実習生の受け入れ等を行い、能力向上や人材確保に貢献する取り組みを推進すること
訪問看護の提供に当たる従業者の総数に占める看護職員の割合が6割以上であること※

※令和3年度の改定において、看護職員の急な退職等により看護職員6割以上の要件を満たせなくなった場合の経過措置が設けられていましたが、令和5年3月31日をもって措置期間が終了となりました。

訪問看護の看護体制強化加算(Ⅰ)の算定要件

① 医療ニーズの高い利用者へ対応する体制を整備し、都道府県知事に届出を行うこと


② 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、緊急時介護予防訪問看護加算を算定した利用者の割合が50%以上であること


③ 算定日が属する月の前6月間において、利用者の総数のうち、特別管理加算を算定した利用者の割合が20%以上であること


④ 指定介護予防訪問看護ステーションの場合、従業者の総数のうち看護職員の占める割合が6割以上であること(令和5年4月1日施行)


⑤ 事業所の看護師等が利用者、その家族へ説明して、同意を得ること

訪問看護の看護体制強化加算(Ⅱ)の算定要件

「看護体制強化加算(Ⅰ)」の①②④⑤に加えて、下記の要件を満たすこと


・算定日が属する月の前12月間において、ターミナルケア加算を算定した利用者が「1人以上」であること

介護予防訪問看護の算定要件等

「看護体制強化加算(Ⅰ)」の①②④⑤の要件を満たすこと。

看護体制強化加算の算定における注意すべき点とは

看護体制強化加算の算定における注意すべき点とは

看護体制強化加算の算定にあたっては、特に以下の点に注意する必要があります。

(1)家族へ説明を行い、同意を得る

看護体制強化加算の算定に際しては、該当加算の内容について利用者またはその家族に説明を行い、同意を得ることが必要です。同意は口頭であっても構いませんが、得た同意を記録に残しておくことが重要です。

(2)医療機関との連携および地域の訪問看護人材の確保・育成の実施

看護体制強化加算の算定にあたり、医療機関との連携のもとで、看護職員の出向や研修派遣などの相互人材交流を通じて在宅療養支援能力の向上をサポートし、地域の訪問看護人材の確保・育成に寄与する取り組みを実施することが望ましいです。

(3)(Ⅰ)または(Ⅱ)の一方のみを選択できる

利用者によって、(Ⅰ)または(Ⅱ)を選択的に算定することはできません。利用者はいずれか一方のみを選択し、その選択をもとにして届出を行います。

(4)所定の割合を下回った場合は変更の届出が必要

算定要件に規定された割合は、持続的に保たれなければならないため、所定の割合を下回った場合は、即座に変更の届出を行う必要があります。


加算を新たに算定する場合、または加算の届け出内容に変更があった場合、および加算の算定を終了する場合には、それに関する書類を作成し、都道府県等に提出します。

なお、前月の15日以前に届け出ることで、翌月から加算が算定できます。

看護体制強化加算の届出書方法

看護体制強化加算の届出書方法

看護体制強化加算の届出書は、届先は市区町村(都道府県)の福祉課や保険課などにより異なります。提出方法は基本的に、直接書類を窓口へ持参するか、郵送にて書類を送ることが一般的です。

※申請方法等の詳細については、予め管轄の各都道府県や市区町村のホームページ等でご確認ください。

看護体制強化加算の届出書の記入例

看護体制強化加算の届出書の記入例

看護体制強化加算に係る届出書(PDF)のダウンロードはこちら

看護体制強化加算を維持するためには

看護体制強化加算を維持するためには営業活動が不可欠

看護体制強化加算の届出は行われたものの、算定要件、特に「特別管理加算」の割合を維持できずに取り下げるケースが多く見られます。

短期間での変更は訪問看護ステーションの信用に大きな影響を与えるため、このような事態は避けたいものです。

緊急時訪問看護加算とターミナルケア加算の算定条件は比較的クリアできますが、「特別管理加算そのものの算定要件を満たすこと」、そして「対象となる利用者確保を継続できるか」が看護体制強化加算を長期的に維持できるかどうかが鍵となります。

そのため、看護体制強化加算の届出における特別管理加算の対象者は、算定要件で求められている20%ギリギリではなく、25%以上を保った上で届出をするとよいでしょう。

看護体制強化加算を維持するためには営業活動が不可欠です

看護体制強化加算を継続的に確保していくためには、営業活動が何よりも大切です。

営業活動においては、特に医療機器を装着している医療依存度の高い利用者を受け入れ可能であることを明確にし、また受け入れ後の実績と成果を示すことが必要です。

まとめ

今回は、訪問看護における看護体制強化加算の算定要件や留意すべきポイントなどについてお伝えしました。

訪問看護ステーションにとって、看護体制強化加算は、算定要件を整えることはもちろん、看護体制強化加算を維持するために加算要件に該当する利用者確保を継続していくことも重要なポイントとなります。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。

>保険外美容医療での看護師独立ストーリー

保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

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