訪問看護における「初回加算」とは、過去2ヶ月間(歴月)に訪問看護を受けていない方で、かつ新規で訪問看護計画書を作成した利用者に訪問看護を提供した場合に算定できる加算です。
令和6年度の介護報酬改定により、この初回加算に「看護師が退院・退所当日に初回訪問すること」を評価する新たな加算区分が創設されます。
今回は、訪問看護の「初回加算」をテーマにその内容からその算定要件、算定に当たって留意すべきポイント、そして令和6年報酬改定で新たな加算区分が設けられた背景などについてお伝えします。
訪問看護における「初回加算」とは
訪問看護ステーションが新しい利用者を受け入れる際には、利用者の状態把握やアセスメント、サービス担当者会議への参加、そして訪問看護計画書の策定など、多くの準備作業が必要です。
介護保険では、こうした訪問看護ステーションの新規利用者向けの取り組みを評価するために、「訪問看護初回加算」という加算が設けられています。
令和6度の介護報酬改定より、「退院当日に必要な家族との調整や服薬援助、点滴の管理など要介護者の円滑な在宅移行を支援する観点」から、退院・退所当日に看護師が初回訪問を行うことを評価する新しい区分が創設されました。
この改定によりこれまで1種類だった初回加算は、の2種類となり、従来の初回加算は、初回加算(Ⅱ)となりました。
改定前 | 改定後 |
---|---|
初回加算 300単位/月 | 初回加算(Ⅰ) 350単位/月 新設 |
初回加算(Ⅱ) 300単位/月 |
訪問看護初回加算の算定要件とは
それでは、新設された初回加算(Ⅰ)もふくめ、改めて訪問看護初回加算の算定要件をみていきましょう。
初回加算(Ⅰ)(新設)
新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所などから退院した日に指定訪問看護事業所の看護師が初回の指定訪問看護を行った場合に所定単位数を加算する。
ただし、初回加算(Ⅱ)を算定している場合は、算定できない
初回加算(Ⅱ)
新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所などから退院した翌日以降に初回の指定訪問看護を行った場合に所定単位数を加算する。
ただし、初回加算(Ⅰ)を算定している場合は、算定できない。
退院当日に初回の指定訪問看護を行うかどうかで、単位数が大きく変わるため、サービス提供時には注意が必要です。
訪問看護における初回加算の対象者
初回加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の対象者は、以下の通りです。
・新規の利用者
・過去2ヶ月間(歴月)※利用がなく、新たに訪問看護計画書を作成する利用者
・要支援から要介護への区分変更の利用者
※過去2月間とは、60日間ではなく歴月の2月です。
初回加算の算定時期
初回加算の算定時期は、新規の訪問看護計画書を作成した利用者に対して初回訪問を行った月となります。
訪問看護初回加算の留意点
訪問看護初回加算(Ⅰ)、(Ⅱ)の留意点は、以下の点に留意する必要があります。
・(Ⅰ)と(Ⅱ)の併用はできません。
・退院時共同指導加算を算定する場合は、初回加算を算定できません。
・訪問看護を医療保険で利用していた場合、介護保険での利用に変更になった場合でも算定はできません。
・複数のステーションから訪問看護を利用する場合は、各ステーションで算定できます。
・原則として初回訪問は看護職員が行う必要がありますが、看護職員(准看護師を除く)と理学療法士などが連携して訪問看護計画書を作成していれば、准看護師や理学療法士などが訪問しても算定できます。
新たに初回加算(Ⅰ)が設けられた背景とは
次に新たに初回加算(Ⅰ)が設けられた背景について詳しくみていきます。
令和6年1月22日に厚生労働省より発表された「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」には、初回加算(Ⅰ)が設けられた理由ととして
「要介護者等のより円滑な在宅移行を訪問看護サービスとして推進する観点から、看護師が退院・退所当日に初回訪問することを評価する新たな区分を設ける。」
とあります。
参照元:厚生労働省通知「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」
p.22 1.(3)⑦ 円滑な在宅移行に向けた看護師による退院当日訪問の推進
また昨年に発表された令和5年の厚生労働省の資料において「退院当日に訪問の必要があった利用者の状況」が以下のようにまとめられています。
・退院当日に訪問が必要であった利用者・家族の困りごとや心配ごとは、「体調・病状」が80.5%、「緊急時の対応」が54.2%で「医療処置」が45.2%であった。
・退院当日に訪問が必要であった介護度別の割合は、要介護1~5のいずれにおいても16%前後であった。
・処置や医療機器管理が必要な状態については「服薬援助」45.0%、「心理的支援」30.8%、「疼痛管理」と「浣腸・摘便」がそれぞれ19.0%であった。
この資料からは、退院時に体調や病状に関する不安を抱く利用者や家族が多いことがわかります。
また、退院当日に訪問が必要な利用者は、要介護度2~5の方が最も多く、訪問看護による疼痛管理や服薬援助などの医療処置のニーズが高いことがうかがえます。
今後、高齢化の進展により介護度が高く、医療的な処置を必要とする利用者の在宅移行が増加することから、退院当日の訪問看護の重要性はさらに高まることが予想されます。
まとめ
今回は、訪問看護の「初回加算」をテーマにその内容からその算定要件、算定に当たって留意すべきポイント、そして令和6年報酬改定で新たな加算区分が設けられた背景などについてお伝えしました。
退院当日に看護師が初回訪問を行うことにより、利用者とその家族に直接的なサポートと情報提供が可能となります。
今回の改定により、在宅移行の円滑化における訪問看護ステーションの役割の重要性がさらに明確化されたといえます。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。
※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。