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訪問看護師が知っておきたい!高額介護サービス費、高額療養費、高額医療・高額介護合算制度

訪問看護を利用している中で自己負担額が高額になってしまった場合に利用者の負担を軽減する制度があります。

今回は、介護サービス、医療費が高額なった場合に適用される制度である、高額介護サービス費(介護保険)、高額療養費(医療保険)、高額介護合算制度について適応条件や自己負担限度額などをお伝えします。

高額介護(介護予防)サービス費(介護保険)とは

高額介護(介護予防)サービス費(介護保険)とは

高額介護(介護予防)サービス費は、介護保険サービスの利用者の経済的負担が重くなり過ぎないように設けられた制度です。

自己負担の限度額は、所得、あるいは世帯の市区町村民営課税の有無、生活保護を受給している方等に応じて利用者本人または世帯※の負担上限額が定められています。

※「世帯」とは、住民基本台帳上の世帯員であり、介護サービスを利用した人全員にかかる負担の合計上限額を指します。一方で、「個人」とは、介護サービスを利用した本人にかかる負担の上限額を指します。

上限額を超えた金額が「高額介護(介護予防)サービス費」として介護保険から後日払い戻されます。

対象となるのは保険給付分のみです。 認知症訪問支援サービス、福祉用具購入費および住宅改修費のほか、食費・居住費(滞在費)などの実費負担分は含みません。

高額介護(介護予防)サービス費の対象となるサービス

(1)居宅サービス

居住サービスは、自宅での生活を維持しながら利用する介護サービスです。訪問看護、訪問介護、訪問入浴、デイサービス、ショートステイなどが、居住サービスに該当します。

(2)介護施設サービス

施設介護サービスは、介護施設に入居して提供される介護サービスです。特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院の4つの施設がこれに該当します。

(3)地域密着型サービス

地域密着型サービスは、要介護者が慣れ親しんだ地域で生活を続ける支援を提供する介護サービスであり、このサービスは事業所のある市区町村に住む方のみが利用できます。具体的なサービスとしては、主に夜間対応型訪問介護、認知症対応型デイサービス、グループホームなどが地域密着型サービスに該当します。

高額介護(介護予防)サービス費の対象とならないサービス

施設利用時に発生する食費や居住費、日用品の購入にかかる費用は、介護保険の対象外であり、高額介護サービス費の支給対象にはなりません。また、介護保険が適用されていても、高額介護サービス費の支給対象外となるものがあります。

高額介護(介護予防)サービス費の対象とならないサービスは、以下の通りです。

・特定福祉用具購入や住宅改修にかかる費用
・施設における居住費(ショートステイの場合は滞在費)および食費
・理美容代などの日常生活に要する費用
・生活援助型配食サービスにかかる費用

高額介護サービス費の負担限度額(令和3年8月サービス利用分から)

利用者負担段階区分 利用者負担上限額
世帯に、課税所得690万円以上の65歳以上の人がいる(1) 世帯:140,100円
世帯に、課税所得380万円以上690万円未満の65歳以上の人がいる(2) 世帯:93,000円
世帯に、市民税課税の人がいる(ただし、上記(1)、(2)を除く) 世帯:44,400円
世帯の全員が市民税非課税 世帯:24,600円
  • 課税年金収入額およびその他の合計所得金額※の合計が80万円以下の人
  • 老齢福祉年金の受給者
個人:15,000円
生活保護の受給者等 個人:15,000円
世帯:15,000円

※その他の合計所得金額とは、地方税法上の合計所得金額から、公的年金等に関する雑所得および長期・短期の譲渡所得にかかる特別控除額を差し引いた金額を指します。

申請や詳細は、 ご本人が加入している保険者や自治体へお問い合わせください。

令和3年より高額介護サービス費の負担限度額見直し

同じ月に利用したサービスの利用者負担の上限に関して、令和3年8月から、課税所得が380万円以上の65歳以上の方が所属する高所得者世帯の負担限度額が最大140,100円まで引き上げられました。

参照元:厚生労働省 資料pdf

高額療養費制度(医療保険)とは

高額療養費制度(医療保険)とは

高額療養費制度(医療保険)は、重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引いたりするするなど医療費が高額になってしまった場合にその負担を軽減するために設けられた制度です。

自己負担額(一部負担金、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費、家族訪問看護療養費にかかる自己負担分の額)が負担限度額を上回る場合、またはこれらの自己負担額のうち、合算対象基準額が負担限度額を上回る場合に高額療養費が支給されます。

ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費が支給される場合の標準負担額については、高額療養費の対象外となります。

高額療養費制度の支給要件

同じ月に同じ医療機関で支払った一部負担金や療養にかかった費用から、そのうち保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、家族療養費、または家族訪問看護療養費として支給される額を差し引いた金額(一部負担金等の額)が非常に高額な場合、その患者には高額療養費が支給されます(健康保険法第115条)。

高額療養費制度の一月の上限額

70歳以上の上限額

適用区分 外来(個人) 一月の上限額(世帯)
現役並み 現役並み所得者Ⅲ
年収約1,160万円~
標準報酬月額83万円以上
課税所得690万円以上
252,600円+(医療費ー842,000円)×1%
<多数回 144,000円>
現役並み所得者Ⅱ
年収約770万円~約1,160万円
標準報酬月額53万円~79万円
課税所得380万円~690万円
167,400円+(医療費ー558,000円)×1%
<多数回 93 ,000円>
現役並み所得者Ⅰ
年収約370万円~約770万円
標準報酬月額28万円~50万円
課税所得145万円~380万円
80,100円+(医療費ー267,000円)×1%
<多数回 44 ,400円>
一般 年収156万円~約370万円
標準報酬月額26万円以下
課税所得145万円未満等
18,000円
(年間上限
144,000円)
57,600円
<多数回 44,400円>
住民税非課税等 Ⅱ住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
Ⅰ住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下など)
15,000円

同じ月に1つの医療機関で発生した自己負担(院外処方代を含む)が上限を超えなくても、別の医療機関での自己負担を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

69歳以下の上限額

適用区分 一月の上限額(世帯)
年収約1,160万円~
健保/83万円以上 国保/901万円超
252,600円+ (医療費ー842,000) × 1%
<多数回 140,100円>
年収約770 ~ 約 1,160万円
健保/53万~79万円 国保/600万超~901万円
167,400円+(医療費ー558,000円)×1%
<多数回 93 ,000円>
年収約370 ~ 約 770万円
健保/28万~50万円 国保/210万超~600万円
80,100円+(医療費ー267,000円)×1%
<多数回 44 ,400円>
~年収約370万円
健保/26万円以下 国保/210万円以下
57,600円
<多数回 44,400円>
住民税非課税者 35,400円 <多数回 24,600円>

1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含む)が上限を超えなくても、同じ月に別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は21,000円以上であることが必要です)を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。

高額医療・高額介護合算制度とは

高額医療・高額介護合算制度とは

高額医療・高額介護合算制度は、医療保険と介護保険の年間自己負担が著しく高額になった場合に、その負担を軽減する仕組みです。

医療保険と介護保険の自己負担を合算し、限度額を超えた場合は、医療保険と介護保険それぞれに分けて按分計算され、各保険者から支給されます。

高額医療・高額介護合算制度の限度額は、毎年8月から翌年7月までの1年間で計算されます。ただし、合算可能なのは健康保険組合からの高額療養費の給付金や自治体からの助成などを控除した金額です。また、入院時の食事療養および生活療養の標準負担額は給付の対象外です。

高額医療・高額介護合算制度の上限額

70歳以上の方の限度額

所得区分 限度額
年収約1160万円~
標報83万円以上/課税所得690万円以上
212万円
年収770万 ~ 1160万円
標報 53~79万円/課税所得380万円以上
141万円
年収370万~770万円
標報 28~50万円/課税所得145万円以上
67万円
一般 (年収156万 ~ 約370万円)
標報 26万円以下/課税所得145万円未満等
56万円
市町村民税世帯非課税 31万円
市町村民税世帯非課税(所得が一定以下) 19万円 (※)

※介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円。

69歳以下の方の限度額

所得区分 限度額(※)
901万円超 212万円
600万円超901万円以下 141万円
210万円超600万円以下 67万円
210万円以下 60万円
住民税非課税世帯 34万円

※対象世帯に70~74歳と70歳未満が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に限度額を適用した後、残る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた額に限度額を適用します。

まとめ

訪問看護を利用している中で自己負担額が高額になってしまった場合に利用者の負担を軽減する制度があります。

今回は、介護サービス、医療費の自己負担額が高額になってしまった場合に適用される制度である高額介護サービス費(介護保険)、高額療養費(医療保険)、高額介護合算制度について適応条件や自己負担限度額などをお伝えしました。

これらの制度の理解を深めていくことも訪問看護師の大切な役割のひとつです。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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