訪問看護ステーションの成長に不可欠なバックオフィス体制の構築

訪問看護ステーションは、看護職員(保健師、看護師、または準看護師)を常勤換算で2.5人配置することによりスタートできる事業です。開設初期には訪問回数やスタッフ数が限られているため、管理者が事務業務全般を担うステーションも多くみられます。

しかし、利用者数が増加するにつれて、業務全般の管理、レセプト作業、書類処理、人事・労務管理など業務プロセスが複雑化し、管理者だけでは対応が難しくなります。

またステーションの規模が拡大すると、業務プロセスも複雑化し、業務効率が低下する傾向があります。そのため、バックオフィス体制の整備が非常に重要です。

このコラムでは、訪問看護ステーションのバックオフィス業務について、具体的な職種や役割、バックオフィス体制の構築におけるメリット、注意点などについて詳しく解説します。

目次

訪問看護におけるバックオフィスとは

訪問看護におけるバックオフィスとは

「バックオフィス」という言葉は、もともと欧米で生まれた言葉ですが、日本ではこれまで「間接部門(間接業務)」、「管理部門(管理業務)」、「コーポレート部門」、「本社機能」などの呼び方をされていましたが、近年グローバル化の流れに伴い、日本においても「バックオフィス」という呼び方が一般的になりつつあります。

「バックオフィス」と対義語となる「フロントオフィス」は、その名の通り、顧客と直接やりとりをおこない、売上に直結する活動を行う部門・活動を指します。

訪問看護ステーションにおける「フロントオフィス」は、利用者を獲得するための営業活動や看護師、療法士による訪問業務などを指します。また、採用面接やウェブサイト、SNSへの情報発信もフロントオフィスの業務に含まれます。

一方、「バックオフィス」は、顧客と直接関わることのない職種や業務、具体的には経理、人事、総務など、組織の中核業務を支える部門全般を指します。

フロントオフィスが円滑に機能するためには、バックオフィスの支援が不可欠です。これが、安定した経営を実現するための基盤となります。

なぜ訪問看護ステーションにバックオフィスが必要なのか

なぜ訪問看護ステーションにバックオフィスが必要なのか

訪問看護ステーションのバックオフィス業務は、主に事務員が担います。しかし利用者が少ない状態では、人件費の問題から事務員を雇用しない(できない)事業所も少なくありません。

もちろんステーションの開業当初は、訪問看護の業務全般を把握できるというメリットもあるため、管理者や創業メンバーがバックオフィス業務を兼務することは珍しくありません。

しかしながら、利用者数や採用する看護師や療法士の数が増加するにつれて、管理者や訪問看護師の業務は複雑化し、業務負荷に対応しきれない場面も出てきてしまいます。

業務効率の低下を防ぐためには、バックオフィス体制の整備を検討することが不可欠です。

訪問看護ステーションの成長段階に応じて、いつ人員を増員し、どの売上水準で事務職員を採用すべきかなど、計画的な採用戦略を策定することが重要です。

訪問看護ステーションのバックオフィス業務とは

訪問看護ステーションのバックオフィス業務とは

では、訪問看護ステーションのバックオフィス業務は具体的にどのような業務を指すのでしょうか。

訪問看護ステーションの規模が大きくなるにつれて、業務内容と役割が詳細に分化していきます。訪問看護のバックオフィス業務の具体的な例として、一般事務、人事・労務、経理・総務などが挙げられます。

一般事務機能

一般事務機能

訪問看護ステーションのバックオフィス機能の一つである「一般事務」は、訪問看護ステーションの日常的な運営に関連するさまざまな業務を担当します。

電話対応

訪問看護ステーションに寄せられる電話に応答し、問い合わせや連絡事項の処理を行います。

郵便物の確認

受け取った郵便物を確認し、重要な文書や通知を適切に整理・管理します。郵便物に含まれる情報の適切な処理を担当します。

メール・FAX確認

メールやFAXで届いた情報を確認し、必要な対応やアクションを実行します。

ICT上の情報共有ツール確認

インターネットや専用の情報共有ツールを用いて、必要な情報の確認や更新を行います。

契約書など各種書類作成

契約書や各種文書の作成を行い、必要な書類の整理・保管を担当します。

新規利用者・訪問終了者の書類管理

新たな利用者の受け入れや訪問終了者の処理に関連する書類の管理を行います。

計画書・報告書作成

訪問看護の計画書や報告書の作成を担当し、必要な情報を整理して提出します。

計画書・報告書印刷

必要に応じて計画書や報告書を印刷し、配布や提出の準備を行います。

指示書頼作成

医療関連の指示書を作成し、必要な医療プロフェッショナルに提供します。

書類封筒詰(ケアマネジャー宛・主治医宛)

書類や報告書を適切な宛先に封入し、送付や配布の手続きを行います。

指示書・ケアプランの授受

医師やケアマネジャーからの指示書やケアプランを受け取り、ステーション内での適切な手続きを行います。

広報誌の作成・配布

訪問看護ステーションの情報を広報誌としてまとめ、必要な場所への配布を担当します。

一般事務の役割は、訪問看護ステーションのスムーズな日常業務と情報管理に貢献し、高品質な訪問看護サービスの提供に欠かせないものです。

人事・労務機能

人事・労務機能

訪問看護ステーションのバックオフィス機能である「人事・労務」は、訪問看護ステーションの従業員に関連するさまざまな業務を管理・運営する役割を果たします。

入退職時の書類案内

新入社員や退職者に対して、必要な書類の提出や手続きについての案内を行います。

勤怠管理全般:出勤簿・日報確認

従業員の出勤簿や日報を確認し、勤怠情報を管理します。

社労士への給与計算依頼

社労士に給与計算を依頼し、従業員の給与を計算して支払います。

有給休暇管理

従業員の有給休暇の残高や取得状況を管理し、有給休暇の申請と承認手続きを担当します。

各種補助金申請

適用可能な補助金や助成金に関する申請手続きを行います。

就業規則の管理

訪問看護ステーションの就業規則を策定し、遵守と更新を確保します。

雇用関係・労務関係書類提出

法的な要件に基づいて雇用関係や労務関係の書類を適切な機関に提出します。

社労士打ち合わせ(適宜)

社会保険や労働関連の法的事項に関する打ち合わせやコンサルテーションを実施し、法的遵守を確保します。

各種求人サイトへの掲載

新たな従業員を採用するために、求人広告を適切な求人サイトに掲載します。

応募者への対応,面談日程調整

求人に応募した候補者との連絡や面接のスケジュール調整、面談を実施し適切な人材を採用します。

雇用契約書の契約

新入社員との雇用契約書の作成と取り決めを行い、雇用関係を正式に確立します。

人事評価

従業員の評価制度を設定し、評価面談を実施して組織と個人の成長を促進し、従業員のモチベーションを向上させます。

人事・労務の役割は、訪問看護ステーション内での従業員の適切な管理と組織の円滑な運営をサポートし、法的遵守や従業員の幸福感向上に貢献します。

経理・財務機能

経理・財務機能

訪問看護ステーションのバックオフィス機能である「経理・財務」は、組織の財務活動や会計に関連する業務を管理し、経済的な健全性を確保する役割を果たします。

売上表作成

訪問看護ステーションの売上データを収集し、月次や年次の売上表を作成して経営陣に提供します。

経費計上作業

経費項目を詳細に計上し、組織の経費を記録します。経費の効率的な管理を支援します。

各種税金支払い

税金や社会保険料などの支払い手続きを行います。納税期限を守り、法的要件を遵守します。

職員への給与振込

従業員の給与支払いを準備し、銀行振込などの方法で給与を職員に支払います。

利用料金の請求書・領収書作成

利用者に対して提供した看護サービスの利用料金を請求し、必要に応じて領収書を提供します。

業務委託関係の請求書発行

他の組織や機関に提供したサービスに関する請求書を発行し、収益を確保します。

利用料金口座振替の入力

利用者の利用料金を口座振替によって収納するためのデータ入力を行います。

介護保険・医療保険の実績確認

介護保険と医療保険の実績を確認し、正確な経理情報を維持します。適切な請求を行います。

介護保険の実績表作成

介護保険の実績に関する報告書や表を作成し、必要な機関に提出する役割を担います。

レセプト作業

医療サービスの提供に関連する診療報酬請求書(レセプト)の作成と整理を行います。

介護保険・医療保険レセプト提出

介護保険や医療保険のレセプトを関連機関に提出し、支払いを受けるプロセスをサポートします。

返戻対応

提出したレセプトが誤りや不備がある場合、返戻事項を調査し、修正や再提出を行います。

経理・財務の役割は、訪問看護ステーションの財務活動を適切に管理し、法的要件を遵守しながら経済的な健全性を確保します。また、収益の最大化と支出の最適化にも貢献します。

総務機能

総務機能

訪問看護ステーションのバックオフィス機能の一つ「総務」はステーションの運営にかかわる多岐にわたる業務を担当します。

物品の在庫管理

ステーション内の必要な物品(文具、消耗品など)の在庫を管理し、不足分を補充します。

物品の注文

物品の発注や注文手続きを行い、ステーションの必要な備品や消耗品を確保します。

必要物品の提案・補充

ステーションの業務に必要な物品や設備の提案を行い、必要に応じて補充やアップグレードを調整します。

安全運転管理者の設置

ステーションの車両において、安全運転のための管理者を指名・設置し、運転に関する指導と安全対策を実施します。

アルコールチェック表の確認・保管

車両運転者に対するアルコールチェック表の確認と保管を行い、安全な運転を確保します。

車両点検・車検などの調整

車両の点検、定期的な車検手続き、保険更新などの管理と調整を行い、車両の安全性を維持します。

自動車保険更新

車両の保険に関する更新手続きを管理し、適切な保険カバレッジを維持します。

車内清掃・車内物品整備、呼びかけ

車両の清掃、内部の物品整備、運転者への運用ルールの徹底を行い、車両の品質を保ちます。

交通安全の啓蒙

運転者に対して交通安全に関する啓発活動を実施し、事故の予防を促進します。

事故発生時の対応

事故が発生した場合、適切な手続きと報告を行い、関係者への連絡と対応を調整します。

社内清掃・整理整頓の呼びかけ

ステーション内のオフィスや施設の清掃と整理整頓に関する取り組みを促進します。

事故報告のカンファレンスの開催

事故が発生した場合、関係者とのカンファレンスやミーティングを主催し、対策と改善策を協議します。

イベントの企画・手配

社内イベント(歓送迎会、忘年会など)や社外イベントの企画と手配を行い、スタッフのコミュニケーションと満足度向上をサポートします。

冠婚葬祭・慶弔関係書類管理・手配

社員やその家族に関連する冠婚葬祭や慶弔に関連する手続きと書類管理を担当します。

お中元などの準備・対応

お中元やお歳暮などの贈り物に関する対応と手配を行います。

年賀状の手配

年賀状の作成・送付に関する手配を行い、ステーションのパートナーや利用者への感謝の表明を支援します。

スタッフ誕生会の手配

スタッフの誕生日を祝う会の企画と手配を行い、チームの結束を強化します。

総務の役割は、ステーション内の多くの日常業務をサポートし、運営の円滑性と効率性を高め、スタッフと利用者の満足度向上に貢献します。

訪問看護ステーションがバックオフィス体制を構築することのメリット

訪問看護ステーションがバックオフィス体制を構築することのメリット

訪問看護ステーションがバックオフィス体制を構築することには、生産性の向上につながる重要なメリットがあります。以下にその詳細を解説します。

(1)業務効率の向上

バックオフィスの業務効率化は、業務プロセスの最適化を意味します。例えば、経理業務の自動化や効率的な情報共有ツールの導入などが含まれます。これにより、業務がスムーズに進行し、業務の手戻りや遅延が減少します。結果として、時間とリソースの無駄を削減し、業務効率が向上します。

(2)社員の負担軽減

バックオフィス業務を効率化することで、社員が手作業で行っていた繁雑なタスクの負担を軽減できます。これにより、社員はより重要な業務や戦略的な活動に集中できるようになります。業務の負担が軽減されれば、ストレスの軽減やワークライフバランスの向上にも寄与します。

(3)モチベーションの向上

社員が繁雑なルーチン業務から解放され、より意義のある業務に取り組むことができるようになると、モチベーションが向上します。新しい挑戦や専門的な仕事に取り組むことで、スキルの向上や成長を実感しやすくなります。モチベーションが高まれば、業績向上やチームの協力意欲が増し、組織全体のパフォーマンスが向上します。

(4)業績の向上

バックオフィス業務の効率化により、運営コストを削減できる可能性があります。これは経費削減と収益増加の両面から業績向上に寄与します。余剰資源を戦略的なプロジェクトや成長に投資する余地が生まれ、組織の成長をサポートします。

(5)品質向上

バックオフィス業務の効率化は、ヒューマンエラーの削減や精度向上にも寄与します。正確なデータ処理や記録管理が行えることで、訪問看護ステーションのサービス品質向上につながります。正確な経理情報や報告書の作成は、患者や顧客への信頼性を高めます。

バックオフィス体制の構築は、訪問看護ステーションにとって経営効率の向上や組織の成長に不可欠な要素です。生産性の向上を通じて、質の高いケアを提供し、スタッフと利用者の満足度を向上させることが可能となります。

訪問看護ステーションがバックオフィス体制を構築する際に注意すべきこと

訪問看護ステーションがバックオフィス体制を構築する際に注意すべきこと

さいごに訪問看護ステーションがバックオフィス体制を構築する際に注意すべきポイントについて解説します。

(1)定期的な業務の見直しと業務改善

バックオフィス体制を構築するにあたり、組織内の業務プロセスを定期的に見直し、改善を行うことが重要です。業務の効率性や効果を向上させるために、現行のプロセスを評価し、問題点を特定します。プロセスの見直しには、スタッフや担当者からのフィードバックを活用し、業務フローをシンプル化し、無駄なステップを削減することが含まれます。

(2)業務の見える化とシンプル化

業務のプロセスを可視化し、誰でも理解できる形で文書化します。これにより、スタッフ間でのコミュニケーションが円滑になります。業務工程をシンプルにし、冗長なステップや複雑な手続きを削減します。シンプルなプロセスはミスを減少させ、効率性を高めます。

(3)裁量と責任の明確化

バックオフィス業務には専門性の高い業務が多くあります。属人化された業務は、担当者が不在の際に問題を引き起こす可能性があります。

業務フローの作成と、業務の可視化が重要です。各業務のステップを明示的に文書化し、誰が何を担当するのかを明確にします。権限や業務の分散化も考慮します。特定の業務に依存せず、複数のスタッフが業務を遂行できるようにすることで、リスクを分散させます。

バックオフィス体制の構築は、組織の効率性と持続可能性に対する重要な投資です。定期的な業務の見直し、業務改善、属人化の回避、見える化、シンプル化、権限の明確化などのアプローチを組み合わせて、ステーションの運営を向上させるための堅固な基盤を築くことが不可欠です。

まとめ

訪問看護ステーションのバックオフィス体制は、ステーションの成長に不可欠です。バックオフィス業務の効率化により、業務効率の向上、社員の負担軽減、モチベーション向上、業績の向上、品質向上など多くのメリットが生まれます。

ただし、慎重な計画と定期的な業務の見直し、業務のシンプル化、責任の明確化が必要です。バックオフィス体制の構築は、地域の健康ケアに貢献し、ステーションの持続的な成長を支えます。

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石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

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