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ターミナルケアと家族支援:訪問看護師の役割と家族へのサポート

「終末期」とは、病状の進行により積極的な治療を断念し、生命予後が半年あるいは半年以内と考えられる時期を指します。

訪問看護の終末期のケア(ターミナルケア)は、疾患の進行に伴う苦痛の除去だけでなく、命が尽きる瞬間まで「その人らしく生きる」ことを支援しています。

ターミナルケアは、利用者のケアだけでなく、その家族のサポートも非常に重要です。大切な人の死に直面することは精神的に不安定にさせることが多く、亡くなることのショックや将来の生活に関する不安も計り知れません。

そんな不安を少しでも取り除けるよう、利用者や家族の気持ちに寄り添い、安心感を提供するのも訪問看護師の大切な役割です。

このコラムでは、訪問看護のターミナルケアにおける家族ケアに焦点を当て、その重要性や具体的な支援策についてお伝えしていきます。

目次

ターミナルケアとは

ターミナルケアとは

「ターミナルケア」とは、終末期と判断された患者に提供される治療やケアを指します。このケアでは、延命治療や心身の機能の維持を目指す治療は行わず、痛みの管理などの症状緩和と心のケアが中心となる看護ケアが提供されます。

ターミナルケアは、医療従事者から適切な情報が提供され、詳細に説明が行われた上で、患者本人と家族からの同意を得たうえで実施されます。

患者の意思が確認できない場合、または患者の意思を家族が推定できる場合、その推定意思を尊重し、患者にとって最善の治療方針を採用することが基本とされます。

ターミナル(終末期)の3つの条件

ターミナル(終末期)の3つの条件

1.複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること

ターミナルケアを開始するための最初の条件は、複数の医師が患者の状態を評価し、客観的な情報に基づいて治療による回復の見込みがほとんどないと判断することです。これには病状の進行や患者の医療記録を考慮し、医学的な診断と予後評価が行われます。

2.患者さんが意識や判断力を失った場合を除き、患者さん・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること

ターミナルケアを実施するためには、患者本人、その家族、主治医、看護師などの医療関係者がターミナルケアの必要性について合意することが重要です。患者の治療方針はその人の意志に基づくべきであり、患者自身が判断力を持っている場合は、その意向を尊重します。ただし、患者が意識や判断力を喪失している場合、代理人や家族が患者の最善の利益を考慮してターミナルケアの決定を行います。

3.患者さん・家族・医師・看護師などの関係者が死を予測し対応を考えること

ターミナルケアは、死が不可避であると理解し、その対応を計画的に考える必要があります。これは患者本人だけでなく、家族、医師、看護師、ソーシャルワーカーなどの関係者が共通の理解を持ち、患者の最期の時期をできるだけ快適にし、質の高いケアを提供するために協力することを意味します。

在宅でのターミナルケアのメリット

在宅でのターミナルケアのメリット

在宅でのターミナルケアは、患者と家族にとって身近で温かな環境を提供し、最期の時を尊重し支える方法として、多くの利点があります。

(1)家族と共に過ごせる時間

在宅でのターミナルケアの最大の魅力は、患者と家族が一緒に過ごせる時間です。病状が進行している中でも、家庭の中で愛する人たちに囲まれていることは、患者にとって心の支えとなります。また、家族とのコミュニケーションや思い出作りができ、絆を深める機会ともなります。

(2)リラックスできる環境

自宅でのターミナルケアは、患者にとってリラックスできる環境を提供します。患者が自分のベッドやお気に入りの場所で過ごすことで、心地よさや安心感が得られます。これは精神的・肉体的な負担を軽減し、症状の緩和に寄与します。

(3)経済的な負担の軽減

通院や入院に比べ、在宅でのケアは費用がかかりにくい傾向があります。病院の費用、交通費、宿泊費などが削減され、患者や家族の経済的な負担が軽減されます。これにより、医療費の心配を減らすことができ、家計にもやさしい選択となります。

(4)家族の心配の軽減

家族にとっても在宅でのターミナルケアは、患者が寂しく感じず、苦しまないかといった点を気にせずにすむ利点があります。家族は患者の側にいて支えることができ、一緒に過ごすことで、互いの感情を共有し、患者の最期を尊重することができます。

利用者や家族が抱えるストレスや不安に耳を傾ける

利用者や家族が抱えるストレスや不安に耳を傾ける

ターミナルケアにおいて重要なのは、療養者や家族が抱えるストレスや不安に耳を傾けることです。在宅看取りを決意しても、介護負担の増大や病状の悪化に伴って、さまざまな葛藤が生じます。

・離別の悲しみ

家族や患者自身が将来の別れに向き合うことが、深い悲しみを引き起こすことがあります。

・絶望感

病状の悪化や苦痛に直面し、絶望感を感じることがあります。

・受け入れ難い現状への怒り

病気の進行や制約に対する怒りや反感が生じることがあります。

・無力感

治療の限界や未来への希望の減退によって無力感を抱くことがあります。

・今後の生活への不安

家族や患者が直面する未知の状況に対する不安が存在します。

・新たな役割や関係性の変更

家族や介護者が新たな役割や関係性に適応しようとする過程で葛藤が生まれることがあります。

これらの感情や課題に直面することは、家族や患者にとって強いストレスの要因となります。訪問看護師は、家族の価値観を尊重し、抱える課題を注意深くアセスメントし、寄り添った支援と援助を提供する役割を果たすことが重要です。

家族のアセスメント項目

・家族の構成

・キーパーソンとなる方

・家族内の関係性

・利用者の家族内での役割

・家族の価値観や信念

・利用者への希望

・家族間のコミュニケーション

・ターミナルケアへの理解と受け入れ

・利用者の世話にあたっての家族のケアリソース

・家庭の経済状況

・課題と解決力の評価 など

家族の思いに寄り添い、配慮することで、思わぬ家族の力を引き出し、問題解決に向けた手がかりを見つけることができる場合もあります。

自宅でのターミナルケアをおこなう上で訪問看護師が心得るべきポイントとは

自宅でターミナルケアを実施することは、日々の食事だけでなく排泄処理や身体の清拭などの介護など家族の負担が大きくなります。

自宅でのターミナルケアをおこなう上で訪問看護師が心得るべきポイントとは

また、この時期は患者さんが平穏に最期を迎え、家族が看取りを行えるよう、将来起こるであろう出来事を予測し、看取りの準備を進めていく段階でもあります。

ほとんどの家族は、自然な死についての知識が限られています。心身の変化に戸惑い、不安や恐怖を感じることがあります。したがって、訪問看護師が予測される心身の変化を事前に伝えることは極めて重要です。

看取り経験のない家族に死の予兆をあらかじめ伝えておくことで家族は、落ち着いて対処できるようになります。

家族が納得した気持ちで患者さんの看取りを行うことができれば、その後の死の受容にもつながり、家族の生きる力にもつながっていきます。

家族に伝えるターミナル期の体の変化と対処法

家族に伝えるターミナル期の体の変化と対処法

療養者や家族は、これからどうなるのか、どうすればよいのか、不安や恐怖を感じています。予測される体の変化や対処法をわかりやすい言葉で説明しましょう。

変化1:昼間も目を閉じ、眠っている時間が長くなります

全身の機能や体力の低下により、起床が難しくなります。無理に起こす必要はありません。寝かせたままで構いません。また、話したいことがあれば、先送りせずに伝えることが大切です。

変化2:食欲と食事量が低下し、ときには食べられなくなります

消化吸収機能の低下により、食事が難しくなることがあります。栄養面に過度に気を使わず、本人が食べたいときに、食べられるものを提供することが大切です。

変化3:興奮して大声を上げたりする「せん妄」が起きることがあります。

これは体内に不要物質がたまるなどの影響によるものです。通常、1~2日で落ち着きますので、見守るだけで問題ありません。薄明りにしておだやかに話しかけたり、本人が好きな音楽を流すなど、リラックスを促す環境づくりが役立ちます。

変化4:手足が冷たくなり、白~紫色に変化することがあります。

これは血液の流れが悪くなることによる症状で、一般的には痛みはありません。手足をやさしくマッサージしたり、かけものや湯たんぽなどで保温するのが効果的です。

変化5:尿や便の失禁が増えることがあります。

最期の段階では、オムツの使用が必要になります。排泄機能が低下し、オムツを使用して対処します。オムツ交換時には、ワセリンやクリームなどを塗布することで、皮膚トラブルを予防することが大切です。

変化6:唾液や痰によるゴロゴロとした呼吸音が聞こえることがあります。

嚥下機能が低下して唾液や痰がたまりますが、患者本人はそれを苦痛とは感じません。口腔用スポンジやガーゼを巻いた指を使って、口の中にたまったものをやさしく拭き取ることができます。また、胸部を軽くさすることも役立つ方法です。

変化7:唇や皮膚が乾燥し、尿が出なくなってきます

これは自然な進行に伴う脱水症状です。口腔内は湿らせたスポンジやガーゼで潤すことができます。唇にはリップクリームを使用すると助けになります。また、尿意があるのに排尿が難しい場合は、看護師に連絡するように伝えておきます。

変化8:呼びかけに反応しなくなります

別れが近づくと、反応する力が衰えることがあります。返事がなくても、耳の機能は最後まで保たれていると考えられています。声はまだ聞こえているので、感謝の気持ちを伝えることができます。最期に伝えたいことや感謝の気持ちを声に出して伝えることが大切です。

変化9:呼吸が不規則になり、一時的に止まることもあります

あごを上げて、肩を動かしながらの呼吸は、数時間でお別れが訪れる兆候です。横向きの姿勢にし、あごを下げると呼吸が楽になります。会いたい人に連絡し、静かに見守る時間を持つことが大切です。

参考文献:ナースのためのやさしくわかる訪問看護

ターミナルケアにおける訪問時の対応

ターミナルケアにおける訪問時の対応

訪問時には、利用者の状態を注意深く観察し、苦痛を最小限に抑える努力をします。食欲不振、呼吸困難、悪心・嘔吐などの症状の有無を確認し、原因に応じて対処します。

食事、排泄、身体清拭などについては、利用者の希望と家族との協力を得ながら、できる限り快適に過ごせるよう工夫します。ポータプルトイレの設置や、シャワー浴の提供が可能な場合もあります。

状態が急変し、脈拍がない、呼吸が止まるなどの緊急事態が発生した場合は、ステーションか主治医に連絡します。

臨死期には、のどからゴロゴロと音がする死前喘鳴や下顎呼吸が見られることがありますが、これは本人にとって苦痛ではないことを説明しておきます。これらの現象は自然な経過の一部であることを理解させることが大切です。

まとめ

今回は、訪問看護のターミナルケアにおける家族ケアに焦点を当て、その重要性や具体的な支援策についてお伝えしました。

ターミナルケアは患者さんだけでなく、その家族にとっても非常に重要です。家族は大切な人の死に向き合う過程で、精神的に不安定になることが多く、将来への不安や悲しみを抱えることがあります。

そのため、家族の気持ちに共感し、安心感を提供することも、訪問看護師の大切な役割のひとつなのです。

参考文献:ナースのためのやさしくわかる訪問看護

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石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

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