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訪問看護師が知っておきたい!インフォームド・コンセントと意思決定を支える支援方法

インフォームド・コンセントとは、患者や家族が病状や治療について十分に理解し、医療職も患者や家族の意向や状況を理解したうえで、どのような医療を選択するかについて関係者全員で情報を共有し、合意するプロセスです。

今回は、インフォームド・コンセントをテーマにその概要から歴史的背景、そしてインフォームド・コンセントに基づく意思決定の支援方法「シェアードディシジョンモデル」についてお伝えします。

インフォームド・コンセントとは

インフォームド・コンセントとは

インフォームド・コンセントとは、医師が十分に説明したうえで、患者自身が最終的な診療方針を選ぶことを保障する考え方です。

これは「患者の知る権利」や「自己決定権」を大切にするもので、「十分な説明に基づく同意」や「説明と同意」とも言われます。

患者中心の医療を実現するための基本的な考え方として、世界中で法律として定められるようになっています。

インフォームド・コンセントの歴史

インフォームド・コンセントの歴史

インフォームド・コンセントの概念は、第二次世界大戦が終結した後の1947年に制定された「ニュールンベルク綱領」にまで遡ります。

この「ニュールンベルク綱領」の背景には、第二次世界大戦中にナチスが行った非人道的な人体実験への反省があり、その冒頭で「許容できる医学の実験においては、被験者の自発的同意が絶対的に不可欠である」と述べられています。

その後、この精神、すなわち患者の権利の尊重という理念は、1964年に世界医師会総会で採択された「ヘルシンキ宣言」へと受け継がれ、医学研究においては被験者本人の自発的同意、すなわちインフォームド・コンセントが不可欠となりました。

アメリカで初めて「インフォームド・コンセント」という言葉が使われたのは、1957年カリフォルニア州での「サルゴ判決」においてでした。この判決により、医師はインフォームド・コンセントに必要な情報を開示することが法的に義務付けられることとなりました。

1960年代の様々な社会変革運動を背景に、患者の人権運動においては、それまでの医師中心のパターナリズム的医療から、患者中心の医療への変革が求められました。

この流れを受けて、1973年にアメリカ病院協会は、インフォームド・コンセントと自己決定権を柱とする「患者の権利章典」を制定しました。この中で、思いやりのあるケアを受ける権利や人体実験などの研究プロジェクトへの参加を拒否する権利など、患者の権利とともに、インフォームド・コンセントを行ううえで必要な情報を知る権利も明確にされました。

また、国内で主に黒人を被験者としたタスキギー梅毒研究などの非倫理的な人体実験への反省から、アメリカ保健福祉省(HHS)内に国家委員会が設置され、同委員会は1978年に研究の被験者保護のための倫理原則を定めた「ベルモント・レポート」を発表しました。その中で、倫理原則の一つである「人権の尊重」を実践するためにはインフォームド・コンセントが不可欠とされており、これらを含む同報告書の倫理原則はHHSの医療倫理の共通原則とされています。

このように、法律の場においても臨床や研究の場においても、インフォームド・コンセントは確立されていったのです。

参考文献:藤重仁子 著「インフォームド・コンセントの歴史と近年の課題

日本でのインフォームド・コンセントの歩み

日本でのインフォームド・コンセントの歩み

日本では、平成9年の医療法改正で、インフォームド・コンセントが初めて医療関係者の努力義務として明記されました。

東京都では、平成13年7月にいち早く『都立病院の患者権利章典』を制定し、日本の国公立病院として初めて、インフォームド・コンセントに基づく患者中心の医療を推進する方針を打ち出しました。

さらに、平成14年には日本医師会が『診療情報の提供に関する指針』を制定しました。

この指針では、医師が診療情報を積極的に提供することで、患者が病気や治療内容を十分に理解し、医師と患者が協力して病気を克服し、より良い信頼関係を築くことを目的としています。

参照元:東京都保健医療局「暮らしの中の医療情報ナビ インフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントにおける意思決定支援とは

インフォームド・コンセントにおける意思決定支援とは

慢性疾患と診断された患者は、突然、医師から病名やこれから必要となる検査、治療法などの説明を受け、自分で治療を決定して同意するというインフォームド・コンセントの場面に直面します。

医師が患者に説明する内容としては、以下が挙げられます。

1. 疾患の診断名、重症度、原因

2. 予想される検査や治療法の目的と内容

3. 予想される結果と危険性(副作用や合併症などを含む)、限界

4. 他の可能な治療方法

5. 検査や治療を受けない場合に予想される結果

6. 治療拒否権

この際、患者の病気や治療法に対する理解や、患者が示す心理反応は、患者に合わせた治療法の選択、病気や治療の受け入れ、セルフマネジメントなどの援助を提供する際に重要となります。

さらに、医師の説明に対して患者がどう感じたかをしっかりと聞くことが大切です。

特に、がんや難病、身体に大きな負担がかかる治療など、受け入れがたい病気や治療法の説明を受けた患者は、混乱、否認、不安などさまざまな心理反応を示すことがあります。

そのため、患者の感情表出を促して心理的支援を行うことが重要です。

また、患者自身が治療法を意思決定できるように支えることも大切です。

効果的な意思決定支援「シェアードディシジョンモデル」とは

効果的な意思決定支援「シェアードディシジョンモデル」とは

インフォームド・コンセントに基づく効果的な意思決定支援方法として奨励されているのが医療者と患者が話し合い、協働して意思決定するシェアードディシジョンモデル (Shared decision making model)です。

シェアードディシジョンモデルは、患者が自分らしく意思決定できるように医療者と (1)選ぶことについて話し合う、(2)選択肢について話し合う、(3)決定について話し合う という3つのステップから構成されています。

(1)選ぶことについて話し合う

まず、患者が治療の選択肢があることを知っているかどうかを確認します。

医療者は、患者に治療を選択することや話し合いを通して決めることを伝える必要があります。

そして、適切な選択をするためには、患者に自分自身の意向や考えをよく熟考し、急いで結論を出さないように伝えることが重要です。

(2)選択肢について話し合う

次に、患者に治療やケアの選択肢に関する詳細な情報を提供します。

医療者は、患者に治療やケアの選択肢を提示し、各選択肢のメリットとデメリットなどの情報を提供します。

また、対話を通して患者の意向を把握します。さらに、意思決定支援に有用な小冊子やDVDなどのツールを提示し、振り返りを行いながら患者の理解を確認します。

(3)決定について話し合う

最後に、患者の意向を一緒に検討し、患者にとって最良の選択を決定します。医療者は、患者に生活や人生で何を大事にしているのかを尋ね、患者の意向を導き出し、治療やケアを決定しても良いかを確認します。

患者が治療法やケアを決定できた場合は、振り返りを行い、迷いがなければこのプロセスを終えます。

シェアードディシジョンモデルの留意点

シェアードディシジョンモデルの留意点

上記のシェアードディシジョンモデルのプロセスでは、医療者は患者に対して「意思決定に参加するよう励ます」、「情報を提供する」、「疑問に答える」、「希望や要望を聴く」といった援助を行います。

しかし、まだ病気や治療に向き合う準備ができていない患者もいるため、患者の心理状態をよく見極めて支援することが必要です。

また、病気に関する情報をインターネットで調べたり、同じ病気の患者から情報を得たりしても、それを整理できずに混乱する患者もいます。

 医療者は、そういった患者に対して情報の意味や解釈、判断の根拠について説明し、意思決定に役立てられるように援助する必要があります。

さらに、意思決定のプロセスでは、気持ちが揺れ動く患者や、一度治療法やケアを決定しても迷う患者もいます。そのため、患者の病気や治療の理解度や心理状態に合わせて支援することが重要です。

まとめ

今回は、インフォームド・コンセントについて、その概要や歴史背景、そしてインフォームド・コンセントに基づく意思決定の支援方法である「シェアードディシジョンモデル」についてお伝えしました。

患者は、ある日突然、医師から病名や治療法について説明を受け、治療の選択とその決定を迫られます。

また、医師と向き合うと緊張して質問できないことも多いため、看護師は医師の説明に対して患者がどう感じたかをよく傾聴し、患者自身が治療法を決定できるように支えることが重要です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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