【令和8年度診療報酬改定】 訪問看護ステーションは“機能で選ばれる時代”へ

今回は、令和8年度診療報酬改定の最新情報をもとに、これからの時代に“選ばれる”訪問看護ステーションの条件について、わかりやすくお伝えします。

令和8年2月13日(金)中医協 総会(第647回)議事録
〔総-2別紙2 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方〕
より、訪問看護ステーションに関わる「新設」事項を2点抜粋しています。
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655181.pdf

今回の改定の中でも、訪問看護ステーションの経営に大きく関わる「新設項目」が2点あります。

1.「機能強化型訪問看護管理療養費4」の新設

2.「訪問看護物価対応料」の新設

これは単なる“点数の追加”ではありません。

訪問看護ステーションに対し、「どのような機能を持つのか」をより明確に求めるメッセージとも言える改定です。

【1】「機能強化型訪問看護管理療養費4」新設

~精神科訪問看護を提供する機能強化型訪問看護ステーションの評価~

新設された「機能強化型訪問看護管理療養費4」は、月の初日の訪問時に9,030円を算定できる評価です。

対象となるのは、次のような明確な機能を備えたステーションです。

・難病等の重症利用者を受け入れている
・精神障害で重点的支援が必要な利用者に対応
・24時間対応体制を整備
・地域関係機関との連携体制を確立
・相当な実績を有する

また、施設基準としては以下が求められます。

・常勤看護職員4名以上
・看護職員比率6割以上
・重症者・精神重点支援利用者の実績
・退院時共同指導の実績
・地域への研修・相談機能の実績

ここから読み取れるのは、「件数」よりも「役割」を評価する流れです。

特に精神科訪問看護への明確な評価は、地域包括ケアの中で精神医療を在宅でどう支えるのかという、政策的な方向性を強く示していると言えるでしょう。

【2】「訪問看護物価対応料」新設

~令和8・9年度の物価上昇への段階的対応~

令和8年度および9年度の物価上昇に対応するため、訪問看護物価対応料が新設されました。

1 訪問看護物価対応料1(1日につき)(訪問看護管理療養費に上乗せ)

 イ 月の初日の訪問の場合 60円〔※R9.6~は120円〕

 ロ 月の2日目以降の訪問の場合 20円〔※R9.6~は40円〕

2 訪問看護物価対応料2(1日につき) 20円〔※R9.6~は40円〕(包括型訪問看護療養費に上乗せ)

金額だけを見ると小幅に感じられるかもしれません。

しかし重要なのは、「物価上昇が継続する前提」で制度設計されている点です。

単年度の緊急措置ではなく、中期的な経営環境の変化を織り込んだ改定となっています。

今回の改定が示す3つの方向性

今回の改定は、大きく3つの方向性を示しています。

(1)精神科・重症対応への重点化

(2)24時間体制と地域連携の強化

(3)経営環境変化を前提とした制度設計

それぞれを「制度の背景」「改定の方向性」「経営への影響」の観点から整理します。

(1)精神科・重症対応への重点化

■ 制度の背景

在宅医療は、高齢者中心から、より医療依存度の高い多様な対象者へと拡大しています。

特に増加しているのは、

・精神疾患を有する在宅療養者
・医療的ケア児
・神経難病
・がん終末期
・多疾患併存の高齢者

これらの利用者には、訪問回数だけでなく、高度な判断力や継続的な観察力が求められます。

■ 改定の方向性

今回の改定では、

・精神科訪問看護の評価体系の整理
・重症度・医療依存度に応じた評価の明確化
・継続的な関与を評価する仕組み

といった「質」と「専門性」を軸にした評価設計がより明確になっています。

単に訪問件数を増やすモデルから、専門性を発揮できるステーションが評価される構造へと移行しています。

■ 経営への影響

・精神科対応体制の戦略的整備
・重症者受入体制の明確化
・教育・研修の体系化
・医師・精神科医との連携強化

「同じ単価で横並び」の時代から、「機能で評価が分かれる」時代へ。

専門性は、経営戦略そのものになります。

(2)24時間体制と地域連携の強化

■ 制度の背景

在宅医療の最大の不安要素は、夜間・急変時対応です。
地域包括ケアの実効性は、

24時間連絡体制
・緊急時訪問体制
・医療機関との連携スピード

に大きく左右されます。

■ 改定の方向性

今回の改定では、

・24時間対応体制の実効性重視
・形式的届出から実態評価へ
・多職種・医療機関連携の実質的評価

という方向が見えます。

「体制があります」という書類上の評価から、「本当に機能しているか」という評価へ移行していきます。

■ 経営への影響

最大の課題は、人材確保と労務設計です。

24時間体制は、

・オンコール負担
看護師の疲弊
・離職リスク

と隣り合わせです。

持続可能性を確保するためには、

・複数名体制の構築
・業務標準化
・ICT活用
・医療機関との役割分担

が不可欠になります。

整備できなければ、「評価はされるが疲弊する」という構造に陥る可能性もあります。

(3)経営環境変化を前提とした制度設計

■ 制度の背景

訪問看護ステーション数は増加を続けています。一方で、

・人材不足

・人件費上昇

・物価高

・地域格差

といった経営環境の変化が進行しています。

■ 改定の方向性

今回の改定から見えるのは、

・機能分化の促進
・小規模単独型の限界認識
・一定規模・体制を持つ事業所の優位性
・経営基盤の安定を重視した評価

単純な点数調整ではなく、「持続可能な事業体」を前提にした制度設計です。

■ 経営への影響

これからの経営では、

売上規模、職員数、稼働率、利益率、管理体制といった基礎的な経営指標の重要性が一層高まります。

規模ごとの体制構築力やリスク耐性の違いを踏まえ、
「数を増やす」経営から、「役割を明確にする」経営へと転換が求められます。

これから目指すべきステーション像

改定を踏まえ、今後求められるステーション像は次の4つです。

(1)精神科対応力を備える

・精神科訪問看護の専門性強化
・重点支援利用者の受入体制整備
・精神科医療機関との連携強化


(2)24時間体制を“実働”させる

・オンコール体制の実効性確保
・夜間対応プロトコル整備
・訪問看護師の負担軽減設計


(3)重症対応を断らない体制

・多疾患併存ケースへの対応力
・在宅看取り体制の強化
・退院支援への積極的関与


(4)地域に開かれた存在

・地域向け研修開催
・医療機関・ケアマネとの連携強化
・相談機能の充実


訪問看護師に求められる視点

訪問看護師が知っておきたい!在宅高齢者の脱水症と予防対策

今回の改定は、訪問看護師の専門性をさらに押し上げます。

求められるのは、

・精神科看護力
・重症対応力
・臨床推論力
・連携調整力

訪問業務の実施者ではなく、地域医療を支える専門職としての役割がより強まります。

経営者に求められる視点

経営者にとって重要なのは、

・自ステーションの「機能」の明確化
・精神科対応の戦略的検討
・重症受入体制の整備
・物価上昇を前提とした中期経営設計

「なんでも受ける」から「役割を持つ」へ。

それが今回の改定の本質と言えるでしょう。

さいごに

これからの時代、選ばれる訪問看護ステーションとは

規模の大小よりも、「何に強みがあるか」が問われる時代に入っています。

・何に強いのか
・地域でどの役割を担うのか
・24時間体制をどう持続可能に運営するのか
・どのような人材を育てるのか

これらを言語化し、組織として共有できているかどうかが、今後の分岐点になるでしょう。

訪問看護は、量の時代から質と機能の時代へ。

“選ばれる理由”を持つこと。

それが、これからの経営の一つのヒントではないでしょうか。

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