【オンラインイベントレポート】小規模訪問看護ステーションが地域で指名されるための特徴づくりと組織づくり

~機能強化型を実践し、収益と信頼を育てるステーション経営~

2026年10月23日(金)17:00より、「いろいろナース」主催の訪問看護管理者向けオンラインセミナーを開催しました。

今回のセミナーでは、愛知県春日井市の「あおいろ訪問看護ステーション」代表、大橋純子氏を講師に迎え、カリスマ性や個人の頑張りに頼ることなく、地域から信頼されるステーションを育て、安定した経営と組織の成長を実現するための考え方や具体的な実践方法についてお話しいただきました。

大橋氏は、緩和ケア認定看護師の資格を取得し、大学院で学んだ後、緩和ケア病棟の立ち上げにも携わり、2021年に「あおいろ訪問看護ステーション」を開設。開設から約1年半で「機能強化型訪問看護管理療養費Ⅰ」の算定を実現しました。

現在は看護師25名、リハビリスタッフ8名の計33名体制で運営。看取りは月約7名、年間約80名に対応し、夜間の緊急対応も1日平均3~4回にのぼります。

今回の講義では、こうした実践をもとに、小規模ステーションが地域で選ばれ、組織として成長していくための具体的な取り組みが紹介されました。

カリスマ性に頼らず、ステーションの成長を実現する「7つの視点」

講義では、地域から指名され、収益と信頼を育てるステーションづくりに欠かせない視点として、次の7つが示されました。

・専門性を高め、ステーション全体の強みにする

・24時間365日の対応体制を人員と仕組みで支える

・対応方針やケアの質を標準化する

・在宅療養の実現に向けて、できる方法を考え抜く

・個人の頑張りに頼らず、業務を仕組み化する

・対応力を高めるための規模拡大と営業戦略

・互いに学び、高め合える組織をつくる

これらは、管理者個人の能力やカリスマ性に依存するのではなく、組織として地域の医療ニーズに応え続けるための重要な視点です。ご利用者・ご家族、医療機関や関係者からの信頼を獲得し、スタッフ一人ひとりの専門性を活かしながら成長するための土台となります。

1.専門性をステーション全体の力にする

地域から選ばれるステーションになるためには、他の事業所との違いを生み出す専門性が重要です。

大橋氏は、認定看護師や専門看護師などの資格取得を支援するとともに、「Palliative Care Lab(パリアティブ・ケア・ラボ)」など、スタッフが継続的に学べる環境を整えています。

また、事例検討などを通じて、個々のスタッフが持つ知識や経験をチーム内で共有。学んだことを日々の看護実践に活かすことで、個人の専門性をステーション全体の強みへと広げています。

大切なのは、特定のスタッフだけが高い専門性を持つのではなく、その知識や経験を組織全体で共有し、チームとして提供できるケアの質を高めていくことです。

2.24時間365日の対応は、人員と仕組みで支える

訪問看護ステーションに求められる24時間365日の対応を、常勤スタッフの頑張りだけで維持することには限界があります。

あおいろ訪問看護ステーションでは、副業や非常勤の看護師も活用しながら、夜間や土日の対応を担える人員を確保。オンコール対応も分担することで、特定のスタッフに負担が集中しない体制を整えています。

24時間対応を実現するためには、地域のニーズに応えたいという理念だけでなく、実際に対応できる人員配置と運用の仕組みが欠かせません。

スタッフが無理なく働き続けられる環境を整えることが、結果として、ご利用者に安定したサービスを提供することにもつながります。

3.誰が対応しても、方針とケアの質がぶれない組織へ

スタッフが増えるほど重要になるのが、対応方針や判断基準の共有です。

ご利用者・ご家族への接し方、緊急時の判断基準、報告・連絡・相談の方法などを具体的に言語化し、チーム全体で共有することで、担当者によって対応に差が生じることを防ぎます。

さらに、現場を支えるリーダーを育成し、管理者の考えや方針を日々の判断・行動につなげていくことも重要です。

管理者一人に確認や判断が集中する状態から、スタッフそれぞれが共通の基準に基づいて判断し、行動できる組織へと変えていくことが、安定した運営のポイントとなります。

4.「家に帰れない」と決めつけず、実現する方法を探る

在宅療養の可能性を広げるためには、病状や医療処置の内容だけで「自宅での生活は難しい」と判断するのではなく、本人や家族の希望を出発点に、どうすれば実現できるかを考える姿勢が大切です。

病院や主治医、家族、地域の関係者と連携しながら、必要な医療処置、家族の介護力、緊急時の対応方法などを一つずつ検討し、在宅療養を実現するための方法を探っていきます。

こうした姿勢は、ご利用者やご家族の希望に寄り添うだけでなく、医療機関にとっても「困ったときに相談できる」「難しいケースにも一緒に取り組んでくれる」ステーションとしての信頼につながります。

5.個人の頑張りに頼らず、業務を仕組み化する

組織の規模が大きくなるにつれて、管理者や一部のベテランスタッフだけが業務の進め方や判断基準を把握している状態では、運営に支障が生じやすくなります。

そのため、日々の連絡や記録、緊急時の対応などについて、手順や判断基準を見える化し、担当者が変わっても一定の質を保てる仕組みを整えることが重要です。

また、リーダーの育成や定期的な振り返りを通じて、業務上の課題をチームで共有し、改善していくことも欠かせません。

誰か一人が頑張り続けなければ回らない組織ではなく、誰もが役割を理解し、自律的に動ける組織をつくることが、持続的な成長の鍵となります。

6.営業活動を数値で管理し、戦略的に地域へ届ける

ステーションの成長には、地域の医療機関や関係機関との関係づくり、いわゆる営業活動も重要な役割を果たします。

講義では、営業活動を個人任せにせず、仕組みとして管理する方法も紹介されました。具体的には、月200~300件を目安とした活動量を設定し、訪問先や活動状況を記録・振り返りながら、次の行動につなげていきます。

ただし、営業活動は件数を増やすこと自体が目的ではありません。

どのようなご利用者を受け入れたいのか、地域にどのような医療・看護機能を提供したいのかを明確にしたうえで、ステーションの強みを必要としている医療機関や関係者に届けることが大切です。

活動を数値で把握し、結果を分析して改善を重ねることで、地域のニーズに応えながら、安定した利用者の受け入れと経営基盤の強化を目指します。

7.仲の良さだけでなく、切磋琢磨する組織をつくる

良い組織づくりには、スタッフ同士の良好な関係だけでなく、互いに専門性を高め合い、成長できる環境が必要です。

ご利用者にとって何が最善なのかを共通の判断基準とし、ときには率直に意見を交わしながら、より良いケアを追求していくことが大切です。

資格取得や新しい取り組みへの挑戦を支援し、それぞれの実践を振り返りながら学び合う。そうした文化が根付くことで、スタッフ一人ひとりの成長が組織全体の専門性やケアの質の向上につながります。

単に仲の良い職場を目指すのではなく、共通の目標に向かって互いに刺激を受け、成長し続けられる組織をつくることが重要です。

機能強化型を目指す意味と、ステーション経営への視点

機能強化型訪問看護管理療養費は、一定の人員体制に加え、24時間対応、重症度の高いご利用者への対応、看取り、地域連携、人材育成など、地域の在宅医療を支える機能を評価する仕組みです。

大橋氏は、機能強化型の算定要件を満たすことだけを目標にするのではなく、その過程で地域から必要とされる機能を組織として整えていくことが重要だと説明しました。

つまり、機能強化型を目指すことは、単なる診療報酬上の評価を得るための取り組みではありません。

地域の医療ニーズに応えられる人員体制や専門性を備え、24時間対応や看取りなどの役割を担える組織へと成長していくこと。その結果として、地域からの信頼と経営の安定性の両方を育てていくことが、本来の目指す姿といえます。

採用・定着につながる、専門性と学びの環境

組織を成長させていくうえで欠かせないのが、人材の採用と定着です。

大橋氏は、採用時には土日勤務やオンコールなどの勤務条件を入職前に具体的に伝え、働き方に対する認識のずれが生じないようにすることを大切にしています。

また、勤務条件だけでなく、「緩和ケアを学びたい」「看護師として専門性を高めたい」といった、目指す看護や価値観への共感も重視しています。

その取り組みの一つが「Palliative Care Lab」です。がんや重い疾患を抱えるご利用者とご家族のQOL向上を目指し、疾患や障害への理解を深める学習会として、スタッフが継続的に学べる機会を設けています。

専門性を高めるための学習環境があり、互いに知識や経験を共有できることは、スタッフ自身の成長につながるだけでなく、働く職場としての魅力を高め、採用や定着にも良い影響をもたらします。

あおいろ訪問看護ステーション 代表。

緩和ケア認定看護師の資格を取得後、大学院で学び、がん看護専門看護師の道へ。緩和ケア病棟の立ち上げにも携わり、2021年に愛知県春日井市で「あおいろ訪問看護ステーション」を開設。現場での看護実践と組織づくりの両面から、地域の在宅療養を支えている。

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