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訪問看護師が知っておきたい!在宅における慢性腎不全の特徴と訪問看護のポイントとは

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、さまざまな原因により腎臓の障害が慢性的に続いている状態を指します。

日本では、患者数が約1,330万人(成人の8人に1人)とされ、新たな国民病と言われています。

慢性腎臓病は進行すると「慢性腎不全」になり、人工透析が必要になります。さらに、心筋梗塞や心不全、脳卒中などの病気を併発しやすく、これらの合併症で亡くなる方も少なくありません。

そのため腎機能低下を早期に発見・治療し、進行をくい止めることが重要であり、「慢性腎不全」の在宅療養において病気だけでなく生活全体から支援する訪問看護の役割は極めて重要です。

今回は、訪問看護師が知っておくべき在宅における慢性腎不全の特徴と訪問看護のポイントについてお伝えします。

目次

慢性腎不全とは

慢性腎不全とは

何らかの原因で慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)になり、徐々に腎機能が低下することで「慢性腎不全」となります。

「慢性腎不全」とは、数カ月から数十年かけて腎機能が徐々に低下し、腎臓のろ過能力が正常時の30%以下になり、体内の正常な環境を維持できない状態を指します。

腎機能の回復は見込めず、さらに機能が低下すると末期腎不全(腎臓のろ過能力が15%未満)へと進行し、体液の量や質を適切に維持できなくなり、生命に危険をきたし最終的には、透析や腎移植が必要になります。

厚生労働省の統計によれば、腎不全は日本人の死因の中で死因順位7位に位置しています。

また日本透析医学会の報告によると、全透析患者数は約35万人で、年間の新規導入患者は4万人弱にのぼり、維持透析および新規導入患者の高齢化が年々進行しています。

なお、透析患者の死亡原因は、心不全と感染症がともに全体の20%以上を占めており高い傾向にあります。

なお、透析患者の死亡原因については、心不全と感染症がともに全体の20%以上を占めており、その割合が高い傾向にあります。

慢性腎不全の症状

慢性腎不全の症状

慢性腎不全の症状は、末期になるまでほとんど現れないことがあります。しかし、末期になるとさまざまな症状が現れます。

末期の症状としては、以下のようなさまざまな症状が現れます。

・倦怠感や疲労感、
・呼吸困難
・かゆみ
・食欲不振
・悪心
・眠気
・痛み
・せん妄(混乱状態)

また、腎機能低下による貧血、高血圧、浮腫、アシドーシス、心不全など多彩な合併症も出現します。

慢性腎不全の治療法

慢性腎不全の治療法

初期から中期の段階では、進行を遅らせることが主眼となり、食事療法や薬物療法が行われます。また、腎機能低下に伴う症状に対しても、適宜に対応が行われます。

末期に至った場合、腎代替療法として透析や腎移植が検討されます。

末期に至った場合、腎代替療法として透析や腎移植が検討されます

これらの療法は、患者にとって最適な時期に移行するように計画されます。

透析療法が困難な患者に対しては、患者や家族との十分な話し合いを基に緩和医療が提供されます。

一般的には低蛋白食、塩分、カリウムの制限が推奨されていますが、透析が難しい患者の場合は食事摂取量が低下していることも考慮され、厳格な制限よりも生活維持の視点から、適宜に対応していく必要があります。

治療は個々の症状や状態に合わせて調整され、患者の生活の質を向上させることを目指します。

訪問看護導入時における慢性腎不全患者の留意ポイント

訪問看護導入時における慢性腎不全患者の留意ポイント

次に訪問看護における慢性腎不全の利用者様の対応についてみていきたいと思います。

訪問看護導入時には、利用者それぞれの状態ごとに以下の点を把握、評価していく必要があります。

(1)保存期腎不全にある療養者の場合

・保存期腎不全の場合、他の主疾患や褥瘡の発生、要介護度の悪化などが原因で訪問看護が導入されることが一般的です。訪問看護導入の目的を考慮しつつ、腎機能障害(CKD重症度分類)の程度を把握します。


・保存期腎不全状態となった原疾患の合併症が何であり、その治療の必要性を理解しているかを把握します。


・慢性腎不全に関する情報を専門外来と共有し、療養者とその家族から受診状況や指導内容の理解の程度を把握し、保存期腎不全療養者に必要なセルフマネジメント(食事療法、服薬管理)を評価します。

(2) 血液透析療法を導入している療養者の場合

・血液透析療法は、末期腎不全在宅療養者が最も多く選択する腎代替療法の一つです。シャント造設後に訪問看護が導入されるケースがあります。血液透析療法の実施状況(実施日、透析時間、除水量)と身体症状(尿毒症、不均衡症候群、めまい、血圧低下、悪心・嘔吐、倦怠感)の有無を把握します。


・血液透析病院の主治医、看護師、管理栄養士と情報共有し、血液透析療養生活に必要なセルフマネジメント(シャント管理、塩分飲水制限、食事療法、服薬管理)を評価します。

(3) 腹膜透析療法を導入している療養者の場合

・腹膜透析療法は、自己管理行動の適切な実施が必要とされるため、比較的若く自立した在宅療養者が多いことが一般的です。そのため、療養者の家族役割や就業による社会役割を考慮して支援を行います。


・腹膜透析療養者は、血液透析療養者と比較して腎機能が保たれていることが一般的です。導入時の腎機能の程度(尿量、尿回数、尿の性状)を把握します。


・腹膜カテーテル造設後に訪問看護が導入された場合は、腹膜透析の手技が適切に習得できているかを評価します。


・腹膜透析を受ける病院の主治医、看護師と情報を共有し、腹膜透析療養生活に必要なセルフマネジメント(腹膜カテーテルの管理、腹膜透析回数・時間、食事療法、服薬管理)を評価します。


・腹膜透析に必要な物品(透析液、キャップ、コネクトキットなど)の管理・補充が腹膜透析業者を通じて適切に行われているかを評価します。

訪問看護師が慢性腎不全の利用者をみる上で心得るべき点とは

訪問看護師が慢性腎不全の利用者をみる上で心得るべき点とは

では、実際に訪問看護師が、在宅療養をおこなう慢性腎不全の利用者を支援していく上で心得るべき点についてみていきます。

(1)早期発見と治療の重要性

慢性腎不全は不可逆的な腎機能の低下を経て、末期腎不全に至り、腎代替療法が必要になります。訪問看護師は腎機能低下を早期に発見し、治療に導くことが重要です。これにより、腎代替療法の導入をできるだけ遅らせることが可能です。

(2)腎代替療法の影響の理解

選択した腎代替療法によって、利用者の身体的・精神的負担、治療状況、合併症、予後が大きく変化します。訪問看護師はこれらの要因を理解し、利用者の状態に適したサポートを提供します。

(3)適切なセルフマネジメントの確立

慢性腎不全のいずれの時期でも、療養者の適切なセルフマネジメント(食事療法、飲水制限、服薬管理、体重管理、シャント・腹膜カテーテル管理)が必要です。訪問看護師は利用者に対し、それぞれの時期においてセルフマネジメントの重要性を指導しサポートします。

(4)心理的なサポート

病状進行に伴う感情の変化(喪失感、不安感、挫折感、抑うつ傾向)がセルフマネジメントに影響を与えることがあります。訪問看護師はこれらの感情に理解を示し、利用者や家族が持つ強みを強調し、前向きな考え方を促します。

(5)尿毒症症状の予防・緩和

慢性腎不全の進行に伴う尿毒症症状が及ぼす不快感と苦痛を予防・緩和することが重要です。訪問看護師は利用者の症状をモニタリングし、適切な対策を提供します。

(6)透析導入に伴う心理的サポート

末期腎不全の訪問看護利用者は透析療法を導入することが一般的です。訪問看護師は療養者と家族の透析導入に伴う心理的負担を理解し、前向きな考え方をサポートします。利用者が「透析とともに生きる」ためのアプローチが重要です。

慢性腎不全の利用者の支援のポイント

慢性腎不全の利用者の支援のポイント

訪問看護による慢性腎不全の利用者の具体的な支援のポイントは、以下になります。

(1)セルフマネジメントの支援

療養者の腎機能障害の程度や生活状況に応じ、適切なセルフマネジメントをサポートします。これには、食事療法、飲水制限、服薬管理、通院の指導や支援が含まれます。個々の状況に合わせたアプローチを取り、療養者が自己管理を行えるように促します。

(2)原疾患および合併症の予防

原疾患や腎機能低下に影響を与える合併症の増悪を予防するための支援を提供します。特に、糖尿病腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などの原因や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの合併症に対する管理を重点的に行います。

(3)腎代替療法に沿った管理方法の教育

末期腎不全の在宅療養者が選択した腎代替療法に関連した管理方法について、具体的な教育を行います。血液透析を選択した場合はシャント部の管理や通院、腹膜透析を選択した場合は腹膜カテーテルの管理や腹膜透析方法について指導します。

(4)透析療法に伴う全身症状の予防・緩和

透析療法に伴う多様な全身症状(不均衡症候群、溢水、易感染状態、便秘、低栄養状態、呼吸困難感、起座呼吸、血圧の変動、体重の増加、めまい、ふらつき、抑うつ)を予防・緩和するため、症状のモニタリングや適切な対策を提案・教育します。患者の症状に対して継続的なサポートを行い、生活の質を向上させるために努めます。

利用者家族のサポートのポイント

利用者家族のサポートのポイント

訪問看護師は、利用者の病気だけでなく、生活全体をみる必要があります。状況に応じた利用者家族のサポートも訪問看護の大きな役割の一つです。

利用者家族のサポートのポイントは、以下になります。

(1)透析導入時期におけるサポート

透析導入が高齢、認知症、がんなどの理由で見合わせられる場合が増えることが予想されます。予測される症状や実際に発生した症状について丁寧に説明し、それに対する対応策をしっかりと説明することが望まれます。家族に対しても理解を深め、共に対処方法を模索する姿勢が大切です。

(2)食事療法への理解と柔軟なアプローチ

食事療法がある程度まで必要ですが、進行に伴い透析導入を断念する場合、過度に制約されず本人の希望を尊重し、満足できる食生活が送れるように主眼をおきます。柔軟性を持ちながら、家族と共に新しい食事療法に向き合うサポートが求められます。

(3)透析導入の再検討に向けたコミュニケーション

透析導入を一度は断念しても、再度話し合いができることを説明します。状況や患者の状態が変われば再検討の余地があることを伝え、家族とのコミュニケーションを大切にします。

(4)終末期における場所の話し合い

在宅か病院かといった終末を迎える場所については、本人の希望を踏まえつつ、早い段階から家族とも話し合っておくことが望ましいです。これにより、最期の時に本人が望む場所で過ごせるようサポートします。

(5)維持透析中で透析を断念した方へのサポート

透析中で透析を断念した場合、その家族に対しても同様の姿勢で臨みます。選択肢が変わったとしても、理解と共に新しい局面に向けてサポートし、家族と共に歩んでいく姿勢が必要です。

慢性腎不全に関連する社会資源・制度

慢性腎不全に関連する社会資源・制度

さいごに慢性腎不全に関連する社会資源・制度についてご紹介します。

(1) 医療費の支援, 費用に関する支援

慢性腎不全患者への医療費支援および費用に関する支援がいくつかの制度を通じて提供されています。身体障害者福祉法に基づく身体障害者手帳の交付に伴い、医療費の一部が助成されます。また、腹膜透析療養者に対しては、透析に必要な日常生活用具である透析加温器が日常生活用具給付事業によって給付され、負担が軽減されています。

(2) 外来受診, 透析のための移動の支援

外来受診や透析の移動に関しても、患者のサポートが行われています。介護保険制度においては、有償移送サービスが提供され、外来受診時の移動が円滑に行えるよう支援されています。また、血液透析病院では無償送迎サービスが行われ、患者が定期的な透析治療に参加しやすくなっています。

(3) 食事に関する資源

慢性腎不全患者にとって重要な要素の一つが食事です。このため、腎臓病食や透析食に特化した有償配食サービスが民間企業や医療法人によって提供されています。これにより、栄養面での適切な管理が患者に提供され、治療の一環として支援されています。

(4) 腹膜透析療法に関連する生活支援

腹膜透析療法に特有のニーズに対応するため、腹膜透析に必要な物品(透析液、加温器、キャップなど)の提供とアフターケアが行われています。これらのサービスを提供する民間企業が存在し、患者が安心して腹膜透析を行えるよう支援しています。

まとめ

今回は、訪問看護師が知っておくべき在宅における慢性腎不全の特徴と訪問看護のポイントについてお伝えしました。

慢性腎不全は、末期になると血液透析や腹膜透析、腎移植など腎代替療法の導入をせざるを得ません。腎機能低下を早期に発見、治療し、末期腎不全への進行や心血管疾患の合併を減らすことは、利用者のQOL向上にとって不可欠です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

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