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【2024年最新版】訪問看護における「補助金」の内容と活用方法とは

補助金は、国が事業や政策の実施を促進するために提供する資金です。

訪問看護ステーションでも、制度の変更や新たな義務化によって、体制の変更や職員のスキル向上、機能の改善が必要になる場合があります。その際、さまざまな補助金が支給されます。

しかし、補助金の種類や活用方法について詳しく理解している人は意外と少ないかもしれません。補助金の種類や活用方法を把握し、効果的に活用することは、事業運営において極めて重要です。

今回は、訪問看護ステーションにおける国の補助金について、その定義や目的、種類、内容、そして有効な活用方法について紹介します。

目次

補助金とは何か

補助金とは何か

まずそもそも補助金とはどのようなものかを整理していきましょう。

(1)補助金の基本的な定義

補助金は、特定の事業や活動を行う個人や団体に対して、国や地方公共団体から、事業拡大や設備投資などの活動を補助し、経済的支援をするために支給されるものです。

補助金はあくまで事業の推進を資金面から補助し社会全体を良くすることを目的に給付するお金であって、返済の義務はありません。

ただし、補助金を給付目的以外に使用した場合には、罰則が科されます。

(2)企業が補助金を活用するメリット

補助金を利用することで、企業は運営上のさまざまな利点を享受することができます。

①設備投資や初期投資の軽減

補助金は、設備投資や新規事業の立ち上げに必要な初期投資を軽減できるため、事業の成長過程での資金的な負担が軽減されます。

②資金調達の多様化

補助金は、企業の自己資金と組み合わせて利用できるため、資金調達の多様化を図ることができます。これにより、事業の資金調達リスクを分散し、より大規模な投資やプロジェクトを実行することが可能になります。

③信頼性の向上

補助金の受給は、企業が社会的責任を果たしているという証となります。公的機関からの支援を受けることで、顧客や投資家、関係者からの信頼性が向上します。

④効果的な成長戦略の実行

補助金を活用することで、成長に必要な取り組みを効果的に実行することができます。

⑤地域経済への貢献

補助金を活用した企業の成長は、地域経済や雇用に好影響を与えます。新しい仕事や雇用の創出により、地域全体の経済的な活性化が期待されます。

⑥経営戦略の明確化

補助金を受け取るには、まず事業計画を策定する必要があります。事業計画を作成することで、自社の強みや課題がより明確になり、経営戦略を明確にすることができます。

令和6年度に交付される訪問看護の補助金の種類と内容とは

令和6年度に交付される訪問看護の補助金の種類と内容とは

次に訪問看護ステーションにおいて今年、令和6年度に交付される補助金の種類と内容についてみていきます。

令和6年度は、以下の補助金の交付が実施されています。

(1)IT導入補助金


(2)事業承継・引継ぎ補助金

1. 経営革新枠 
2. 専門家活用事枠
3. 廃業・再チャレンジ事業枠


(3)訪問看護におけるオンライン請求・オンライン資格確認の導入補助金


(4)令和6年度 東京都訪問看護推進総合事業

1. 認定看護師資格取得支援事業
2. 訪問看護ステーション代替職員(産休等)確保支援事業
3. 訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業
4. 新任訪問看護師育成支援事業

それぞれの詳細を解説していきます。

(1)IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。

対象となるITツール(ソフトウェア、サービス等)は事前に事務局の審査を受け、補助金HPに公開(登録)されているものとなります。相談対応等のサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助対象に含まれます。

補助額 5万円~150万円未満 150万円~450万円以下
機能要件 1プロセス以上 4プロセス以上
補助率 1/2以内
対象経費 ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、導入関連費
ITツール要件 顧客対応・販売支援・決済・債権債務・資金回収管理・供給・在庫・物流・会計・財務経営・総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情報システム
オプション 機能拡張/データ連携ツール/セキュリティ
役務 導入コンサルティング
導入設定 / マニュアル作成 / 導入研修/保守サポート

参照元:中小企業庁 IT導入補助金2024事務局HP

(2)事業承継・引継ぎ補助金

(2)事業承継・引継ぎ補助金

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&A(事業再編・事業統合等、経営資源を引き継いで行う創業を含む)を契機とした経営革新等への挑戦や、M&Aによる経営資源の引継ぎ、廃業・再チャレンジを行おうとする中小企業者等を後押しするための補助金です。

事業承継・引継ぎ補助金には、①経営革新枠、②専門家活用事枠、③廃業・再チャレンジ事業枠の3つの枠が設けられています。

①経営革新枠

事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等(事業再構築、設備投資、販路開拓 等)への挑戦に要する費用を補助する補助金です。

補助率・上限等 2/3又は1/2 補助上限:600万円以内又は800万円以内

※一定の賃上げを実施する場合は補助上限を800万円に引き上げ
(補助額の内600万円超~800万円の部分の補助率は1/2)

補助対象経費 設備投資費用、店舗・事務所の改築工事費用 等
おすすめ対象者 ・新しい商品の開発やサービスの提供を行いたい
・新たな顧客層の開拓に取り組みたい
・今まで行っていなかった事業活動を始めたい

②専門家活用事枠

M&Aによる経営資源の引継ぎを支援するため、M&Aに係る専門家等の活用費用を補助する補助金です。

補助率・上限等 2/3又は1/2 補助上限:600万円以内
補助対象経費 M&A支援業者に支払う手数料※、セカンドオピニオン 等

※M&A支援機関登録制度に登録されたファイナンシャルアドバイザー(FA)またはM&A仲介業者によるFAまたはM&A仲介費用に限る

※M&Aにより経営資源を他者から引継ぐ、あるいは他者に引継ぐ予定の中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む。)

おすすめ対象者 ・M&Aの成約に向けて取組を進めている
・M&Aに着手しようと考えている

③廃業・再チャレンジ事業枠

再チャレンジを目的として、既存事業を廃業するための費用を補助する補助金です。

事業承継・M&Aに伴い既存の事業を廃業し、新たな取り組みにチャレンジする予定の中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む。) 

※再チャレンジの主体は、法人の場合は株主、個人事業主の場合は個人事業主本人となります。

補助率・上限等 2/3又は1/2 補助上限:150万円以内
補助対象経費 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費 等

※廃業・再チャレンジ枠は、経営革新枠・専門家活用枠と併用できます。

参照元:中小企業庁HP

(3)訪問看護におけるオンライン請求・オンライン資格確認の導入補助金

(3)訪問看護におけるオンライン請求・オンライン資格確認の導入補助金

訪問看護ステーションでは、令和6年オンライン資格確認・オンライン請求の導入~義務化に伴い、設備の導入が必要となります。

※訪問看護のオンライン請求・オンライン資格についてはこちらの記事も参考にしてみてください。

【令和6年6月義務化】訪問看護レセプトのオンライン請求・オンライン資格とは

オンライン資格確認の導入

オンライン資格確認の導入

オンライン請求の導入

オンライン請求の導入

これらの設備導入に必要な費用を支援するための補助金が、以下の内容にて設けられています。

補助金交付額 42.9万円を上限に補助
補助金対象項目 1.  オンライン資格確認の導入に必要となる資格確認端末(電子証明書を 含む。)の購入等


2. レセプトコンピューターに組み込むパッケージソフトの購入(基礎的 費用以外のカスタマイズ費用は除く。)


3. オンライン請求回線初期導入(回線の帯域増強 やISDNからの切り替えを含む。)


4. オンライン請求回線の帯域増強、オンライン資格 確認の導入に必要となるレセプトコンピューター等の既存システムの改修(ネットワー ク整備等に係る経費、薬剤情報及び特定健診情報の閲覧のための改修に係る経費を含 む。)


5. オンライン資格確認を行うためのモバイル端末の購入及びオンライン資格確認等 の導入に附随する訪問看護ステーションへの実地指導等

補助金申請に必要な書類 (1)領収書(写)


・システムベンダへの精算がわかる書類となります。


・見積書では精算の確認ができないことから、証拠書類とは認められませんのでご注意ください。


・システムベンダ等から受領いただく必要があります。


(2)領収書内訳書


・税込みの金額で領収書の内訳を記載してください。


・領収書(写)と領収書内訳書の合計は一致する必要があります。
※領収書(写)の内訳をすべて記載してください。なお、補助上限額を上回っている場合、補助対象外の場合であっても、領収書(写)に金額が含まれていれば、記載が必要になります。


・書類のフォーマットは、下記「6.申請様式・手順書等」から入手ください。


・領収書内訳書については、必要に応じて提出いただく場合があります。

申請様式・手順書等 領収書内訳書

補助金申請手順書

補助金申請期間 訪問看護ステーションのオンライン資格確認等導入に係る補助金申請については、「令和6年11月30日までに導入完了し、令和7年5月31日」までに申請すると、補助金交付の対象となります。

参照元:医療機関等向け総合ポータルサイト

(4)令和6年度 東京都訪問看護推進総合事業

令和6年度 東京都訪問看護推進総合事業

地域包括ケアシステムを実現するために、在宅での治療をサポートする訪問看護ステーションに東京都が実施している補助金制度、「令和6年度 東京都訪問看護推進総合事業」について、以下の4つの支援策を紹介します。

①認定看護師資格取得支援事業

訪問看護の実践と相談・指導ができる看護師の育成を支援し、労働意欲の向上、定着の促進、看護職員全体の質の向上の推進を図るため、認定看護師資格の取得及び特定行為研修の受講を支援する補助金制度です。

補助内容 ステーションが経費を負担し(一部を負担する場合も可)勤務する職員に認定看護師の資格を取得させる場合または、特定行為研修の受講をさせる場合に補助されます。
補助率 以下の①~⑤すべての経費の1/2
補助対象経費 ・認定看護師

①入学金・授業料
②教育課程受講期間中の給与費等
③認定審査料(対象となる認定分野…訪問看護、皮膚・排泄ケア、認知症看護、緩和ケア)

・特定行為研修

④受講料
⑤研修受講期間中の給与費等

対象ステーション等 都内のステーション

※認定看護師の入学金・授業料または特定行為研修の受講料を令和6年度に支払う場合

②訪問看護ステーション代替職員(産休等)確保支援事業

訪問看護ステーションで働く看護職員が、出産や育児、介護のため、長期間にわたって休業する場合に、訪問看護ステーションが代替職員を確保する経費を支援する補助金制度です。

補助内容 常勤の看護職員が、産休・育休・介休を取得する際の代替職員の確保に要する経費を補助します。
補助率 10/10
補助対象経費 ①代替職員に支払う給与費
(給料、報酬、賃金、法定福利費、福利厚生費、賞与及び手当を含む。)②代替職員を派遣している派遣会社に支払う派遣料金(紹介手数料は含まない。)
補助額 上限1時間あたり3,200円
対象ステーション 常勤換算7人未満の都内のステーション

③訪問看護ステーション事務職員雇用支援事業

在宅での治療環境を改善し、地域の包括的なケアを促進するために、事務職員の配置がない訪問看護ステーションが、看護職員の仕事を軽減し、専門業務に集中できるようにするための支援策です。

この支援策は、訪問看護ステーションが開設から1年以内に事務職員を新たに雇用する場合に、その経費を補助します。

補助内容 ステーション開設後、ステーションに初めて事務職員を雇用する場合に以下の経費を補助します。
補助率 10/10
補助対象経費 ①事務職員給与費
(給料、報酬、賃金、法定福利費、福利厚生費、賞与及び手当含。)②交通費
補助額 上限 1時間あたり 1,113円

※交通費:上限 1日あたり 800円
※期間:配置の日から起算して 1年以内までにかかる経費。
※要件:管理者・指導者育成研修の「基礎実務コース」または「経営安定コース」の修了(当年度修了可)

対象ステーション 開設後1年以内の都内のステーション

④新任訪問看護師育成支援事業

訪問看護の経験がない看護師を採用し、育成を行う際、教育体制を強化するための補助金制度です。訪問看護ステーションにおける看護職員の働きやすさや定着率を向上させ、在宅での療養環境の改善や地域包括ケアの促進を目指しています。

補助内容 訪問看護未経験の看護職を雇用し、育成を行う場合に補助金が支給されます。
補助率 1/2
補助対象となる新任訪問看護師の条件(概要) (1)過去に訪問看護の業務に従事した経験のない看護職であること。
(2)当該訪問看護ステーションに専従して勤務すること。
(3)介護保険法の人員基準上、常勤であること。
対象ステーション 開設後1年以上かつ常勤換算7人未満の都内のステーション(新卒の場合を除く)

補助対象経費等(概要)

項目 対象経費 基準額
(上限)
補助率
給与費 (1)新たに雇用した新任訪問看護師(新卒者除く)
雇用後2か月にかかる人件費
2,400円/1時間 1/2
(2)新たに雇用した新卒訪問看護師
雇用後6か月にかかる人件費
外部研修受講経費 (1)新たに雇用した新任訪問看護師(新卒者除く)
雇用後8か月までに受講する外部研修にかかる受講経費
(事業所負担分のみ)
50,000円/1人
(2)新たに雇用した新卒訪問看護師(*)
雇用後8か月までに受講する外部研修にかかる受講経費
(事業所負担分のみ)
100,000円/1人
代替職員の給与費 新任訪問看護師が同行訪問を行う際の
代替職員に係る給与費
(雇用後6か月間に実施する同行訪問の代替のみ対象)
3,200円/1時間
(160時間まで)
代替職員の交通費 新任訪問看護師が同行訪問を行う際の
代替職員に係る交通費
(雇用後6か月間に実施する同行訪問の代替のみ対象)
1,000円/1日
(20日まで)

参照元:東京都福祉局HP

※他県の補助金制度については、各窓口に確認をお願いします。

訪問看護ステーションが補助金を賢く活用するには

訪問看護ステーションが補助金を賢く活用するには

補助金は、国や地方自治体の政策目標に沿った事業や取り組みを、事業者が行う場合に支給されます。

前述の補助金の種類と内容にもあるように、訪問看護ステーションの補助金においても、政策目標に沿った補助金が設定されています。

そのため、訪問看護ステーションが助成金を賢く活用するには、訪問看護における、国や地方自治体の政策目標に沿った取り組みを行うことがポイントとなります。

具体的には、次のような政策目標に基づいた体制変更やスキル強化、機能整備となります。

(1)医療DXによる質の高い医療の実現

医療デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じて、技術や情報を活用し、在宅医療サービスの質を向上させることを目指します。

(2)社会保障制度の安定性と財政の健全化

無駄のない適切な訪問看護ケアを提供し、社会保障制度の持続可能性を確保し、長期的な社会福祉の安定を図ります。

(3)専門性の高い看護師による訪問看護の質の向上

専門的な資格取得や研修を通じて、高度な医療・ケアの提供を目指します。

(4)看護師の業務負担軽減と雇用の維持

事務職を雇用したり、役割を分担するなど看護師の業務負担を軽減し、労働環境の改善を図りながら、雇用を維持し、看護師の働きやすさを確保します。

(5)機能強化と大規模化の推進

訪問看護ステーションの機能を強化し、規模拡大を図りながら、廃業や休止を回避し、地域の医療・ケアニーズに適切に対応します。

(6)24時間対応のニーズに対する即応体制の確保

24時間体制で訪問看護サービスを提供し、緊急なニーズに迅速に対応します。

(7)ターミナルケアの充実

末期患者やその家族に対する心理的・精神的な支援を提供し、安心して最期を迎えられる環境を整えます。

(8)ICT活用による業務の効率化

情報通信技術(ICT)を活用して、業務の効率化や情報共有を促進し、訪問看護サービスの質を向上させます。

まとめ

今回は、訪問看護ステーションにおける国の補助金について、その定義や目的、種類、内容、そして有効な活用方法について紹介しました。

補助金は、国や地方自治体が特定の政策目標を達成するために設定された資金支援制度です。訪問看護ステーションが補助金を有効に活用するには、まず政策目標を把握し、それに適合した取り組みを計画・実施することが不可欠です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

※本記事は、作成時の最新の資料や情報をもとに作成されています。詳細な解釈や申請については、必要に応じて最新情報を確認し、自治体等にお問い合わせください。

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