要支援の利用者への訪問看護:予防訪問看護のサービス内容と注意ポイント

訪問看護の利用者というと 「医療処置が必要な人」や 「がんや神経難病の人」など方々を思い浮かべることが多いかと思います。確かに、病気治療の継続は訪問看護において極めて重要な役割を果たします。

しかし、病気を悪化させないための療養生活を支え、疾患や障がいによる生活の制約を最小限に抑える支援も、訪問看護において極めて重要な役割です。

日常生活は概ね自立しているものの、一部の動作に見守りや介助が必要な要支援1および要支援2の認定を受けた利用者に提供されるのが、予防訪問看護と呼ばれる訪問看護です。

本コラムでは、要支援の方々への訪問看護である「予防訪問看護」をテーマに基本情報からサービス内容、注意ポイントなどをお伝えします。

予防訪問看護とは

予防訪問看護とは

介護予防訪問看護は、要支援1および要支援2に認定された方々を対象に提供されるサービスで、訪問看護ステーション、病院、診療所の保健師、看護師、准看護師が利用者の自宅を訪れ、健康チェック、療養上の世話、または必要な診療の補助を行います。

介護予防訪問看護を利用する際には、地域包括支援センターや委託を受けた居宅介護支援事業所が介護予防サービス計画を策定し、介護予防訪問看護の実施が行われます。

介護予防訪問看護の主な目的は、要介護状態に陥ることを予防し、また状態が悪化しないように身体機能を維持することです。

利用者の日常生活から健康上の課題を特定し、心身の機能を維持または回復させるために、健康管理、疾患予防、リハビリテーション、看護などを提供します。

介護予防訪問看護のサービスの内容

介護予防訪問看護のサービスの内容

介護予防訪問看護では、次のようなサービスを提供します。

1.病状・障害の観察(血圧、体温チェック)

利用者の健康状態を定期的に監視し、血圧や体温などの生命体徴を測定し、異常があれば早期に対処します。

2.清拭・洗髪等による清潔の保持

利用者の身体の清潔を維持し、入浴や洗髪、清拭などの介助を提供し、感染症や皮膚トラブルを予防します。

3.食事及び排泄等日常生活の世話

食事の準備・提供や排泄のサポートを通じて、利用者が日常生活を快適に過ごせるようにします。

4.褥瘡の予防・処置

圧瘡(褥瘡)の予防とケアを行い、皮膚損傷を防ぎます。適切な体位交換やスキンケアが含まれます。

5.リハビリテーション

身体の機能を回復・維持するために、理学療法士や作業療法士と連携し、運動療法や日常生活動作の訓練を行います。

6.ターミナルケア

末期疾患の患者に対して、痛みの管理や快適な最期をサポートする看護と精神的な支援を提供します。

7.認知症患者の看護

認知症患者に対して、特別な配慮と支援を提供し、安全な環境で生活できるようにサポートします。

8.療養生活や家族への介護方法の指導・相談

利用者やその家族に対して、療養生活や介護方法についてアドバイスを提供し、不安や疑問に対応します。

9.人工呼吸器、カテーテル等の医療機器管理

医療機器の適切な使用と管理を行い、人工呼吸器やカテーテルなどの機器に関する看護を提供します。

10.医師の指示による医療処置

医師の診断と指示に基づいて、投薬や傷の処置、点滴などの医療処置を行います。

11.緊急時の夜間や早朝、深夜の対応

緊急の医療ケースや問題が発生した際、夜間や早朝、深夜でも看護スタッフが対応し、安全を確保します。

予防訪問看護の提供例

予防訪問看護の提供例

(1)糖尿病や高血圧などの慢性疾患

慢性疾患、例えば糖尿病や高血圧など、自己管理が充分できない利用者に対して、まずは彼らの療養生活を評価し、介護予防訪問看護計画のもとで、食事、栄養、運動、体重管理などに関する必要なアドバイスやサポートを提供します。

これを通じて、病状の改善や悪化の防止、そして利用者の自己管理能力の向上を目指します。

(2)在宅酸素療法の利用者やリウマチ

在宅酸素療法を受けている患者やリウマチなどの患者に対して、症状のモニタリングを行いつつ、リハビリテーション、薬物管理、療養生活のサポート、そして医療機関との連携を強化するなど、必要な措置を講じます。

予防訪問看護では、訪問看護師が利用者とのコミュニケーションを積極的に行い、利用者の持つ能力を最大限に引き出すアプローチが重要です。

介護予防サービス事業所の指定基準とは

介護予防サービス事業所の指定基準とは

訪問看護ステーションが要支援者に介護予防サービスを提供するためには、介護予防サービス事業者の指定を受ける必要があります。

この指定を受けるために、都道府県知事、政令市市長、中核市市長(以下、「都道府県知事等」と呼称)に対して申請が行われます。

指定訪問看護事業所(訪問看護ステーション)と介護予防訪問看護事業所が同じ場所で統合的に運営されている場合、必要な人員、設備、備品などの要件を満たしていると認められ、一括して指定を受けることが可能です。

ただし、運営規定の変更点や居宅サービス運営規定と同一である旨の誓約書や利用料などを提出する必要があります。

一方で、事務処理の簡素化を図るため、現行のままであれば申請書類を提出しなくてもよい場合があります。ただし、都道府県などによって提出書類の様式や要件が異なることがあるため、管轄部署に確認することがおすすめです。

また、これまで介護予防給付のサービス事業所の指定を受けていない場合、事業者は都道府県知事などに申請を行い、指定を受ける必要があります。指定基準は、従来の訪問看護ステーションの設置基準と同様です。

現行の事業者番号をそのまま使用可能

介護予防サービス事業所の指定は都道府県などが行いますので、既存の事業所に関しては、現行の事業者番号をそのまま使用することができます。

訪問看護と介護予防訪問看護の違いとは

訪問看護と介護予防訪問看護の違いとは

利用者が「要支援」または「要介護」であっても、訪問看護ステーションが提供するサービス内容に差はありません。ただし、要介護の場合は「訪問看護」、要支援の場合は「介護予防訪問看護」という名称が異なります。

さらに、名称の違いだけでなく、訪問看護を提供できるのは「指定居宅サービス事業者」であり、介護予防訪問看護を提供できるのは「指定介護予防サービス事業者」と規定されています。したがって、同じ訪問看護ステーションから訪問が行われても、たとえ同じサービスを提供したとしても、要介護の利用者に対する訪問看護と要支援の利用者に対する訪問看護は、それぞれ異なる事業者が提供したことになります。

なお、医療保険による訪問看護の場合は、「指定訪問看護事業者」という別の指定事業者が関与し、3つの指定事業者が存在することとなります。

介護予防訪問看護の注意ポイント

介護予防訪問看護の注意ポイント

(1)要支援者はターミナルケア加算の対象とはならない

介護予防給付は、要支援者に介護予防を目的として介護予防訪問看護を提供し、自立支援を図るものであり、ターミナルケア加算の対象ではないため、算定できません。

ターミナルケアが必要となる場合は、医療保険の下で特別訪問看護指示書により看護対応が行われることが可能です。

なお、看護・介護職員連携強化加算についても、介護予防給付の対象外となりますが、その他の加算については適用されることがあります。

(2)指定を受けていない訪問は、自費請求になる

介護予防訪問看護の報酬請求には、介護予防サービス事業者の指定が必要です。指定を受けていない場合、訪問看護にかかる費用は自己負担となります。今後もサービスを受けたい場合は、指定申請を急いで行う必要があります。

ただし、医師が急性増悪などを理由に特別訪問看護が必要と判断すれば、要支援者であっても医療保険を通じて訪問看護サービスを提供することができます。

まとめ

訪問看護における予防訪問看護は、要支援1および要支援2の認定を受けた利用者さんに提供される訪問看護の一形態です。通常、訪問看護といえば医療ケアに焦点を当てがちですが、予防訪問看護は療養生活のサポートや生活支援に重点を置き、利用者さんがより健康的な生活を送るためのサポートを提供します。

訪問看護ステーションが介入することで、療養生活や身体状況が改善し、介護予防や重症化の予防に貢献することができます。単に訪問中の支援だけでなく、日常生活で自立を維持するための提案や取り組みが大切です。

>保険外美容医療での看護師独立ストーリー

保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

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