近年、多様化するニーズや高齢化社会の進展に伴い、保険制度の範囲外で提供されるサービスである保険外・自費サービスに注目が集まっています。
訪問看護ステーションにおいても外出時の看護師の付き添いなど保険制度の範囲を超えて、自己負担でのサービスを提供している事業所も出てきています。
今回は、保険外・自費サービスが注目される背景や事例、そして訪問看護ステーションによる保険外・自費サービスの可能性についてお伝えします。
保険外・自費サービスが注目を集める背景
まず近年、保険外・自費サービスに注目が集まっている背景・理由についてお伝えします。
まず近年、保険外・自費サービスが注目を集めるようになった理由や背景ですが、大きくは、以下の4つの要因が挙げられます。
(1)高齢化社会の進展
高齢化が進んだことにより、慢性疾患や認知症などの病気が増加しているため、医療や介護サービスの需要が増加しています。しかし、公的保険制度がカバーしきれない分野が出てきたため、保険外・自費サービスの需要が高まっています。
(2)健康志向の高まり
健康志向が高まったことにより、美容やアンチエイジングなど、健康に関するサービスに対する需要が増加しています。これらのサービスは、公的保険制度では対象外となっていることが多く、保険外・自費サービスとして提供されることが多いです。
(3)個人のニーズや要望の多様化
人々の生活スタイルやライフスタイルが多様化し、個人のニーズや要望が多様化しています。公的保険制度がカバーしきれない分野に対する需要が高まっており、保険外・自費サービスが注目されるようになっています。
(4)医療技術の進歩
医療技術の進歩により、公的保険制度でカバーされている治療方法や手術方法以外の治療方法や手術方法が開発されています。これらの治療方法や手術方法は、保険外・自費サービスとして提供されることが多いです。
以上のような理由により、保険外・自費サービスが注目されるようになっています。
保険外・自費サービスにおける国の方針
次に保険外・自費サービスにおける国の方針についてみていきます。
国は、医療費や介護費の抑制を図るため、自費サービスの広がりを促進する方針をとっています。これは、高齢化社会の進展に伴い、医療費や介護費が増大することに対応するためです。
自費サービスの広がりは、医療・介護サービスの多様化や質の向上にもつながると考えられます。
ただし、自費サービスが広がることにより、経済的負担が増大することや、保険適用外のため、必要な人が利用できないことも懸念されます。
国は、自費サービスが必要な場合でも、適正な価格設定や情報提供などを行うことで、利用者が適切な判断を行えるように支援することが求められています。
また、公的な医療・介護サービスの充実も必要不可欠であり、公的なサービスと自費サービスが相補的に活用されることが求められます。
保険外・自費サービスを提供することの社会的意義とは
上記を踏まえ、保険外サービスを提供することには、以下のような社会的意義があります。
(1)健康や福祉の維持・向上
保険外サービスは、医療保険や介護保険ではカバーされないニーズや、より個別化されたサービスを提供することで、健康や福祉の維持・向上につながります。例えば、看護師による自費の健康相談や介護相談は、患者や家族の不安を軽減し、健康の維持や介護の負担軽減につながることが期待されます。
(2)医療や介護費の負担軽減
医療保険や介護保険に加入していても、自己負担が必要なケースがあります。保険外サービスが提供されることで、負担を軽減することができます。
(3)新しい産業の創出
保険外サービスを提供することで、新しい産業が生まれ、雇用や経済効果を生み出すことができます。看護師が提供する自費の健康相談や介護相談などは、看護師自身が起業して提供することもでき、看護師のキャリアアップや起業の促進にもつながることが期待されます。
(4)高齢化社会におけるニーズへの対応
高齢化が進む現代社会において、医療や介護だけでなく、保険外サービスに対するニーズも高まっています。保険外サービスが提供されることで、高齢者の生活支援や社会参加の促進につながります。
以上のように、保険外サービスを提供することは、健康や福祉の維持・向上、負担軽減、新しい産業の創出、高齢化社会におけるニーズへの対応など、多くの社会的意義を持っています。
訪問看護が保険外サービスを提供する社会的意味
次に訪問看護ステーションによる保険外・自費サービスについてみていきます。
まず、在宅医療の中心的存在である訪問看護ステーションが保険外サービスを提供する社会的意味を整理したいと思います。
(1)ホームヘルスケアの強化
訪問看護が提供する保険外サービスによって、在宅での医療や介護がより一層強化されます。これによって、患者や高齢者が自宅で暮らし続けることができ、病院や施設への入院や通院が減少します。
(2)早期発見・早期介入の促進
訪問看護が提供する保険外サービスによって、早期発見・早期介入が可能となります。例えば、口腔ケアや健康相談、健康チェックなどが含まれます。これによって、疾患の進行を防止し、医療費や介護費の抑制につながります。
(3)地域医療・介護の支援
訪問看護が提供する保険外サービスによって、地域医療・介護の支援が可能となります。これによって、地域医療・介護の充実が進み、地域社会全体の医療・介護レベルの向上につながります。
(4)患者や家族の負担軽減
訪問看護が提供する保険外サービスによって、患者や家族の負担が軽減されます。例えば、看護師の付き添いや身体介護の提供などが含まれます。これによって、患者や家族が安心して暮らせる環境が整備され、QOL(生活の質)が向上します。
以上のように、訪問看護が提供する保険外サービスには、患者や地域社会、医療・介護費の抑制など、多くの社会的な意味があります。
現在、訪問看護ステーションで提供されている保険外・自費サービス
では現在、一部の訪問看護ステーションで提供されている保険外・自費サービスについてみていきます。
現状では、医療依存度の高い利用者に対しての看護師の付き添いなどの自費サービスの提供が中心となっています。
(1)医療機関の受診
外出先での医療機関の受診に際して、病状や医療機器の取り扱いに不安がある場合などに、看護師が付き添い、安心して受診できるようにサポートします。
(2)行事やイベントへの参加
介護が必要な人が、外出先での行事やイベントなどに参加する場合に、身体介助や看護ケアを行う看護師が付き添い、安全かつ快適な外出をサポートします。
(3)旅行や帰省
介護が必要な人が、旅行や帰省などで長時間の移動をする場合に、看護師が付き添い、薬の管理や体調管理、排泄ケアなどを行い、安全かつ快適な旅行をサポートします。
今後、予想される在宅療養における疾患別の自費・保険外サービスとは
では、今後在宅療養において需要が高まると予想される保険外・自費サービスとは何でしょうか。
今後出てくるであろう疾患別の自費サービスについては、以下のようなものが予想されます。
(1)糖尿病やメタボリックシンドロームに関するサービス
食事指導や運動プログラム、血糖値管理などを含めた糖尿病やメタボリックシンドロームに関するサービスが求められます。
(2)骨粗鬆症や関節痛などの骨・関節疾患に関するサービス
運動療法や栄養指導、自宅でのストレッチやエクササイズなどのプログラムが求められます。
(3)心臓疾患や高血圧に関するサービス
運動療法や食事指導、ストレスマネジメント、血圧管理などを含めた心臓疾患や高血圧に関するサービスが求められます。
(4)癌や免疫力低下に関するサービス
食事指導、運動療法、心理支援、免疫力アップのためのプログラムなどが求められます。
(5)精神疾患に関するサービス
認知行動療法やメンタルヘルスサポート、生活習慣改善などが求められます。
これらの自費サービスは、疾患別に特化したケアやリハビリを提供するものであり、疾患を予防したり、早期発見・早期治療を行うことにつながると考えられます。
訪問看護ステーションが保険外サービスを取り入れるメリット
次に経営的な視点からの訪問看護ステーションのメリットについてお伝えします。
訪問看護ステーションが保険外サービスを取り入れることには、以下のようなメリットがあります。
(1)収益の増加
保険外サービスは、保険による収益以外の収益源となります。特に、高齢化社会においては、保険外サービスの需要が高まっているため、収益の増加が期待できます。
(2)顧客満足度の向上
保険外サービスを提供することで、訪問看護ステーションの顧客満足度を向上させることができます。顧客は、自分に合ったサービスを求めており、保険外サービスを提供することで、顧客のニーズに合ったサービスを提供できます。
(3)競争力の向上
訪問看護ステーションには、同業者との競争が存在します。保険外サービスを提供することで、他社との差別化を図り、競争力を高めることができます。
(4)職員のモチベーションの向上
保険外サービスの提供により、職員のスキルアップややりがいを向上させることができます。また、訪問看護ステーションの収益増加により、職員の待遇改善なども可能になります。
(5)事業の多角化
保険外サービスを提供することで、訪問看護ステーションの事業が多角化され、リスク分散が可能になります。
訪問看護ステーションによる保険外・自費サービスのデメリットと注意点
訪問看護ステーションが保険外サービスを取り入れる際には、以下のようなデメリットや注意点が考えられます。
(1)経営リスクの増加
保険外サービスを提供することで、訪問看護ステーションの業務内容が多様化するため、新たな人材の採用や設備投資などのコストが発生し、経営リスクが増加する可能性があります。
(2)法的規制の問題
保険外サービスには医療行為に該当するものがあるため、法的規制に抵触するリスクがあることに留意する必要があります。
(3)顧客の選別
保険外サービスは、本来の訪問看護サービスとは異なり、特定の顧客層に需要があることが多いため、適切なマーケティング戦略を立てる必要があります。また、保険外サービスを利用できる顧客層が限られることから、一定の収益が見込めるかどうかを慎重に検討する必要があります。
(4)医療従事者の職能としてのアイデンティティーの低下
保険外サービスを提供することで、医療従事者の職能としてのアイデンティティーが低下する可能性があります。訪問看護ステーションが提供するサービスは、医療従事者の社会的評価にも影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
(5)医師による診断と指示の確認
訪問看護師が保険外で提供する看護は、基本的には医師による診断と指示が必要です。そのため、訪問看護師が保険外の看護ケアを提供する前には、主治医による訪問看護指示書を取得する必要があります。
ただし、保険外の看護ケアを提供する場合、訪問看護指示書を書いてもらえないこともあります。その場合は、訪問看護師が医師に相談し、必要な看護ケアを提供することになります。
訪問看護の保険外、自費サービスの料金設定で注意すべきこと
訪問看護の保険外、自費サービスを提供する場合には、適切な料金設定が必要です。以下に注意すべきポイントをいくつか挙げます。
(1)市場価格の調査
自費サービスを提供する場合には、競合他社の価格や市場価格を調査することが重要です。その上で、自社の特徴や付加価値を考慮し、適切な価格を設定する必要があります。
(2)費用の内訳の明確化
料金設定の際には、提供するサービスの内容に応じた費用の内訳を明確化し、利用者に対して説明することが大切です。料金設定が透明であることで、利用者からの信頼を得ることができます。
(3)サービスの品質に見合った価格設定
提供するサービスの品質に見合った価格設定を行うことが重要です。安い料金で提供することで、サービスの品質が低下することや、サービス提供者の収益が損なわれることがあるため、適切な価格設定が必要です。
(4)契約書の作成
利用者との間で契約を締結する場合には、契約書を作成することが望ましいです。契約書には、サービスの内容や料金、利用条件、キャンセルポリシーなどを明記することが必要です。
以上のように、適切な料金設定を行うことで、利用者からの信頼を得ることができ、サービス提供者の収益も確保することができます。
まとめ
今回は、保険外・自費サービスが注目される背景や事例、そして訪問看護ステーションによる保険外・自費サービスの可能性についてお伝えしました。
保険制度では対応しきれない患者や利用者のニーズに対応するために必要であり、患者や利用者の選択肢を広げることで、自己決定権を尊重し、生活の質を向上させることができます。
もちろん費用負担の問題やサービスの質の均一性など、いくつかの課題もあります。
今後、保険外・自費サービスの導入を検討される訪問看護事業者の参考になれば幸いです。
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