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看護師の採用を後押しする“小規模”訪問看護ステーションの新人研修づくりとは

訪問看護ステーションの成長において最も重要な要素のひとつが看護師の採用です。最近では在宅医療介護の需要が急増し、それに伴い訪問看護の依頼も増大しています。

しかしながら、看護師の採用がスムーズに進まないことが原因で依頼に対応できず、売り上げや信用に影響し、ステーションの成長を妨げることがあります。

採用を成功させるためには、看護師の応募を促すために欠かせない、未経験の看護師を育成できる新人研修を整備し、訪問看護を志望する看護師が安心して入職できる環境を整える必要があります。

しかし、訪問看護師を育成する新人研修の整備は、小規模の訪問看護ステーションには負担が大きく、経営者や管理者にとって悩みの種となっています。

このコラムでは、新人研修が訪問看護ステーションの採用に有利な理由、研修方針について説明した上で、小規模の訪問看護ステーションがコストや労力の負担を少なくして、効果的な研修を提供するための方法を解説します。

新人研修が訪問看護ステーションの採用に有利な理由

新人研修が訪問看護ステーションの採用に有利な理由

新人研修が整っている訪問看護ステーションは、看護師採用に有利となる理由を訪問看護未経験の看護師が、充実した新人研修を提供している訪問看護ステーションを選ぶ背景からみていきましょう。

未経験の看護師が、訪問看護ステーションの新人研修が整っている場所を選ぶ背景には、未経験の看護師は初めての訪問看護に関して多くの不安や期待を抱えており、新人研修がこれらの不安や期待に対応してくれると考えているからです。

以下に、未経験看護師の不安や期待、そして新人研修がそれらにどのように対応するかを項目ごとに詳しく説明します。

1. スキルと経験の不足

未経験看護師は、医師や経験豊富な同僚看護師のサポートが限られる状況でケアを提供しなければならないことに不安を感じます。新人研修が整備されたステーションでは、必要なスキルと知識を習得できるため、自信を持って訪問看護に取り組むことができます。

2. 急変時の対応

訪問看護では利用者の状態が急変する可能性があるため、未経験看護師は急変時に対処できるかどうか不安を抱きます。新人研修では、急変時の適切な対処方法を学ぶことができるため、安心感を醸成できます。

3. 利用者や家族との関係構築

未経験看護師にとって利用者やその家族との適切な関係構築ができるか不安となることがあります。新人研修で在宅環境でのコミュニケーションスキルと適切な振る舞いを学ぶことができるため、自信を持つことができます。

4. 多職種連携

医療機関や他の関連機関との連携が不慣れな未経験看護師にとってそれは不安の要因となります。新人研修のカリキュラムに、連携先の特性や協力方法の習得が含まれていることで、看護師の不安を軽減できます。

5. 車移動

訪問看護の車移動に不安を持っている看護師もいます。新人研修で車の運転や移動経路に関するトレーニングを提供することで、看護師の不安を軽減します。

6. 良質なケア

新人研修が確立されているステーションは、良質な看護ケアを提供していることが多く、これは向上心のある看護師にとって魅力的な職場として期待されます。

7. キャリアアップ

訪問看護領域で将来のキャリアアップに対する期待を持つ看護師も多くいます。ステーションが新人研修を通じてキャリアの成長に貢献することを示すと、看護師のモチベーションが向上します。

8. 実地実習とメンターシップ

新人研修プログラムには、実地実習やメンターシップが含まれることが多く、経験豊富な看護師からの適切な指導と協力が行われます。これにより、未経験の看護師は訪問看護の現場でも安心して業務に取り組むことができ、実践的な経験を積む機会が提供されます。

以上のような背景から、訪問看護を志望する看護師は、未経験でも安心して働くことができ、期待に応えるための新人研修が整っている訪問看護ステーションを選択する傾向が多くなっています。

新人研修が訪問看護ステーションの求人市場での競争力を高めことにつながり、看護師採用に圧倒的に有利となります。

このことから小規模の訪問看護ステーションが安定的に看護師を採用するためには、採用に有利となる新人研修を整備し、看護師募集の際に詳細に提示する必要があります。

訪問看護ステーションの新人研修における教育方針の考え方

訪問看護ステーションの新人研修における教育方針の考え方

小規模の訪問看護ステーションであっても新人研修を作るにあたり、新人研修における教育方針を考える必要があります。

1. 個別性

新人看護師の経験やバックグラウンドに応じて、必要なスキルを習得できるようにします。

2. 専門知識と看護技術の習得

新人看護師には、訪問看護の専門知識と看護技術を習得させます。これにはアセスメント、看護計画、症例別のケア、服薬管理、ターミナル、家族支援などが含まれます。

3. 安全性と品質の理解

訪問看護ステーションは高品質で安全なケアを提供する必要があります。新人看護師には感染管理など安全な訪問看護のプロセスを学ぶことも重視し品質を向上させます。

4. コミュニケーションスキルの習得

新人看護師には効果的なコミュニケーションスキルを向上させるトレーニングを提供し、利用者やその家族との信頼関係を築き、情報の共有を円滑に行えるようにします。

5. 在宅ケアの実践経験

新人看護師には、実際の利用者宅での在宅ケア実践経験を積む機会を提供し、訪問看護特有の課題に適応するスキルを磨きます。

6. チームでの連携の実践

小規模ステーションであっても、医療機関や他の事業所との協力が必要です。新人看護師にはチームでの連携スキルが身につくように指導します。

7. 組織文化への適応

新人研修で訪問看護ステーションの文化と価値観を浸透させます。

8.リスクマネジメントの理解と対策

訪問看護におけるリスクを理解し対策に活かせるように指導します。

9. 評価とフィードバック

新人看護師の成長を定期的に評価し、フィードバックします。必要に応じて個別指導を行い、成長をサポートします。

組織の規模に関係なく、訪問看護ステーションにおける新人研修方針は、高品質な訪問看護ケアを提供するための基盤を築く役割を果たします。

小規模の訪問看護ステーションの求人活動において、新人研修の方針の明示は、求職中の看護師を引きつける要素となります。

小規模の訪問看護ステーションの新人研修の提供方法

小規模の訪問看護ステーションの新人研修の提供方法

訪問看護ステーションが新人研修の方針を明確にし、未経験看護師を育成する研修を提供することは、看護師採用において優位性を高める要素となります。

しかし、訪問看護事業所の多くは小規模であり、新人研修に割けるコストや労力には限界があることから、訪問看護師の育成~採用力の強化が手薄になっているステーションも少なくありません。

では、小規模経営の訪問看護ステーションは、新人研修に対してどのような取り組みをおこなえばいいのでしょうか。

効果的な研修プログラムを作成するには、まず必要な研修を分類し体系化すること、そしてそこに最適な実施方法を組み合わせていくことが大切です。

訪問看護ステーションの効果的な新人研修には、以下の7つの項目を組み合わせる必要があります。

(1)座学

訪問看護ステーションの新人研修における座学は、理論的な知識や基本的な看護スキルを習得し、訪問看護の実践に備える要素として重要です。

1. 訪問看護の基本知識

2. 訪問看護の制度の理解

3. 訪問看護の各種疾患管理

4. 安全管理と感染症対策

5. コミュニケーションスキル

6. 法的規制と倫理

7. シミュレーション演習

8. 評価と振り返り

入職後期間を定めて、訪問看護の基礎知識とスキルを習得し、安全で効果的な看護ケアを提供できるよう座学のスケジュールを組みます。

(2)OJT(On the Job Training)

訪問看護ステーションの新人研修では、一般的な知識とスキルの習得だけでなく、実地での経験を通じたOJT(On the Job Training)が非常に重要です。

1. 基本姿勢

2. 訪問における基礎知識

3. 各種疾患ごとのケア方法

4. 報告・相談・連携方法

5. 同行訪問

6. 訪問時のマナー

7. 訪問時のコミュニケーション

8. 意思尊重

9. 指導助言

10. 予防

11. 地域の理解

12. 情報管理

同行訪問など実践教育を通じて訪問看護ステーションでの実務を遂行するために必要なスキルと知識を習得します。

(3)各種マニュアル

訪問看護ステーションの新人研修を各種マニュアルを活用して行う方法は、訪問看護師のスキル向上とステーションの効果的な業務遂行に役立ちます。

1. 感染症マニュアル

2. 災害事業所マニュアル

3. ステーション運営マニュアル

4. ターミナルケアマニュアル

(4)外部研修

訪問看護ステーションの新人研修において、外部研修は訪問看護の専門性を高める効果があります。

1. 地域の大学や看護学校のカリキュラム

2. 専門的なセミナーや研究会

3. トレーニングプログラム

4. 病院や医療施設の研修

5. 専門家からのコンサルテーション

新人研修のプログラム策定など全て自前で行うとなるとステーション内のスタッフやリソースに負担がかかりますが、外部研修を導入することで、ステーション内のこれらの負担を軽減し、高度な研修を提供できます。

(5)Web研修

訪問看護ステーションのWeb研修は、新人看護師がオンラインで学習し、訪問看護の専門知識とスキルを習得するためのカリキュラムです。Web研修は場所や時間に縛られず、オンラインでアクセスできる環境だけあれば、新人看護師が自分のペースで学習できます。

1. 基本看護スキル

2. 看護師の倫理と法的責任に関する知識

3. 利用者のプライバシーと権利の尊重

4. ケアプランの理解と管理

5. 利用者の状態のモニタリングと記録

6. 特殊なケアスキルトレーニング

7. コミュニケーションの理解

8. チーム内でのコラボレーションと連携

9. 訪問看護の書類に関する知識

10. 緊急事態への対応

11. 法的規制と規制遵守

12. 個人情報保護法や医療倫理に関する知識

交通費などの経費が削減でき、訪問看護ステーションの特徴に合わせて必要な研修プログラムのみを選択して受けることができるためのコスト削減になります。また、繰り返しの視聴が可能なコンテンツもあるため、復習や忘れにも役立ちます。

(6)書籍

訪問看護ステーションの新人研修に使用できる書籍が多く出版されています。書籍は、基本的な知識の提供から専門的な情報の獲得まで多くの役割を果たします。ステーション内でのトレーニングプログラムを補完し、看護師の継続的な学習とスキル向上を支援する重要なツールとして活用できます。

1. 訪問看護の基本原則

2. ケアのスキル

3. 法的規制と倫理

4. 疾患管理

5. 継続的な専門的成長

学びたいトピックに合わせて書籍を選択でき、一度購入すれば複数の看護師が活用できるため、ステーション内のリソースを節約できます。また看護師に疑問や課題が発生した際に、書籍からアドバイスやガイダンスを得ることができます。

(7)SNS

SNSによる新人研修は、訪問看護ステーション内でSNSプラットフォーム(例:ライン、チャットワーク、フェイスブックなど)により、オンライン上でコミュニケーションをとり、情報共有が行えるような研修スタイルです。

1. 助言やフィードバック

2. 情報共有

3. オンライントレーニングコンテンツ

SNSによる新人研修は、症例に対するケアの助言がリアルタイムにできるため、新人看護師の安心につながります。また、SNSを導入することで、新人看護師やスタッフ間の連帯感と協力精神が高まり、組織内の連携が強化されます。ステーション自体も症例に対する助言の情報が蓄積できるための、組織の貴重な財産ができます。

SNSの使用においてはプライバシーとセキュリティに注意を払い、適切なアクセス制御を確保することが重要です。

新人研修の項目ごとのコストと指導者の労力

指導者の労力 コスト
(1) 座学 中程度
(2) OJT 中程度
(3) 各種マニュアル
(4) 外部研修 中から低
(5) Web研修 中から低 中程度
(6) 書籍
(7) SNS

小規模の訪問看護ステーションの新人研修 参考例

小規模の訪問看護ステーションの新人研修 参考例

上述の方法を組み合わせることで、小規模経営の訪問看護ステーションが労務やコスト負担を最小限に抑えつつ、効率的かつ効果的な充実した新人研修の提供を可能となります。

さいごに小規模の訪問看護ステーションの新人研修を、1年間程度と想定した場合の習得内容とスケジュール、研修の提供方法の参考例をご紹介します。

訪問看護ステーションの新人研修01

訪問看護ステーションの新人研修02

訪問看護ステーションの新人研修03

訪問看護ステーションの新人研修04

(1)入職から3ヶ月~

・入職から3ヶ月程度は、基本姿勢、コミュニケーション、理念・組織体制の調和と実践、マナー・接遇を習得します。


(2)入職から6ヶ月~

・入職から6ヶ月程度で、情報収集・アセスメント、看護計画→看護実践→評価→計画修正→看護記録作成を習得します。


(3)入職から9ヶ月~

・入職から9ヶ月程度で、家族支援、緩和ケア、医療的ケアの実践を習得できるように努めます。


(4)入職から12か月~

・入職から12か月程度で、多職種連携、リスク対策、個人情報保護・倫理的配慮、業務の法的根拠と制度の理解を深めます。


(5)3ヶ月ごとに

さらに、3ヶ月ごとに新人看護師の成果と成長を評価し、看護師が次のスキル習得に挑める後押しをします。

このように、1年間のスケジュールで新人研修プログラムを設計することで、新人看護師は必要な知識とスキルを段階的に習得し、訪問看護のプロフェッショナルとしての自信を少しづつ築くことができます。

さらに定期的な評価を組み込むことで質の向上が実現し、看護師採用の競争力を向上させることができます。

また座学、OJT、各種マニュアル、外部研修、Web研修、書籍、SNSの7つの項目を適切に組み合わせることで、コストと労力を最小限に抑えつつ、良質で網羅性のある新人研修を作ることができます。

まとめ

近年、訪問看護ステーション自体の数が格段に増えたことから、訪問看護が未経験でも安心して就業でき、充実した新人研修が用意されている訪問看護ステーションに人気が集まる傾向が年々強くなっています。

安定的に看護師を採用するために、新人研修を整備し、看護師募集の際に詳細に紹介する必要があります。

小規模の訪問看護ステーションであっても、工夫次第で看護師採用に寄与する新人研修を作ることができます。

小規模の訪問看護ステーションが新人研修プログラムを整備するためには、研修の方針を明確に定め、研修内容とスケジュールを計画し、座学、OJT、各種マニュアル、外部研修、Web研修、書籍、SNSの提供方法を組み合わせて、コストや労力を最小限に抑えることが非常に重要です。

今回の記事が小規模の訪問看護ステーションの看護師採用に効く新人研修づくりの参考となれば幸いです。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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