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訪問看護の訪問時の流れと利用者宅で注意すべきポイント

訪問看護の大切な役割は、利用者の健康と生活の質を向上させることです。そして利用者宅で提供されるケアは、細やかな気配りと専門知識が要求されるものです。

訪問看護の訪問時の流れや利用者宅での注意点を理解することは、質の高いケアを提供するための重要なステップです。本コラムでは、訪問時の流れと利用者宅での注意すべきポイントについて解説します。

訪問看護に興味のある看護師さんはぜひ参考にしてみてください。

1.訪問時の入室の流れ

1.訪問時の入室の流れ

(1)玄関先での対応

上着ややレインコートは、玄関の外で脱ぎましょう。雨の日には濡れた合羽をタオルで拭いて袋に入れるなど家の中を汚さないように、注意が必要です。

(2)ノックやチャイムで来訪を知らせる

インターフォンやチャイムを押す際には、1度だけ押して、しばらくの間、応答を待つようにしましょう。高齢者の方は行動に時間がかかることがありますので、焦らずに待つことが大切です。何度も急いで押すのは避けましょう。

通常は、チャイムを鳴らしてから利用者がドアを開けるのが一般的です。ただし、オートロックのマンションでは外チャイムを鳴らして入り、内チャイムを鳴らさない場合や、独居の方で玄関まで出られない場合は、キーボックスの鍵を出しチャイムを鳴らしてから鍵を開けて入るなど、家の入り方は利用者や家族と相談して決めましょう。

(3)適切な挨拶を心掛ける

「お邪魔します」「こんにちは」といった明るい挨拶を心掛けます。

「お邪魔します」「こんにちは」といった明るい挨拶を心掛けます。

ご近所に訪問看護の利用を知られたくないなど場合によっては大きな声がそぐわないこともありますので、近隣に配慮して短い挨拶をしてから関に入って扉を閉めましょう。

(4)靴を整えて入室

利用者のお宅にお邪魔するので、社会的なマナーが求められます。靴は揃えて置き、邪魔にならないようにします。

靴を脱ぐ時は、正面を向き、玄関に上がったら、利用者や家族に完全に背を向けないようにしながら靴を揃え、下駄箱のない側の端に寄せ、他の来訪者や、下駄箱の利用の邪魔にならないようにします。

スリッパは勝手に使わず、使用を促されてから履かせていただきます。

(5)自己紹介とケアの説明をおこなう

室内に入ったら、利用者や家族に名刺や名札を見せ、「◯◯訪問看護ステーションの◯本◯子です。」と明るい笑顔で自己紹介します。挨拶の後、本日のケア内容を説明します。

(6)手洗いを忘れずに

ケアの前後には必ず手を洗い、外部からの雑菌を持ち込まないように気を付けましょう。「手を洗ってもよろしいですか?」と確認し、利用者や家族の了承を得て手洗いを行います。

ケアの前後には必ず手を洗い、外部からの雑菌を持ち込まないように気を付けましょう。

石けんや洗面所が利用できない場合は、予め、石けんや手指消毒剤などを用意しておきます。

(7)利用者の居室へ

案内に従って、利用者の居室に進入します。畳の部屋に足を運ぶ際には、スリッパを外し、つま先を居室の外に向けて整えます。敷居や畳の縁は踏まないように気を付け、また、仏壇の前には荷物を置かないように配慮しましょう。

2.コミュニケーションをとりながら問診&アセスメント

コミュニケーションをとりながらアセスメント

訪問時には、必ず血圧や脈拍などのバイタルチェックを行い、その後全身をアセスメントします。手技は病棟と同じですが、ポイントは療養者とコミュニケーションを取りながら行うことです。

療養者の過ごした1週間の生活状況を尋ね、情報を収集することで、その後のケアや療養指導に役立てていきます。

(1)バイタルチェックと会話

訪問時には、血圧や脈拍などのバイタルチェックを行いますが、同時に利用者と楽しく会話をしながら行うことが大切です。例えば、「お昼ごはんは何を食べましたか?」などの質問を通じて、利用者の生活に関する情報を収集します。

(2)酸素飽和度と脈拍の測定

利用者の健康状態を評価する中で、酸素飽和度(SpO2)と脈拍の測定も重要な要素です。ただし、これは単なる数値を得るだけでなく、利用者に理解しやすく説明することが大切です。

例えば、「酸素飽和度は98%で、酸素の状態は十分ですね!」など、数字に対する意味を分かりやすく伝えながら利用者と情報を共有していきましょう。

(3)聴診

利用者の健康状態を評価するために、胸や背中、腹部の音を聴診します。通常と異なる音がしないかを確認することで、身体内部の状態を把握します。

(4)体温の計測

体温は健康状態の指標の一つです。利用者には自身で体温を計ってもらいながら、同時に手つきや動きも観察します。これによって、利用者の運動能力や体調の変化をチェックすることができます。

(5)視診と触診

皮膚の状態や傷、浮腫などを視覚的に確認し、触れて感じることで状態を把握します。判断に迷う場合は写真を撮影し、上司に相談することもあります。この際にも利用者に不安を与えないよう、「ちょっと確認させていただきますね。」と明るく電話することが大切です。

3.生活のケア

訪問看護師は利用者の個別のニーズを理解し、信頼関係を築きながらケアを提供します。

食事や排泄のお手伝い、居住空間の整頓、肌のお手入れ、むくみのケア、薬の管理など、日常生活のあらゆる側面をサポートします。また、リハビリテーションの支援も行うことがあります。訪問介護員との協力が不可欠な連携ポイントとなります。

(1)食事のケア

1.食事状況のアセスメント

訪問看護師は利用者とのコミュニケーションを通じて、利用者の食事内容や嚥下の問題などを詳しく聞き取ります。その後、栄養士と連携して利用者の食事プランを検討し、適切なアドバイスを提供します。

2.食事環境の整備

利用者の生活状況や身体能力を考慮しながら、食事の環境を整えます。必要であれば、高さ調節可能なテーブルや食事補助具の提供を行い、利用者が快適に食事を摂れるようサポートします。

3.調理法の工夫

食べる能力が低い方が通常の食事を摂る場合、誤嚥の危険性がある一方、食べる能力の高い方が常にとろみをつけた食事を摂ると、嚥下機能の低下を引き起こす可能性があります。

アセスメントの結果、現在の調理法が適切でないと判断された場合には、嚥下機能に合った調理法を提案し、利用者に適した食事を提供するよう心がけましょう。

4.口腔ケア・マッサージ

利用者の口腔ケアについて指導し、食事後には口内清掃を行います。また、嚥下(えんげ)が難しい場合には、利用者と一緒に嚥下トレーニングや口腔マッサージを行い、食事の楽しみをサポートします。

(2)排泄ケア

訪問看護師は利用者のプライバシーを尊重しながら、排泄に関するサポートを提供します。利用者の意向を確認し、トイレの移動や排泄の介助を行います。利用者が安心して排泄できる環境を整えることを心掛けます。

(3)スキンケア

利用者の皮膚の状態を評価し、清潔保持と保湿を行います。特に圧痕(うつぶせん)予防のために、体位変換やマッサージを実施します。利用者の快適さと皮膚の健康をサポートします。

(4)浮腫のケア

浮腫(むくみ)のある利用者に対しては、適切なケアを提供します。利用者の浮腫の程度を確認し、運動や位置の変更、マッサージなどを通じて浮腫の軽減を図ります。

浮腫(むくみ)のある利用者に対しては、適切なケアを提供します。

(5)移動・移乗サポート

訪問看護師は利用者の身体能力を評価し、適切な移動や移乗のサポートを行います。利用者が安全に動けるように正しい姿勢や歩行器の使用法を指導し、転倒やけがのリスクを軽減します。

(6)服薬サポート

薬の正しい摂取が健康管理に重要です。訪問看護師は利用者に対して薬の説明や飲み方の指導を行います。

服薬カレンダーなどによる薬の管理や記録のサポートを通じて、利用者が安全に正確な服薬ができるよう支援します。

また、服薬カレンダーなどによる薬の管理や記録のサポートを通じて、利用者が安全に正確な服薬ができるよう支援します。

4.医療処置・医療機器の確認

医療処置・医療機器の確認

訪問看護においては、さまざまな医療処置や医療機器の確認が重要な役割を果たします。例えば、褥瘡(じょくそう)の処置や吸引、気管カニューレの管理、呼吸器のケアなど、利用者の健康状態を維持するために欠かせない処置を行います。

特に褥瘡の処置は、長時間の寝たきりや圧迫によって皮膚が損傷するリスクがあるため、定期的な検査や処置が求められます。吸引や気管カニューレ、呼吸器の管理は、呼吸に関わる重要な処置であり、正確な手順と注意が必要です。

医療機器の確認

また、皮膚トラブルなどの合併症が起きていないかを確認することも重要です。病気やケアによって生じる可能性のある問題を早期に発見し、適切な処置を行うことで、利用者の健康を維持する手助けを行います。

さらに、利用者や家族が適切に処置を行えるかどうかも確認の対象です。適切な指導やアドバイスを通じて、利用者や家族が自己ケアを行う際のサポートを提供します。訪問看護の役割は、医療処置や医療機器の管理だけでなく、利用者の健康と生活全般を支えることにあります。

5.療養指導

療養指導

訪問看護における療養指導は、療養者の健康をサポートする重要な役割を果たします。この指導の過程では、療養手帳などの情報を基に、療養者の日常生活において改善できる点を提案します。

大切なのは、医療を一方的に押し付けるのではなく、療養者自身が積極的に関与し、健康の向上に向けて行動できるようにすることです。話をしながら、療養者の考えや意識を尊重し、共に目標を設定していきます。療養者が自身の状態やニーズを理解し、主体的に参加することで、より効果的な療養が可能となります。

工夫次第で、療養者が自らの生活スタイルや習慣を見直し、健康への取り組みを行えるように促すことができます。療養指導は、医療知識だけでなく、コミュニケーションスキルやサポートの方法を熟知し、療養者との信頼関係を築きながら行われる重要な活動です。訪問看護師は、療養者がより充実した生活を送る手助けを通じて、地域の健康と福祉に貢献する存在としての役割を果たします。

6.訪問終了~退去

訪問が終わったら、療養者が後で困ることやけがをしないよう、物品と環境を元通りに戻します。

(1)元の状態に戻す

訪問が終わったら、療養者が後で困ることやけがをしないよう、物品と環境を元通りに戻します。物品の位置も正確に戻すよう気をつけましょう。

利用が終わった後は、元の状態に戻すのが基本ですが、各家庭で異なるルールが存在します。ゴミの処理方法やにおいの注意も、家庭ごとに工夫が異なることがあります。そのご家庭固有の方法を教えていただき、しっかりと覚えていきましょう。

(2)挨拶をして退去

次回の訪問日とその前までに注意すべきポイントを確認し、最後には「ありがとうございました!」と明るい挨拶をして退去します。

訪問が終わって退出する際には、上着は玄関ドアを閉めた後に羽織ります。もし「寒いから中で着て行って」と利用者さんから声がかかれば、そのお言葉に従って行動しましょう。

まとめ

今回は、訪問看護の訪問時の流れと利用者宅での注意ポイントについてお伝えしました。

訪問看護の訪問先は、療養者の住まいであり、病院のケアとは大きく異なります。そのため看護技術だけでなく、コミュニケーション能力や社会的なマナーが非常に重要です。

訪問看護師の役割は、利用者がその人らしい生活を維持できるよう支援することです。医療的なケアはもちろんのこと、利用者の日常生活全般にわたるニーズを考慮することが求められます。そのためには、利用者との信頼関係を築きながら、彼らの声に耳を傾けることが不可欠です。

今回の記事が、訪問看護に興味を持つ看護師の方々にとって有益な情報となれば幸いです。

参考文献:ナースのためのやさしくわかる訪問看護

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石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

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