訪問看護師が知っておきたい!利用者との信頼関係を構築する「カウンセリングマインド」

訪問看護は、ただ単に医療行為を行うだけでなく、利用者の希望や思いを傾聴し、心身の状況や生活環境を丁寧に評価したうえで、最適な看護を提供します。

そのため、訪問看護師には専門的な知識や技術に加え、利用者一人ひとりに寄り添い、理解しようと努める「カウンセリングマインド」が求められます。

今回は、訪問看護において利用者や家族との信頼関係を築く際に必要となる「カウンセリングマインド」の重要性と具体的な要素についてお伝えします。

カウンセリングマインドとは

カウンセリングマインドとは

カウンセリングマインドとは、心理カウンセリングや支援的な対話で大切な態度やアプローチのことです。

単なるアドバイスや情報提供だけでなく、相手の気持ちや立場に共感し、対話を通じて深く理解し支援する姿勢を指します。

カウンセリングマインドを持つことで、を持つことで、対話がより効果的になり、相手の自己理解や問題解決能力を促進することができます。

訪問看護師にカウンセリングマインドが求められる理由

訪問看護師にカウンセリングマインドが求められる理由

看護師の仕事は、利用者さんとの「出会い」から始まり、「出会い」と共に終わる、まさに人と人との繋がりそのものであると言えるでしょう。

そして、その関係構築において最も重要な要素は、「相手の立場に立つこと」です。

特に訪問看護師は、利用者さんの自宅というプライベートな空間に訪問し、密接な関係を築きながらケアを提供します。

そのため、利用者さんやご家族にとって、訪問看護師は単なる医療従事者ではなく、生活の一部になくてはならない存在となります。

しかし、訪問看護を利用する方々は、病気や障がい、高齢などにより、心身ともに脆弱な状態にあることが多く、不安や孤独、悩みを抱えているケースも少なくありません。

こうした状況下において、訪問看護師は単に医療行為を行うだけでなく、利用者さんの声に真摯に耳を傾け、共感し、支える存在となることが求められます。

そのためには、専門的な知識・技術はもちろんのこと、利用者さんの視点に立って考え、共感を示し、信頼関係を構築する「カウンセリングマインド」が不可欠となります。

カウンセリングマインドの具体的な要素とは

カウンセリングマインドの具体的な要素とは

カウンセリングマインドは、以下の要素によって構成されます。

(1)共感力

利用者の言葉や表情、態度から真意や想いを理解し、共感する力です。単に話を聞くだけでなく、共感を示すことで、利用者は安心して本音を語り、支えられていると感じることができます。

(2)受容力

利用者の置かれている状況や価値観をありのままに受け入れる力です。批判や否定をせず、尊重することで、利用者は安心して自分自身を表現することができます。

(3)傾聴力

利用者の話を最後まで集中して聞き、理解しようとする力です。途中で話を遮ったり、自分の意見を述べたりせず、じっくりと耳を傾けることで、利用者との深い信頼関係を築くことができます。

(4)自己一致

自分の価値観や考え方に基づいて、一貫した態度で接する力です。言動が一致していないと、利用者は不信感を抱いてしまいます。常に誠実で真摯な態度で接することが重要です。

(5)柔軟性

利用者一人ひとりの個性や状況に合わせて、臨機応変に対応する力です。決めつけや押し付けではなく、利用者のペースに合わせて寄り添うことが大切です。

(6)自己研鑽

常に新しい知識や技術を学び、自身のスキルを磨き続ける姿勢です。カウンセリングに関する知識や技術を習得することはもちろん、自身のコミュニケーション能力や人間性を向上させる努力も必要です。

訪問看護師がカウンセリングマインドを育むために必要となる基本姿勢とは

訪問看護師がカウンセリングマインドを育むために必要となる基本姿勢とは

では、訪問看護においてカウンセリングマインドを実践、育むためにする上で心掛けたい基本姿勢についてみていきます。

訪問看護の利用者に対する基本姿勢

・利用者および家族の立場や意思を尊重し、自分流の押し付けにならないようにする。


・利用者の尊厳を最期まで、亡くなった後も守る。


・インフォームド・コンセントを徹底し、相手の状態に合わせて説明を工夫し、話を十分に聞き、相手が納得するまで対応する。また、知り得た秘密は決して漏らさない(守秘義務)。


・訪問看護に関するリスクを予測し、防止策を講じて予防する。


・時には損得抜きで利用者の立場に立ち、ニーズに応えた援助を考え工夫する。


・在宅療養者および家族の不安、希望、できること等をよく聴き、主体性を尊重する。利用者も家族も在宅療養・ケアチームのメンバーであることを共有する。

訪問看護の基本姿勢

・何よりも自分の仕事に誇りを持ち、仕事が好きで、苦労もやりがいと感じ、むしろ楽しみながら仕事をする姿勢を持っている。


・強い責任感と協調性があり、同僚や利用者、地域社会の人々と良好なコミュニケーションを図り、公平かつ良好な人間関係を維持できる。


・看護師としての社会的責任をまっとうできる。


・社会人としての視野を広く持つことができる。


・社交的要素があり、誰でも好きになれる(好みや性格は変えられないが、行動は変えることができる)。どんな人にも分け隔てなく接し、その人の長所やできることに目を向けられる。


・常に研修や文献等での自己研鑽に努め、研究心がある。


・地域ケアにおける訪問看護の役割を認識し、事業を発展させるための積極的な姿勢を持っている。

カウンセリングマインドを実践する上で必要な対応力とは

訪問看護師がカウンセリングマインドを実践する上で以下の対応力が求められます。

(1)挨拶と笑顔

挨拶はこれから始まる人間関係の入り口です。まずは相手をリラックスさせ、自分を受け入れてもらうことが大切です。

「安心して何でもおっしゃってください」という気持ちを込めて、笑顔で応対しましょう。

笑顔で楽しく振る舞うことで、自分の気持ちも和らぎ、相手を思いやる余裕が生まれます。その結果、相手が何に困っているのか、どんな看護サービスを提供すればよいかが見えてくるでしょう。

笑顔は万国共通のパスポートです。笑顔は自分自身の気持ちを豊かにし、健康を増進させ、活動力を生みます。そして、人と人とのつながりを育んでくれます。

(2)訪問看護師一人ひとりの自覚を持った応対

利用者が「訪問看護師に何を期待しているか」を理解することが重要です。そのためには、温かくリラックスした雰囲気を作ることが大切です。

訪問看護師一人ひとりがステーションの代表であり、訪問看護サービスを広める役割を担っているという自覚を持ちましょう。

自分で対応できないことは知ったかぶりをせず、不確かな答えを出さないようにします。その際は、適切な人に連絡・相談し、自分で確かめたうえで対応しましょう。

(3)聞き上手

熱心に心を開いて相手の話を聞くことで、相手の信頼や好意を得られます。これは自分自身にもメリットがあります。相手に強い説得力を持たせ、精神的なサポートにもなります。

「はい」「わかります」「そうですね」「ええ」「なるほど」とうなずくことで、相手は「受け入れられた」と感じます。

また、相手は自分が本当に話したいことや援助してほしいことを整理できます。

適切なタイミングで質問し、確認することで、相手が困っていることや「どうしたいのか」が明確になります。

(4)話し上手

話上手であることは、相手に対して心地よい印象を与え、信頼関係を築き、効果的なコミュニケーションを促進するために極めて重要です。

話し上手のポイント

・同じ目線で誠意を持って話す。


・明るい態度と声で話す。


・適切な大きさと速さで明瞭に発音し、語尾をはっきりとする。


・敬語を正確に使用する。


・品の良い言葉遣いで話す。


・言葉の癖を修正する。


・同じことをくどくど繰り返さない。


・言い訳めいた言葉を避ける。


・ユーモアを取り入れる。


・論理的な順序で話し、要点を明確にする。


・相手の理解度を確認しながら話す。(相手の発言を待つ時間と姿勢が重要です。)


・自分の主観や興味、感性を無理に加えない。


・帰り際の対応でまた来てもらいたいと思わせる。後の良い印象を忘れないこと。


・ぐちをこぼしたり、陰口や悪口、噂話は避ける。(これらは自己を貶め、周囲を不快にし、悪い雰囲気を生むだけです。)

(3)身だしなみ

訪問看護師は、病気や障がいを抱えながらも前向きに生活している人々にサービスを提供しています。

看護師自身が元気で明るく接することで、利用者がさらに落ち込まないように気を配ります。心身ともに健康であることが最も重要です。

身だしなみのポイント

・清潔感を重視し、化粧は相手に好印象を与える程度に抑えることが基本です。


・清潔な制服や服装、機能性の高い靴を着用します。靴下は汚れや匂い、ほこりを避け、しわやたるみのない状態を保ちます。


・髪は清潔にし、業務に支障がないよう整えます。


・爪は短く切り揃えます。訪問前と帰宅後に手をしっかり洗うことを心掛けます。

まとめ

今回は、利用者や家族との信頼関係構築において重要な「カウンセリングマインド」について、その重要性と具体的な要素をお伝えしました。

訪問看護において、カウンセリングマインドは利用者さんとの信頼関係を築き、質の高い看護を提供するために不可欠な要素です。

小さな気遣いや、挨拶、 笑顔、添えるひと言など
日々の実践を通してカウンセリングマインドを磨き、利用者さんに寄り添った心温まる看護を提供していきましょう。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。

>保険外美容医療での看護師独立ストーリー

保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

石原看護師がどのようにして時間や場所にとらわれない働き方を実現できたのか、その経緯、現在の状況、そして今後のビジョンについてお話をうかがいました。

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