訪問看護でつくる未来|いろいろナースは、看護師の独立と訪問看護ステーションの成功を支援する総合Webメディアです。

在宅のがん療養を支える!訪問看護ステーションの役割と取り組み

わが国では、国民の3人の1人ががんで死亡しており、がん療養者の終末期の療養場所の確保が重要な課題となっています。

今回は、在宅でのがん療養者やその家族のQOL維持・向上を支える訪問看護ステーションの役割と取り組みについてお伝えします。

目次

在宅でのがん療養が増加している理由

近年、がん治療は、短期入院後に退院し、通院治療や在宅療養で過ごすケースが増えています。

在宅でのがん療養が増加している理由

その理由としては、以下のような背景が考えられます。

(1)医療技術の進歩

がん治療において、化学療法や放射線治療などの治療技術が進歩し、より効果的な治療が可能になってきています。また、手術技術の進歩により、手術後の入院期間も短くなっています。これらの進歩により、病状が安定した患者さんは、入院期間を短くし、在宅療養に切り替えることができるようになっています。

(2)医療費の削減

入院治療は、通院治療や在宅療養に比べて医療費が高額になる傾向があります。そのため、医療費の削減の観点から、入院期間を短くし、通院治療や在宅療養に切り替える方針がとられることが増えています。

(3)患者さんの意向やQOLの向上

入院治療は、病状によっては必要不可欠な場合もありますが、入院中は、自由な行動が制限されたり、家族と離れ離れになったりすることがあります。

また、入院中は、食事や睡眠のリズムなどが乱れることがあります。これらのことが、患者さんのQOLを低下させる原因となることがあります。そのため、患者さんの意向を尊重し、病状が安定した段階で、入院期間を短くし、通院治療や在宅療養に切り替えることで、QOLの向上を図ることができます。

がん治療における入院と在宅療養の違い

がん治療における入院と在宅療養の違い

がん治療において、入院治療と在宅療養は、治療の方法や環境、受ける支援などに大きな違いがあります。

がんの入院治療とは

入院治療は、患者さんが病院に入院して治療を受ける形態です。入院治療では、医師や看護師などの医療スタッフによる24時間体制の医療支援が受けられます。

また、専門的な検査や治療が必要な場合には、迅速に対応することができます。一方、入院中は自由な行動が制限され、家族と離れ離れになることがあり、ストレスを感じることもあります。

がんの在宅療養とは

在宅療養は、患者さんが自宅や施設などで治療を受ける形態です。在宅療養では、医療スタッフによる定期的な訪問や、訪問看護師、訪問リハビリテーションなどの支援を受けることができます。また、自分の生活リズムを維持できるため、ストレスを軽減することができます。一方、自己管理が求められるため、患者さん自身が治療計画を守り、日々の生活を管理することが必要です。

治療の方法に関しては、入院治療では、手術や抗がん剤治療、放射線治療などの専門的な治療を受けることができます。一方、在宅療養では、通院治療や訪問治療、在宅緩和ケアなどの支援を受けることができます。治療方針によっては、入院治療と在宅療養を併用することもあります。

以上のように、入院治療と在宅療養には、それぞれメリット・デメリットがあります。治療の方法や患者さんの状態に応じて、適切な治療方法を選択することが大切です。

在宅でのがん療養における訪問看護の役割

在宅でのがん療養における訪問看護の役割

訪問看護師は、がん療養中の患者さんを支援するために、多くの役割を果たしています。

症状の評価と管理

訪問看護師は、患者さんの症状を評価し、必要に応じて適切な治療を提供します。がん治療に伴って、患者さんが感じる痛みや吐き気、倦怠感などの症状は、治療の副作用や病気自体によるものがあります。訪問看護師は、こうした症状を評価し、適切な対処方法を提供することで、患者さんのQOL(生活の質)を向上させます。

創傷ケアや褥瘡(床ずれ)の予防

がん療養中の患者さんは、長期間の寝たきりや安静が必要な場合があります。そのため、創傷ケアや褥瘡の予防が必要です。訪問看護師は、患者さんの皮膚の状態を定期的にチェックし、創傷ケアや褥瘡の予防についてアドバイスを提供します。

家族や介護者へのサポート

がん療養中の患者さんを支援するためには、家族や介護者のサポートが欠かせません。訪問看護師は、患者さんの家族や介護者に対して、がん治療やケアの方法についてのアドバイスや情報提供を行います。また、介護者の負担軽減のために、家庭内での介護方法の指導や、必要なケアグッズの提供などを行います。

医療チームとの連携

訪問看護師は、患者さんの医療チームと密接に連携し、患者さんの治療やケアについての情報を共有します。医療チームとの連携によって、患者さんの治療やケアに関する情報が適切に伝達されることで、治療の効果やQOLの向上につながります。

在宅でのがん療養における訪問リハビリの役割

在宅でのがん療養における訪問リハビリの役割

訪問看護ステーションが提供するがん患者へのサービスは、看護ケアだけでなく、訪問療法士が提供する各種リハビリも大きな役割を持ちます。

在宅でのがん療養における理学療法士の役割や取り組み

疼痛管理

がん治療による痛みの軽減や、痛みによる身体的・精神的負担の軽減を目的とした理学療法を実施します。

運動療法

がん治療による筋力低下や関節可動域制限を改善するための運動療法を行います。

呼吸療法

がん治療による呼吸困難や呼吸筋の低下に対して、呼吸療法を実施します。

疾患に応じたリハビリテーション

がん種やがん治療に応じて、患者の状態に合わせたリハビリテーションを実施します。例えば、乳がん手術後の腕の浮腫みに対して、リンパ浮腫マッサージを行ったり、胃がん手術後の摂食・嚥下機能の改善に向けて、嚥下訓練を実施したりします。

在宅でのがん療養における作業療法士の役割や取り組み

ADL向上のための

日常生活動作(ADL)の改善や補助具の使用方法の指導を行います。例えば、がん治療によって発生した手足のしびれや痛みに対して、自立歩行のための訓練を実施します。

家庭内での生活の支援

在宅でのがん治療において、家族や介護者に対して、患者のケア方法や介護方法の指導を行います。

精神的な支援

がん治療によって、患者の心身にストレスがかかることがあります。作業療法士は、患者の自己決定を尊重し、精神的な支援を行います。

在宅でのがん療養における言語聴覚士の役割や取り組み

嚥下機能のリハビリテーション

がん治療によって、嚥下機能が低下することがあります。言語聴覚士は、嚥下機能の評価を行い、嚥下訓練を実施します。具体的には、水や食物を飲み込む際の嚥下のコントロールや、舌や口唇の筋力を鍛えるための訓練を行います。

音声・言語のリハビリテーション

がん治療によって、声帯や喉頭が影響を受けることがあり、声の出し方や発声が困難になることがあります。言語聴覚士は、音声・言語の評価を行い、リハビリテーションを実施します。具体的には、発声練習や発声器具の使用方法の指導、読み書きの支援を行います。

コミュニケーション支援

がん治療によって、認知機能や認知言語能力が低下することがあり、コミュニケーションに困難を感じることがあります。言語聴覚士は、コミュニケーションの評価を行い、支援を行います。具体的には、コミュニケーションの代替手段や、コミュニケーション能力の向上のためのトレーニングを行います。

家族や介護者への指導

言語聴覚士は、家族や介護者に対して、患者の嚥下機能やコミュニケーションの方法の指導を行います。また、介護者の負担を軽減するためのアドバイスや、介護者自身のストレスを軽減するための支援を行います。

このように訪問看護ステーションの療法士は、訪問看護チームの一員として利用者のQOL(生活の質)を高めるために様々な取り組みを行っています。

在宅でのがん療養のQOL向上のために訪問看護師が忘れてはいけない心構え

在宅でのがん治療は、患者と家族にとって肉体的にも精神的にも大きなストレスを抱えています。

在宅でのがん治療は、患者と家族にとって肉体的にも精神的にも大きなストレスを抱えています。

在宅でのがん療養のQOL向上のためは、常に以下のことを心構えとして持っておく必要があります。

(1)患者や家族の意見や希望に耳を傾けること

在宅におけるがん治療は、患者と家族が主体的に治療計画を立て、選択することが重要です。訪問看護師は、患者や家族の意見や希望を尊重し、共に治療計画を立てることが大切です。

(2)患者と家族に対する情報提供

在宅でのがん治療は、患者と家族にとって不安やストレスが多いものです。訪問看護師は、治療や副作用、症状などについて適切な情報提供を行い、不安や疑問を解消することが重要です。

(3)患者の痛みや苦痛に対する適切なケア

がん患者は、痛みや苦痛に苦しむことがあります。訪問看護師は、患者の痛みや苦痛に敏感に察知し、適切な緩和ケアを行うことが必要です。

(4)患者の自己決定権を尊重すること

在宅でのがん治療は、患者や家族が主体的に治療を選択することが重要です。訪問看護師は、患者の自己決定権を尊重し、共に治療計画を立てることが大切です。

(5)ホスピス・緩和ケアチームとの連携

在宅でのがん治療は、患者と家族が中心となった治療であるため、多職種連携が必要です。訪問看護師は、ホスピス・緩和ケアチームと連携し、患者のQOL向上に向けた支援を行うことが重要です。

癌末期の利用者・ご家族へのケアのポイント

訪問看護における癌末期の利用者・ご家族へのケアのポイント

次に訪問看護における癌末期の利用者・ご家族へのケアのポイントについてお伝えします。

(1)疼痛管理

癌末期の利用者は、痛みを感じることが多く、その緩和が重要です。訪問看護師は、利用者の痛みの程度や痛みの種類を把握し、適切な疼痛管理を行うことが必要です。

(2)疲労や食欲不振の対策

癌末期の利用者は、疲労感や食欲不振を感じることがあります。訪問看護師は、栄養指導やエクササイズの提供、利用者の疲れを減らす工夫を行うことが重要です。

(3)気分のサポート

癌末期の利用者は、不安やストレスを感じることが多く、気分のサポートが必要です。訪問看護師は、利用者の感情や心理的ニーズを理解し、会話やコミュニケーションを通じて、気分をサポートすることが大切です。

(4)家族への支援

癌末期の利用者の家族も、精神的な負担を感じることがあります。訪問看護師は、家族の気持ちを理解し、家族に向けた情報提供や心理的サポートを行うことが必要です。

(5)全体的なケアプランの策定

癌末期の利用者には、さまざまな側面からの支援が必要です。訪問看護師は、利用者や家族と協力し、医療スタッフやケアマネージャーと連携して、総合的なケアプランを策定することが必要です。

がん患者へのケアから得られる訪問看護師としての学びとやりがい

がん患者へのケアから得られる訪問看護師としての学びとやりがい

次に訪問看護未経験の看護師に向けてがん患者へのケア・取り組みから得られる訪問看護師としての学びとやりがいについてお伝えします。

(1)患者・家族との信頼関係の構築

がん患者やその家族と接する中で、彼らから信頼され、支えられる存在として認められることが訪問看護師にとっての大きな学びややりがいです。訪問看護師は、患者・家族と密接なコミュニケーションをとり、信頼関係を構築することで、より良いケアを提供できます。

(2)病気や治療に関する知識の向上

がん治療には多くの種類があり、訪問看護師は、その治療法や薬剤について理解し、患者に正確な情報を提供することが必要です。このような知識を習得することで、自己成長やスキルアップにつながります。

(3)患者の病状や生活環境に対する配慮とアドバイス

訪問看護師は、患者の生活環境や病状に合わせた配慮やアドバイスを行うことで、より適切なケアを提供できます。例えば、住居や介護環境の改善や、家族へのサポートなどが挙げられます。

(4)チーム医療への

がん治療には、医師や看護師、薬剤師、社会福祉士など多職種が関わっています。訪問看護師は、そのチーム医療の中で自らの役割を果たし、より質の高いケアを提供できることが大きな学びややりがいとなります。

(5)患者・家族の支援による感謝の言葉

がん患者やその家族から、ケアに対して感謝の言葉をいただくことは、訪問看護師にとって大きなやりがいです。患者・家族のニーズに応え、支援することで、患者のQOLの向上や家族の負担軽減につながることを実感できます。

訪問看護未経験の看護師への指導方法

訪問看護未経験の看護師への指導方法

次に訪問看護ステーションの管理者に向けて、訪問看護未経験の看護師への指導方法~在宅でのがん治療について知識・技術を伝える際の注意ポイントをお伝えします。

(1)基礎的な知識の習得

在宅でのがん治療には、患者さんと家族のニーズに応えるために多岐にわたる知識が必要です。まずはがんの病態や治療方法、緩和ケアの基本的な知識を身につけることが重要です。

(2)現場での経験の共有

在宅でのがん治療に関する知識や技術は、現場での経験が不可欠です。先輩看護師や他職種のスタッフと協力して、実践的なスキルを学ぶよう促しましょう。

(3)症例検討や研修の活用

在宅でのがん治療に関する症例検討や研修に参加することで、最新の情報や技術を習得することができます。また、自身が経験した課題や問題を共有し、改善点を考えることも重要です。

(4)コミュニケーション能力の向上

在宅でのがん治療においては、患者さんや家族とのコミュニケーションが重要です。患者さんや家族の気持ちに寄り添い、的確な情報提供やアドバイスを行うことが求められます。コミュニケーション能力を向上するために、ロールプレイや研修などのトレーニングを行うことも有効です。

(5)組織全体での学習文化の醸成

在宅でのがん治療に関する知識や技術を共有するために、組織全体での学習文化の醸成が大切です。情報共有や症例検討会の開催、研修会の実施など、学習の場を設けることで、スキルアップにつながるでしょう。

以上のように、在宅でのがん治療についての知識や技術を伝える際には、基礎的な知識から現場での経験や情報の共有など様々な観点から総合的に指導するこが重要です。

利用者のお看取りや死を経験した看護師へのフォローアップ

利用者のお看取りや死を経験した看護師へのフォローアップ

癌による利用者のお看取りや死を経験した看護師は、精神的なストレスや心理的な負荷を抱えることがあります。

管理者としては、以下のようなフォローを提供することが重要です。

(1)コミュニケーションの充実

利用者のお看取りや死を経験した看護師とは、積極的なコミュニケーションを取ることが重要です。看護師が抱える問題を聞き、話を聞くことでストレスの軽減や心の安定につながります。

(2)個別のケアプランの策定

管理者は、看護師一人ひとりの状況に応じて、個別のケアプランを策定する必要があります。看護師が抱えるストレスや問題に合わせたフォローアップを行うことで、看護師の心のケアを行うことができます。

(3)チームでのサポート

利用者のお看取りや死を経験した看護師を、他のチームメンバーもサポートすることが大切です。チーム全員で看護師を支えることで、看護師の心の負担を軽減することができます。

(4)必要に応じたカウンセリングの提供

看護師が必要な場合には、心理カウンセリングの提供を検討することも重要です。専門的なカウンセリングを受けることで、看護師のストレスや心の負担を軽減し、心のケアを行うことができます。

以上のようなフォローを通じて、利用者のお看取りや死を経験した看護師をサポートし、心の負担を軽減することが大切です。

まとめ

今回は、在宅でのがん療養者やその家族のQOL維持・向上を支える訪問看護ステーションの役割と取り組みについてお伝えします。

いまやがんは、在宅で療養することが普通になりつつある疾患です。訪問看護ステーションの役割は、非常に大きく、今後ますます求められていきます。

今回の記事が在宅医療の道を考える看護師の参考となると幸いです。

訪問看護未経験からの独立事例をプレゼント

訪問看護未経験の看護師でも将来の訪問看護ステーションでの独立にむけて1歩踏み出すことができます。

いろいろナースで実現した自己資金ゼロからの独立事例は、下記より無料でダウンロードできます。

>自己資金ゼロからの独立事例ダウンロード

自己資金ゼロからの独立事例ダウンロード

いろいろナースから生まれた看護師の独立事例を冊子にまとめました。岩田看護師(34才女性)は、総合病院に勤めながら「看護師が働き続けられる職場を作りたい」と訪問看護での独立を志望。

訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

無料でダウンロードできますので、訪問看護での独立にご興味のある方は、是非この機会にご一読ください。

CTR IMG