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訪問看護のストーマ管理:必要な知識とサポート内容

近年、訪問看護によるストーマ管理やストーマケアのニーズが高まっています。

これには、少子高齢化の進展、在院日数の短縮化はもとより、オストメイトと言われるストーマ保有者が増加していること(全国で20万人以上)、そして高齢化が進ことで認知症や身体機能の低下に直面し、自己管理が困難になったことなどが挙げられます。

本コラムでは、「在宅におけるストーマ管理」をテーマにストーマ保有者が増えている背景やストーマの生活上の問題、悩みなど訪問看護師が理解すべきポイントについてお伝えします。

ストーマとは

ストーマとは

ストーマとは、尿や便を体外に排泄するために腹壁に造設される排泄口のことで、この用語はギリシャ語で「口」を意味します。

ストーマは、便を排泄する「消化管ストーマ」と、尿を排泄する「尿路ストーマ」に分かれます。「消化管ストーマ」は、大腸がん治療などで造設されることがあり、造設位置に応じて「回腸ストーマ」と「結腸ストーマ」に分類されます。

近年、ストーマを造設する人が増えている背景

ストーマを造設している人のことを「オストメイト」といいますが、オストメイト(ストーマ保有者)は、全国で20万人を超え、年間で4万人増えていると推計されています。

日本オストミー協会の調査では、大腸がん手術後の結腸ストーマ(コロストミー)の導入例がもっとも多く、ストーマの種類の中でも7割を占めています。

ストーマの種類

大腸がんは日本人に最も多いがんであり、大腸がんと診断される人は年間約16万人であり、年々増加傾向にあることから、ストーマを造設する人が今後さらに増加することが予想されます。

また、大腸がんなどを完治させ、ストーマを造設した方の平均年齢は約72歳、ストーマがあっても自宅で自立した生活が送れる年齢です。

しかし加齢や疾患などにより認知能力やADL(日常生活動作)が低下していくことでストーマの自己管理が困難になるケースも増えていきます。

そのためADLを維持する介入とともに、ADL低下時の介護環境を早期に調整することが重要となります。

在宅におけるストーマケアとは

ストーマを持つ方は、ストーマ装具を使った管理が必要です。

ストーマを持つ方は、ストーマ装具を使った管理が必要です。

入院中に装具の取り扱いを学んで退院することが多いですが、その後、再発や新たな疾患、認知症の発症、また家族のサポートが不可能になるなどの状況が生じると、自宅でのストーマ管理が難しくなることがあります。

ストーマケアは、療養者の能力や細かな適応能力、季節による発汗の変化、家族のサポートなどを考慮して、適切な装具の種類や交換頻度を調整し、問題を予防するためのケアが大切です。

ストーマの生活上の問題、悩み

ストーマの生活上の問題、悩み

ストーマを付ける利用者は、最初に腹部からの排泄に対して抵抗感を抱くことが一般的です。自身の排泄をコントロールできない現実に対して、悲観的な気持ちを抱くこともあります。

訪問看護師には、ストーマを持つ人々の悩みや課題、思いに対する理解が求められます。そして、利用者の心理的不安を和らげることが非常に重要です。

ストーマを持つ人々の悩みや課題

第6回オストメイト生活実態基本調査 調査報告書」 社団法人 日本オストメイト協会 2007より作成

訪問看護師は、療養者自身の不安に敏感に対応し、将来の生活で可能なことをポジティブな言葉と共に心理的に支援する役割が重要です。

加齢がストーマケアに与える影響と課題

加齢がストーマケアに与える影響と課題

利用者によるストーマのセルフケアが難しくなる理由として、病状の変化や高齢化による日常生活能力(ADL)の低下が挙げられます。

高齢がストーマ保有者にどのような影響を与えるかをみていきます。

身体面

・視力低下や難聴による情報の取得の難しさ

・知覚能力や手指の巧緻性の低下による装具の取り扱いの難しさ

・身体の可動域の制限により、ストーマケアの難しさ

・腹部のたるみや皺によるストーマ周囲の皮膚管理の難しさ

・皮膚の脆弱性による皮膚トラブルのリスク

精神面

・適応力の低下による変化への対応の難しさ

・意欲の低下や躁鬱状態になりやすい傾向

・認知機能の低下によるセルフケアの課題

社会面

・キーパーソンの死別などの喪失による心理的影響

・独居や老々世帯の増加に伴い、支える人の不足

・役割の喪失による自己価値感の低下

・経済的な問題による医療費負担の増加

加齢により、視力や認知機能の低下、身体や手指の可動域の制限などの変化が生じ、自分で装具交換や以前のケアの継続が難しくなります。また、皮膚の変化や腹部の形状の変化により、装具の管理方法自体が複雑になり、ストーマの自己管理が難しくなることもあります。

さらに、サポートが必要な場合、支えてくれる人が不在であることが課題となります。将来的には、少子高齢化や核家族化の進行に伴い、この問題がより顕著になることが予想されます。

なぜ訪問看護によるストーマケアが必要なのか

なぜ訪問看護によるストーマケアが必要なのか

ストーマは、療養者だけでなく、家族にとっても未知の領域です。たとえ退院前にストーマのケアについて教育を受けていたとしても、実際に自分で行うことは容易ではありません。

訪問看護師には、療養者と家族の不安や思いに耳を傾け、療養者の理解度やスキルを評価しながら、その生活スタイルに合わせた細やかなストーマケアのサポートが求められます。

ストーマで起こりやすいトラブル・合併症

ストーマで起こりやすいトラブル・合併症

ストーマは、基本的に利用者自身によるセルフケアが必要です。利用者の状態に合わせて、徐々にでも自己管理できるように指導を行います。

また、ストーマの交換・廃棄方法や、ストーマに関連するトラブルや合併症の兆候を伝えることも非常に重要です。

ストーマで起こりやすい合併症やトラブルには、以下のものがあります。

(1)便のもれ

便のもれは、体型や便柱の変化を日常的に確認することが大切です。特に、ストーマの周囲にシワやくぼみがある場合は、装具の適切さを見直す必要があります。適切な装具の使用や設定がもれを防ぐのに役立ちます。

(2)ストーマ脱出、膀ヘルニア

ストーマ脱出や膀胱ヘルニアは、強い腹圧や急激な体重増加などによって引き起こされることがあります。これらのトラブルが起きた場合、腹痛や便秘、ストーマの色に変化が見られるかもしれません。早めに医師に相談し、適切な対処を行うことが重要です。

(3)ストーマからの出血

ストーマからの出血は、面板の孔が小さすぎないか、または衣服でストーマが刺激されていないかを確認することが必要です。出血が止まらない場合は、迅速に医療機関を受診しましょう。

(4)皮膚のかぶれ

皮膚のかぶれは、便の付着や面板をはがす際の器具的な刺激によって発生します。この問題に対処するためには、装具交換の方法や頻度を見直し、皮膚保護剤を使用することが役立ちます。

(5)テープかぶれ

テープかぶれは、テープの粘着剤が皮膚を刺激することによって発生します。この問題を予防するためには、刺激の少ないテープへの変更、テープを小さめに切る、皮膚保護剤や剥離剤の使用などが有効です。

(6)感染症

感染症は、テープや装具によるかぶれや汗によって皮膚が水分で脆弱になった際に起こりやすくなります。皮膚トラブルを防ぐためには、定期的に洗浄し、清潔を保つことが重要です。特に、カビによる真菌感染に注意が必要です。

訪問看護師によるストーマケア

訪問看護師によるストーマケア

訪問看護師がおこなう具体的なストーマケアについてお伝えします。

(1) 装具交換

ストーマ袋やフェースプレートの交換

適切なタイミングで袋やプレートを交換し、漏れや装具の適合性を確認します。

装具の適切なセッティング

ストーマの形状や出口の位置に合わせて、装具のセッティングを調整します。

装具の清潔保持

清潔な装具の使用を確保し、感染や皮膚トラブルを予防します。

(2) 皮膚トラブル対応

皮膚の清潔保持

ストーマ周囲の皮膚を清潔に保ち、感染やかぶれのリスクを軽減します。

皮膚保護剤の使用

皮膚保護剤を適切に選定し、皮膚を保護します。

トラブルの早期発見

皮膚トラブルや異常を早期に発見し、適切な対処を行います。

(3) 食事指導・排泄ケア

適切な食事

ストーマを持つ人々に対して、食事の摂取方法や消化に配慮した食事をアドバイスします。

排泄ケア

排便や尿のコントロールに関するケアを提供し、トラブルを防ぎます。

(4) 日常生活支援

セルフケア指導

ストーマのセルフケアを助け、利用者が自分で管理できる能力を向上させます。

日常生活への適応

ストーマを持つ人々が日常生活をスムーズに送るためのアドバイスやサポートを提供します。

(5) 精神的支援

心理的サポート

ストーマを持つことに対する不安やストレスに対処し、利用者や家族の精神的な健康をサポートします。

心のケア

ストーマの受け入れやストーマに関連する感情を理解し、心理的な安定を促進します。

(6) 外部との連携

医療チームとの協力

医師、看護師、臨床検査技師などの医療チームと連携し、療養者のケアを最適化します。

コミュニティサービスへの案内

地域のサポートサービスやストーマ関連の団体への案内を行い、療養者の生活の質を向上させます。

これらの要素を組み合わせて、訪問看護師はストーマケアの継続的なサポートを提供し、利用者の健康と生活の質を向上させる役割を果たします。

皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)とは

皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)とは

ストーマケアは「皮膚・排泄ケア認定看護師」の専門分野であり、近隣の認定ケア看護師と連携することで理想的なサポートが提供できます。

また、訪問看護師がこの知識を持っていることは大きなメリットであり、看護師としてのキャリアにとっても大きなアドバンテージとなります。

さいごに皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)について説明します。

皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)は、Wound(創傷)、Ostomy(オストミー)、Continence(失禁)の分野および排泄管理・セルフケア支援に高度な看護技術を持つ看護師のことを指します。

厚生労働省の資料によれば、「ストーマの造設や褥瘡などの創傷、失禁に関連する問題に対して、専門的な技術を駆使して質の高い看護を提供する看護師」とされています。

皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)になるには、認定看護師の教育機関でのカリキュラムを修了し、審査を受ける必要があります。

(引用:厚生労働省「皮膚排泄ケア認定看護師の活動について」)

まとめ

今回は、訪問看護におけるストーマケアをテーマにお伝えしました。近年、少子高齢化やストーマ保有者の増加に伴い、在宅でのストーマケアの需要が高まっています。

ストーマとは、多くの方にとって未知の存在であり、その管理には多くの課題が存在します。特に高齢化による身体的・精神的な変化や社会的な孤立感は、ストーマ保有者にとって重要な問題です。

訪問看護師は、この課題に真摯に向き合い、ストーマケアに関する知識とサポートを提供する役割を果たします。

装具の適切な交換、皮膚トラブルの予防、食事指導、日常生活への支援、精神的なケア、そして外部との連携など、幅広い領域で利用者の生活を支援しています。

今回の記事が訪問看護に携わる方々、そして今後、訪問看護への入職を希望されている看護師の参考になれば幸いです。

参考文献:ナースのためのやさしくわかる訪問看護

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