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訪問看護ステーションに所属する言語聴覚士の価値と貢献

近年、高齢化社会の進展と在宅療養の需要増加により、言語聴覚士の専門領域が在宅療養でも求められるようになりました。

言語聴覚士は、リハビリテーションやコミュニケーションの向上だけでなく、嚥下の安全性や食事のサポートなど、利用者の日常生活に関わる重要な側面を担当します。

今回は、高齢者の在宅療養において言語聴覚士のニーズが高まる理由や仕事内容、医療機関と在宅でのリハビリの違い、そして訪問看護ステーションに言語聴覚士が所属することのメリットなどについてお伝えします。

高齢者の在宅療養において言語聴覚士のニーズが高まっている背景・理由

高齢者の在宅療養において言語聴覚士のニーズが高まっている背景・理由

まず、高齢者の在宅療養において言語聴覚士のニーズが高まっている理由についてみていきます。

高齢化社会の進展

多くの国で高齢化社会が進んでいます。高齢者人口の増加に伴い、高齢者の健康管理やケアの需要が増えています。言語聴覚士は高齢者のコミュニケーションや嚥下の問題をサポートし、生活の質を向上させる役割を果たしています。

認知症の増加

高齢者の中で認知症の発症率が上昇しています。認知症による言語障害やコミュニケーションの困難などの問題を抱える患者が増加しています。言語聴覚士は、認知症患者に対してコミュニケーション支援や認知機能の維持・改善に向けたリハビリテーションを提供します。

在宅療養の重視

在宅療養は、高齢者にとって自宅や在宅環境でリハビリやケアを受けることができる利便性の高い形態です。在宅療養の重視が進んでおり、その中で言語聴覚士の役割が注目されています。言語聴覚士は、自宅や在宅環境でのリハビリを提供することで、高齢者の生活の質を改善し、自立した生活を支援します。

音声・嚥下障害の増加

高齢者は、加齢による筋力や調節機能の低下により、音声や嚥下の問題を抱えることがあります。音声のクリアさや嚥下の安全性を確保するために、言語聴覚士の評価やリハビリテーションが重要です。高齢者の音声・嚥下障害の増加に伴い、言語聴覚士の需要が高まっています。

これらの要素により、高齢者の在宅療養における言語聴覚士のニーズが高まっています。言語聴覚士は、高齢者のコミュニケーション能力や嚥下機能を評価し、適切なリハビリテーションプランを提供することで、高齢者の生活の質を向上させ、自立した在宅生活をサポートします。

言語聴覚士の仕事内容

言語聴覚士の仕事内容

では、言語聴覚士の仕事内容について詳しくみていきます。

厚生労働省の定める言語聴覚士法においては、言語聴覚士は以下のように定義されています。

第2条

厚生労働大臣の免許を受けて、言語聴覚士の名称を用いて、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことを業とする者

第42条 業務

言語聴覚士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として、医師又は歯科医師の指示の下に、嚥下訓練、人工内耳の調整その他厚生労働省令で定める行為を行うことを業とすることができる。

厚生労働省―言語聴覚士法( 平成09年12月19日法律第132号)

言語聴覚士は、脳卒中後遺症や加齢などによる聞こえの障害、言葉の障害、食べることの障害に対して、それぞれ異なるアプローチを行います。以下にそれぞれの症状に対するアプローチの詳細を説明します。

聞こえの障害(難聴など)

評価と補聴器の適応

言語聴覚士は、患者の聴覚機能を評価し、補聴器や補聴システムの適応性を判断します。適切な補聴器を選定し、患者に補聴器の使用方法やメンテナンスについて指導します。

聴覚矯正トレーニング

患者が補聴器を使用する際により効果的に聞こえるよう、聴覚矯正トレーニングを提供します。これには、音声認識の向上やリスニング戦略の獲得などが含まれます。

言葉の障害(発音、音声、失語症)

発音矯正

言語聴覚士は、不正確な発音を正確に発声するためのトレーニングを提供します。これには、発音のモデリングや音声矯正の練習が含まれます。

音声トレーニング

言語聴覚士は、声帯や発声器官の制御を向上させるための音声トレーニングを提供します。これには、声質の改善や声の強さや抑揚の調整などが含まれます。

失語症の治療

失語症の場合、言語理解や表現の障害が見られます。言語聴覚士は、言語療法を通じて、患者のコミュニケーション能力の回復や補完を支援します。これには、言葉の理解や表現の訓練、コミュニケーションの代替手段の学習が含まれます。

食べることの障害(摂食・嚥下)

嚥下評価と介入

言語聴覚士は、飲食時の嚥下の評価を行います。これには、嚥下機能の評価やバリウム検査などの特殊な検査が含まれます。評価結果に基づいて、安全な摂食と嚥下をサポートするための介入プランを立案します。

嚥下訓練

患者が安全に食事を摂るために必要な筋力や協調性を向上させるため、嚥下訓練を提供します。これには、嚥下筋群のトレーニングや嚥下動作の改善を目指すエクササイズが含まれます。

食事の修正と指導

言語聴覚士は、食事の修正や調整を行いながら、安全な摂食を支援します。これには、食事の質やテクスチャの変更、食べ方や飲み方の指導などが含まれます。また、食事に関する情報提供や介護者への教育も行います。

言語聴覚士は、これらのアプローチを組み合わせて、患者の個別のニーズや状態に合わせたリハビリプランを作成します。患者の摂食や嚥下機能の改善により、食事の安全性と快適さが向上し、栄養摂取や生活の質の維持が促進されます。

言語聴覚士の医療機関のリハビリと在宅のリハビリの違い

言語聴覚士の医療機関のリハビリと在宅のリハビリの違い

言語聴覚士は、医療機関や在宅の両方で、それぞれの環境やニーズに合わせたリハビリプランを設計し、患者や利用者の言語や聴覚の機能回復やコミュニケーション能力の向上を支援します。

言語聴覚士の医療機関でのリハビリと在宅でのリハビリの違いは以下の通りです。

環境

医療機関のリハビリは、通常は専門的な設備や機器を備えたリハビリテーションセンターや病院の設備内で行われます。在宅リハビリは、患者の自宅やその他の在宅環境で行われます。

目標

医療機関のリハビリは、通常は病状の改善や機能回復を目指して行われます。在宅リハビリは、患者の生活の質を向上させることや、日常生活での機能維持を目指して行われます。

頻度と期間

医療機関のリハビリは、通常は定期的なセッションで行われ、週に数回から週に数十回までの頻度で行われることがあります。在宅リハビリは、患者の状態やニーズに応じて柔軟なスケジュールで行われ、通常は週に数回から週に数回までの頻度で行われます。

アクセスとモニタリング

医療機関のリハビリでは、専門の医療スタッフが直接患者を担当し、進行状況をモニタリングします。在宅リハビリでは、患者は自宅でセッションを受けるため、医療スタッフとの面会の頻度は低くなる場合があります。しかし、在宅リハビリでは、リハビリテーションスタッフが患者の自宅を訪問し、遠隔でのモニタリングや支援を提供することもあります。

連携と家族の関与

医療機関のリハビリでは、多くの場合、他の医療専門職やリハビリテーションチームとの連携が行われます。家族や介護者もリハビリプロセスに関与することがあります。在宅リハビリでは、家族や介護者の関与が重要であり、患者のケアとリハビリのサポートを行います。

訪問看護ステーションに言語聴覚士が所属することのメリット

訪問看護ステーションに言語聴覚士が所属することのメリット

しかし、増えてきているもののまだまだ訪問看護、在宅医療分野で活躍する言語聴覚士は少ないのが現状です。

参照元:JVNF 公益財団法人 日本訪問看護財団「訪問看護の現状とこれから2022年版」

訪問看護ステーションに所属するセラピストの割合は、理学療法士が14.7%、作業療法士が6.5%、言語聴覚士が1.5%となっており、言語聴覚士が最も少ないことがわかります。

しかし、訪問看護ステーションに言語聴覚士が所属していることは、サービス提供、利用者獲得のための営業活動、経営面において様々なメリットがあります。

サービスの視点からのメリット

総合的なケアの提供

言語聴覚士の所属により、看護ステーションはより総合的なリハビリテーションサービスを提供できます。例えば、脳卒中後遺症や認知症による言語障害や嚥下障害に対するリハビリテーションを提供することができます。これにより、利用者のニーズに合わせたトータルケアを提供することが可能となります。

継続的なリハビリプログラム

言語聴覚士の所属により、在宅療養中の利用者に対して継続的なリハビリプログラムを提供できます。定期的なフォローアップや評価を行い、リハビリプランの調整や目標の達成を支援します。これにより、利用者の機能回復や生活の質の向上を促すことができます。

利用者獲得のための営業の視点からのメリット

医療連携の強化

言語聴覚士の所属は、医療連携の一環としても利用者獲得につながります。他の医療機関や施設との連携を通じて、診療情報の共有や継続的なケアの提供が可能となります。これにより、地域の医療ネットワーク内での信頼性と信用性を高め、利用者からの選択肢としての評価を受けやすくなります。

需要の拡大

言語聴覚士の所属により、在宅でのリハビリやコミュニケーション支援の需要が増える可能性があります。高齢者の増加や在宅療養の需要の高まりに伴い、言語聴覚士のサービスへのニーズも拡大しています。訪問看護ステーションが言語聴覚士の存在を積極的にアピールし、そのニーズに応えることで利用者獲得につながるでしょう。

経営の視点からのメリット

多職種連携の効率化

言語聴覚士の所属は、訪問看護ステーション内での多職種連携を強化します。他の専門職との連携や情報共有が容易になり、効率的なケアプランの立案と実施が可能となります。これにより、スムーズな業務フローと質の高いケアの提供が実現し、経営の効率化につながります。

顧客満足度の向上

言語聴覚士の所属は、利用者の満足度向上につながります。高齢者やその家族は、専門的なケアやリハビリの提供に対して期待しています。訪問看護ステーションが言語聴覚士のサービスを提供することで、利用者のニーズに応え、満足度を高めることができます。満足度の向上は、利用者のリピート利用や口コミを通じた広がりにつながります。

地域での地位向上

言語聴覚士の所属は、訪問看護ステーションの地域での地位向上にも貢献します。地域の医療や介護サービスの提供者として、地域の高齢者や関係者に対して総合的なケアを提供できることがアピールポイントとなります。地域のニーズに合わせたサービス展開や地域との連携強化により、訪問看護ステーションの地位が向上し、地域の中で優れた存在として認知されるでしょう。

これらの要素により、訪問看護ステーションに言語聴覚士が所属していることは、サービスの充実と差別化、利用者獲得のための営業活動の強化、経営の効率化と顧客満足度の向上など、様々なメリットをもたらします。

訪問看護ステーションは、言語聴覚士の存在を活かし、高品質なケアサービスの提供と利用者のニーズに応えることで、競争力を強化し続けることが重要です。

まとめ

在宅療養における言語聴覚士の存在は、高齢者の生活の質を向上させるために欠かせないものです。彼らは嚥下障害やコミュニケーション障害など、様々な課題に対して専門的なアプローチを提供し、利用者とその家族をサポートします。

訪問看護ステーションに言語聴覚士が所属することで、連携の強化や総合的なケアの提供が可能となります。高い専門性と人間性を兼ね備えた言語聴覚士の存在は、在宅療養における利用者の生活の質を向上させるだけでなく、家族や医療チームにも安心感を与えます。

今後も在宅療養のニーズの増加に伴い、言語聴覚士の重要性と活躍の場がますます広がることでしょう。

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訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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