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訪問看護ステーションでの独立起業に欠かせない「事業計画書」とは

看護師としてのキャリアを積んでいく中で、「将来的には自分の経験やスキルを活かし、独立起業したい」という希望を抱く人は少なくないと思います。

独立や起業をすることは、大きな責任も伴いますが、病院やクリニック勤務では得られないお金や経験を得ることができます。

ただし、独立や起業にはリスクがつきものです。計画をしっかり立てずに急いでスタートすると、資金不足などの問題に直面する可能性があります。

そのためには、最初に「なぜ独立を志すのか?」を考え、自己評価を行い、未来のビジョンを描き、しっかりとした「事業計画」を策定することが不可欠です。

今回は、これから訪問看護ステーションでの独立・起業を考えている看護師さんに向けて、独立起業前に考えておきたい「事業計画書」の作り方についてご紹介します。

現職の間に着手できる内容ですので、仕事を辞める前に、独立起業の準備の一環として取り組んでみてください。

目次

事業計画書とは

事業計画書とは

事業計画書とは、事業の方向性や目標を書面にまとめたものです。新たに事業を始める際には、いくつかの重要な要素を考える必要があります。

まず、「なぜこの事業を始めるのか」「誰に、何を、どのように提供するのか」といった基本的な問いに答えることから始まります。

さらに、「事業の強みはどこにあるのか」「誰と共に事業を進めるのか」「開業資金をどのように調達するのか」「どのような競合が存在するのか」「開業後の収益見通しはどうなるのか」といった詳細な情報も考慮する必要があります。

これらの要素を整理し、わかりやすくまとめた書類が「事業計画書」です。

訪問看護ステーションの事業計画書を作成する目的は?

事業計画書を作成する目的は、訪問看護ステーションの創業を考えている看護師が持つ事業に関するイメージや資金計画などを可視化し整理することです。

訪問看護ステーションの事業計画書を作成する目的は?

事業計画書には、事業のコンセプト、提供するサービスの内容、対象となる顧客層など、事業全体の概要に加えて、次のような詳細情報が含まれます。

どれくらいの収入を見込んでいるのか?」「どれくらいの経費が通常発生するのか?」「初期投資にはどれくらいの金額が必要なのか?」「融資によってどれくらいの資金を調達し、毎月どれくらいの金額を返済する予定なのか?」など、複数年にわたる収支と資金調達に関する詳細情報が含まれます。

これらの項目に対して具体的な数字や金額を計算することで、ご検討中の「コンセプト」や提供したい「サービス」が実現可能であるかどうかを確認することができます。

事業計画書を通じて、事業内容を客観的に評価し、実現可能性を検証することができます。

事業計画書の用途

事業計画書の用途

事業計画書の用途として重要なのは、「第三者に事業内容を理解してもらう」ことです。

訪問看護ステーションでの独立起業にあたり、金融機関からの融資を受け、資金調達を考えている看護師も多いと思います。

金融機関から資金を借り入れする場合、事業計画書の提出は絶対に必要です。金融機関は事業計画書の中身を通じて、事業の将来性などを評価し、融資や出資を決定する際の判断材料とします。

事業計画書を通じて他者に事業内容を明確に伝え、彼らから理解を得ることができれば、資金を借入できる可能性が高まります。

訪問看護ステーションの事業計画書の書式とは

事業計画書には特定の書式が決まっておらず、一般的に、個人や企業は自身でワードやエクセルを使って作成します。

初めて作成する方には、構造や項目がわかりやすく記載されている無料でダウンロードできるテンプレートを利用することをおすすめします。

日本政策金融公庫※のWebサイトでは、事業計画書のフォーマットを無料でダウンロードできます。さらに、業種別の書き方のサンプルも提供されているので、初めて作成する方には参考になるでしょう。

日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード」

※日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫は、2008年10月に設立された、政府が100%出資する金融機関です。

この公庫は、主に中小企業や新規起業者、創業者など、民間の金融機関(銀行など)から融資を受けにくい人々に対して積極的に融資を行っており、金利も低めに設定されています。

新規事業を立ち上げる際に融資を検討する場合、多くの人々にとって、最初に検討する金融機関の一つとなることがよくあります。そのため、日本政策金融公庫は参考になるでしょう。

訪問看護ステーション開業の事業計画書に記載する内容の一例

訪問看護ステーション開業の事業計画書に記載する内容の一例

(1)創業の動機

目的

訪問看護ステーションを開業する主な目的を記載します。例えば、地域の医療サービス不足を補うことなど。

動機

なぜ訪問看護ステーションを開業しようと考えたのかを説明します。例えば、医療への情熱や地域への貢献意欲など。

(2)経営者の略歴

学歴・資格

創業者や経営陣の医療関連の学歴や専門資格を列挙します。

事業・サービスに関係する経歴

どのような医療経験やキャリアを持っているかを明示します。

(3)事業・サービスの内容

提供するサービス

訪問看護ステーションが提供する看護サービス(訪問看護、在宅介護、リハビリテーションなど)を詳細に説明します。

セールスポイント

他の競合者との差別化要因や特長を強調します。例えば、質の高い看護ケア、患者フォーカスのアプローチなど。

ターゲット

訪問看護サービスの対象となる患者層や地域を明示します。

(4)取引先・取引関係者

販売先

どの医療機関や保険会社、地域社会と提携し、患者を獲得する予定かを示します。

仕入れ先

医療機材や薬剤などの仕入れ先を列挙し、供給源を確保する計画を示します。

外注先

必要な場合、特定のサービスやスキルを外部から委託する協力関係を記載します。

(5)従業員

起業時の従業員数

開業時の管理者・看護師、療法士・事務スタッフなどの人数を記載します。

従業員の職種・資格・人数

各職種の従業員数と資格を明示します。例えば、看護師、理学療法士など。

(6)これまでの借入の状況

借入の目的

過去の借入金を使った用途や投資先を説明します。

借入金の残額

現在の借入金残高を明示します。

年間返済予定額

借入金の年間返済計画を示します。

(7)必要資金

設備・備品等の内訳と金額

診療用具、医療機器、オフィス設備など、開業に必要な資産の内訳とコストを詳細に示します。

運転資金の内訳と金額

日常の運営費用、従業員給与、広報・広告費など、事業運営に必要な運転資金を明示します。

(8)資金調達方法

自己資金の金額

創業者自身が投資できる資金の額を記載します。

借入先の金融機関と金額

融資を受ける予定の金融機関や融資額を詳細に示します。

(9)事業の見通しと収支計画

創業年度と創業から1年後の売上

事業の予測売上を、季節変動や市場需給に基づいて示します。

主な経費の内訳と金額

人件費、医療機材の保守費用、広告宣伝費、光熱費などの予算を詳細に列挙します。

借入の返済額

借入金の年間返済計画を明示します。

利益

売上から経費と返済額を差し引いた利益を計算します。この情報は事業の持続性を評価するために重要です。

訪問看護ステーション開業の事業計画書に記載する内容の一覧(一例)

様式 大項目 小項目
事業計画書 創業の動機
  • 目的
  • 動機
  • 背景・想い
経営者の略歴
  • 学歴・資格
  • 事業・サービスに関係する経歴
事業・サービスの内容
  • 提供するサービス
  • セールスポイント
  • ターゲット
取引先・取引関係者
  • 販売先
  • 仕入れ先
  • 外注先
従業員
  • 起業時の従業員数
  • 従業員の職種・資格・人数
これまでの借入の状況
  • 借入の目的
  • 借入金の残額
  • 年間返済予定額
必要資金
  • 設備・備品等の内訳と金額
  • 運転資金の内訳と金額
資金調達方法
  • 自己資金の金額
  • 借入先の金融機関と金額
事業の見通しと収支計画 (創業年度と創業から1年後)

  • 売上
  • 主な経費の内訳と金額
  • 借入の返済額
  • 利益

事業計画書を作成する際のポイント~6W2Hとは

事業計画書を作成する際のポイント~6W2Hとは

事業計画を練る際、頭を整理するのに時間がかかると感じているかもしれませんが、コツを掴めば、要点をすっきりとまとめることができます。

たとえば、6W2Hを活用して、自身の事業アイデアを考えてみましょう。6W2Hはマーケティングで使用されるアプローチで、以下の8つの要素が含まれています。これらの要素を考慮することで、具体的な事業計画を練るのが助けになります。

(1)When(いつ)

事業を開始するタイミングやスケジュールを決定します。特定の季節、年度、市場動向に基づいて計画を立てることが重要です。また、成長段階や将来の展望も考慮します。

(2)Where(どこで)

どの地域やマーケットで事業を展開するかを明確にします。特定の地域、都市、国、あるいはオンライン市場に焦点を当てるかを決定します。

(3)Who(誰が)

事業を運営するチームや組織の構成、役割分担を定めます。誰がリーダーシップを担い、どのスキルや経験を持つメンバーが必要かを明示します。

(4)Whom(狙う顧客は誰)

ターゲット顧客層を明確にします。誰に対してサービスを提供するのかを定義し、顧客のニーズや要望を理解します。

(5)What(提供するサービスは何)

提供する具体的なサービスや製品を明示します。訪問看護ステーションの場合、提供する看護ケアや介護サービス、リハビリテーションプログラムなどを具体的に列挙します。

(6)Why(なぜ事業を行うのか)

事業の目的と背後にある理由を説明します。なぜこの事業を始めるのか、社会的な貢献や市場の需要について述べます。

(7)How(どのように実施するのか)

事業運営の方法やプロセスを詳細に計画します。訪問看護ステーションの場合、訪問スケジュール、医療チームとの連携、患者対応のプロセスなどが含まれます。

(8)How much(どれくらいの資金が必要なのか)

資金調達に関する計画を立てます。開業資金の詳細な内訳と、必要な運転資金の見積もりを含め、資金調達方法を検討します。

まとめ

今回は、訪問看護ステーションでの独立起業において、不可欠な「事業計画書」についてご紹介しました。

事業計画書は、会社設立後の重要な指針となる文書です。看護師による訪問看護ステーションの独立起業が成功するかどうかは、事前の準備が非常に大きな影響を及ぼします。

今回お伝えした内容は、一見当たり前のことかもしれませんが、これらの基本的な要点をしっかりと取り組み、準備することは多くの場合見落とされがちです。

実際に独立してから準備を始めると、収入が途絶えた状態での準備となり、経済的にも精神的にもプレッシャーを感じることがあります。しかし、看護師としての雇用を持ちながら、固定収入があるうちに独立の準備を進めることで、経済的な余裕と心のゆとりを持って起業に臨むことができます。

大きな成功を果たすために、小さな事前準備を積み重ね、自分だけの訪問看護ステーションを生み出してください。

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保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

石原看護師がどのようにして時間や場所にとらわれない働き方を実現できたのか、その経緯、現在の状況、そして今後のビジョンについてお話をうかがいました。

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