筋ジストロフィーは、子どもの筋疾患で一番多い疾患であり、訪問看護は、在宅生活を継続していくために生活全般にかかわり、医療ケア、リハビリなどサポートをおこないます。
筋ジストロフィーは、多様性があり、病型により発症時期、障害の進行スピード、合併症なども異なり、家族への対応も変化します。
今回は、小児の筋ジストロフィーをテーマにその概要から在宅における特徴、訪問看護に求められる支援内容、アセスメント項目等についてお伝えします。
筋ジストロフィーとは
筋ジストロフィーとは、骨格筋組織で病的壊死と再生が起こることで、徐々に筋力が低下し、運動機能など様々な機能に障害が生じる疾患です。
2015年に施行された難病法により、筋ジストロフィーは指定難病となり、約25,400人の患者が他の難病と同様の社会的援助を受けることが可能になりました。
※指定難病についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
筋ジストロフィーの根本的治療法はまだ確立されておらず、医療従事者は主に症状の進行を遅らせ、患者の機能を維持することに焦点を置いています。同時に、患者と介護者の負担を軽減し、生活の質を向上させる支援が必要です。
※現在、筋ジストロフィーに対する根本的な治療薬は存在しませんが、研究の進展により新しい薬の開発が進んでいます。
2020年には、エクソン・スキッピング治療薬ビルトラルセンが保険承認されました。さらに、複数の疾患で治験が進行中であり、今後も新しい治療薬の登場が期待されています。
参考記事:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬(NS-065/NCNP-01、ビルトラルセン)の製造販売承認について」
筋ジストロフィーの病型
筋ジストロフィーには、いくつもの病型が存在し、それぞれの病型によって筋肉の減少の仕方や症状が異なります。また、遺伝の方法も異なります。
病型によっては、咀嚼や嚥下、呼吸、心臓などの筋肉が影響を受けます。たとえば、目や口を閉じる筋や開ける筋、眼を動かす筋肉が弱くなる病型もあります。心臓の筋肉は再生ができないため、進行すると心臓の筋肉はやせて薄くなり、心臓の働きが低下し、心不全に至ることがあります。
筋ジストロフィーの病型、遺伝形式、罹患筋部位
臨床病型 | 遺伝形式 | 臨床症状(罹患筋部位・その他) |
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ジストロフィン異常症(デュシェンヌ型/ X染色体連鎖近位筋優位ベッカー型) | X 染色体連鎖 | 近位筋優位 |
肢帯型筋ジストロフィー | 常染色体優性/劣性 | 近位筋優位 |
先天性筋ジストロフィー (福山型/非福山型) | 常染色体優性/劣性 | 近位筋優位 |
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー | 常染色体優性 | 肩甲帯・上腕・顔面筋優位 |
筋強直性筋ジストロフィー | 常染色体優性/劣性 | 遠位筋・咀嚼筋・胸鎖乳突筋優位 |
エメリー・ドレフュス型筋ジストロフィー | X 染色体連鎖, 常染色体優性/劣性 | 肩甲帯・上腕・下腿優位 |
眼咽頭筋型ジストロフィー | 常染色体優性 | 眼瞼·咽頭筋優位 |
※筋ジストロフィー病型・病名一覧表は、以下のリンクでご確認いただけます。
参照元:公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センターHP「筋ジストロフィー病型・病名一覧表」
最も頻度が高いデュシェンヌ型筋ジストロフィーとは
筋ジストロフィーの中で、最も頻度が高いのは「デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)」です。この疾患は、筋細胞膜下に存在するジストロフィン蛋白の異常が原因で発症します。(ジストロフィン蛋白は、筋細胞膜の安定性を維持し、細胞骨格を支える重要な役割を果たしています。)
DMDは通常、男児に発症し、その多くは伴性劣性遺伝によるものですが、一部は突然変異によるものもあります。
発症は主に5歳以下の男児に見られます。DMDの罹患率は、出生男児100万人あたり140〜390人に上ると推定されており、有病率は10万人あたり1.9~3.4人と報告されています。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの症状
初期の段階では、走行能力の低下や転倒の増加、階段の昇降の困難などが主な症状として現れます。筋力の減少は主に近位の筋肉に影響を及ぼし、動揺歩行やガワーズ徴候と呼ばれる特徴的な症状が現れます。特に、ふくらはぎの筋肉に見られる筋肉の仮性肥大が顕著です。
疾患の進行とともに、通常9歳頃には歩行不可能になり、脊柱の変形や側彎症の進行が著しくなります。
多くの場合、車椅子の利用が必要となります。また、心筋障害による左心不全や呼吸筋障害による呼吸不全が進行し、最終的にはこれらの合併症によって死亡することがあります。
ベッカー型筋ジストロフィーとは
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに類似した疾患として、ベッカー型筋ジストロフィーがあります。この疾患は、体幹に最も近い筋肉の筋力低下を引き起こします。ベッカー型はデュシェンヌ型と比較して、より良性の経過をたどり、15歳を過ぎても歩行が可能な場合があります。
筋ジストロフィーの治療法
前述のように、現時点では筋ジストロフィーの根本的治療法は確立されていませんが、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)においては、遺伝子治療であるエクソンスキッピング療法が実用化されています。この療法は、DMDの遺伝子異常に対処し、運動機能の低下を抑制する効果が期待されています。
また、適切な薬物療法やリハビリテーション医療、人工呼吸や人工栄養などのサポートを組み合わせることで、以前は20歳前後とされていたDMD患者の平均寿命が近年では40歳まで延長されています。
さらに、遺伝子治療以外にも、筋線維破壊を抑制するための副腎皮質ステロイド療法や、心不全に対する薬物療法なども有効な治療法の一部として挙げられます。
筋ジストロフィーのリハビリテーション
リハビリテーションにおいて、筋ジストロフィー患者は筋破壊を起こしやすいため、強い負荷の筋力増強訓練は避ける必要があります。
筋ジストロフィーのリハビリテーションの方針は、以下の通りです。
(1)筋力維持
血清CK値を指標とし、適切な筋力増強トレーニングを行う。
(2)関節の変形や拘縮の予防・矯正
関節可動域訓練やナイトスプリント、体幹装具の装着を行う。
(3)能力低下の代償
補装具の導入や家屋の改造、介護機器の利用を考慮する。
(4)呼吸機能の維持
発声や腹式呼吸法の訓練、体位ドレナージ法、人工呼吸器を用いた呼吸リハビリテーションを行う。
(5)摂食嚥下機能の維持
摂食嚥下訓練、頭部の安定補助、食物の形態を工夫する。
また、筋ジストロフィー患者は疲労しやすいため、リハビリテーション中には休息を適宜取り入れます。
在宅における筋ジストロフィー症の特徴
筋ジストロフィーは多様性に富んでおり、各患者が異なる課題を抱えています。それぞれの課題に対する解決方法も異なります。
病型によって、発症時期や障害の進行速度、骨格筋の障害の程度、罹患筋による運動機能や歩行機能、生活活動能力、そして合併症が異なります。病気の進行に伴って、家族の対応も変化していきます。
重要なのは、「何があってもあなたの味方だ」という心理的支持に基づく信頼関係を築くことです。
また、予後が不良であっても、QOL(生活の質)を重視した治療を前向きな姿勢で行うことが重要です。医療依存度が高くても、意義ある生活を送ることを目指します。
肺炎や転倒は生命予後に重大な影響を及ぼす可能性がある予防可能な合併症です。そのため、日常生活においては適切な療養環境を整え、早期の発見と介入を促すことが求められます。
医学的な対応だけでなく、成長過程にある筋ジストロフィー患児には教育面での配慮も不可欠です。身体や知能に合わせた学校選択と、教師との密な連携が求められます。
筋ジストロフィーに関連する社会資源・制度
筋ジストロフィーに関連する社会資源・制度は、以下のようなものがあります。
(1)医療
・医療保険の利用による訪問リハビリテーションなどの居宅サービスの利用
・指定医療機関の難病指定医の診断、治療
(2)医療費助成制度
・小児慢性特定疾病医療費助成制度、難病医療費助成制度など
(3)療育・教育
・小児: 療育手帳、特別児童扶養手当、育成医療、放課後等デイサービスなど
(4)地域・社会生活への支援
・地域生活支援事業、身体障害者手帳、障害者総合支援法に基づく市区町村サービスなど
筋ジストロフィーの利用者に対して訪問看護師が留意すべきポイントとは
それでは、小児の訪問看護において筋ジストロフィーの利用者へ支援を行ううえで看護師が留意すべきポイントについてみていきます。
(1)筋ジス特有の生理的な特徴の把握と包括的な視点
筋ジストロフィーを持つ小児の場合、特有の生理的な特徴を理解し、全身状態の変化や体調の悪化に対する傾向やパターンを包括的に把握することが重要です。これにより、適切な支援やケアを提供することが可能になります。
(2)主治医からの情報共有と対応の共通認識
主治医から、安定時のバイタルサインや呼吸状態の悪化に関する情報を得ることが重要です。喘鳴や陥没呼吸、閉塞性無呼吸、酸素飽和度の低下などのサインに対する対応策を共通認識しておくことで、緊急時の対応がスムーズになります。
(3)遊びを取り入れた発達支援
抱っこやタッチケア、手遊び歌などの遊びの要素を取り入れながら、小児の発達支援を行う視点を持ちます。遊びを通じて、子供の発達を促進し、心身の健康をサポートします。
(4)外出や生活体験の増加を視野に入れる
小児が体調が安定して外出が可能になれば、療育センターや幼稚園・保育園に通うなど、生活体験を増やすことを視野に入れます。外部の刺激を受けながら、社会参加を促進し、成長を支援します。
(5)家族全体の生活パターンを考慮した訪問看護の調整
兄弟姉妹や家族全体の生活パターンを考慮し、訪問看護のタイミングを調整することが必要です。家族が共に支援し合いながら、小児のケアを行うことが大切です。
(6)体調不良時の対応策の準備と家族の安心感を高める
体調不良時の対応策を家族と共に準備し、電話相談や訪問で対応することができる旨を伝えます。これにより、家族の安心感を高め、緊急時のストレスを軽減します。
(7)前言語的コミュニケーションの育成
言語的コミュニケーションが難しい場合、前言語的コミュニケーション(喃語、クーイング、手さし指さし)を育てる支援を行います。これにより、小児のコミュニケーション能力の向上を促し、家族との関係を深めます。
支援のポイント
・運動機能低下に伴う日常生活動作の制限に対応します。
・難治性であり療養期間が長期に及ぶため、家族の負担を軽減する配慮をします。
・摂食・嚥下障害や呼吸障害を伴うことが多く、成長・発達に合わせたケアを提供します。
・専門職種間で長期にわたってチームで支える際には、コーディネーターの役割を担います。
筋ジストロフィーの状態別での支援のポイント
(1)運動機能低下の状態
患者の運動機能の状態に合わせて健康維持や生活の質の維持を考えるために、包括的リハビリテーションの視点を持つことが重要です。
支援のポイント
・拘縮や変形を予防するための関節可動域訓練を行います。
・転倒や事故を防ぐ対策を行います。
・生活範囲を維持したり、広げたりするための支援を行います。
・家族が障害をどのように理解し、受け入れているかを理解します。
(2)呼吸機能低下の状態
在宅での長期間にわたる呼吸管理を維持するためには、経時的な変化を把握するための定期的な評価が必要です。
非常時に備えて予備の物品を用意し、支援者との連絡方法や緊急時の避難計画などをチームで確認する包括的なケアが重要です。
支援のポイント
・適切な呼吸管理を実施します。
・感染予防を行います。
・家族が長期間関わり続けることができるような支援計画を提案します。
・家族と多職種のメンバーと定期的にコミュニケーションを取ります。
・緊急時の対応について話し合います。
筋ジストロフィーにおける訪問看護のアセスメント項目とは
在宅の筋ジストロフィー患者を支援する上で、訪問看護師はまず、病状の経過や本人家族の理解度、退院準備の進捗、指導内容、緊急時の対応、家族構成や面会時の様子、主たる介護者のケアや対応能力などを把握する必要があります。
家族は、子どもの安全を最優先に考えるあまり、病院での指導に厳守することで、家族全体の生活リズムが大きく崩れることがあります。訪問看護師は、在宅療養を継続するために、家族の生活状況を把握した上で、適切なケアを提案します。
さらに、訪問看護師だけでなく、理学療法士や保健師を含む地域の関係者が連携し、支援体制を構築することも重要です。
それでは、筋ジストロフィーにおける訪問看護のアセスメント項目について(1)疾患・医療ケア、(2)活動、(3)環境、(4)理解・意向からみていきます。
(1)疾患・医療ケア
1. 疾患・病態 症状
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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病態 | ・骨格筋障害に伴う運動機能障害はどの程度か |
疾患の症状 | ・関節拘縮 変形、呼吸機能障害、心筋障害、嚥下機能障害 消化管症状骨代謝異常、内分泌代謝異常、眼症状、難聴、中枢神経障害等を合併していないか |
疾患の経過、予後 | ・疾患の進行に伴い傍脊柱筋障害による脊柱変形や姿勢異常,関節拘縮や変形を伴っていないか |
2. 医療ケア 治療
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
服藥 | ・DMDの場合、 副腎皮質ステロイド薬の内服管理ができているか |
治療 | ・根本的な治療法はないことを、養育者がどのように受けとめているか |
医療処置 | ・筋肉、呼吸,飲み込み、循環 (心機能) 等、それぞれの症状について専門医 専門機関での対症療法はどのような経過をとっているか |
訪問看護 | ・食事・栄養、呼吸ケア、リハビリテーションによる機能維持の実施後の変化について. 家族でも取り組めている内容はあるか |
3. 全身状態
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
成長発達段階 | ・デンバー式発達スクリーニング検査,遠城寺式発達検査などを活用して全体発達、運動面、認知面、言語面はどの発達段階にあるか |
呼吸・循環状態 | ・呼吸理学療法が必要かどうか. マスク型の呼吸器や排痰補助装置の管理が適切に行われているか |
摂食・嚥下・消化状態 | ・飲み込む力に合わせた食形態で水分や栄養を保持できているか 経管栄養や胃瘻造設しているか 経口で楽しみとしての食事を併用することについての親の意向はどうか |
栄養・代謝・内分泌状態 | ・肥満ややせが顕著か.嚥下機能低下による誤嚥を起こしていないか |
筋骨格系の状態 | ・歩行障害などの運動機能の低下、関節拘縮や変形、咀嚼・嚥下機能の低下,表情筋の筋力低下 姿勢保持困難. 関節可動域の状況はどうか |
皮膚の状態 | ・褥瘡発生のリスクはないか |
認知機能 | ・興味のある遊び、動きや音、触感などの感覚への反応はどうか |
(2)活動
1. 移動
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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ベッド上の動き | ・楽な姿勢でポジショニングや姿勢保持を行っているか |
起居動作 | ・食事、入浴、 更衣の時に座位保持ができているか |
屋内移動 | ・車椅子移動時に安全に介助されているか. 普段はどの程度移動しているか |
屋外移動 | ・車で外出時の安全確保や姿勢保持はどうしているか. 外出の頻度や活動範囲はどうか |
2. 生活動作
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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基本的日常生活動作 | ・食事、排泄、入浴、 更衣整容時の様子や声かけへの反応はどうか |
手段的日常生活動作 | ・介護と家事が母親や特定の人の負担になっていないか、協力は得られているか |
3. 生活活動
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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食事摂取 | ・経口摂取の内容 回数量はどうか. うまく嚥下できなかった時の対応はどうしているか. アレルギー、経管栄養のチューブの位置、腹部の状況はどうか 痰などで嘔吐していないか. 胃瘻カテーテルが抜けていないか |
水分摂取 | ・水分摂取目安量(体重1kgあたり 45~50mL)はどうか. 下痢対策 (ペプチドで組成されている半消化態栄養剤の使用など)はどうか |
活動 休息 | ・生活リズムは整っているか. 日中 夜間の睡眠時間やパターンはどうか |
生活歴 | ・療育センター、児童発達支援 (通所)、幼稚園 保育園など地域でどのように生活体験を増やしているか |
4. コミュニケーション
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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意思疎通 | ・コミュニケーションはどうか. はい・いいえはどうか、視線が合いやすい姿勢か. 前言語的コミュニケーションはどうか |
意思伝達力 | ・補助代替コミュニケーション手段の利用はどうか |
ツールの使用 | ・絵本や絵カードなどの媒体の活用はどうか 書字補助具 握り補助具の導入はどうか |
5. 活動への参加 役割
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
---|---|
家族との交流 | ・家族がどのように子どもの疾患に寄り添っているか、成長とともに進む運動障害に対する不安を表出できているか |
近隣者・知人・友人との交流 | ・家族が地域で孤立していないか。友だちやその保護者への疾患の説明をどのようにしているか |
養育(子ども) | ・療育センター、幼稚園・保育園、学校について見学などを通じて特徴を知り、本人の状況、家庭状況などを総合的に考えて選択しているか |
(3)環境
1. 療養環境
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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住環境 | ・専門医療機関,療育センター、児童発達支援(通所),幼稚園・保育園までのアクセスはどうか |
地域環境 | ・専門医療機関,療育センター、児童発達支援(通所),幼稚園・保育園までのアクセスはどうか |
2. 家族環境
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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家族機能 | ・母子・父子 夫婦関係は良好か. 親の愛着行動や就労状況はどうか |
家族の介護・協力体制 | ・主介護者,副介護者はいるか、家族内にキーパーソンはいるか,介護力と介護負担はどうか、家族は夜間眠れているか |
3. 社会資源
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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保険制度の利用 | ・各種サービスの利用状況はどうか、調整はうまくいっているか |
保健医療福祉サービスの利用 | ・往診 訪問リハビリテーション、訪問介護 訪問入浴、住宅改修,医療機器・福祉用具の利用状況はどうか. 母親の育児休暇後の支援体制はどうか |
インフォーマルなサポート | ・同じ疾患を抱える家族とピアサポートの機会を得ているか、友人・近所の人との関係は良好かどうか |
4. 経済
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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世帯の収入 | ・経済状態はどうか該当する医療費助成・福祉制度を申請しているかどうか |
(4)理解・意向
1. 志向性 (本人)
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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生活の志向性 | ・日中過ごしたい場所、好きな遊びや刺激はどうか |
性格・人柄 | ・自律性、自主性をどのように獲得していくのか |
人づきあいの姿勢 | ・人とかかわることに課題や悩みを抱えていることが多い。本人の気持ちを受けとめつつ、友だちとかかわれるように本人や周囲の仲間に対して支援できているかどうか |
2. 自己管理力 (本人)
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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情報収集力 | ・疾患や社会資源の情報はどこから得ているのか |
自己決定力 | ・はい・いいえを表出できているかどうか |
3. 理解・意向 (本人)
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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意向 希望 | ・全面的な介助が必要で自らの意思表示が困難であることが多いが、意向を表現する方法はないか |
感情 | ・表情筋の低下に伴い表情は乏しく見えるが、母親の声かけに涙することや緊張する姿などから理解できることはないか |
疾患への理解 | ・いままでできていたことができなくなる喪失体験を感じているか |
受けとめ | ・子どもが抱える不安や悩みを表出できているか |
4. 理解・意向 (家族)
情報収集項目 | 情報収集のポイント |
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意向 希望 | ・遺伝子が原因で起こる疾患であるため親が自責の念を強く抱えていないか |
感情 | ・夫婦間や祖父母との間に確執を抱えていないか. 不安なことを相談する相手はいるか |
疾患への理解 | ・疾患の進行について理解をしているか. 不安や悩みを抱えていないか
・出生前診断を受ける場合、医師だけでなく、セカンドオピニオンとして遺伝カウンセラーなどからも十分な情報を得ているか 検査を受けるにあたり、家族と話し合いを重ねているか |
療養生活への理解 | ・きょうだいへの配慮をどのようにしているか |
家族計画 | ・今後の家族計画をどのように考えているか |
まとめ
今回は、小児の筋ジストロフィーをテーマにその概要から在宅における特徴、訪問看護に求められる支援内容、アセスメント項目等についてお伝えしました。
筋ジストロフィーを発症した子どもに長くかかわりながらの在宅生活を支えるには、身体の発達状態、体調管理、医療ケア、緊急時の対応など訪問看護のサポートが必要不可欠です。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。