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在宅医療ドクターズコラム(4)寝たきりにならないために、サルコペニアに要注意!

こんにちは、恵比寿こもれびクリニックの院長、西嶌暁生です。

人生100年時代と呼ばれる社会において、「笑顔で自分らしく、活き活きと自立して生きる」ためには「健康」が不可欠です。

このコラムでは、在宅の現場で日々奮闘している訪問看護師の皆様に向けて、時間や労力、コストをかけることなく、在宅でも手軽に始められる「健康・美容増進のコツ」をご紹介していきたいと思います。

本日は、高齢期を健康に若々しく過ごすために知っておきたい「サルコペニア」をテーマにお話しさせていただきます。

人生100年時代は70歳がターニングポイント

人生100年時代は70歳がターニングポイント

人生100年時代と言われる昨今、平均寿命も健康寿命も男女ともに伸びています。

1960年の平均寿命は男性67歳、女性73歳でしたが、60年後の2020年には男性82歳、88歳と大幅に延びています。

現在の70代の日本人はかつての70代とは異なり、多くの人たちが自立して過ごすことが多くなってきています。

今や70代の過ごし方が、その後の健康寿命の長さを左右するターニングポイントとっても過言ではありません。

今後の人口ピラミッドの推移

来年2025年には戦後のベビーブーマーである団塊の世代が全員75歳以上となり、65歳以上の高齢者数は3,677万人(国民の3分の1)に達すると予想されています。

今後の人口ピラミッドの推移

参照元:総務省「国勢調査」および「人口推計」平成24年

また、平均寿命も健康寿命も男女ともに伸びています。

女性の場合は、平均寿命と健康寿命の差が表す「不健康割合」が、男性よりも高く、「不健康」として過ごす時間は女性の方が長いと言えます。

平均寿命と健康寿命の差が表す「不健康割合」

参照元:厚生労働省「健康寿命のあり方に関する有識者会議」(2019年)

年齢に伴う自立度の変化パターン

自立度とは、「自分の身の回りのことを自分でできるか」をあらわしています。

すなわち、日常生活の活動動作(歩行、トイレ、食事など)に援助は必要か否かということです。そして、図7のグラフは全国の高齢者を20年間追跡した調査結果です。

これは、私たちの臨床経験をよく反映しています。

実際に、70歳を過ぎたころ、どのように診察室に入ってくるかで、その患者さんのその後の自立度がだいたい予想できます。

70歳のころに、すでに動作が緩慢であったり、歩行がおぼつかないケースでは、早期に自立度が低下するパターンが多いのです。

全国の高齢者を20年間追跡した調査結果

参照元:秋山弘子 長寿時代の科学と社会の構想『科学』岩波書店、2010

何歳になっても、自分の足で軽やかに歩きたいですよね。

高齢期を健康に若々しく過ごすために知っておきたいのが今回のテーマである「サルコペニア」です。

サルコペニアとは?

年齢を重ねるにつれて自分のシルエットが老けて見えるようになった方はいませんか?それはサルコペニアの予兆かもしれません。

サルコペニア(sarcopenia)とは筋肉の分解・減少により筋力が低下した状態です。加齢により筋肉量が減少すると、体力が落ちて生活の質も下がり、見た目年齢も老けていきます。

加齢により筋肉量が減少すると、体力が落ちて生活の質も下がり、見た目年齢も老けていきます

サルコペニアの3大原因は、①加齢、②栄養不足、③運動不足です。

広背筋・腹筋・膝伸筋群・臀筋群などの抗重力筋において多く見られます。

例えば、膝伸筋や臀筋が衰えると歩行に障害をきたし、広背筋や腹筋の筋力が低下した場合は猫背になって老けて見えます。

筋力はどのように落ちていくのか

それでは、どのように筋力は落ちていくのでしょうか?

筋力はどのように落ちていくのか

例えば、下肢筋肉量は20歳頃をピークに減少し始め、60歳以降は年に約1%ずつ減少していきます。

50歳男性で約19kgあった下肢筋肉量は85歳以上では約13kgとなり、40年間で約32%減少すると言われています。

骨格筋は沢山の筋繊維の束からできています。筋繊維は再生と分解を繰り返しており、運動すると筋幹細胞が増殖し、筋繊維が再生されて増加します。

若い時はこのサイクルが効率的で活発ですが、歳を重ねるごとに再生効率が落ちて、分解のほうが勝り、筋肉が減少するのです。

サルコペニアを予防するための2つのポイント

それでは、サルコペニアを予防するには、どうしたらよいのでしょうか。

①高タンパク質の食事で予防する

老いは誰にでもやってきますが、栄養不足や運動不足は改善できる余地があります。筋肉にとっても皮膚にとっても大切なことは、良質なタンパク質を十分量摂取することです。

1日に必要とされるタンパク質は体重1kgあたり1gとされていますが、加齢と共にタンパク質合成の効率は落ちるため、筋肉量を増やしたい方は体重あたり1.5〜2.0gをお勧めします。

65kgの男性ならタンパク質97.5gが最低ラインとなります。

また、この時、同じ種類の肉ばかりを食べずに、牛肉、豚肉、鶏肉などの色々な種類や部位をバリエーション豊かに食べた方が摂取できる栄養素の幅が広がります。

また、きのこや魚介類などからビタミンDを一緒に摂ると、タンパク質の合成が促進されるため効率よく筋肉量を増やすことができます。

②無理のない運動で予防する

忙しい毎日の中で運動の時間を確保するということは、物理的にも精神的にも辛いことがあります。

特に帰宅してから改めてトレーニングジムに行くことはおっくうな気持ちになり、いきなり頑張りすぎると継続できません。

そこで最初に取り組む私のお勧めは、「通勤・仕事中・外出中は階段を使用する」、「帰りに一駅手前で降りて歩く」です。

無理のない運動で予防する

実際、通勤や帰宅ラッシュの混在する時間帯などはエスカレーターを使うよりよっぽど早く移動することができます。

まとめ

今回は、人生100年時代と呼ばれる社会において、高齢期を健康に若々しく過ごすために知っておきたい「サルコペニア」をテーマにお話しさせていただきました。

要介護(要支援)の認定者数は、平成30年4月の時点で644万人、それまでの18年間で約3倍に増加しています。

すなわち、平均寿命と健康寿命のほぼ平行した増加に伴い、自立度が低下して介護が必要な高齢者の数が増えていると言えます。

健康寿命は体力的に生活が自立して初めて成り立ちます。

サルコペニアとは健康の根幹を揺るがす大敵なので、健康な時から油断せずに、予防や未病に取り組みましょう。

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いろいろナースから生まれた看護師の独立事例を冊子にまとめました。岩田看護師(34才女性)は、総合病院に勤めながら「看護師が働き続けられる職場を作りたい」と訪問看護での独立を志望。

訪問看護は未経験であり自己資金もゼロでしたが、ある経営者さんとの出会いにより新規立ち上げの訪問看護ステーションで将来の独立を前提に管理者として働くことが決定しました。 現在年収600万円を得ながら経営ノウハウを習得し、3年後の独立、理想の訪問看護ステーション作りに邁進されています。

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