在宅医療ドクターズコラム(2)褥瘡に負けない!「亜鉛」が強く健康な皮膚を作る

こんにちは、恵比寿こもれびクリニックの院長、西嶌暁生です。

人生100年時代と呼ばれる社会において、「笑顔で自分らしく、活き活きと自立して生きる」ためには「健康」が不可欠です。

このコラムでは、在宅の現場で日々奮闘している訪問看護師の皆様に向けて、時間や労力、コストをかけることなく、在宅でも手軽に始められる「健康・美容増進のコツ」をご紹介していきたいと思います。

本日は、褥瘡に負けない強く健康な皮膚を作るために必要不可欠な栄養素「亜鉛」についてお話しします。

褥瘡(じょくそう)には亜鉛が大きく関係しています

11月から冬にかけて旬となるのが、「海のミルク」と言われるほど栄養豊かでおいしい真牡蠣です。

「海のミルク」と言われるほど栄養豊かでおいしい真牡蠣

牡蠣には亜鉛が豊富に含まれていると聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

在宅における皮膚トラブルの中で褥瘡(じょくそう)は課題のひとつですが、実は亜鉛が大きく関係しているのです。

私が亜鉛と皮膚の関係を強く意識するきっかけになったのは、実際の臨床の現場です。

これまで形成外科医として、多くの患者さんの褥瘡(じょくそう)や慢性潰瘍(まんせいかいよう)を治療してきました。

実際の臨床の現場

褥瘡の主な原因の一つは栄養不足であり、その中でも、“亜鉛不足”の患者は他の患者に比べ、キズの治りが非常に遅いのです。

そのような患者さんに、栄養剤による亜鉛の補充療法を行うと、それまでよりもスムーズにキズが治っていきました。

つまり、「亜鉛」は傷を治す力、すなわち皮膚の再生力に強く関係する栄養素なのです。

亜鉛は強く若々しい皮膚を作る源です

亜鉛は、DNAやタンパク質の合成に働き、細胞の新生(しんせい)を促します。

新しい細胞をつくるには、遺伝子の情報を写したり、タンパク質を合成するなど、化学反応がスムーズに進まなければなりません。

この反応を進めるのが、亜鉛が成分となっている酵素です。

そのような酵素は体内に200種類以上あり、亜鉛が不足すると、細胞分裂がはかどらず、成長障害、爪や皮膚の異常、脱毛、免疫力の低下、味覚障害などを引き起こします。

特に、成人では、“新陳代謝が活発な器官”ほど、亜鉛不足の影響を受けます。すなわち、皮膚、爪、髪の毛、腸粘膜、精子などです。

すなわち、亜鉛は強く若々しい皮膚を作る源なのです。

亜鉛は強く若々しい皮膚を作る源なのです

現代人が亜鉛不足に陥りやすい原因とは

しかし、亜鉛は現代人に不足しているミネラルの一つであり、特に男性の場合は、成長期から、亜鉛の摂取量が推奨量より足りていません(表1)。

さらにいうと、そもそも厚生労働省が推奨している量では、実際に体が必要とする量にはまったく足りていないのが実情なのです。

医療現場の体感としては、亜鉛が不足している成人男性であれば、推奨摂取量の約6倍=60mgほどは必要だと考えています。

現代人が亜鉛不足に陥りやすい原因は主に4つです。

(1)加工食品(コンビニ食)の摂取

加工食品に含まれるポリリン酸ナトリウム(リン酸塩)などは亜鉛の吸収を阻害してしまいます。ただでさえ、亜鉛の吸収率は約30%と低めなのですが、それがさらに低下します。

現代人が亜鉛不足に陥りやすい原因とは

(2)糖質過多の生活

亜鉛はインスリンの材料になります。そのため、糖質の摂取により過剰にインスリンが出ることで、結果的に亜鉛が不足します。

(3)アルコールの摂取

アルコールの代謝に亜鉛が利用されるために、飲酒する方は不足しやすいです。

また、アルコールは尿中への亜鉛の排泄を促します。

事実、私もアルコールは好きな方ですが、以前に血液検査による栄養解析(オーソモレキュラー)を受けた際、亜鉛不足が顕著で、これはまずいと思って生活習慣を見直した経験があります。

(4)亜鉛の摂取不足

単純に、普段の食事からの摂取が足りていないです。特に男性は成長期の12歳頃より亜鉛取得量が推奨量を満たしておらず、女性よりも不足していると言えます(令和元年国民健康栄養調査より)。

また、食事制限でダイエットをしている男性も摂取量が減っています。

まずはプラス2mg! 亜鉛不足を解消する食事メニュー

成人以降、亜鉛の推奨摂取量まで約2mgが足りていません。まずは、この2mgを、無理のない食生活の工夫で取り入れて、強く健康な肌を実現しましょう!

最後に亜鉛不足を解消する食事メニューをご紹介します。

(1)外食メニューの亜鉛料理

1)牡蠣料理

牡蠣料理

冒頭でも触れましたが、言わずと知れた牡蠣料理です。生牡蠣70g(小2個)に約9.2mgも含まれています。

牡蠣料理ならなんでもOKです。居酒屋で牡蠣のメニューにあったら、1品は頼みたいものです。

ちなみに、レモン汁をかけて食べることが多い牡蠣ですが、亜鉛は、ビタミンCやクエン酸と一緒に摂ると、キレート作用により体内に吸収されやすくなります。

ですので、レモン汁をかけて食べるのは理にかなった食べ方なのです。

2)レバー料理

レバー料理

豚レバー50gには3.5mg、牛レバー50gには1.9gの亜鉛が含まれます。レバー料理1品で、十分に2.0mgは達成できます。

(2)家でのおつまみメニューの亜鉛料理

1)空豆

空豆

自分でサッと焼いたり、蒸してもよいですし、スーパーのお惣菜で買っても構いません。空豆10粒(50g)に2.3mgの亜鉛が含まれます。

それだけで、不足分を補うことができます。アルコールを飲みたい夜のおつまみはぜひ、空豆で。

2)カニ缶

カニ缶

調理するのが面倒くさい人は、カニ缶がおすすめ!カニ缶30g(約1食)で1.9mの亜鉛が含まれています。お酒のおつまみにもぴったりです。

まとめ

本日は、褥瘡に負けない強く健康な皮膚を作るために必要不可欠な栄養素「亜鉛」についてお話しました。

亜鉛は強く若々しい皮膚を作る源でありながら、成人の半分以上が「亜鉛不足」といわれるほど日本人に不足しがちな栄養素です。

日ごろから亜鉛を意識した食品を摂取して、亜鉛不足を予防しましょう。

>保険外美容医療での看護師独立ストーリー

保険外美容医療での看護師独立ストーリー

石原看護師は、約1年前に美容エステと美容医療を組み合わせた独自メニューを提供する美容サロンを自宅で開業されました。
週に2回はクリニックに勤務しながら、子育てや家事と両立できるサロン運営を軌道に乗せています。

石原看護師がどのようにして時間や場所にとらわれない働き方を実現できたのか、その経緯、現在の状況、そして今後のビジョンについてお話をうかがいました。

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