在宅で療養をする方々は、地域の様々な社会資源(年金制度、介護保険のサービス提供者、医療や保険、福祉サービスの提供者、民生委員、ボランティアなど)を利用しながら生活しています。
そのため、訪問看護師にとって、関わる利用者がどのような「社会資源」を利用しているか、またどのような支援を受けることができるかを理解しておくことは、アセスメントやサービス提供をおこなう上で非常に重要です。
今回は、在宅療養を支える「社会資源・制度」をテーマに訪問看護と密接に関連する医療保険制度、介護保険制度、障害者総合支援法、高齢者医療確保法、老人福祉法、難病に関する制度などについてお伝えします。
「社会資源」とは
社会資源とは、利用者が日常生活で抱えるニーズを満たしたり問題を解決するために地域や社会全体で提供される様々な支援やサービスのことを指します。
具体的には、制度や法律、専門家や施設、資金、団体、そして人々の知識や技術などが含まれます。
社会資源の種類
資源の種類 | |
---|---|
人 | 訪問看護師、保健師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、 訪問介護員(ホームヘルパー)、 社会福祉士、 医師、薬剤師、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、 民生委員、 ボランティア等 |
物 | 保健・医療・福祉・教育・公民館等の施設、多種多機能の設備、医療器具や材料、福祉用具・日常生活用具等の物品、 サービス活動、住民関係、地域関係、 専門職ネットワーク等 |
金 | 制度や施策を運用する財政、 保険給付金手当、補助金・委託金、 寄付金、収益、研究補助金等 |
情報 | 人物・金の資源情報、 サービス利用者情報、 市民相談や調査等によるニーズ情報 |
また、社会資源には、介護保険制度のように制度が確立されたフォーマルサービスと、家族や友人、ボランティアの方々に支えられているインフォーマルサービスがあります。
フォーマル・インフォーマルの社会資源の特徴と提供例
供給主体 | 特徴 (長所・短所) | 提供例 |
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フォーマルな社会資源: 公的機関やさまざまな専門職による公式な社会資源 |
長所 : 訓練と経験の基準に基づく援助の責任と権限が公式に認められている
短所: 利用者に対する柔軟性が課題である |
国の社会保障システム、 地方自治体の保健・医療・福祉サービス、 地域の団体、 組織、 民間企業などに属する専門職によって提供される |
インフォーマルな社会資源: 非公式な社会資源 |
長所:ニーズへの柔軟な対応が可能
短所: 専門性に欠け、体力的、精神的、経済的な面で限界があり、 安定した供給に課題がある |
個人を取り巻く家族・親族、友人、同僚、近隣、ボランティア等. 情緒的・精神的支援、 助言や情報提供、物や金銭の提供、 介護や家事援助などの道具的手段的支援も含む |
今回は、社会資源のフォーマルサービスのなかで特に訪問看護と密接に関連する医療保険制度、介護保険制度、障害者総合支援法、高齢者の医療の確保に関する法律、老人福祉法、難病に関する制度について解説していきます。
医療保険制度
わが国の医療保険制度は、疾病、負傷、死亡、分娩に対して、保険者が保険給付を行う社会保険であると定義されています(健康保険法第1条)。1961年に、「国民皆保険」という制度が導入され、国民の誰もが何らかの医療保険に加入することが義務付けられ、それ以来、人々の健康と生命を支えてきました。
医療保険は、職場での保険(被用者保険)、地域での保険(国民健康保険)、後期高齢者医療の3つに大別され、国民が加入する保険は、職業や居住地、年齢などによって決まります。国民はいずれかの保険に必ず加入しなければならず、自由に保険を選択することはできません。
医療保険制度
保険名 | 保険者 | 被保険者 | ||
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職域保険 | 健康保険 | 全国健康保険協会管掌 健康保険 (協会けんぽ) |
全国健康保険協会 | 健康保険組合が設立されていない中小企業の被用者 |
組合管掌健康保険 | 健康保険組合 | 事業所の健康保険組合 | ||
船員保険 | 政府 | 船員 | ||
国家公務員共済組合 | 共済組合 | 国家公務員 | ||
地方公務員共済組合 | 地方公務員 | |||
私立学校教職員共済組合 | 私立学校教職員 | |||
地域保険 | 国民健康保険 | 市町村 | 職域保険以外の者 | |
後期高齢者医療制度 | 広域連合47都道府県 | 75歳以上の者, 一定の障害のある65歳以上の者 |
医療保険の給付の方法と一部負担金割合
給付される保険には、現物給付と金銭給付の2つの形態があります。これらは国民健康保険法と健康保険法に基づいています。
給付の範囲と割合は2003年4月から医療費の自己負担率は、義務教育就学前は2割、義務教育就学後から69歳までは3割、70歳から74歳までは2割(現役並所得者は3割)です。
75歳以上の方々は、「高齢者医療確保法」という制度により、1割負担(現役並所得者は3割)となります。
医療保険の給付の種類
医療保険の給付には、8つの種類があります。
(1)療養の給付
被保険者が保険証を使用して入院や外来通院などの医療を受ける場合、「現物給付」として給付されます。
被保険者は医療機関で保険証を提示することで、支払った医療費の一部である「一部負担金」を支払うことができます。これにより、健康保険が適用される医療サービスを利用することができます。
一部負担金を支払った後の残額は、「療養の給付」として保険者が医療機関に支払います。
(2)入院時食事療養費、入院時生活療養費
入院中に受けた食事療養に要した費用、入院時の生活療養費は、65歳以上の方が入院した際の居住費に該当します。「現金給付」として支給されます。
(3)傷病手当金
病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。具体的には、病気やけがのために会社を休んだ場合や、事業主から十分な報酬が得られない場合に支給されます。
(4)高額療養費制度
重い病気などで病院などに長期間入院したり、治療が長引く場合、医療費の自己負担額が高額になります。
そのため、家計の負担を軽減するために、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。
ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時の食事療養費、入院時の生活療養費は支給の対象外となります。
※高額療養費制度についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
(5)訪問看護療養費
居宅で療養中の方が、かかりつけの医師の指示に従って、訪問看護ステーションの訪問看護師から療養上の世話や必要な診療の補助を受けた場合、その費用は訪問看護療養費として「現物給付」されます。
(6)埋葬料(費)
死亡した場合には、葬祭費用などを補うための給付が行われます。「現金給付」として支給されます。
(7)移送費
病気やけがで移動が困難な患者が、医師の指示に基づいて一時的または緊急な必要がある場合、移送された際には、移送費が「現金給付」として支給されます。
(8)その他
出産育児一時金や出産手当金などがあります。これらは「現金給付」として支給されます。
介護保険制度
介護保険制度は、高齢化社会の急速な進展や世帯構造の変化、医療費の増大などに対応するために作られた社会保険制度です。
この制度は、高齢者を社会で支え合うこと、そして国民の健康や福祉を向上させることを目的として、2000年4月1日に始まりました。社会情勢の変化に伴うあらゆるニーズに応じて、法律は3年ごとに改正されています。
※2024年度の改定内容についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
介護保険の基本理念
介護保険は、以下が基本理念とされています。
1. 要介護状態になることの予防や要介護状態の軽減、悪化の防止を目指すこと
2. 医療と十分に連携すること
3. 心身状況や環境等に応じて利用者自らの選択に基づき,適切な保健医療福祉サービスを多様な事業者,施設から、総合的,効率的に提供すること
4. 可能なかぎり在宅での自立した日常生活を目指すこと
介護保険制度のしくみ
保険財政 | 保険料 第1号 第2号被保険者) 50%、公費50% (国25%、都道府県 12.5%、市町村12.5%) |
|
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保険者 | 市町村、特別区 (東京23区) | |
被保険者 | 第1号被保険者 | 第2号被保険者 |
65歳以上 | 40~64歳までの医療保険加入者 | |
保険料 | 原則として、年金より天引き | 医療保険の保険料に加えて一括して徴収 |
サービスを利用できる人 | 要介護者、要支援者 | 介護保険法で定める特定疾病※により介護や支援が必要と認定された人 |
利用者の自己負担 | 原則として、1割 |
※特定疾病に該当する16の疾病
1. 初老期における認知症
2. 筋萎縮性側索硬化症
3. 後縦靭帯骨化症
4. 骨折を伴う骨粗鬆症
5. 多系統萎縮症
6. 脊髄小脳変性症
7. 脊柱管狭窄症
8. 早老症
9. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
10. 脳血管疾患
11. パーキンソン病関連疾患
12. 閉塞性動脈硬化症
13. 関節リウマチ
14. 慢性閉塞性肺疾患
15. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
16. がん末期
要介護者への介護サービス
介護保険を利用する場合、市町村や特別区が行う介護認定審査会による「要介護認定」が必要です。
この要介護認定は、要支援1から2までと、要介護1から5までの7段階に分かれています。要介護認定を受けた人は、以下の表にあるのサービス(介護給付)を受けることができます。
(1)在宅サービス
在宅生活を支えるためのさまざまなサービスを組み合わせて利用することが可能です。
サービスの種類 | 内容 | 対象者 |
---|---|---|
訪問介護 (ホームヘルプサービス) |
介護福祉士、ホームヘルパー等が要介護者の居宅に訪問し、身体介護(排泄、着替え、食事等の介護等)生活援助 (掃除、洗濯等の家事)、通院等乗降介助を行う
※近年、痰吸引等研修を受講し、特定認定行為業務従業者として認定を受けることで一定の条件の下、痰吸引も実施できるよう制度が整った。 |
要介護1~5 |
訪問入浴介護 介護予防訪問入浴介護 (訪問入浴サービス) |
居宅での入浴が困難な要介護・要支援者に対し介護職員、看護師が居 要介護1~5を訪問し、室内に浴槽を設置して入浴介助を行う。
爪切り、整容、着替えなど一連のサービスを提供する。 看護師は入浴可否の判断と必要に応じ主治医との連携を図る。 |
要介護1~5 要支援1・2 |
訪問看護 介護予防訪問看護 |
訪問看護の利用は、ケアマネジャーのケアプランに位置付けられ介護保険の利用となる。 しかし、 末期がん、 重症筋無力症等の疾患は医療保険からの訪問となる。 最近では、 重度化を予防するために退院後や長期にわたる慢性疾患、 精神疾患の生活指導や助言、 観察などで早期にサービス導入されることが多くなってきた。 | 要介護1~5 要支援1・2 |
訪問リハビリテーション 介護予防訪問リハビリテーション |
理学療法士 作業療法士 言語療法士などが主治医から指示を受け、必要に応じた個別リハビリテーションを行う。 基本的に通所によるリハビリテーションが困難な人に行われる。 | 要介護1~5 要支援1・2 |
通所介護 (デイサービス) |
居宅で生活する要介護者が、施設に通い、入浴、排泄、食事等の介護や個別機能訓練等を行う。通所介護規模 (定員数)や利用時間 特徴は施設によって異なるため、要介護者の体力や目的に合わせ選択する。
通所介護では、日常の世話を受けるだけでなく、他者との交流の場所にもなり心身の活性化にもつながる。 |
要介護1~5 |
通所リハビリテーション 介護予防通所リハビリテーション |
医師の指示書のもと、退院後や機能低下のみられる要介護者が施設に通い、リハビリテーション等を行う。
心身の機能の回復維持を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法、言語療法など必要なリハビリテーションを受ける。 |
要介護1~5 要支援1・2 |
短期入所生活介護 短期入所療養介護 (ショートステイ) |
居宅で生活する要介護者が福祉施設や医療施設等に短期間入所し、入浴、排泄、食事等の介護や日常生活上の世話、機能訓練を行う施設である。 | 要介護1~5 要支援1・2 |
居宅療養管理指導 | 医師、薬剤師、歯科衛生士、 管理栄養士などが 通院困難な人に対し、居宅を訪問し療養上必要なケアや指導、管理等を行う。 | 要介護1~5 要支援1・2 |
居宅介護支援 | 要介護者が在宅介護サービスを適切に利用できるよう、 心身の状況、環境 要介護者の望む生活などを勘案し居宅サービス計画を作成し、事業者との連絡調整などを行う。 必要に応じて施設の紹介も行う。 | 要介護1~5 要支援1、2 |
福祉用具貸与 (レンタルサービス) |
居宅で生活をする上で必要な福祉用具をレンタルで利用できる。特殊寝台(ベッド)床ずれ防止用具 (エアーマット)、体位変換器、 認知症老人徘徊感知機器、自動排泄処理装置、車いす、 手すりや段差解消におけるスロープ等がある。
※注意:ベッドやエアーマット、 車いすなどは要介護2以上の人が利用でき、要支援1~要介護1までの人は原則利用できない ただし、 医療観点から必要性があると認められた場合はその限りではない。 |
要介護2~5 |
介護予防福祉用具貸与 (予防レンタルサービス) |
手すり・スロープ (工事を伴わないもの)、歩行器 歩行補助杖など 要介護1介護予防に資するものについて貸与を行う。 | 要介護1 要支援1・2 |
特定福祉用具購入費支給 特定介護予防福祉用具購入費支給 |
都道府県が福祉用具販売事業者として指定した事業者から、1年につき10万円を上限額として、原則9割または7割が保険から支給される。例えば対象となるのは、ポータブルトイレ、シャワーチェア、入浴補助用具などである。 | 要介護1~5 要支援1・2 |
住宅改修費支給 介護予防住宅改修費支給 |
居住する住宅 (介護保険被保険者証の住所地)で手すりの取り付けや段差解消などの改修をした際に、 20万を上限として、原則9割または7割が保険から支給される。
例えば、 廊下や玄関、 浴室などへの手すり設置や段差解消、 滑り防止および円滑な移動等のための床材変更などがある。 利用にあたっては、事前に申請を行い、改修内容の審査を受けること、またケアマネジャーの意見書が必要となる。 |
要介護1~5 要支援1・2 |
(2)施設サービス
施設サービスは、3種類の施設があります。
サービスの種類 | 内容 | 対象者 |
---|---|---|
介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム) |
日常生活に常時介護が必要で、自宅では介護が困難な高齢者が入所できる。 食事、入浴、排泄などの日常生活の介護や機能訓練、健康管理が受けられる。 2015年4月より原則、 要介護3~5の人が対象となった。 ただし、要介護 1・2の人でも認知症や障害、同居の家族が支援できない等、介護老人福祉施設以外の生活が著しく困難と認められる場合は特例的に入所可能である。 | 要介護3~5 |
介護老人保健施設 ( 老人保健施設) |
病状が安定し、治療よりは看護や介護に重点を置いたケアが必要な高齢者を対象としている。 医学的な管理のもとで、入浴、排泄、食事など日常生活の介護や機能訓練が受けられる。 | 要介護1~5 |
介護医療院 (介護療養型医療施設) |
医療依存度が高く、長期の療養を必要とする高齢者が入所でき医療・看護・介護などが受けられる。医療施設と生活施設としての両方の機能を備えた施設である。日常生活支援のほか、看取りやターミナルケアを中心とした長期療養を担い、 喀痰吸引、 経管栄養などの医療処置を実施する。
2017 年度末をもって、 介護療養型医療施設は廃止・転換を行うこととなり(2024年3月までは移行期限とされている)、介護医療院が新たに法定化された。 |
要介護1~5 |
(3)特定施設入居者生活介護
指定を受けた有料老人ホーム等に入所している高齢者に日常生活上の支援や介護を提供する。
サービスの種類 | 内容 | 対象者 |
---|---|---|
定施設入居者生活介護 | 特定施設入居者生活介護の指定を受けた有料老人ホーム、 養護老人ホーム 軽費老人ホームおよび一部のサービス付き高齢者向け住宅などが対象である。施設によって特徴の違いがあるが、 日常生活の支援や介護全般、相談や助言等を行う。 | 要介護1~5 |
(4)地域密着型サービス
高齢者が地域での生活を続けるためには、地域ごとに適切な支援サービスが必要になる場合もあります。地域密着型サービス
は、日常生活を営む地域ごとに、適切なサービスを受けられるようにするための支援です。
地域の実情に応じて、事業者の指定や監督指導は市区町村が行います。介護保険被保険者証の住所地(市区町村)以外の地域で提供される地域密着型サービスは、原則として利用できません。
サービスの種類 | 内容 | 対象者 |
---|---|---|
認知症対応型通所介護 介護予防認知症対応型通所介護 |
認知症高齢者を対象に食事、入浴、日常生活上の支援や生活行為向上のための支援を日帰りで行う。一般のデイサービスに比べスタッフは多く配置され、 音楽療法や回想法なども行っている。 | 要介護1~5 要支援1・2 |
地域密着型通所介護 | 定員18名以下の小規模な通所介護施設で、食事などの日常生活の支援や生活行為向上のための支援を日帰りで行う。 施設によっては、入浴も行う。 | 要介護1~5 |
認知症対応型共同生活介護 介護予防認知症対応型共同生活介護 (グループホーム) |
認知症高齢者が介護を受けながら少人数で共同生活する住宅(グループホーム)である。 家庭的な環境と地域住民との交流のもと、住み慣れた環境で生活することを目的とした専門施設 原則入居条件に認知症の診断を受けていること。 | 要介護1~5 要支援2 |
看護小規模多機能型居宅介護 | 医療依存度の高い人や退院支援、 在宅看取り期の支援などを 「訪問」「通い」「泊まり」の介護サービスと訪問看護の4つの機能を併せ持つ一事業所で、介護と看護を一体的に提供する。 | 要介護1~5 |
小規模多機能型居宅介護 介護予防小規模多機能型居宅介護 |
「通所」を中心に、 利用者の状況や希望に応じて 「宿泊」 「訪問」 といったサービスを組み合わせて、 自宅で継続して生活するために必要な支援を行う。 | 要介護1~5 要支援1・2 |
夜間対応型訪問介護 | 夜間(22時~6時まで)に安心して在宅生活が送れるよう、 定期巡回訪問または、 随時通報を受け訪問介護員等が訪問し、 排泄、食事、体調チェック等の介護等の提供を行う。 | 要介護1~5 |
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 | 日中、夜間 (深夜・早朝)を問わず、 介護サービスと訪問看護が連携を取りながら、 定期の巡回や随時の通報により訪問し、必要に応じて入浴、排泄、食事等の介護や療養上の世話、診療の補助を行う。 | 要介護1~5 |
一方、要支援の場合は、介護予防サービス(予防給付)を受けることができます。
介護保険制度に該当しないが、要介護認定に該当しない「非該当者」には、市区町村が行う介護予防事業や介護予防・日常生活支援総合事業などが利用できます。
なお、この介護予防・日常生活支援総合事業は、要支援の方も利用できます。
介護保険における介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割とは?
ケアマネジャーは、介護保険制度におけるコーディネーターであり、利用者や家族の代理として、居宅で受けられる介護サービスの紹介やケアプランの作成、介護サービスの調整、サービス給付費の計算や請求などを行います。
また、医療・保健福祉の様々な社会資源をニーズに合わせて組み合わせ、円滑かつ効率的に支援を展開するためのケアプラン(介護支援計画)を立案し、ケアプランに基づいたサービスが適切に提供されるよう、要介護者(利用者)の目標を関係者で共有し、その達成に向けて連携を図ります。
利用状況や改善状況などをモニタリングし、適時に必要なサービスを見直します。
ケアマネジャーの多くは、「居宅介護支援事業所」という介護保険制度に位置づけられたサービス事業所に所属しています。
また、施設に入所している利用者についても、ニーズに応じた施設サービスが適切に提供されるよう、介護保険施設などでもケアマネジメントが行われるようケアマネジャーの配置が義務付けられています。
地域支援センター
地域包括支援センターは、原則として保健師や社会福祉主介護支援専門員を職員として配置され、すべての市町村に設置されています。全国には5,351カ所あります。
要介護者や要支援者の生活を継続的に支えるためには、介護サービスを中心に、医療サービスやその他の生活支援サービスが継続的かつ包括的に提供される必要があります。
地域包括支援センターは、地域で包括的な支援を提供するために、関係者の連絡調整を行い、さまざまなサービスや支援の調整を行う重要な機関です。
業務内容は以下の通りです。
① 介護予防ケアマネジメント業務:要支援者のケアマネジメントを実施する
② 総合相談支援業務:初期相談対応や専門的な相談支援、ネットワークの構築、実態把握などを行う
③ 権利擁護業務:成年後見制度の活用促進や高齢者虐待への対応などの支援を行う
④ 包括的・継続的ケアマネジメント支援業務:ケアマネジャーへの日常的相談や主治医との連携、ネットワークづくりなどにより包括的かつ継続的な支援を行う
地域支援センターの業務
参照元:厚生労働省「地域包括支援センターの概要」
障害者総合支援法 (障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)
障害者総合支援法は、身体障害者、知的障害者、精神障害者に加え、難病なども対象として、2013年に障害者自立支援法に代わって施行された法律です。
この法律の目的は、障害福祉サービスによる支援に加えて、地域生活支援事業などの必要な支援を総合的に提供することです。
障害者総合支援法の給付対象者
身体障害者、知的障害者、精神障害者、障害児、および難病など、国が定める366の疾病(2021年11月現在)による障害を持つ人々が対象となります。対象者は、身体障害者療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、必要と認められた支援を受けることができます。
障害者総合支援法の概要
(1)障害者の地域での生活をサポートする取り組み
・新しいサービスである自立生活援助の導入
・就労定着を促進するための新しいサービスである就労定着支援の提供
・重度の障害を持つ人々への訪問介護サービスの拡充
・高齢障害者が介護保険サービスを円滑に利用できるよう、利用者負担を軽減する取り組み(障害福祉制度による償還)
(2)障害児の支援ニーズに柔軟に対応する取り組み
・児童発達支援を提供するための居宅訪問サービスの新設
・保育所などを訪問して支援を提供する対象を乳児院や児童養護施設にも拡大
・医療的ケアが必要な障害児への支援の充実
・障害児向けサービスの体制整備を計画的に行う取り組み
(3)サービスの質の確保と向上のための環境整備
・補装具費の支給範囲の拡大(貸与制度の導入)
・障害者福祉サービスに関する情報の公表制度の創設
・地方自治体による調査や審査の効率化
支給決定は、障害支援区分の判定結果だけでなく、介護者の状況やサービスの利用に関する意向、サービス利用計画案なども考慮されます。
障害者総合支援法におけるサービス体系
市町村のサービスは,自立支援給付と地域生活支援事業に分けられます。
参照元:全国社会福祉協議会「パンフレット 障害福祉サービスの利用について (2021年4月版)」
障害福祉サービスの種類
「障害福祉サービス」には、介護を受ける場合の「介護給付」と、訓練などの支援を受ける場合の「訓練等給付」があります。それぞれのサービス利用の手続きは異なります。
サービスには期限のあるものとないものがありますが、期限がある場合でも、必要に応じて支給の更新(延長)が一定程度可能です。
地域生活支援事業
都道府県や市町村は、地域の特性に合わせて、障害のある人々(およびその家族)が日常生活を送る上で必要な支援や、彼らのニーズに適した利便性の高いサービス情報を提供します。
市町村の例
① 移動支援
移動の円滑化を支援します。
② 地域活動支援センター
地域活動支援センターは、趣味や生産活動の機会を提供し、社会との交流を促進します。
③ 福祉ホーム
住居を必要としている人が、手頃な価格で居室などを利用できます。また、日常生活で必要な支援も提供します。
障害福祉サービスに係る自立支援給付等の体系
サービス名称 | サービスの内容 | |
---|---|---|
介護給付 | 居宅介護(ホームヘルプ) | 自宅で、入浴、排泄、食事の介護等を行う |
重度訪問介護 | 重度の肢体不自由者または重度の知的障害若しくは精神障害により、行動上著しい困難を有する人で常に介護を必要とする人に、自宅で、入浴、排泄、食事の介護、外出時における移動支援、 入院時の支援などを総合的に行う | |
同行援護 | 視覚障害により、 移動に著しい困難を有する人に、 移動に必要な情報の提供 (代筆・代読を含む)、移動の援護等の外出支援を行う | |
行動援護 | 自己判断能力が制限されている人が行動するときに、 危険を回避するために必要な支援や外出支援を行う | |
重度障害者等包括支援 | 介護の必要性がとても高い人に、 居宅介護等複数のサービスを包括的に行う | |
短期入所(ショートステイ) | 自宅で介護する人が病気の場合などに、 短期間、 夜間も含め施設で、入浴、排泄、食事の介護等を行う | |
療養介護 | 医療と常時介護を必要とする人に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、 看護、介護および日常生活の支援を行う | |
生活介護 | 常に介護を必要とする人に、 昼間、 入浴、排泄、食事の介護等を行うとともに、創作的活動または生産活動の機会を提供する | |
施設入所支援 障害者支援施設での夜間ケア等) | 施設に入所する人に、夜間や休日に、入浴、排泄、食事の介護等を行う | |
訓練等給付 | 自立訓練 | 自立した日常生活または社会生活ができるよう、一定期間、身体機能または生活能力の向上のために必要な訓練を行う。機能訓練と生活訓練がある。 |
就労移行支援 | 一般企業等への就労を希望する人に、 一定期間、 就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練を行う | |
就労継続支援 (A型=雇用型、B型=非雇 用型) |
一般企業等での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、 知識および能力の向上のために必要な訓練を行う
雇用契約を結ぶA型と、雇用契約を結ばないB型がある |
|
就労定着支援 | 一般就労に移行した人に、就労に伴う生活面の課題に対応するための支援を行う | |
自立生活援助 | 一人暮らしに必要な理解力・生活力等を補うため、定期的な居宅訪問や随時の対応により日常生活における課題を把握し、 必要な支援を行う | |
共同生活援助 (グループホーム) |
共同生活を行う住居で、相談や日常生活上の援助を行う。 また、入浴、排泄、食事の介護等の必要性が認定されている方には介護サービスも提供する
さらに、グループホームを退居し、 一般住宅等への移行を目指す人のためにサテライト型住居がある |
|
相談支援 | 計画相談支援 | ・サービス利用支援 障害福祉サービス等の申請に係る支給決定前に、 サービス等利用計画案を作成し、支給決定後に、サービス事業者等との連絡調整等を行うとともに、 サービス等利用計画の作成を行う |
・継続サービス利用支援 支給決定されたサービス等の利用状況の検証 (モニタリング)を行い、サービス事業者等との連絡調整等を行う |
||
地域相談支援 | ・地域移行支援 障害者支援施設、 精神科病院、 保護施設、 矯正施設等を退所する障害者 児童福祉施設を利用する18歳以上の者等を対象として、地域移行支援計画の作成、 相談による不安解消、外出への同行支援、 住居確保、 関係機関との調整等を行う |
|
・地域定着支援 居宅において単身で生活している障害者等を対象に常時の連絡体制を確保し、緊急時には必要な支援を行う |
||
地域生活支援事業 | 移動支援 | 円滑に外出できるよう、 移動を支援する |
地域活動支援センター | 創作的活動、または生産活動の機会の提供、 社会との交流の促進を行う | |
福祉ホーム | 住居を必要としている人に、低額な料金で、居室等を提供するとともに、日常生活に必要な支援を行う |
高齢者の医療の確保に関する法律
1982年に制定された老人保健法は、国民の老後の健康を維持し、適切な医療を確保することを目的としています。この法律では、40歳以上の人々に対する健康診断などの保健サービスと、75歳以上の高齢者に対する医療の給付を市町村が実施することが定められていました。
しかし、2008年4月に老人保健法は廃止されました。その結果、老人保健法の医療事業は「高齢者の医療の確保に関する法律」に、その他の保健事業は「健康増進法」に引き継がれることになりました。
老人福祉法
老人福祉法は、1963年に制定され、高齢者の総合的な福祉の促進を目的としています。この法律により、都道府県や市区町村は老人福祉計画を策定することが義務付けられ、高齢者向けの施設や在宅支援サービスについて規定されています。具体的には、老人デイサービスセンターや養護老人ホームなどの施設、そして在宅でのホームヘルプやデイサービスなどの支援が含まれます。
1973年の一部改定で、老人の医療費の自己負担が無料化されました。しかし、この政策が逆効果となり、高齢者の医療需要が増加し、医療費の上昇につながりました。これにより、国や地方自治体の財政が圧迫される事態となりました。
その後、高齢化が進行し、財政問題が深刻化したため、介護保険法が制定され、介護サービスの負担を財政的に支援することで介護部門を管轄しました。現在では、介護保険法が主要な枠組みとなっており、老人福祉法は緊急時や特別な事情がある場合に対応するための補完的な役割を果たしています。
難病に関する制度、取り組み
2015年1月に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)は、以前の厚生省の規則に基づく制度から法律に基づく制度に変更されました。
難病法の基本理念は、「難病の克服を目指し、難病患者が社会参加の機会を確保し、地域社会で尊厳を持って生活できる共生社会を実現すること」です。この理念に基づいて、難病の医療に関する施策や人材育成、調査研究、療養生活や環境整備、福祉サービスや就労支援などに関する国の基本方針が策定されています。
また、この法律の柱として、以下の3つが提示されています。
1. 難病に関連する医療費の公平で安定した助成
2. 難病医療に関する調査や研究の推進
3. 療養生活環境整備事業の実施
この法律の趣旨は、難病の患者に対する医療費の助成を法律で定め、その費用に消費税の収入を充てることなど、公平かつ安定した制度を確立することです。また、基本方針の策定や調査研究の推進、療養生活環境整備事業の実施などの措置も行われます。
※指定難病について詳しくは以下の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、在宅療養を支える「社会資源・制度」をテーマに訪問看護と密接に関連する医療保険制度、介護保険制度、障害者総合支援法、高齢者医療法、老人福祉法、難病に関する制度などについてお伝えしました。
訪問看護の対象者は、社会の資源を利用する人々であり、療養中の患者やその家族は、自宅での生活を継続したいと考えています。
訪問看護師が社会資源を理解することは、より安定した在宅療養の支援につながります。また、社会の変化に伴い、社会資源も変化しているため、常に最新情報をキャッチアップすることも大切です。
本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。