全身性エリテマトーデス(SLE)患者への支援内容とは:訪問看護の役割とアセスメント項目

全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己免疫反応によって多臓器が同時に障害される原因不明の疾患です。

SLEは、厚生労働省が指定する特定疾患(指定難病)であり、訪問看護においても関わることのある病気の一つです。

今回は、全身性エリテマトーデス(SLE)をテーマにその概要から療養生活における支援内容やアセスメント項目などSLEの看護をおこなう上で知っておきたい内容をお伝えします。

全身性エリテマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身の多様な臓器に影響を及ぼす炎症性疾患であり、症状は再燃と寛解を繰り返します。

SLEとはSystemic Lupus Erythematosusの略称であり、皮膚の赤い発疹(erythema)が狼(lupus、ラテン語で狼の意味)に噛まれた痕のように見えることから名付けられました。

現在のところ、SLEの根本的な原因は解明されておらず、根治療法も存在しないため、国による「指定難病」の対象疾患となっています。

日本におけるSLE患者数は推定で約6万~10万人と考えられています。2021年に難病申請を行った患者は64,304人ですが、申請を行っていない患者や医療機関を受診していない患者を含めると、実際の患者数はその約2倍と推定されています。

性別では女性に圧倒的に多く、男女比はおよそ1:10です。特に20~40歳代の妊娠可能年齢の女性に好発します。

全身性エリテマトーデス(SLE)の原因

全身性エリテマトーデス(SLE)の原因はまだ完全には解明されていませんが、自己免疫反応によって体が攻撃される病気であることは明らかになっています。

家族内での発症報告から、遺伝的要因が関与している可能性が考えられています。

また、紫外線やウイルス感染(風邪など)、怪我、ストレス、喫煙、外科手術、妊娠・出産などが、SLEの発症や病状悪化を引き起こす要因として知られています。

全身性エリテマトーデス(SLE)の症状

全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己免疫の異常によって、自己抗原に対する抗核抗体や抗DNA抗体などの自己抗体や免疫複合体が生成され、皮膚、心臓、腎臓、神経などの複数の臓器に障害が生じる全身性自己免疫疾患です。

主な症状としては以下が挙げられます。

全身性エリテマトーデス(SLE)の主要な症状

(1)全身症状
全身倦怠感、発熱、貧血、白血球およびリンパ球の減少、血小板減少


(2)皮膚・粘膜症状
蝶形紅斑、円盤状紅斑、発疹、脱毛、口腔潰瘍


(3)筋・関節症状
関節痛、多発性関節炎、ジャクー (Jaccoud) 変形


(4)腎症状
ループス腎炎、腎不全


(5)中枢神経症状
けいれん、精神症状、脳梗塞、神経炎


(6)心血管障害
心膜炎、胸痛、心囊液貯留


(7)肺・胸膜症状
胸膜炎、急性間質性肺炎、肺胞出血


(8)消化管症状
口腔潰瘍、腹膜炎、ループス腸炎

全身性エリテマトーデス(SLE)の診断

以下の11項目の症状のうち4つ以上該当すれば、全身性エリテマトーデス(SLE)と診断されます。

1.頬の蝶形紅斑

2.円板状の発疹(ディスコイド疹)

3.日光に対する過敏症

4.口または鼻、のどの潰瘍

5.関節の炎症

6.肺、心臓、その他の器官の周囲に水がたまる(漿膜炎)

7.腎臓の障害(尿蛋白など尿の異常)

8.脳や神経の障害

9.血液検査で白血球やリンパ球数の減少、溶血性貧血、血小板数の減少

10.血液検査で抗2本鎖DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体などが陽性

11.血液検査で抗核抗体が陽性

診断が確定しても、内臓や血管の病変が疑われる場合は、病気の重症度や治療方針を決定するためにさらなるCT検査や超音波検査、髄液検査などの精密検査が必要です。

糸球体腎炎による腎障害が疑われる場合は、腎生検が必要です。また、血液検査で抗リン脂質抗体が検出されれば、血栓症のリスクがあることがわかります。

全身性エリテマトーデス(SLE)の治療

全身性エリテマトーデス(SLE)の基本的な治療は、免疫を抑制する薬物、特にステロイド薬の投与です。投与量は病態や疾患の活動性に応じて調整されます。

重症度の高い場合、例えば活動性の高いループス腎炎や溶血性貧血、間質性肺炎などの重要臓器の病変がある場合には、ステロイドパルス療法(ステロイド薬を短期間に大量投与する治療)が選択されます。

さらに、臓器病変の重症度に応じて、ステロイド薬と組み合わせて、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、シクロホスファミド間欠静注療法(IVCY)などの免疫抑制薬を用いた治療が行われます。

シクロホスファミドは、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の治療に使われる抗がん薬ですが、低用量では自己免疫抑制効果があり、SLEの治療にも用いられます。

また、世界的な標準治療として用いられていたヒドロキシクロロキン(HCQ)は全身症状の軽減効果が認められており、日本でも2015年に承認されました。

全身性エリテマトーデス(SLE)の予後

全身性エリテマトーデス(SLE)は、臓器障害の範囲や重症度に応じて、病気の重篤度が異なります。

関節炎や皮膚症状のみの場合は、薬物療法による制御も比較的容易であり、一般の健康な個人とほとんど同等の日常生活を送ることが期待されます。

一方で、腎臓障害、中枢神経病変、心臓病変、肺病変、血管炎などの臓器障害が存在する場合は、多種多様な薬剤を長期にわたって高用量で使用する必要が生じることがあります。

長期にわたる治療が必要になります。

全身性エリテマトーデス(SLE)は、再燃と寛解を繰り返し、慢性的な経過をたどる疾患です。

患者は長期間にわたる治療と通院を行いながら、寛解の状態を維持し、再燃を早期に検知するためのセルフモニタリングを行っていくことになります。

SLEの増悪因子には過労、ストレス、紫外線への長時間の曝露、寒冷刺激、感染、妊娠・出産などがあります。患者は寛解状態を長期間維持するために、これらの増悪因子を避けながら生活を長期的に管理する必要があります。

SLEに対する治療は進歩し続けており、現在では早期診断・早期治療が可能です。その結果、予後は以前に比べて著しく改善し、10年生存率は90%を上回ります。

SLE患者の死亡原因は、従来はSLE自体の症状による腎不全や中枢神経ループスが多かったですが、近年では感染症や動脈硬化性病変などによる死亡が増加しています。

全身性エリテマトーデス患者の不安・心理的葛藤

前述の通り、全身性エリテマトーデス(SLE)は根治の方法がない難病であり、そのため患者はSLEに罹患したこと自体に大きな衝撃を受けることがあり、抑うつ状態に陥ることもあります。

ステロイド薬や免疫抑制薬の投与により、骨粗鬆症や糖尿病、さまざまな感染症などの合併症のリスクも高まるため、患者はSLEの治療を受けながら、SLE以外の疾患を発症する不安も抱くことになります。

全身性エリテマトーデス患者の精神的・社会的苦痛

全身性エリテマトーデス(SLE)の特徴的な症状として、蝶形紅斑や脱毛が見られる他、ステロイド薬の長期使用による副作用として、満月様顔貌(ムーンフェイス)、中心性肥満、多毛などの特徴的な外見の変化が見られます。

SLEの患者は主に若年女性が多いため、こうした容貌の変化はボディイメージの混乱につながり、精神的・社会的な苦痛が非常に大きくなります。

SLEの治療は長期間にわたり、治療や通院による制約も生じるため、学業や就職、結婚、妊娠・出産などのライフイベントへの影響が大きくなります。

患者は将来に対する不安を抱きやすく、「この病気を持ったまま仕事を続けられるのか」「結婚することができるのか」といった精神的・社会的苦痛をいただくことになります。

家族の心理的・経済的負担

全身性エリテマトーデス(SLE)は難病であり、再燃と寛解を繰り返して治療が長期化するため、家族も患者と同様に先行きの見えない不安や精神的な苦痛を感じています。

SLEの原因は不明ですが、遺伝的要因に環境要因が加わることで発症すると考えられており、家族は罪悪感を抱きやすい傾向にあります。

また、SLEの患者は主に若年女性が多く、家族も患者の就業や妊娠・出産など将来について不安を抱くことがあります。

さらに、患者が入退院を繰り返したり治療を長期に継続することにより、入院費や治療費などの経済的負担や、家族が役割の代行をする社会的負担も発生します。

全身性エリテマトーデス(SLE)に対する医療費助成制度

全身性エリテマトーデス(SLE)は、「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」によって指定されており、病態の重症度や障害の程度に応じて、手続きを経て医療費の助成を受けることが可能です。

全身性エリテマトーデス(SLE)における指定難病の医療費助成の認定基準

SLEの診断基準(1997年改訂ACR分類基準)を満たしている、かつ以下のどちらかに当てはまる

・重症度分類 SLEDAIスコア4点以上

・高額な医療を継続することが必要な患者(軽傷高額に該当)

患者や家族には、医療費の助成制度やその他の社会保険制度についての案内や、メディカルソーシャルワーカーへの相談窓口などの情報提供を行います。

また、患者の希望に応じて患者会を紹介し、生活上の工夫に関する情報交換や、同じ立場の人々と悩みや不安を共有できる機会を提供することも重要です。

全身性エリテマトーデス患者・家族への支援の方針

全身性エリテマトーデス(SLE)患者への支援の方針は、身体的、心理・社会的特徴を踏まえて、段階ごとに考えていく必要があります。

(1)診断時

診断時には、苦痛を伴う多様な症状を緩和し、診断による衝撃を軽減し、疾患および治療に対する理解と受容を促進し、患者が積極的に治療に取り組めるよう支援します。

(2)活動期・再燃期

活動期や再燃期には、症状や治療による苦痛を緩和し、再燃による心理的苦痛を軽減します。また、再燃を引き起こした増悪因子について患者と協力して考え、生活の再調整に向けた支援を行います。

(3)寛解期

寛解期には、寛解状態を長期間維持するために、患者がSLEの増悪因子を理解し、疾患と調和しながら生活を調整できるように、セルフマネジメントを支援します。

全身性エリテマトーデス患者へのアセスメント項目

全身性エリテマトーデス(SLE)は、全身の臓器に非常に多様な症状が現れ、治療による影響もさまざまな症状に及ぶ疾患です。患者の全身に表れる症状を詳細に観察し、異常を早期に発見して対処する必要があります。

また、現れている症状が患者の日常生活や心理社会的側面に与える影響にも注意を払い、アセスメントすることが重要です。

それでは、全身性エリテマトーデス(SLE)患者へのアセスメント項目について(1)身体的側面、(2)日常生活の側面、(3)認知・心理的側面、(4)社会・経済的側面からみていきます。

(1)身体的側面

現在の病状やステロイド薬、免疫抑制薬の副作用を評価します。また、SLE特有の症状に伴う身体的な苦痛の有無や程度、再燃の徴候を評価します。

情報収集項目 情報収集のポイント
病歴 ・現病歴、既往歴、薬剤の使用歴とアレルギーなど
・家族歴
・妊娠歴・月経歴
検査データ
①血液検査
・赤血球数、赤血球沈降速度、 白血球数、リンパ球数、 CRP、 血小板数
②骨・関節系 ・X線、CT
③免疫系 ・自己抗体 (ANA)、 抗二本鎖DNA抗体(抗ds-DNA抗体)、 抗 Sm抗体 抗リン脂質抗体
④呼吸・循環器系 ・胸部X線、胸部CT、呼吸機能検査、血液ガス分析、心電図、心エコー、心臓カテーテル検査 血管造影
⑤腎・泌尿器系 ・腎機能検査、腎生検、尿の性状、尿量
⑥消化器系 ・X線造影、内視鏡、腹部CT
・食事内容、食事量、 腹部症状の有無、 発現時期と程度
・排便状況 (便秘・下痢の有無と程度)
⑦脳神経系 ・脳波検査、頭部CT、頭部MRI、髄液検査
バイタルサイン ・体温、脈拍、血圧、 呼吸数と呼吸の性状、Spo2
徴候症状 ・症状の有無と程度を把握する

・発熱、全身倦怠感、易疲労感、関節痛、蝶形紅斑、 口腔潰瘍、 体重減少、浮腫、頭痛、けいれん、意識障害、脱毛、幻覚、情緒不安定、抑うつなど

備考

・過去に腎炎や貧血の既往がある場合、SLEの一部症状がそれらの症状に先行することがあります。


・薬剤によって引き起こされるSLE様症状(薬剤誘発ループス)との鑑別のために、現在使用している薬剤を確認します。


・SLEには遺伝的要因が関与しているため、家族にもSLEやその他の膠原病、自己免疫疾患を発症している人がいることがあります。


・抗体の生成による血球成分の減少が起こるため、感染しやすい状態や貧血、出血傾向の程度を認識し、SLEの重症度を把握します。また、ステロイド薬や免疫抑制薬の副作用の有無や程度も把握します。


・SLEの関節炎は骨破壊を伴わないため、関節リウマチとの鑑別が可能です。また、ステロイド薬の使用による大腿骨頭や膝関節の無菌性壊死の有無を確認します。


・自己抗体の状態からSLEの再燃を把握します。


・臓器の障害の有無や程度に基づいて、SLEの重症度を判断します。


・ループス腎炎では、持続的なタンパク尿や血尿が認められます。


・SLEの症状や感染の徴候を理解します。


・SLEの重症度や再燃の状態を把握します。

(2)日常生活の側面

全身性エリテマトーデスとその治療が日常生活に及ぼす身体的・精神的症状への影響を評価します。

情報収集項目 情報収集のポイント
環境 ・生活している環境、 家庭状況や就学 職業上の環境
食事 ・食事回数と量 内容、 食欲、 水分摂取量
排泄 ・排尿回数、排尿量と性状
睡眠 ・睡眠時間、寝つきや目覚めの状況
清潔 ・手洗い含嗽、 口腔ケア等の清潔行動、 入浴ができているか
動作・活動 ・ADL、 日常的に行っている運動の種類、 運動量、 時間、回数運動の種類、 運動量時間、回数

・どのような活動が障害されているか、患者の対処

趣味・余暇活動 ・どのような趣味 余暇活動が行えているか
セルフケア能力 ・日常生活を調整しながら治療を継続する能力の有無、程度、日常生活のなかでできることできないことを把握する

(3)認知・心理的側面

全身性エリテマトーデスとその治療が認知や心理状態に与える影響を評価します。

情報収集項目 情報収集のポイント
疾患や治療の理解および受け止め ・疾患および増悪因子、 治療およびその副作用をどのように理解し、受け止めているか

・情報提供をするうえで必要な理解力・認知機能の状態

価値・信念 ・どんな価値観をもっているか、大切にしていることは何か
対処方法 ・これまで問題にどのように対処してきたか
心理状態 ・不安、抑うつ、精神的な問題の有無や程度

(4)社会・経済的側面

全身性エリテマトーデスとその治療が社会的・経済的状況に与える影響を評価します。また、患者のサポート体制や支援者を評価します。

情報収集項目 情報収集のポイント
役割 ・就業の有無と業務内容、勤務時間、労働量、職場の環境
職業 ・会社・家庭などにおける役割
家族構成 ・家族構成・家族内での役割
家族の状態 ・疾患や治療に対する家族の理解と受け止止め、家族内での協力体制
キーパーソン ・家族または周囲の人のなかでのキーパーソンは誰か
経済状態 ・医療保険の種類、 民間保険の加入状況、医療費の生活への負担
ソーシャルサポート ・友人、知人・同僚・患者会 コミュニティなどのサポートの有無、 利用できる社会資源

適切な症状マネジメントを行うために

全身性エリテマトーデス(SLE)患者の適切な症状マネジメントを行うためには、まずSLE患者に見られる多様な症状の発症メカニズムを理解することが必要です。

看護師は、患者がそれらの症状をどのように認識し、症状や苦痛を表現しているかを理解する必要があります。

それぞれの症状がなぜ現れるのか、どのように緩和できるのかについて患者に知識を提供するだけでなく、患者が主体的に症状を緩和できるよう、共に対策を考える姿勢をもって支援することが重要です。

患者が自身の体調の変化に気づけるよう支援する

寛解の状態を維持し、再燃時に異常を早期に発見し対処できるよう、患者が自身の体調の変化に気づけるよう支援します。

看護師は、日々の体調や症状の変化、日常生活の出来事などを患者と共に振り返り、増悪因子に関連する行動や生活習慣に気づけるよう働きかけ、主体的に生活を調整していけるよう支援します。

特にSLEに特徴的な神経・精神症状や、ステロイドの副作用による精神症状の出現リスクもあるため、身体症状だけでなく、気分の不快感や食欲不振、不眠などのうつ状態の兆候も説明し、自ら気づけるように意識付けることが重要です。

日常生活における教育的支援

患者に対して、SLEの特徴や増悪因子、再燃によって生じる症状、治療による副作用などについて、わかりやすく知識提供を行います。患者用パンフレットなどを活用し、正しい理解を促します。

病気を適切に管理すれば、寛解の状態を持続することが可能であることを伝え、患者が増悪因子を避ける必要性や適切な治療の重要性を理解した上で、治療に積極的に参加できるよう支援します。

増悪因子を避け、治療を適切に継続するためには、日常生活や社会生活に制約が生じることが少なくありません。そのため、家族や友人、職場の関係者などが理解し協力することが重要です。

特に過労やストレス、長時間の紫外線曝露などは日常生活や仕事に密接に関わっています。患者自身が増悪因子に対する対策を考え、生活に取り入れる工夫が必要です。

全身性エリテマトーデス患者にとっての増悪因子と対策

憎悪因子 対策
紫外線への
長時間曝露
直射日光を避ける工夫をする

・外出時には長袖シャツ、 日傘や帽子を着用する
・家事や育児などによる紫外線の曝露を抑えられるよう、家族と相談し役割を調整する

寒冷刺激 寒冷刺激を避ける

・暖かい服装や、暖房器具を使った室温調整を心がける
・食器洗いなどの水を使う家事ではゴム手袋、温水を使用する

疲労、ストレス 運動や仕事による疲労をためないようにし、十分な休息をとる

・長時間の激しい運動を避ける
・疲労を感じたときには、 ゆっくり休む時間を確保する
・疲労時に休息を確保できるよう、職場や家庭で環境を調整し、キーパーソンに理解を求める

感染 感染予防と感染症の増悪を防ぐ

・外出時はマスクを着用し、外出から戻ったときには含嗽と手洗いを心がける
・清潔を保つため、体調に合わせて入浴、 シャワー浴などの保清を行う
・口内炎や呼吸器感染症を防ぐため、 歯磨きや含嗽を促す
尿路感染症を防ぐため、 温水洗浄便座などを使用した陰部洗浄を行う
・感染症が流行する時期には人ごみを避ける
・感染の徴候を理解し、 感染症状が出現した際には早めに受診する

妊娠・出産 安心して妊娠・出産できるようライフプランを組み立て、病状をコントロールする

・妊娠・出産によるSLE増悪のリスクがあること、 ステロイド薬や免疫抑制薬は胎児への催奇形性があることから、 避妊の必要性を説明する
・SLEの活動性が低い状態で、薬剤が適切にコントロールされていれば、 妊娠・出産は可能であることを伝え、 妊娠の希望があるときは医療者に相談するよう説明する

看護師は、患者が無理のない形で増悪因子を避けられるよう、患者や家族と協力して対策を考えていきます。

内服薬の管理

患者がステロイド薬や免疫抑制薬の副作用に不安を感じている場合、自己判断で服薬を減量や中断してしまうことがあります。

治療の継続が重要であることや服薬中断のリスクについて、十分に説明します。もし減量を希望する場合は、必ず医療者に相談するように説明します。

その上で、患者がなぜ薬を減量したいと考えているのか、内服に不安や苦痛を感じているのかを引き出し、問題解決に努めます。

また、免疫抑制薬のカルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)を服用している場合、グレープフルーツを摂取すると免疫抑制反応が強くなる可能性があることを説明し、摂取を避けるように指導します。

まとめ

今回は、全身性エリテマトーデス(SLE)をテーマにその概要から療養生活における支援内容やアセスメント項目などSLEの看護をおこなう上で知っておきたい内容をお伝えしました。

全身性エリテマトーデスは、一生を通じて管理が必要な疾患ですが、近年では、治療薬の進歩により、病気のコントロールがしやすくなりました。

しかしながら、この病態は多様であり、訪問看護では患者が疾患や病状、治療をどう理解し受け止めているかを十分に把握しながら、患者の心理状態に適した支援が求められます。

また、疾患や治療に対する不安が大きなストレスとなり、それ自体が病状の悪化要因になることも考えられるため、日常生活の中で患者が適切なセルフケアを行い、自己管理できるよう支援することも重要です。

本記事が訪問看護事業に従事される方や、これから訪問看護事業への参入を検討される方の参考になれば幸いです。